ついりみっくす( #twremix )オムニバスついのべ 「あの世バス」

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23時の夢物語 @23novel

#twnovel地獄バスをご利用の皆さま、右手をご覧ください。あれが有名な地獄の釜、左手に見えますのは針の山、その手前に広がるのが血の池です。阿鼻叫喚が聞こえてきますが、ご安心ください。当バスは通過するのみでございます。ただ今順調に奈落を落下中、定刻通り最底辺に到着予定です」

2013-11-17 23:41:10
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix「あの世バスをご利用の皆さま、ご乗車ありがとうございます」バスガイドの案内で、車窓から地獄の釜や血の池地獄を見る。バスはまだ停まらない。きっと奈落行きだろう。死んでからも最底辺な自分を呪いたい…が。「まだ着かないのかな」隣の席の女の子が呟いた。

2013-11-18 08:35:57
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix 見た感じ、学校に上がる前くらいか。善も悪もまだ理解できなさそうなその子も、同じバスに乗っていた。俺が連れて来てしまった。「ママ…早くお迎えに来て…」幼稚園の送迎バスに乗っているつもりなのだろう。女の子のか細い声に、周りの大人たちは顔を曇らせる。

2013-11-18 08:45:02
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix 俺は生きてても死んでからも最底辺な人間だ。小さな女の子ひとり、暴走車から守ってやることも出来なかった。「ちょっと待ってろ、ママがお迎えに来るまで」泣きそうな女の子の頭をポンポンと叩いて、俺は席を立ち上がり、バスガイドからマイクを奪った。

2013-11-18 08:51:44
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix 「全員動くな」俺は右手をブレザーの内ポケットに入れて、車内の全員を睨んだ。「今から死ぬ奴ら言うのもなんだが、もう一度死にたくなかったら、おとなしくしてろ」俺は顔面蒼白の運転手にバスをUターンしろと命令した。「で、出来ません!」「なら俺に代われ」

2013-11-18 09:03:14
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix 「この道は一方通行で、Uターンすると後続のバスと正面からぶつかってしまう!」「じゃあ神様だか仏様に祈っとけよ」運転席に座った俺は、狭い道でバスをUターンさせて、今まで下っていた道を全速力で駆け上がった。このまま、天国にまで昇りそうな勢いで。

2013-11-18 09:12:27
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix こんな人生、間違ってる。自分に対してそう思ったことは何度もあったが、それはどこかで諦めることが出来た。どうせ自分の人生だし。自分で選んだ道なのだから、と。でも、名前も知らないあの女の子の人生がこんなところで終わるのは、絶対に、間違っていた。

2013-11-18 09:18:45
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix 俺達が乗車した「この世」のバスターミナルは、出発を控えていたらしいバスで渋滞していた。俺はその少し手前でバスを停めてドアを開く。あの女の子を、見知らぬ中年女性が前に連れて来てくれた。「ここを降りたら、真っ直ぐ前だけを見て走れ。ママが待ってるぞ」

2013-11-18 09:27:31
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix あの世行きのバスから降車した女の子は、この世へ向かって真っ直ぐと坂を駆け上がり、やがて見えなくなった。満足した俺は運転席を立って、元の座席に戻った。バスガイドはマイクから、無線で連絡を入れる。再びUターンしたバスが、ゆっくりと坂道を下り始めた。

2013-11-18 09:34:12
春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

@23novel #twremix ブレザーの内ポケットから、煙草を取り出す。車内は禁煙で、なんで死んでからもそんなルールに縛られなきゃならないんだと思っていたけど。隣に座っていた女の子もいなくなったし、色々ともうどうでもいい。煙草に火を点け、肺いっぱいに煙を吸い込んだ。うまい。

2013-11-18 09:40:47