第Ex章　人形俄壊　３部

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 　只、己が身を保つ為の能力が役に立つ日が来ようとは思いもしなかった。単独行動が主な意を発揮しているとまではいかなかったが、己を律する人物の命令に背くという物は実に恐ろしい。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───否、不安であると形容した方が正しいか。背中を預けるに能う人物として相応しいとは言えなかったが、背中を任せる事は出来るマスターであったと言えよう。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 丸一日の魔力供給無しで現界を保つ事が出来る単独行動スキルだが、実際の所大して重要なスキルではない。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 何せ7日間で一度決着を着けると決められているのだ。最終日には主従揃って向わねばならないのだし、弓兵のクラス別スキルは死にスキルだったと断言出来た。否定しよう。本来のような正規の戦いであればの話だ。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───基本骨子、解明。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 　一つ分。己の想像力を向上させる。己が体は剣そのもの。それを生み出す一つの錬鉄機械。只、己が身にある機械を動かし、一つの剣を模倣する。 息を鎮める。集中する事ではない。世界の内より引いてくるだけ。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 己がイメージを形にし確固たる幻想を模造する。視覚イメージは強い理念を持つが、既にそのような行程に頼るようでは、この前世代の魔術などは通用しまい。幻想は作り易く、壊れやすい。 持ち得るもっとも強固な剣は愛用の夫婦剣のみ。その他はと言われれば、全てが幻想の再現体だ。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 心象風景、自己の世界、パーソナルリアリティ───其れが固有結界というものだ。己が世界は不可侵であり、ありとあらゆる干渉力は自己の想像のみだ。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ────構成材質、解明。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 　己の知る内でもっとも良く知る、もっとも強力な剣の幻想。己が身は個人では決して無く、故に己が身は”私”でなければ”オレ”でもない。名無しの無名ではなく、銘のない、ブランドを持たない無銘である。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───故にこの身は全ての集合体。一個人であった生前の頃、人々が知っていた”正義の味方”の条件に合致したのがこの身であったというだけの話だ。そして、正義の味方は象徴を持つ。ありとあらゆる正義の味方は、己が武具を以てして悪を打倒する。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 　酷い冗談だ。その”人々が望む正義の味方”。その正義の味方の武具を再現出来るというだけの一個人に、この世全ての正義を背負わせるとは。 　只、テロ行為に身を染めていただけの個人にここまでの芸当が可能なのは月の電子世界、ムーンセルでのみ。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ありとあらゆる事象を観測したムーンセルには、集合体を作る方が易いというものだろう。この身は武具の模倣、使用という一点のみで喚ばれた一個人だ。然らば───世界（ムーンセル）に記録されている全ての武具は、己が世界に内包されている。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───創造理念、鑑定。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ この身は神で無ければ人でもない。神秘など模倣出来る筈もない。そんな事をすれば、身に余る魔術の対価としてこの体を差し出さなければなるまい。それは勘弁願い被る。 星造兵器、神造兵器は身に余る。だが───人の身であり、それを使用した”正義”が地球には存在していた。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ありとあらゆる伝説で語られた武具は、その時点で原典からは程遠い。 　───曰く、神秘を作る事は難くとも、侵す事は容易な事象だ。作家は出版物によりその造型を変えられ、一国の護王は別人の創作物によって汚名を被り、怪物を宿した。ならば武具も侵されて然るべきである。 　

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 有名であるが為に、人々によって毒された剣を人の手によって作り上げる。型落ちの劣化品であれば、何も成さなかったこの身であっても再現は可能だ。 ────其の色は黄金。其の担い手は一国の王。黄金の剣（エクスカリバー）の一太刀のみの再現。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───成長経験、解析。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 　だが、劣る。劣化などしているものが、己れの知る最強である筈がない。使い方、魔力の通し方を想像しながら、最強の剣を創造する。形を与える。剣が完成しようとも剣を直視してはならない。視覚イメージは強い理念を持つ。良くも悪くも、形が少しでも違ったのなら幻想は崩壊する。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 視覚で変わるようなものでもないが、まだだ。まだ基本骨子の想定が甘すぎる。 弓兵として与えられた黒の弓を左手に投影。しっくりとして長く、固い。洋弓は馬を、和弓は人を狙う為に作られたものだ。そして、このしなりの強い長弓は和弓の如く作成された人殺しの武具。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 効率のみを銃士した偽物だ。 本物でなくとも同等の力が得られれば良い。弓を構え、剣を矢として番える。眼前を睨みながら、目端に眩い輝きを見た。───聖剣・エクスカリバーの型落ち品。幻想のみによって作られた剣には想像（イマージュ）の名が相応しい。矢を引き絞った。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ ───投影開始。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 造り上げた剣に魔力を流す。世界（ムーンセル）のものであっても、抑止力（セラフ）からの侵食は存在する。体に存在する27の魔術回路を全て開く。撃鉄のイメージ。 やはり模造であっても身に余るらしく、体に溜め込んでいた殆どの魔力を失った。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 単独行動スキルによってパスを切っているせいで。貯金を崩していくばかりだ。──構うものか、と息を殺す。アリーナの一点某所にて一点を狙撃する。範囲外（アウトレンジ）より的一点を見据えた。 カツ、とアリーナに響くのは靴の音のみ。ローファーと──これはゲタか。

無銘 @ExMmi

@Ex_kkk_ 狙われている事も知らずに、如月大和はアリーナの角を一つ曲がった。剣にたまる魔力が直に臨界を迎えようとしていた。──まだだ。 射は狙わずして中るもの。結果を想像し、そこから逆算して過程を導き出すもの。故に追うのではなく先読みする。的は常に動く生物だ。