【第一部-玖】誰かを見つめる時雨と能代と阿賀野 #見つめる時雨

能代×阿賀野
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…能代、僕ね、あの後阿賀野に会ったんだ。そして…聞いたんだよ、曳航のこと」 「……え?」 能代が涙を滲ませた瞳で僕を見た。 「阿賀野は…能代のこと、恨んでなんかいないよ」

2014-01-13 09:15:10
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「え…?本当なの…?阿賀野姉…そう言ったの…?」 「うん、そう言ったよ。阿賀野は能代のこと、恨んでなんかしてない。むしろ、能代がそう思ってることにシャックを受けてたよ…」 能代の顔が歪み、再び顔を手で覆った。能代の掠れた泣き声が、部屋に響く。

2014-01-13 09:20:11
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僕は能代を抱きしめ、背中を擦った。 「…もういいんだよ、能代。キミを縛っていたのは、キミ自身だったんだ。だから、自分のことを許してあげて」 能代は手を僕の背中に回し、僕の胸で…壊れたように泣いた。

2014-01-13 09:25:09
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しばらくして能代の声が落ち着いてきた。それを見計らって、能代に声をかける。 「…能代、阿賀野が多分、あとでここに来ると思うんだ。そこで、誤解を解くんだ」 「え…誤解…」 「能代の阿賀野への気持ち、伝えるんだ」

2014-01-13 09:30:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「え…え?…え?」 能代が狼狽える。 「能代は、阿賀野に離れて欲しくないんでしょ?阿賀野は、能代が自分ではない誰かを好きだと思ってるから、自立しようと頑張ってるんだ。それを繋ぎ止めるには、能代の気持ちを伝えるしかないよ」

2014-01-13 09:35:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕は部屋を出た。多分、これで僕に出来ることは全てやったと思う。あとは、能代、そして阿賀野次第……。でも、悪い方向には転ばないと思うんだ。…そう思いたい。 ……頑張って、能代。

2014-01-13 09:40:11

能代視点

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……良かった…熱は下がったみたい…。

2014-01-13 21:39:32
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

矢矧が、阿賀野姉は22:00に来るって言ってた…あと十五分…

2014-01-13 21:46:05
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

はぁ…本当、私ってダメね…。あの後、矢矧にも怒られちゃった…。「後悔の念に囚われすぎてちゃダメ。未来を見なさい」って。これじゃ、どっちがお姉ちゃんかわからないね。…うん、ありがと、矢矧。

2014-01-13 21:50:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

時雨も巻き込んじゃって本当にごめん…。こんなんじゃ神通さんにも呆れられちゃうよね…でも、おかげで整理がついたわ。時雨も、ありがとう。

2014-01-13 21:55:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

扉をノックする音が聞こえてきた。 「能代…入るね?」 阿賀野姉が、不安そうな顔をしながら部屋に入ってきた。…私は、阿賀野姉にこんな顔させちゃって…

2014-01-13 22:00:26
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「能代、起き上がって大丈夫なの?無理しなくていいよ」 阿賀野姉がベッドの横に椅子を置いて、そこに座った。どうしよう…いざとなると目を合わせられない…。本当は許してくれてなかったら……そんな声が頭を反響する。 「……能代」

2014-01-13 22:05:10
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頬に温かくて、柔らかいものが触れた。え…?私、阿賀野姉に抱きしめられて… 「…ごめんね。ずっと一人で抱え込ませちゃって…。大丈夫だよ、能代。阿賀野は、能代のこと、大好きだからね」 私の中の、はち切れそうになっていたものが、音をたてて千切れた。

2014-01-13 22:10:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

私は何度も謝った。阿賀野姉はそんな私をずっと抱いててくれた。頭を撫でてくれた。すごく温かくて、柔らかかった。 今なら言えるかな。言ってもいいのかな。でも…もし阿賀野姉に好きな人がいたらどうしよう。私は、阿賀野姉との未来が欲しい…。ずっと阿賀野姉の傍にいたい…。阿賀野姉…

2014-01-13 22:15:09
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「…阿賀野姉…その、聞いて欲しいことがあるの…」 「ん?なぁに?能代。いいよ、何でも聞いてあげる」 「阿賀野姉…私ね、阿賀野姉のこと…好き、なの…」 ……言えた。言えたよ、私……。

2014-01-13 22:20:12
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「うん、さっきも言ったでしょ?阿賀野も能代のこと、大好きだよ」 ……え?何かニュアンスが違って聞こえるんだけど…もしかして、また勘違いされてる…!? 「阿賀野姉、そうじゃなくて…」 「ん?なぁに?能代」 「私この前、好きな人いるって…いったでしょ?」 「……?」

2014-01-13 22:25:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

阿賀野姉が目を丸くさせながら私を見ている。…もう、本当にわからないの!? 私は半ば逆ギレしていた。 「いい!?私はね、こういう意味で阿賀野姉が好きなの!!」 私は阿賀野姉の頬に手を当てた。 「え?の、能代……?」 そして、勢い任せに…唇を重ねた。

2014-01-13 22:30:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……ん……」 私はゆっくりと唇を離した…。や、やっちゃった…私、阿賀野姉と…。 「……え?」 阿賀野姉は何が起こったかわからないといったような顔をしていた。もう…しっかりしてよ…。 「だから…こういう意味で、好きなの…阿賀野姉…」 私は阿賀野姉の胸に、顔を埋めた。

2014-01-13 22:35:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「阿賀野姉って…好きな人、いるの?もしかして、迷惑だった…?」 阿賀野姉からの反応がない。…ダメだったのかな、私…。いけない…泣きそう…。 「……えっと…そうじゃないの…能代。そうじゃなくってぇ…」 「え…?」 私は顔を上げて阿賀野姉を見た。

2014-01-13 22:40:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

阿賀野姉の顔が沸騰したように真っ赤になっていた。え?…え? 「…能代が、阿賀野を…?え、どうしよう…すごい…びっくりしたけど…とっても嬉しい…かも」 阿賀野姉が恥ずかしそうに両手で頬を押さえる。そんな阿賀野姉につられて、私の顔も熱くなっていく。 「…能代…お願いがあるの」

2014-01-13 22:45:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「え…?」 阿賀野姉が私の手を持ち、自分の頬に添えさせた。 「能代…もう一回…して?」 …………。 私の中の、さっきとは別のものがはち切れた。 私は阿賀野姉を引き寄せ…また、阿賀野姉のマシュマロのような唇に自分の唇を重ねた。

2014-01-13 22:50:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ん……ふ……」 阿賀野姉の感触を、阿賀野姉の香りを感じる。 私は阿賀野姉の背中に手を回し、思いっきり抱きしめた。 もっと近く、もっとたくさん、阿賀野姉を感じさせて。 「んっ……ふ……ぁ……ん……」 私…今、何度も何度も夢にまで見た阿賀野姉の感触を…感じてる…

2014-01-13 22:55:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ぁ……ふ……んぁ……もう…能代……」 阿賀野姉が私の肩を制して唇を離した。阿賀野姉が顔を真っ赤にして息を荒くしていた。……私も、きっと同じようになってる。 「はぁ…はぁ…ぁ…」 阿賀野姉の目はぼんやりとしていて、涙が滲んでいた…。 「ごめん、阿賀野姉…我慢できない…」

2014-01-13 23:00:16