「スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー」#5 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説
- USAGI_koTENGU
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サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より。
2013-12-27 22:49:58(前回までのあらすじ)(近未来都市の闇にうごめく存在、ニンジャ。戦いに生き、欲望に死ぬさだめの魔人が赤子を養う……まるで二律背反めいた状況を歩む二人のニンジャ、イグナイトとアンバサダーは、遂に彼らが養育する赤子を狙う存在、ストーンコールドの根城を突き止めた)
2013-12-27 22:51:47(しかし、彼らには赤子の未来が気にかかる……果たして、イグナイトはストーンコールドを倒すため、赤子をアンバサダーに預けた。一方アンバサダーは、赤子を託すべく孤児院を訊ねる。その頃、狂気のニンジャは一体……?前代未聞のニンジャ&ベビー・ストーリー、続きはここから!)
2013-12-27 22:52:41「恐いか」アンバサダーは問うた。「うッせェ」イグナイトが応える。いつもの減らず口。しかし視線を合わせぬ。炎のような赤い瞳を縁る長いまつげが震える。そこにアンバサダーは怯えを見た。「では……いくぞ」「おう……」二人の距離が縮まった。イグナイトが目を閉じた。 1
2013-12-27 22:54:20「ダア!」アンバサダーの腕の中、彼の装束の飾りをいじっていた赤子が、それ離してイグナイトを見た。「ダア!ダア!」小さな手を、邪悪ドラゴンの鼻息めいて赤いイグナイトの前髪に伸ばす。「どこだ」「ここだ。手を伸ばせ」おずおずと差し伸べられる手に、腕の中の温もりを託す。 2
2013-12-27 22:56:30「ダア!」赤子はイグナイトの両手に尻を預けるや、その胸にすがりつき、肩に手をかけた。「やッ、やッぱやめ!」「そうは行かぬ。落とすぞ」「チッ……」イグナイトは目を開け、赤子を見た。二者の目があった。「ダア!」赤子が手をのばす!その小さな指がイグナイトの顔に迫る!「ウオッ!」 3
2013-12-27 22:58:17身を引くイグナイトの体がバランスを崩す!アブナイ!アンバサダーは咄嗟に腕を伸ばし、イグナイトを抱き寄せた。二人の体に挟まれ、赤子が安定する。「ダア!」片手でイグナイトの鼻を押しのけ、もう片方の手を前髪に伸ばす。「イテッ!」「離すなよ!」釘を差し、アンバサダーは身を離した。 4
2013-12-27 23:00:08「ダア!」「イテテッ!テメッ!」「そのまま、そのまま支えていろ。今ミルクを用意する」「おう……オイ」「なんだ」「ど、どうすりゃいい」「どうとは?」「ほらよ、揺すったりとか、そういうの」「こうだ」アンバサダーは身振りで赤子の抱き方を示す。慣れた手つき。 5
2013-12-27 23:02:17「こうか……テメッ、手を離せ!」「ダア!」どうにか赤子を両手にかかえたものの、赤子の手に前髪を引っ張られ、前かがみになるイグナイト。「少しだ、ほんの少しだから」「遅れたら覚えてろよ!」前かがみの姿勢からねめつけるイグナイトに背を向け、アンバサダーはドージョーを出た。 6
2013-12-27 23:04:11……「いくぞ、アンバサダー=サン」呼びかけられ、アンバサダーは目を開いた。隣に立つキモノ姿の美女……彼の部下・フェイタルが艶然と微笑む。緊張を解すべく深呼吸したというのに、また胸が高鳴る。……やはり、慣れない外出と、ニンジャであることを隠さねばならぬ意識がざわつかせるのか。 7
2013-12-27 23:08:12フェイタルは奥ゆかしい歩調で進む。行く手には峨々たる尖塔を有した重厚なゴシック様式のテンプル。ステンドグラスにはジーザスと、その足元に頭を垂れる子どもたちが描かれている。「マンナカ・テンプル」、ネオサイタマ北部に位置する、江戸時代から存在する由緒正しいテンプルである。 8
2013-12-27 23:10:07そして、同時にここはテンプルのボンズたちが経営する孤児院でもある。ネオサイタマの、いや日本中のテンプルがこのような多角経営を行っている。その中でも「マンナカ・テンプル孤児院」はつとに有名だ。資金潤沢、各種のサイバー設備を備え、養子縁組実績も実際多数。 9
2013-12-27 23:12:28アンバサダーは震える両足をそつなく動かし、フェイタルの後に続く。そうしながら、彼はフェイタルの背中越しに、彼女の胸に抱かれ眠る赤子のぬくもりを想起する。あのかしましいぬくもりともオサラバだ。……しかし、そのことが胸に痛みをもたらすのは、なぜか。 10
2013-12-27 23:14:23『……すまんな』前夜、兄・ディプロマットはテレパスでそう言った。『俺がお前のそばに居てやれないばかりに』『いいんだよ、仕方ないことだ』そう答えつつ、しかしそれが本心でないことが理解されていることを知るアンバサダー。この双子のニンジャは、互いの心を己のものとすることができる。 11
2013-12-27 23:16:08『俺達にはなすべきことがある。師父の温情に報い、その上で、俺達のカタキを探さねばならぬのだ』『そうだね』『そのために、俺達は離れなければならない……とはいえ、そのためにお前を独りにするのは』『仕方ないことさ。それに僕は独りじゃない』『お前がそれを理解していれば充分だ……』 12
2013-12-27 23:18:17兄のテレパスがさざなみのようにアンバサダーを包み、胸の痛みを優しく癒やそうとする。しかし、そうすればするほど……彼は心の奥底を厳重にシールドする。兄もそれを理解している。……彼には兄が孤独な夜をどう過ごしているかを知っている。その無言のぬくもりを、アンバサダーは持たない。 13
2013-12-27 23:20:53彼が身を置くネオサイタマは実際戦場。双子が所属する暗黒ニンジャ組織ザイバツ・シャドーギルドの敵、ソウカイ・シンジケートは滅びた。だがソウカイヤの首魁ラオモト・カンの遺児チバを擁立し、アマクダリ・セクトと名乗る集団が現れた。さらに……彼らニンジャを無差別に殺す死神も跋扈する。 14
2013-12-27 23:22:16