シュテルン百景的なあれこれ

もじほこり @saikasouko140

どうしてあんなにも女神像をライトアップしているか、知ってるかい。それは影を作らせないためさ。朝に夕に、低い太陽に照らされて伸びた女神の影は濃く黒々と街にへばりついているだろう？　まるで言い伝えの深い穴のように。そう、その昔、落ちてしまった人がいたらしい。だからなのさ。 #星街SF

もじほこり @saikasouko140

ほんの時折、シュテルンビルトでは天気予報が役に立たない夜がある。ゴールドステージのテラスで星を見ているのと同時刻、その下の下、ブロンズの街角でしとしとと雨に降られることがある。同じ時の中にいるつもりでも、上から下へと移るだけで、つるり次元を越えてしまうことがあるのだ。 #星街SF

もじほこり @saikasouko140

冬本番の風が吹く。川の上を渡り、海へと向かう冷たい風は、中洲の街を勢いよく駆け抜ける。より強くそれにさらされる上層の街では、街角から、ベランダから、うっかりと空へと奪われていくものを見かけることは珍しくない。しかしそれらを下層で探そうと、どこからも見つからないという。 #星街SF

もじほこり @saikasouko140

@gel_labo ひどい嵐が過ぎ去って、久方ぶりに姿を見せた太陽に誰ともなくほぅ、と深い息を吐いた。中洲の階層都市は、最も下の層を支える柱が半ばまで水に沈んでいる。ほとんどの住人が避難した後と知っているからだろうか、朝日に浮かぶシルエットからは痛ましさより美しさばかりを覚えた。

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@saikasouko140 @gel_labo もしも夜、イーストリバーに落ちた人間がどれだけ捜索しても上がってこないことがあったら、彼もしくは彼女はもうひとつの街に行ってしまったと思って諦めるといい。いつか、この街とあの街とが水底で重混じり合う日がこないとも限らないだろうし。

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@gel_labo 夜明けの光に白く浮かび上がる街は、その静けさも相まって、どことなく無人の廃墟じみていた。昼、そして何よりも輝く夜の喧騒からは信じられないほどの静謐さを湛えた街を、揺らめく水面は丹念に、気紛れに写し取っている。やがて目覚める街の、血を透かした瞼のような朝である。

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@gel_labo ひたひたと満ちてくる潮によって、ふと川がどちらに流れているのかわからなくなる瞬間がある。きらきらと、その名の如く星座に例えられる街の灯りが水面に踊り、もうひとつの街を描き出すとき。気をつけて見てごらん。揺れる街には、本当の街にはないはずのステージがあるという。

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@gel_labo 揺れる水面に映るのは、かつて英雄たちの活躍に熱狂した市民の何千何万という視線を受け止めていた大型スクリーンだ。この街で起こったさまざまな悲劇、喜劇、そしてその終焉をも映し終えて、今はただ夜のように静かに眠っているそこへ、ちらちらと細波に反射した光が踊っている。

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最終のモノレールに死体のように運ばれるのにも、ずいぶん慣れた。今週が山場だと言われ続けて何ヶ月経っただろう。もうかなり長いことランキングをチェックしてない。ヒーローTVの録画も溜まる一方だ。ごとん。車体が揺れる。全身を引っ張る慣性の力に目が覚める。街灯ではない刺すような光が文字数

もじほこり @saikasouko140

とろりと視界を遮る濃い霧が街を包み込み、真っ白な景色の向こうから、ちんどんしゃらん、ちんどんしゃらんと不可思議でどこか懐かしい音が聞こえてきたら。家に閉じこもっていることだ。あの音はやがてメダイユいっぱいに響き渡り、たくさんの気配を覆い隠す。川から上がってきたナニカたちの気配を。

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@gel_labo 空が群青に染まる頃、三層に重なった街のあちこちにぽつ、ぽつ、と光が灯り始めた。昼のあいだは空へ立ち上るとそのまま拡散していってしまっていた人々のざわめきが、暗い色の布を被せられたような響き方になってくる。ライト浴びて女神が微笑む。シュテルンビルトに、夜が来た。

もじほこり @saikasouko140

@nktrshp 街を埋め尽くした毒の花ひらく女神は眠るさらば故郷

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冬の朝こおりついてる七粒は混ぜてしまう前のスムージー #シュテルンを愛でる歌

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@kiriyukiko 年老いたバウムクーヘンさながらに重ねられてく円環の街

もじほこり @saikasouko140

この街に降りる天使はいつもよりふたつ余計に輪っかを重ねる #シュテルンを愛でる歌

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ぽたり、落ちてきた雫を肩口で受けてしまい、跳ね上がった水に頬をつつかれ、ひゃあと間抜けな声が漏れた。雨上がりのブロンズの街角。上層プレートからの残り雨はいつも不意打ちで容赦がない。仕方なく、晴れた空には似合わない傘を開く。風が吹けば、また吹き飛ばされた水滴がばららっと音を立てた。

もじほこり @saikasouko140

嵐は夜明け前に立ち去って、日が昇るころには雲ひとつないすっきりとした空が広がっていた。叩きつけるように降った豪雨に洗われ、街の中心に建つ女神像も、それを取り囲む七大企業ビルの神獣像も、どことなくさっぱりした面持ちをしているようにも見える。路上に残る水たまりがきらり光を跳ね返した。

もじほこり @saikasouko140

背の高い草をかき分けて進めば、ぽかりと開けた場所に出る。日暮れを待って小さな火を点した。ゆらり、揺れる光に誘われるように、ちらちらと青い星屑が荒れた草原に降り注ぐ。浮かび上がる幻想は、三層構造の輝かしい街。それは打ち捨てられた中洲が見る、夏の一夜の夢。 〈迎え火〉 #同題ffTB

もじほこり @saikasouko140

@unknowntb140 ウェストブロンズの街角に、ほんの時々だけ現れる赤い屋根のスタンドで売ってる新聞は決して買っちゃいけないよ。それに書いてある事件は、全部これから起こることなんだ。そして、それを知ってしまった人が多いほど避けられない決定事項になるって話だよ。 #SB怪談

もじほこり @saikasouko140

@sen1000_TB ゴールドメダイユの上にもうひとつの輪があることを知っているのは、空を統べる風の魔術師だけである。それは不思議な空気の流れで、川を遡るように街の先端から吹いてきて、ゆっくりと七大企業の神獣たちの頭上を巡り、気紛れに川へと帰っていく。まるで女神を拝するように。

もじほこり @saikasouko140

@gel_labo ポセイドンライン本社ビルの壁面には、空にしか通じていない謎のドアがある。本当は謎でもなんでもないのだが、かなり目立つ位置にあるため、初めてシュテルンビルトを訪れた人などがぎょっとすることもままあるので、謎のドアと呼ばれている。ちなみに、使われることは余りない。

もじほこり @saikasouko140

古い街並みの下には未だ電気は電気、ガスはガスとそれぞれの施設が独立して埋設されており、整備用の地下道は細々と複雑に重なり合っている。「おい！」図面にない横穴を覗こうとした助手の首根っこを掴み、老整備士は足を速める。「馬鹿め、蛇に睨まれるぞ」 〈ブロンズ下の地下道〉 #同題ffTB

もじほこり @saikasouko140

ベッドの中で、どんどん強くなる風の音に怯えていた。閉じた目蓋の裏側で、街はギシギシと音を立て始めている。高まる波に翻弄される舟のように、ゆらり、ゆらりとプレートがたわむ。もうゴールドステージは立っていられないほどに揺れている。そしていつか、決定的な風がこの街をくしゃりと壊すのだ。

もじほこり @saikasouko140

ブロンズステージが沈んで程なく、街は更に上へと成長を試みた。慎重に重ねられたプラチナステージと呼ばれる遥かな高みに、少しずつ新しい建物が作られてゆく。東の一角、ジャスティスタワーの女神が見つめる先だけは、開けたままの公園などが整備された。そのかんばせを照らす朝日を遮らないために。

もじほこり @saikasouko140

風は、なんとかするよ。そのヒーローは静かに告げる。魔術師とも王とも呼ばれる彼の力は、その正義感に負けず劣らず強大だったから。いざとなったら、だけどね。輝きも闇も深く抱え込んだこの街は華やかな見かけに反して、とてもタフだ。住む人々も、また。手助けはさせてもらうさ。そっと独り、笑う。