【艦これSS】 サンキュ、大井っち

みくま＠Ｗ規制垢 @kumakumamikuma3

えるかなんて、分からないじゃん。 あたしがいるのは戦場だよ？　いつ沈むか、分からないんだよ。 もう二度と、会えないかもしれないんだよ。 こんな気持ちでいるのはあたしだけなの？　やだよ……ずっと一緒にいたいよ。 沈む時も二人一緒だって、あの桜の木の下で、約束したじゃん。行かないでよ

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。 あたしを、捨てないでよ。 「……悲しくないわけ、ないじゃ、ないですか」 大井っちの声が、崩れた。声と背中が、震えてる。泣いてるの？ 「わたしが悲しくないわけ、ないじゃないですか。北上さんを一番好きなのは、わたしなんですよ」 大井っちが振り返る。その顔は、あたしと同じで

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、涙と鼻水でぐしゃぐしゃで。 いつもみたいな穏やかな表情や、冷静な振る舞いなんて、微塵も感じなかった。 「どうして……どうしてわたしが行かなくちゃいけないんですか！　ずっと、ずっと北上さんの側にいたかった！ 二人でもっとたくさん思い出を作りたかった！　泣いたり、笑ったり、手を繋

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いで、抱き締めあって。 まだしたいこと、たくさんたくさんあるのに、なんで、なんで……うああああああ！！！」 張り詰めていた糸が切れるように、その場に崩れ落ちた大井っちに、あたしは── 「嫌です……嫌ですよぉ……離れたくないよぉ……北上さん……北上さん……」 抱き締めた。力い

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っぱい。その体温も顔も触れ合った感触も、忘れないように。 なんで、なんであたしはいつも自分のことばっかり考えて。本当にバカだ。 大井っちはこんなにもあたしのことを思ってくれてて、同じ気持ちで、ずっといてくれてたのに。 「北上さん、北上さん……」 大井っち、大井っち。 お互いに

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名前を呼び合って、お互いの気持ちが二度と離れないように、繋ぎとめた。 もう会えなくても、いいように。どんなに離れていても、二人の心はずっと一緒にいられるように。 「「大好き」」 ------

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ジィジィジィと。セミ、マジでウザイ。 暑さに畳み掛けるようにノイズを撒き散らす夏の風物詩のバーゲンセールに、思わず雷撃を打ち込みたくなるよね。 大井っちが除隊してから、四ヶ月が経った。 変わったことはと言えば、木曾っちが秘められていた力を突如覚醒させて、あたしと同じ重雷装巡洋艦に

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なったことくらいかな。 今では肩を並べて一緒に敵潜水艦を撃沈させたりしてる。 あたし一人が頑張って固いの全部相手にしなくていいってことだね。いやーよろしく頼むよ、木曾っち。ぽむぽむ。 はー、それにしてもなんであたしはこのクソ暑い中をえんやこら、坂道を上ってるんだろ。 それもこれも

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全部大井っちのせいだ。あの桜の木を写真で撮って送ってほしいなんて言ってくるんだもん。 桜が咲いてない桜の木なんて、見て面白いもんかねー？せっかくの休暇なのにさー。 めんどくさーい。帰っていい？　だめ？ そんなこんなで相変わらずの悪態をつきながら上り続けてたら着いちゃいました。丘の

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上。 丘の下にある海から吹く潮風が、あたしの肩口で切った髪を舞い上げる。 ……ま、悪くないかな。涼しいし。 気持ちと比例して軽くなった足取りで木に接近。長居する気はないから、ちゃっちゃと撮って切り上げちゃいましょー。 でもこれ、どうやって使うんだろ。青葉っちにちゃんと説明聞いとけ

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ばよかったなー。 悪戦苦闘しながらボタンをポッチンポッチン。まるで機械音痴のおばあちゃんだ。まだピッチピチだぞ？ お、なんかズームした。よしよし、あとはシャッターを…… ──って、おい。なにこれ。 思わずカメラを地面に取り落とした。うわっ、やっべ。青葉っちに怒られる。でもそん

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なことは思考の暗黒空間にうっちゃって、あたしの視線はその木の一点に釘付けになった。 まさか、これを見てほしくて……？　でもこんなのいつ──あ。 あの時だ。最後に二人でここに来た時、大井っち、妙に木を触ってる時間長いと思ってたけど、こんなことしてたんだ。 あー、もう。口元にやついち

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ゃってるよ。 こんなとこで一人で木を見てにやけてるのを駆逐艦とかに見られたら、自爆もんだね。うん。 「──サンキュ、大井っち」 でもさ、一つだけ言わせて。相合傘はちょっと古いよ、大井っち。 -了-