デス・トラップ、スーサイド・ラップ #5

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【デス・トラップ、スーサイド・ラップ】#5

2014-01-09 21:56:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ)政府を意のままに操る悪のニンジャ組織アマクダリ・セクトの陰謀に導かれ、ネオサイタマ・キョート間で遂に戦争が勃発。ニンジャスレイヤーとともにアマクダリ陰謀を阻止せんとして失敗したサークル・シマナガシのニンジャ達は、ほどなくしてセクトの襲撃を受ける。

2014-01-09 22:01:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地下へ逃れ、取引相手であるバイオニンジャ集団サヴァイヴァー・ドージョーの協力を得たシマナガシのニンジャ達は、ともにネオカブキチョ地域へのエクソダスを開始した。だがしかし、地下にも恐るべき敵あり。INW(イモータル・ニンジャ・ワークショップ)のゾンビー達だ。

2014-01-09 22:03:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

邪悪なる巨大ゾンビー邪神、アクマ・ニンジャの無慈悲攻撃に晒され、サヴァイヴァー・ドージョーのカマイタチは戦死。他の者達も圧倒的な巨大ネクロカラテに壊滅は時間の問題と思われた。だが間一髪。別働隊であったフロッグマンらが濁流攻撃とともに合流。ゾンビー包囲網を押し流し、命をつないだ。

2014-01-09 22:09:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、ゾンビーから逃れれば、今度は再びアマクダリの追手だ。激しい戦闘を繰り返し、逃避行を続ける一同。迷水路にあって、彼らがここまで的確に待ちぶせ攻撃を受け続ける道理はない。逃走経路も次第に敵の思惑通りに歪められつつある。おかしい!その時ルイナーは呟いた。「理解できてきた」と。

2014-01-09 22:14:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「理由は俺だ」「……」彼らは足を止め、訝しげにルイナーを振り返った。ルイナーはこめかみを指さした。「多分、居る」「何がだ!」スーサイドは声を荒らげた。フィルギアが手で制した。「居るッてのは」「ジツを喰らってる。まだ影響下だったんだ。ウカツだ。離れて感覚が無くなったからよ……」1

2014-01-09 22:20:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さっき話したソフトマインドって奴?」「ああ。俺に、ついて来ていやがる。最初はテレパスか何かだと思った。ずっと話しかけてきた。ナメたクチをきいてきやがるだけの、おかしな奴だ。きっとその時、ジツは完成していたんだ」「聞き捨てならんぞ」フォレストが言った。「貴様自体が発信機と?」 2

2014-01-09 22:27:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「敵、全滅」セントールとファーリーマンが息を弾ませて戻ってきた。「停滞、良クナイ。急ガネバ」「ゴチャゴチャうるせえ!取り込み中だ!」アナイアレイターが叫んだ。そしてフォレストに一歩踏み出した。「テメェ、何が言いてェんだ、オイ」「……」ルイナーが手で制した。そして頷いた。 3

2014-01-09 22:34:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー」フィルギアは肩を竦めた。諦めたように頷き返した。「アァ?」アナイアレイターの金色の目が剣呑に光った。バシバシと音を立て、振り上げた腕に新たな鉄条網が巻き付いた。フィルギアはサングラスを外し、言い放った。「しょうがねェ」「……」アナイアレイターはフィルギアの目を見た。4

2014-01-09 22:38:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アナイアレイターの腕から鉄条網がほどけた。腕をおろし、水を蹴った。「そいつ見とけ。スーサイド」「ああ」フィルギアはサングラスをくるくると弄びながら、フォレストとルイナーを見た。「俺ら、こういう時の覚悟はできてる」「そういう事だ」とルイナー。彼は目配せした。次の分岐路で別れる。5

2014-01-09 22:45:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

01000101……ソフトマインドは内心、せせら笑う。ルイナーは部隊の逃走方向を偽るべく、ただ一人離脱するというわけだ。だが……ヒズキ・ジツは発信機などという生ぬるいものではないのだ。ソフトマインドはルイナーの視覚、聴覚に相乗りしている。先程の会話は全てが筒抜けであった。 6

2014-01-09 22:51:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今この瞬間も、ルイナーのニューロンに声を送り撹乱する事は可能だ。だが今はその時ではない。ソフトマインドはジツの気配を引き続き殺す。現在、ルイナーに相乗りする視界と、やや離れた地点を移動するソフトマインド自身の視界が、二重に重なり合っている。彼はIRC通信を行い、本隊に指示する。7

2014-01-09 22:56:18
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010010001……分岐路において、ルイナーは他の者達に最後のアイサツをかわした。フロッグマンが進み出、マキモノを渡す。迷水路の地図だ。ルイナーは踵を返し、もはや振り返りはしない。迷水路を歩き進む。やがて走り出す。もはや使い物にならぬ負傷した腕を押さえ、他の者から遠く、遠く。8

2014-01-09 23:10:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

壁には「44」「益々」等の標識ショドーのペイント、水際に等間隔のごく僅かなLEDライト、ルイナーのニンジャ暗視力をもってしても、そう遠くまでは見通せない。ルイナーは走る。彼は思い出していた。シナキ・ストリートの高架下の逃走。追手はサンダーファング・ヤクザクラン。ありふれた一夜。9

2014-01-09 23:29:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当時、ルイナー達は調子に乗っていた。絶頂だった。ルイナーはニンジャであり、ヤクザはモータルで、カモだった。サンダーファングの連中の上前を跳ねたのも、調子に乗っていたからだ。そのオヤブンがニンジャでなければその後も……もう数週間、数ヶ月……調子に乗り続けることができただろう。10

2014-01-09 23:37:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

高架下の逃走は失敗に終わった。闇の先にはヤクザバリケードとサンダーファングのオヤブンが待っていた……。今回はどうだろう。その点、恐ろしさはない。ルイナーは逃げるために走っているのではない。逃がすためだ。行き先は廃線路……廃ステーション「コモドマ」。 11

2014-01-09 23:50:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

見えた。廃線路からホームへ上がり、「拷問」「金が全て」「ワンクスタ」「スラムダンク」等のショドー・グラフィティに満たされた壁に手をつき、破壊された改札を抜け、廃地下ショッピングモールに出た。ルイナーは「楽しいワインのパーティは」の色褪せた広告ポスターの横で立ち止まった。12

2014-01-09 23:54:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シュルシュルシュルシュル……微細で奇怪なモーター音。一つ、また一つ、徐々に近づいてくるのを、彼のニンジャ聴覚が捉える。そして拍手。足音。「ドーモ、オツカレサマドーモ」ソフトマインドが拍手しながら現れた。「餌にかかった魚が少なくて申し訳ない……全ての努力は無駄……犠牲も無駄」13

2014-01-10 00:00:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シュルシュルシュルシュルシュル……「イヤーッ!」ルイナーは跳んだ。KBAM!一瞬後、彼の足元で爆発が起こった。「グワーッ!」ルイナーは衝撃波によって吹き飛ばされ、柱に叩きつけられた。一瞬の閃光を透かして、ルイナーのニンジャ視力は、甲虫めいた金属塊が炸裂するのを捉えていた。 14

2014-01-10 00:06:39
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シュルルルル……片腕で身体を支えたルイナーのもとへ別の接近音。ルイナーは横へ転がる。KBAM!「グワーッ!」回避が間に合わない!彼は跳ね飛ばされて床に倒れ込んだ。「アイサツする前に死んでしまうのではないか?」ソフトマインドが笑った。「囮の役にも立たぬ弱敵……」 15

2014-01-10 00:09:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ルイナーは頭を振って起き上がる。背後に気配。闇を透かして見ようとする。不自然な輪郭。ステルス装束か。「ドーモ」その方向からアイサツが聴こえた。シュルルル「ダートボムズです」「イヤーッ!」ルイナーは側転回避を試みる。柱の陰から甲虫めいた爆弾が飛び出す!KBAM!「グワーッ!」16

2014-01-10 00:15:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

まだ早い。死ぬにはまだ早い。時間を稼ぐ必要がある。ルイナーはチャントじみてニューロンに反芻する。死ぬまで走れ。死ぬまで走れ。死ぬまで後何周走れる。まだ早い。シュルルルル……KBAM!「グワーッ!」「然り、お前が無い知恵絞って誘導できたのは僅か二名」ソフトマインドの声が飛んだ。17

2014-01-10 00:23:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「セクトの部隊は既にお前ら主力部隊の包囲を終えている頃よ。サンズリバーで先に待て」ソフトマインドが肩を揺らして笑う。彼は決して届かぬ距離を維持している。だがその声はルイナーのニューロンに直接届くのだ。「これが、近づきカラテを当てるしか能のないサンシタに対するフーリンカザンだ」18

2014-01-10 00:28:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ルイナーは片腕をだらりと垂らし、片腕でデスパレートなカラテを構える。ダートボムズのステルス装束が柱の陰から別の柱の陰へと渡る。決して届かぬ距離だ。ルイナーは目を細めた。「ウヌッ?」柱の陰で、ダートボムズの訝しむ声が発せられた。「何……アバーッ!?」そして鮮血が噴き出す音! 19

2014-01-10 00:32:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何でこんなところにトラバ!」喚きながら、柱の陰からダートボムズの身体がはみ出し、床に倒れ込んだ。「トラバサミ!ヒューッヒューッ」ダートボムズは激しく痙攣し、喉のあたりから鮮血と、笛めいた音を迸らせる。「……」柱の影が膨らみ、虚ろな熱を帯びた眼光が瞬いた。そして消えた。 20

2014-01-10 00:35:50
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