「相互確証破壊」の意味と内田樹さんの誤用(国際法学たんVer.)

安全保障論や核戦略の専門用語である「抑止力」「相互確証破壊」といった単語が誤用されている現状が気になったので、指摘しました。ここでは内田樹さんの誤用例を紹介し、また過去の私のそれらに関する解説ツイートを探してまとめました。 途中の特徴的な口調はおともだちの国際法学たん(@kokusai_law_tan)を真似たものです!
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中ニ心をくすぐる単語「相互確証破壊」(MAD)

ハスノ @Morgenthau0217

「相互確証破壊(MAD)」って名称がなんだかかっこいい(中二臭い)から、よく理解していない人も好んで使っている印象があるわ。今度しっかり説明したいわね。

2013-12-23 16:59:42

内田樹氏の「相互確証破壊」という用語の誤用

内田樹 @levinassien

首相が戦争をしたがっていることは10月の自衛隊観閲式での式辞からもわかります。「『防衛力はその存在だけで抑止力になる』という従来の発想は捨て去ってもらわなければいけない」と彼は言いました。従来、抑止力は「相互確証破壊」をベースにして「存在するだけで機能する」ものとされています。

2013-12-18 12:44:24
内田樹 @levinassien

でも、それは核抑止力に限るものであって、通常兵器による戦争では「適宜行使することではじめて抑止的に機能する」と首相は考えているのでしょう。完全にアンダーコントロールにあり、好きなときに始められ、好きなときに止めることのできる戦争。非戦闘員が死なず、都市も破壊されない戦争。

2013-12-18 12:45:57
内田樹 @levinassien

始まると翼賛的世論が盛り上がって、内閣支持率が跳ね上がり、反政府的世論が抑圧され、軍事産業関連株価が急騰する、そんな「おいしい戦争」を首相は夢見ているのでしょう。

2013-12-18 12:47:08
内田樹 @levinassien

このような楽観的な戦争観はまさに68年間の平和がもたらした「平和ボケ」の産物という以外にないのですが、日本国民はまさに「平和ボケ」の重篤な症状として「戦争したい気分」に罹患している。

2013-12-18 12:49:18

抑止力と相互確証破壊に関する簡単な解説

ハスノ @Morgenthau0217

「確証破壊」能力とは、敵から先制攻撃を受けた場合に、報復攻撃によって敵に耐え難い損害を与える能力のこと。「確証破壊」戦略とは、そうした能力の保持を通じて、敵の先制攻撃を抑止すること。そして、「相互確証破壊」とは、互いがその能力を保有し、互いがその戦略を採用している状態のことよ。

2013-12-23 17:01:10

「絶え難い」損害とは?

ここでの「耐え難い」損害とは、長期に渡って大国として立ち直れないような打撃のことを指します。例えば冷戦期には、ソ連に及ぼすべき具体的な被害として、人口の5分の1から3分の1、産業の2分の1から3分の2といった基準が設定されました。

ハスノ @Morgenthau0217

せやから、この内田樹さんの「相互確証破壊」の理解はかなりトンチンカンということになるなー。抑止力は必ずしも相互確証破壊をベースにしたものではないんやわー。あれ、誰かの口調が… https://t.co/3XeG4y4ZAI https://t.co/nqZd5iLfE1

2013-12-23 17:07:29
ハスノ @Morgenthau0217

抑止とは「相手を攻撃する費用と危険が、期待する効果を上回ると敵に思わせることで、敵にその行動を取らせないようにする努力のこと」やー。抑止力とはその能力のこと。だから、国境付近に軍隊を集中させれば、隣国が自国に攻めてこないようにする抑止になるし(もう少し国際法学たんの真似させて)→

2013-12-23 17:15:35
ハスノ @Morgenthau0217

中国が台湾に向けてミサイルの照準を合わせるのも、台湾が中国にとって不利益な行動(独立宣言とか)をとらせないようにする抑止やー。卑近な例では、「店内に私服警官がいます」という警告も万引きに対する抑止やなー。→

2013-12-23 17:18:41
ハスノ @Morgenthau0217

他には、ジャンルは違うけど死刑制度が凶悪犯罪に対する抑止になってるという議論もあるなー(実際にそうなのかどうかは私にはわからへんわー)。せやから、互いに相手の先制攻撃を防止することを主眼とする相互確証破壊は確かに抑止の一形態やけど、「抑止力が相互確証破壊をベースにしてる」という→

2013-12-23 17:20:16
ハスノ @Morgenthau0217

内田樹さんの議論はトンチンカンやー。さらに、「存在するだけで機能する」という内田さんの発言もちょっと語弊があるなー。実際に報復する政治的意思、報復する能力も必要やからなー。

2013-12-23 17:23:01
ハスノ @Morgenthau0217

「存在だけでは抑止力にならない」というのは安倍さんの発言からの引用なんやなー。http://t.co/aCUGucZkdDかなり曖昧な表現やけど、それ自体変なことは言ってないと思うわー。たぶん「有事を想定しないで訓練してるだけじゃアカン」程度の意味やろなー。

2013-12-23 17:27:40
リンク 朝日新聞デジタル 「存在だけでは抑止力にならない」 首相が自衛隊に訓示:朝日新聞デジタル 安倍晋三首相は27日、陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県)で開かれた観閲式で訓示した。北朝鮮のミサイル問題などに触れ、「安全保障環境は厳しさを増している。平素は訓練さえしていれば良いとか、防衛力はその存在
ハスノ @Morgenthau0217

以上、内田樹さんの「相互確証破壊」誤用に対する指摘でした(国際法学たんVer.)。ご静聴ありがとうございましたっm(_ _)m

2013-12-23 17:29:13

「抑止」に関する過去の解説

ハスノ @Morgenthau0217

抑止とは、「軍事報復の警告により、他国からの武力行使を未然に防ごうとする努力」のこと。相手を攻撃する費用と危険が、期待する効果を上回ると敵対者に思わせて、敵対者に実際の行動を思い止まらせるのが目的よ。つまり敵対者が費用対効果を合理的に計算できる能力を持つことを前提にしているのね。

2013-12-13 22:10:51
ハスノ @Morgenthau0217

抑止が、報復を受けたときの損害を敵対者が忌避するだろうということを前提にしているのなら、玉砕を厭わない国家や、自爆テロには抑止は効かないのかしら?そこで出てきたのが「拒否的抑止」という概念。報復されたくなければ…という従来の抑止の考え方を「懲罰的抑止」と呼び、区別するわ。

2013-12-14 08:11:02
ハスノ @Morgenthau0217

報復の可能性を敵に認識させる「懲罰的抑止」に対して、「拒否的抑止」は、自国の防御能力を高め、敵の攻撃の有効性を減じることで、敵の行動を思い止まらせるもの。自爆テロリストは報復は恐れないけど、その代わりテロは成功させたいでしょ。その成功率を下げることで、行動を思い止まらせるのよ。

2013-12-14 10:10:53
ハスノ @Morgenthau0217

「懲罰的抑止」は、敵に、我々を攻撃する費用と危険が、期待する効果を上回ると思わせて成立する。「拒否的抑止」は、敵に、我々を攻撃しても成功の可能性が極めて低く、またコストが極めて高いと思わせて成立する。いずれにしろ、抑止が成立するのは、あくまで利害計算のできる「合理的な敵」なのよ。

2013-12-14 12:10:51
ハスノ @Morgenthau0217

犯罪がずっと起きていない街では、警察官は無用なのかしら?それとも警官がいなくなれば犯罪が起きるかもしれない?これが“抑止”の議論の難しさよ。犯罪が起きていない状況下では警官が本当に役に立っているのか、証明が困難でしょ。和平時における軍事力も同じ。だから非武装論が生まれるのかもね。

2013-12-14 14:10:57
ハスノ @Morgenthau0217

抑止戦略の最大の難点は、「抑止が有効に働いているのかどうか、確認する方法がない」ということよ。戦争が勃発したときに初めて、抑止が機能しなかった(失敗した)ことが立証されるけど、戦争が起こらない間は、それが抑止が有効に働いているからなのか他の要因によるものなのかは、わからないの。

2013-12-14 16:10:54