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@mkvet
獣医学を学んでいると、必ず解剖学実習を履修することになる。学部学生だったわたしは、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、トリ、ウシ、ブタ、ウマの解剖を経験した。
2014-01-05 00:31:56
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@mkvet
ウマはJRAからの寄付だった。立派な鹿毛だった。珍しく、牧場には雪が積もっていた。教官がウマに麻酔注射してすぐ、ウマはいなないて転倒した。切られた頸動脈から流れ出た血液が雪を赤く染めた。
2014-01-05 00:35:43
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@mkvet
亡くなったウマのなきがらを、わたしたち学生はすみからすみまで切り刻んだ。腹腔内でとぐろをまいた盲腸がものすごく長かった。
2014-01-05 00:37:31
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@mkvet
実習後、なきがらを食べることができると教官から聞いた。肉を切り取って持ち帰ってもいいと許可を得て、もも肉を少々頂戴した。
2014-01-05 00:39:18
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@mkvet
少々のつもりだったが、いざ持ち帰ってみたら大量だった。「馬肉をつまみながら呑まないか」と友人数人を誘った。皆喜んで集まってきた。
2014-01-05 00:40:54
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@mkvet
てんでんに持ち寄った酒を飲み、馬肉を食べていると、ある友人がわたしに尋ねた。「このウマはどうした?」 「実習でウマの解剖を学んだ」 「そのウマはどこから来た?」 「JRAだ」 ゆうじんはしばらくおし黙った。
2014-01-05 00:42:42
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@mkvet
そしてぽつりと言った。 「JRAが本学にウマを寄付したということは知っている。引退したウマの予後は必ずしかるべき雑誌や報告に記述されるから」 「へえ、そうなのか」 「そして、今年本学に寄付されたウマは一頭だ。名前は○○という。一勝した」
2014-01-05 00:45:10
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@mkvet
友人は続けた。 「競馬が好きだ。馬券は買わないが、レースを観に行くこともある。このウマがそのウマなら、ぼくは勝つところを見た」 「......そうか」 居合わせた皆、しばらく黙って呑み続けた。
2014-01-05 00:47:28