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ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/13

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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ぼろいねこ讃 @nekoboro

ペンを回しながら、猫の波打つ腹を眺めていた。わたしの頬は電気スタンドの熱で左側だけがよけいに熱い。ふいに指が狂ってペンが宙に投げ出され、まぬけな音をたてて床に転がった。しかし猫は起きないし、アイデアも起こらない。平凡すぎる午前二時。 #twnovel

2010-10-13 01:55:59
重藤 貴志[Signature] @Siqoqtaq

山と積まれた原稿用紙を前に、老作家は深い溜息をつく。もう何十年、こうしているのだろう。どれだけ万年筆を走らせても、物語の終わる気配がない。それぞれの登場人物が、自分の意志で動き回る様子に、彼は恐怖すら感じていた。それでも、老作家は、震える左手で文字を書き続ける。 #twnovel

2010-10-13 01:59:51
ゆえ @sakuyue

あなたが夜勤でいない部屋に合鍵で入る。暗い部屋、冷たいベッド。微かに残る煙草の香り。主のいない部屋はほら、こんなにも寂しいもの。だから私は素肌にあなたのワイシャツを重ね、あなたのベッドに忍び込む。朝になったら私を見つけたあなたは、どんな表情でキスしてくれる? #twnovel

2010-10-13 03:22:41
@QuaibunBocchi

はじめて秋を迎えた。随分とたくましくなったが未だ気が若く、家人が甘やかすのでわがままに育っている。庭へ出たがるので居間のガラス戸を少し引いてやった。遊び疲れたのか、気づけば金木犀の下で丸くなっていた。黒い毛並みに落ちた花が星に似た輝きを放っている。 #twnovel

2010-10-13 03:42:43
@K_Ichida

#twnovel そのレストランは客の気分に合った料理を出す。注文は必要ない。黙って座れば欲しいものが出てくる。私と妻は、よく食事を楽しんだものだ。だが、その妻が死んでしまった。傷心の私が席に着くと、料理が出てきた。ひとくちでわかった。この料理は私を妻のもとに運んでくれる。

2010-10-13 09:42:23
たくわん @takuwan_takusan

自分の知りたいことが全て載っていく辞書を手に入れた。最初は薄っぺらだったが、だんだん辞書は厚くなっていった。私は常に辞書を携帯し、自分で覚えたり考えたりすることをやめてしまった。厚くなりすぎた辞書を持ち歩けなくなったとき、私の脳みそはすっかり薄っぺらだった。 #twnovel

2010-10-13 11:11:27
Ask @may_rabbit

#twnovel アイスに歯を立てると、歯が抜けた。ひやりと背筋を悪寒が走る。ぼたぼたと白いバニラアイスの上に歯茎から流れた血が落ちる。僕は慌ててアイスに刺さった歯に手を伸ばす。すると柔らかなアイスに埋めた指がすぽりと千切れ僕は絶叫したつもりだったがアイスを舐めた舌は既になく、

2010-10-13 15:30:12
まくるめ @MAMAAAAU

「すべての病気はビタミンで治る」 病人にビタミンをずっと飲ませ続けたと仮定しよう、その病人は、治るか、ビタミンを飲み続けるかどちらかである。病人は100年以内にほぼ必ず病人ではなくなるので、すべての病気はビタミンで治る。 #twnovel

2010-10-13 17:06:09
すわぞ @suwazo

#twnovel 歌ったら餌をやる。上手なら良い餌を。下手なら与えない。そのうち驚く程の美声を出すようになる。そうしたら壺に入れて土中に埋める。それは腹を空かして歌う。歌い続ける。数年して掘りおこすと中には美しい歌声だけが残っている。壺に耳をあてれば聞こえる。とても高く売れる。

2010-10-13 17:28:44
@QuaibunBocchi

想像してごらん。君は露天風呂でのぼせている。岩肌の小さな穴に人差し指を入れたまま。抜けなくなったのではない。塞いでいるのだ。指を抜くと穴から激しい息づかいや女の嬌声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声色だ。君は意識を失うことも風呂からあがることもしない。 #twnovel

2010-10-13 17:48:33
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 放課後、彼に呼び出された。いわゆる札付きの不良。粗暴な言動に、私は担任として向き合ってきた。待ち構えていた彼は、太い腕を突き出し…皿をおいた。南瓜のタルト。「美味しい。店に出せるわ」感想に、ごつい頬がゆるむ。知人の洋菓子店で研修中の彼。こんな進路指導も悪くない。

2010-10-13 18:36:32
八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物はネグリジェを着て深夜の街を徘徊していた。夢遊病者だ。眠った相手を襲うのはフェアではないと思った人間豹は、眠り姫が眼醒めるのを待つことにしたが、ついに夜が明けるまで彼女が眼を開けることはなかった。 #twnovel

2010-10-13 19:14:25
曼哩 @manly00

子供の頃、午後7時は夜の入り口だった。いや、今だって同じことだけど。ただ夜の深さを知ってしまったせいで、そう思えなくなっているんだろう。けれど午後7時。この時期。街灯が存在感を主張しはじめる薄暗闇の中で、長くて短い影たちは、獲物がくるのを待っている。 #twnovel

2010-10-13 19:23:08
@rna96

鶏であって、とても賢い。そして偶数をこよなく愛する。彼らは一生涯に鳴く回数を2で割り切るため、ある行動原理を規定した。すなわち、2度鳴いた次の日には鳴くのを休み、休んだ次の日には2度鳴くのである。50%の成功率で目的は達成され、その数値に彼らは概ね満足している。 #twnovel

2010-10-13 20:20:18
藍 真史 @shin1960

#twnovel 別れた彼女からメール。会いたいの。彼女は僕を捨てて街を出た。昔の話だ。あの時と同じ店で待ってるわ。妻と娘が床につく。店の閉まる時間。夜はふける。始発で帰るわね。妻と娘の顔を一晩中見つめている。窓の外が白み始める。時計を見る。そっと外に出る。返信。さようなら。

2010-10-13 22:21:58
蒼井清志郎 @401kiyoshiro

#twnovel 雑踏の中、横断歩道の向こうに彼女を見つけた。彼女もこちらに気づき小さく手をふり微笑む。 ふいに彼女の姿が揺らぎはじめ景色に溶けていく。「待て、まだ消えるな」 そして辺りは漆黒の闇に包まれる。俺は2本目のマッチを擦った。

2010-10-13 22:35:23
kyo365 @kyo365

【電話ボックス】 喧嘩して家を出た。無茶苦茶に歩いた。電話ボックスが目に入った。今時珍しい。昔、硬貨を握り電話をかけたっけ。中に入ってタバコを吸った。煙が満ちた。携帯電話を取り出し彼女にかけた。「何よ、昔みたいな呼び方して。帰りにセロリ買ってきて。」月が笑った。 #twnovel

2010-10-13 22:42:25
夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 星がきらりと輝いて、貴方の机には一枚のチケットが。出発地はその部屋です。行き先は空欄です。どこへでも好きなところへ行くことができます。荷物は少なめに、お気に入りのものだけカバンにつめて、さぁ出かけましょう。部屋を出る時振り返っちゃいけません。戻れなくなりますよ。

2010-10-13 23:08:52
とおる7th @windcreator

旅の準備はよろしいですか? 着替えはお持ちですか? 地図のご用意は? 正露丸もお持ちください。おっと、もちろん切符はお忘れなく。再発行はできません。何せあなたの為だけに用意した特別製ですから。搭乗口は→ #twnovel 【毎月14日はツイノベの日! #twnvday お題:旅】

2010-10-13 23:24:45
夢名 七志 @mumei7c

私の唯一気が休まる部屋。誰にも気兼ねせずプライベートを満喫できる。煩わしい訪問者も無い一人の時間を思い、気は逸り足取りも軽い。ノブを回すのももどかしく扉を開け驚いた。知らない人が座っている。一瞬の後、私は怒りの言葉を発していた。「鍵を掛けとけ」別のトイレにする。 #twnovel

2010-10-13 23:50:07