茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1143回【バカ話は、身体を張ってこそ】連続ツイート

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第１１４３回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日武安弘毅（@koukitakeyasu）と喋っていて、思ったこと。

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ばか（１）北海道出身で、沖縄在住のカメラマン、武安弘毅（@koukitakeyasu）としゃべっていた時のこと。食べものの話になって、そういえば、ジンギスカンの羊肉はおいしいけど、内地の人は昔は臭いといって食べない人も多かった、と言ったら、いやあ、北海道でも昔は臭かったとさ。

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ばか（２）それで、「そういえば、沖縄ではヤギ食べるよね」と言ったら、武安弘毅が、伝説のヤギ汁の店を教えてくれた。「山の中にあってね、看板もなにもないのよ。ただ、犬が三匹見えるだけなのさ。昔はとっちゃんが裏でつぶしていたんだけど、その時は、母ちゃん一人でやっていたのさ。」

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ばか（３）コーキの話は続く「それで、私と、東京から来た三人で食べに行ったら、母ちゃん、テレビを見たまま、何にもしてくれないのさ。あの〜と言ったら、あんたらないちゃーだろう、ないちゃーは、せっかくつくっても残すからイヤダ、と言うから、いや残さない、と言ったのさ」

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ばか（４）それで、「残さない！」と断言して母ちゃんがつくってくれたヤギ汁が、４人分どーんと出た。そしたら、コーキいわく、母ちゃんの包丁の入れ方が適当で、「これは右心室か」とか、何切れかまとめたら胃が再現できるとか、雑巾みたいな部位が入っているとか、とにかくドカーンとしたものだった

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ばか（５）４人のうちの一人は、ヤギ汁初心者で、いきなりそんなもん出されて、だけど、「残さない」と言った手前、全部食べるしかなく、４人で必死になって食べた、という話が、妙においしそうでもあり、また、バカ話はこうでなければならない、という見本のようなものだと私は思った。

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ばか（６）バカ話が面白いのは、話し手／経験した人が、身体を張っている時に限る。「お前、そんな無謀な」という話が一番面白い。それで、今朝、とまりんのホテルの窓から出ていく船を見ていて思い出したのだけれども、以前、船に乗って久米島に行ったことがある。

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ばか（７）ぼろい民宿に泊まって、朝、はての浜に行くツアーのバスが迎えにきたら、近くの日航か何かの高級ホテルに宿泊していたきゃぴきゃぴの人たちばかりで、ぼくはそこにぼろい格好で乗っていった。それで、はての浜に行って、一日中泳いでいたら、夜になって地獄が待っていた。

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ばか（８）ちょうど、ワールドカップのフランス大会で、日本が最後のなんとかと試合をしている夜で、民宿の小さなテレビで試合を見ながら、日焼け（というかやけど？）の苦しみに悶絶していた。日焼け止めなんとかを塗っていなかったからかもしれない。季節は、６月か７月であった。

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ばか（９）ふり返ると、高級ホテルから回ってきたバスに民宿からぼろい格好で乗っていった瞬間から、もう出オチというか、全体としてバカだったと思うのだが、自分の身体を張っているバカ話は、時が経つと不思議な味わいが出てくる。ヤギ汁の武安弘毅も、同じ感じだったのだろう。

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以上、連続ツイート第１１４３回「バカ話は、身体を張ってこそ」でした。