私たちがあきらめたことは何か?(宮澤信二郎)(都知事選を前に)
雑誌「法政」2013年11月号に、経営学部の宮澤信二郎准教授による「私たちがあきらめたことは何か?」という1ページのエッセイが掲載されている。オリンピック開催のために費用を使うことは、他のなにかをあきらめなければならないことを意味しており、その双方を視野に入れるべきだという主張。
2014-01-14 13:50:50宮澤1:経済学の入門的な教科書にハーバード大学のマンキュー教授による"Principles of Economics"という世界中で使われている教科書がある。
2014-01-14 13:59:09宮澤2:この教科書には経済学における10の原理というものが提示されているが、その1番目が「人々はトレード・オフに直面している」というものである。
2014-01-14 13:37:05宮澤3:トレード・オフとは「何かを得ようとすれば他のものをあきらめなければいけないというような関係のことであるから、マンキュー教授も説明している通り、これは上記の格言の内容と一致する。
2014-01-14 13:37:46宮澤4:世の中にある資源には限りがあるため、それをある目的のために使うと他の目的のためには使えない。このため、何かを得ようとすれば他の目的のためには使えない。
2014-01-14 13:39:19宮澤6:2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、協議関連施設等が整備され、開催時には、観戦に訪れた人々に対して交通機関や宿泊施設が提供される。
2014-01-14 13:40:17宮澤8:しかし、東京でオリンピック・パラリンピックを開催しなければ、物的資源や人的資源を別の目的で用いて別の便益を生み出すことができたのである。
2014-01-14 13:41:21宮澤9:このように考えると、オリンピック・パラリンピックを開催することの費用には、招致活動に要した金銭的な費用だけではなく、開催のために要する物的・人的資源を別の目的で用いたときに生み出される便益をあきらめるという費用も含まれるのである。
2014-01-14 13:42:22宮澤11:この点に関して、マンキュー教授の教科書の2番目の原理は「あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である」というものである。
2014-01-14 13:43:26宮澤12:私は東京でのオリンピック・パラリンピック開催が望ましくないと言いたいわけではない。望ましいか否かを判断しようにも、便益に関する情報はあふれていたのに対して、費用、特に機会費用に関する情報が不足していて判断をしようがないのである。
2014-01-14 13:44:18宮澤14:同時に、私たちは、機会費用を考慮した上で、費用・便益の両面から検討する必要があるということを肝に銘じなければならない。(引用終わり)
2014-01-14 13:45:35