社会福祉法人における「公設民営」と「指定管理制度」の問題

一つの意見として。お暇な時にどうぞ。
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Saussure @mamiyac330

千葉県社会福祉事業団の運営する知的障害者の入所施設で入所していた知的障害者の男性が職員からの暴行を受け死亡した事件。78名の入所者の内、少なくとも10名の入所者が複数の職員から暴行されていたという報道が事実だとすれば、施設全体として威圧的な支援が常態化していたと見なすべきだろう。

2013-12-17 06:16:55
Saussure @mamiyac330

更にそうした威圧的な支援を効果的であると感じてしまうとそれが成功体験になってしまう。表立っては言えないが威圧的な支援ができる職員が「指導力のある職員」と目されていた可能性はあるのではないか。「あの支援員さんがいると入所者が大人しくなり支援がスムーズに進む」というように。

2013-12-17 06:34:48
Saussure @mamiyac330

知的障害者の入所施設において何故威圧的な支援が常態化してしまうのか、と言えば威圧的な支援が見掛け上効果的だからである。実質は威圧されて萎縮しているだけに過ぎないのだが、重度、最重度の知的障害者の多くが抱える(周囲がそう感じる)問題行動が表面上収まれば効果があると感じてしまう。

2013-12-17 06:26:38
Saussure @mamiyac330

こうした入所施設での虐待事件が起こるとメディアは「あってはならないことが起きた」と施設側の対応の不備や職員の資質の問題を指摘する。彼等は現場を良く知らない。重度、最重度の知的障害者の入所施設に働く職員の肉体的精神的負担は非常に思い。そうした負担も威圧的な支援を生む背景にはある。

2013-12-17 06:43:12
Saussure @mamiyac330

通園ではあるが重度、最重度の知的障害を持つお子さんのクラスを受け持った経験から発言させて頂ければ、ある程度感覚を麻痺させなければ「やっていけない」。奇声や他害、便こね等の不潔行為や異食、高所登りなどの危険行為、自慰行為など、情動的に反応せざるを得ない場面は日常的に起きる。

2013-12-17 06:55:30
Saussure @mamiyac330

そうした重度、最重度障害者の(周囲から見た)問題行動の多くは感覚の問題や遊びの幅の狭さ、あるいは養育者との関係からきていることが多く、適切な環境を設定することで問題の本質は保持しながらもある程度受け入れられるものに変換することができる。其ができないのは知恵と人員の問題である。

2013-12-17 07:04:07
Saussure @mamiyac330

多くの良心的な施設職員は(周囲から見た)問題行動を受け入れられるレベルのものにしようと日々邁進している。問題の本質や対処方法も目星は付いている。しかし、人員の問題で手を打てないというジレンマとストレスを抱える場合が多い。インスタントに威圧的な支援に走ってしまう素地はそこにある。

2013-12-17 07:11:14
Saussure @mamiyac330

今回の事件でもう1つ検討しなければならないのはこの施設を運営する法人の人事におけるこの施設の位置付けである。重度、最重度の知的障害、しかも行動障害を併せ持つ方が入所施設に進んで配属を希望する者は果していたのだろうか?「若い内は苦労しとけ」人事ではなかっただろうか?

2013-12-17 07:30:00
Saussure @mamiyac330

複数の事業所を運営する社会福祉法人の場合、重度、最重度の知的障害者を受け入れる入所施設は残念ながら不人気職場である蓋然性が高い。そのような法人の採用試験を受けた方で「重度障害者の生活介護事業所に配属されるかもしれませんが大丈夫ですか?」と聞かれた方も居られると思う。

2013-12-18 06:20:18
Saussure @mamiyac330

「若い内は苦労しとけ」人事であるとすれば経験の浅い職員が多く、充分な研修指導がなされていなかった可能性も否定できないし、そもそも正規職員が定着しない職場である可能性もある。または不人気職場であれば「吹き溜まり人事」もある可能性も否定できないだろう。

2013-12-17 07:34:48
Saussure @mamiyac330

勿論、当初から強度行動障害を併せ持つ重度、最重度の知的障害者の生活介護を希望して入職する職員もいない訳ではない。しかし、生活リズムを崩し易い日曜、休日出勤、夜勤を含むローテーション勤務で肉体的、精神的負担の重さを考えれば長く続けられる職場とは言い難い。

2013-12-18 06:28:36
Saussure @mamiyac330

また、そうした生活介護施設では他の事業所で活用できる汎用性のある職業上のスキルを身に付けられるのか、と疑問に感じることは想像に難くない。故に若く経験の浅い職員が多く、あるいは不本意配属となった職員が「吹き溜まり」的に集まってしまう可能性も否定できない。

2013-12-18 06:35:41
Saussure @mamiyac330

もう1つ今回の施設での暴行事件で注目すべきは公設民営の事業団が運営していたということである。問題の施設がそうだったか詳細は存じ上げないが、そうした施設は元々は県(市)直営であった福祉の現業部門を民間に移管するという名目で自治体100%出資で法人が設立している場合が多い。

2013-12-18 06:46:17
Saussure @mamiyac330

そうした公設民営の法人では正規職員の中でも階層が二分化している。一つは法人が募集して採用されたプロパー職員。もう一つは県(市)から派遣された出向職員である。当然だが県(市)から法人へ事業が移管された直後は激変緩和措置として現場にも元々その施設に勤務していた職員が出向として残る。

2013-12-18 06:55:01
Saussure @mamiyac330

そして現場の職員からプロパー職員に徐々に入れ替わり、管理職も次第にプロパー職員に入れ替わって行く。ただし、多くの場合、法人トップは県(市)からの出向者であることが変わることはない。何が起こるか。

2013-12-18 07:00:55
Saussure @mamiyac330

事業の内容の決定権は県(市)が「事業の公的使命を鑑み」という名目でがっちり握っている。プロパー職員が現場のニーズを汲み取り、フレキシブルに事業を展開することは不可能に等しい。実現化しようにもステイクスホルダーの多さと役所仕事の遅さ、担当者の異動で頓挫することも多い。

2013-12-18 07:08:20
Saussure @mamiyac330

事業の決定権は県(市)が握っていて、現場の意見は反映されない。逆に県(市)の意向であれば利用者のニーズに関係ない事業であろうと引き受けざるを得ない(都合の良いゴミ箱みたいに)。しかも、指定管理者制度の下、五年毎に県(市)から指定を勝ち取らなければ事業を失ってしまうのである。

2013-12-18 07:21:08
Saussure @mamiyac330

事業の決定権を持たない法人(事業団)の不人気職場に不本意配属された職員。しかも将来に活かせる汎用性の高い職業上のスキルを身に付けられない、と職員が思っていたら。そうだとしたら暴行事件は職員の資質に押し付ける訳にはいかないのは必定である。

2013-12-18 07:34:47
Saussure @mamiyac330

社会福祉法人における指定管理制度の問題について、少数ではあるが共感を得られたことは心強い限りである。福祉業界に市場原理、競争原理を導入し事業を運営する法人を広く募り、運営計画を審査して管理者に指定することで利用者の便益は向上する筈だった。

2013-12-19 06:55:18
Saussure @mamiyac330

しかし、現状は指定管理を勝ち取ることが自己目的化してきている。事業者が利用者の方に向いていない。正に本末転倒である。しかも指定の取り消しをちらつかされれば利用者のニーズとはかけ離れた事業を引き受けざるを得ないのである。

2013-12-19 07:00:35
Saussure @mamiyac330

福祉事業に関わらず、基礎的社会資本、医療、教育もそうだが市場原理には馴染まない。基礎的社会資本が市場原理に曝される時、人間が壊れるのである。

2013-12-19 07:06:58