悪い男に騙される山城【解】『HAruna's waRD』二章三日目絶望編

見る人すべてを震撼させた読者参加型なりきりストーリーアカウント『悪い男に騙される山城』の解ストーリー『HAruna's waRD』遂に始動! リアルタイムで追いかけているファンの方が読み返すのに。TLで見かけて気になっていたご新規の方が物語を把握するのに。是非ご活用ください。 前作品『悪い男に騙される山城』→http://togetter.com/li/574052 最初『悪い男に騙される山城【解】榛名の過去編』→http://togetter.com/li/583787 前→http://togetter.com/li/601817 続きを読む
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あの頃の榛名 @harunas_ward

【第二章三日目 絶望編 開始】

2013-11-26 21:03:40
あの頃の榛名 @harunas_ward

先生に手を貸してもらい立ち上がる。子供でも1人でできるような事ですら満足にできない現状に改めてうんざりする。 こん、こん。 部屋の扉がノックされる。 「空いてるよー」 私と手をつないだまま、先生が返事をする。 ノブが回る。 扉が開かれる。

2013-11-26 21:18:33
あの頃の榛名 @harunas_ward

ぱすっ ぱすっ 枕を布団たたきではたいた時のような、やる気の感じられない音が2度、部屋に響いた。

2013-11-26 21:24:29
あの頃の榛名 @harunas_ward

何の音かと考える暇も無く、私は足元の椅子を巻き込みながら床に転がる。 私を支えていた先生が、唐突に手を離したせいだ。 倒れた衝撃で体のあちこちで筋肉が悲鳴を泣き叫ぶ。 急に何? 倒れたまま、顔だけを上げると。 先生もすぐ目の前で横になっていた。 血を流しながら。

2013-11-26 21:29:39
あの頃の榛名 @harunas_ward

先生…? 状況が何一つ理解できていない。 「ぐ…」 私の呼び掛けに反応したのかどうかはわからないが、倒れている体がわずかに揺れ、先生が声を漏らす。 とてもとても、苦しそうに。

2013-11-26 21:31:54
あの頃の榛名 @harunas_ward

「お邪魔しますよっと」 お気楽そうな声。聞き覚えのある声。信じたくない一心で首を曲げる。 ドアを閉じて、小さく白煙を上げる銃を片手に、紫水がにこにこと笑っていた。 「お届け物でーす。判子をお願いしまーす、ってか」 ぱすっ サイレンサー付きの小銃が軽く縦に揺れる。

2013-11-26 21:36:07
あの頃の榛名 @harunas_ward

「ぅあ!」 私の隣で先生の身体が大きく跳ね、こもった悲鳴を上げる。 じわじわと、床に赤い液体が面積を拡げていく。

2013-11-26 21:38:33
あの頃の榛名 @harunas_ward

くっ…! いまだに慣れる気すらしない筋肉痛を無視して起き上がり、両手を広げてしゃがんだ体勢で奴と先生の直線上に割り込む。 自分が何をしているのか、わかってるの…? 告げながら、睨む。 鎮守府内で、ドッグの医師の私室で、その主を撃つなんて、予想できるわけがない。

2013-11-26 21:42:18
あの頃の榛名 @harunas_ward

睨んでいる先で、奴が表情を変える。 ひどくつまらなそうに、眉を寄せる。 ハズレ。その選択はハズレだよ、榛名。がっかりだ …何を…。 身体が普段の状態であったのならば、この距離でも即座に銃を奪えるものを…。やろうと思えば、素手で殺す事だって…。 あ…。

2013-11-26 21:45:54
あの頃の榛名 @harunas_ward

「気付いた? もうアウト。立て。榛名』」 悔やむ。どうして欠念していたのかと。 私の意志を無視して、両足が伸びていく。視界の高さが上がっていく。 言う事は聞かないくせに、筋の痛みだけは律儀に返してくる身体が恨めしい。 夢であってほしい。願う。

2013-11-26 21:49:53
あの頃の榛名 @harunas_ward

つかつかと、奴が近付いてくる。 こないだの感覚を思いだしながら、意識と力を動かない身体に必死に込める。呻き声が喉から漏れるだけで、全く成功する気配が無い。汗が頬を伝い、顎先から床に滴る。 「無理だと思うなぁ。もうこないだより進んでると思うし すぐ傍で見下ろされる。

2013-11-26 21:54:45
あの頃の榛名 @harunas_ward

「はい、プレゼント。『受け取れ、榛名』」 手袋を付けた手で、銃を半回転させ、私に差し出してくる。 歯軋りをして抵抗を試みるも、私の右手が勝手に伸び、銃を受け取り、しっかりと握り締めやがる。 な、に…を…。 「榛名なら察しがつくだろ? はい、向きはこっちじゃないよー」

2013-11-26 21:59:33
あの頃の榛名 @harunas_ward

奴が私の両肩に手を乗せ、片方を押して片方を引く。 身体の向きを強制的に反転させられる。 視界から奴の姿が消えて。 床にうつ伏せのままでいる先生を見下ろす事になる。 血が、止まっていない。

2013-11-26 22:02:14
あの頃の榛名 @harunas_ward

やめ、て…やめてくだ、さい…。 おねがい、だから…やめ…。 「『撃て、榛名』」 いやあぁぁぁぁぁああ! ぱすっ 細い身体が、跳ねる。 「もう一回。『撃て、榛名』 やめて!もうやめて!先生が、先生が…! が。 て。

2013-11-26 22:05:20
あの頃の榛名 @harunas_ward

「はいラスト。『撃て、榛名』 ああ…ぁ…。 意思とは関係無く人差し指だけが動く気持ちの悪い感触が。 反動から無機質に耐える右手首に、涙の粒が落ちて濡れる。 先生は、動かない。

2013-11-26 22:10:45
あの頃の榛名 @harunas_ward

「6発しか撃てない普通の銃だから安心してよ。はい、予備の弾丸。『リロードしろ、榛名』」 涙で視界がぼやける。だというのに、私の指先はごく自然な流れで空になった薬莢を床に落とし、1発ずつ弾を込めていく。丁寧に、確実に。 ぐっ…ひぐっ…。 「辛い? 誰か呼ぶ?」

2013-11-26 22:21:05
あの頃の榛名 @harunas_ward

「呼ぶ? 呼んじゃう? 誰か呼ぼうか? 呼んでこようか? 「ひ、人殺し…!」とか叫びながら人を呼んでこようか? ねぇねぇ? どうする榛名?」 私の中の『』よ。何してるの? やるなら今でしょ。今なら許すわ。目覚めてよ。壊してよ、この憎い『』を…!

2013-11-26 22:25:39
あの頃の榛名 @harunas_ward

頭痛は起きない。身体は動かない。 涙は止まらない。 「さて、と。あぁ、これか。…へぇ、よく調べたもんだ。さっすが。はいふぁいあー 机の上の書類の束を斜め読みして、近くにあったライターで躊躇いなく火を点け始める。灰になっていく資料を、紫水は灰皿に適当に突っ込む。

2013-11-26 22:28:45
あの頃の榛名 @harunas_ward

「うし。任務完了。今日のMVPは榛名だな、おめでとう!」 拍手だと思う動きをするけども、手袋のせいで音が間抜けで余計に腹立たしい。 「じゃ、ルール説明でーす。簡単だぞ。あと20秒くらいしたら好きに動けると思うので、好きにして下さい。俺は人がこの部屋に来るよう仕向けます。以上」

2013-11-26 22:32:43
あの頃の榛名 @harunas_ward

「頑張ってな、榛名。応援してるよ。じゃっ 背後で奴が遠ざかっていく足音が聴こえる。 止まる。 「あ、忘れてた。ちなみに俺はアリバイ工作してあるから『俺に罪をなすり付けよう』としても無駄だから。これ大ヒントだねー。度こそ本当に、バイバイ榛名」

2013-11-26 22:36:47
あの頃の榛名 @harunas_ward

扉が閉じる。 時計の針が進む音が聴こえる。 涙が止まらない。 奴を殺したい。 どうして。 どうして…!

2013-11-26 22:38:40
あの頃の榛名 @harunas_ward

14…5… 数える。今はこれしか私にできる事が無い。 17…18… 長い。長過ぎる…! 20…! …。 動かないじゃないか畜生っ…!!

2013-11-26 22:40:35
あの頃の榛名 @harunas_ward

カウントは30を超えたと思われる辺りで、がくんと膝の力が抜け、もの凄い脱力感と共に床にへたり込む。 あ…。 動ける…! 筋肉痛の激しさが増しているような気がするけども、無視する。 先生! 「ぐ…」 生きてる! 四つん這いで先生の元へと急ごうとする。 「来るな

2013-11-26 22:44:55
あの頃の榛名 @harunas_ward

「来るんじゃないよ榛名…。話は、聞いてた…。血の反応は洗ったくらいじゃ消えない。さわるんじゃない。早く…逃げな…」 もぞもぞと動き、時折びくんと跳ねながら、先生が顔を上げる。 口から一筋の赤い線が引かれている。瞳は、とても力強くて。

2013-11-26 22:51:04
装甲空母 信濃 @IJN_AC_Shinano

@harunas_ward せんせーい!絆創膏くーださいっ!(ガラッ) ・・・えっ?

2013-11-26 22:41:50
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