♭7 協奏曲 ♪ NO perfect One gOes 前編
- hosidukuyo
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~2010年1月~ 「頼む!七橋!今年のアクトボットに一緒に参加してくれ!」 裕岐に誘われて久々に隣家、七橋家を訪れた勇矢は土下座して、こう頼んだ。 「……俺で良いんだな?…分かった!出る!」 裕岐は即決した。 ~~~~~~~~~~~~~~
2014-01-16 11:25:29ミストルティン編 第十八話 壊縁 ♪ ~ホワイトのショータイム~インディヴィジュアリスツ・エイム~ ♭7 協奏曲 ♪ NO perfect One gOes 専用タグ #evlst
2014-01-16 11:30:29「僕にアクトボットに出て欲しいって?」 「取り分は、賞金から経費を引いた残りの1/4でどうだ?えっと…み、緑川…」 「子安!子安星護だよ…浅空ユウヤ君」 ここはゲーム研究部室。今日は彼等3人のみ。勇矢は裕岐に促され、彼を3人目として引き入れに来た。事前に用件は伝えてある。 1
2014-01-16 11:37:30「僕はこう見えて結構忙しいんだ。君は知らないだろうけど…七橋君は知ってるね?」 「ああ」 星護は将棋やチェス、パズルゲーム、カードゲームなど数々のゲーム大会の優勝経験を持つ。 過去三年で賞金計一千万は稼いでいる。休日の大半は大会に出かけ、平日はその戦略を組む。 2
2014-01-16 11:50:29更には母子家庭で、家事まで手伝っているらしい。下手な社会人より忙しい筈だ。 「アクトボットに出るとなると、開発は君達任せとしても拘束時間が長くなる。ゲーム大会に出られる回数も減る。つまり」 「『休業補償』を寄越せと?」 「賞金額に拘わらず200万ね」 3
2014-01-16 11:59:29「子安!」 法外な要求に裕岐が怒る。今年は優勝を狙う。勇矢はそう裕岐に告げ、予算として500万円を用意した。星護の要求はその半分近い。勇矢が去年の賞金をどう配分し、いくら貯金したのかを裕岐は知らない。だが今年賞金を獲得出来なければ、勇矢は最悪700万円を失ってしまう! 4
2014-01-16 12:10:29「それと、取り分は経費天引き前から1/3ね。端数は…まあ君の分でも良いよ?」 「おい!」 予算500万円は勇矢の金だ。本人の要求通り分配前に彼に戻すのが筋だ。これでは話が違う!そもそも「勇矢が仲間を探している」との情報を持ってきたのは星護だ。 5
2014-01-16 12:20:29「でも君と色々有ったようだから、彼から声を掛けるのは…気まずいんじゃないかな」 そこで裕岐は勇矢を家に誘い、アクトボットの話題を振って勧誘の言葉を引き出した。星護はこの情報提供の対価としてある条件を出してきた。それが「勇矢に星護を誘うように提案する」ことだった。 6
2014-01-16 12:30:29それも星護ではなく、あくまで裕岐の発案として。 (全部!自分が有利な立場で交渉する為か!) 裕岐は拳を握った。だが彼より先に勇矢が動く。 「よし、結城!」 「子安」 「ここは一つ、この…」 勇矢は何処からともなくトランクを取り出す。 「子供のカードゲームで決着を付けよう!」 7
2014-01-16 12:40:29トランクを開くとゲーム板が展開された。チェストカード。駒にカードを装填して進軍させ、駒の勝敗をカードでつけるゲームである。去年発売された。 「なるほど、勝った方の条件で行こうって?…良いのかい?僕は」 「去年の全国大会の優勝者だって?そんなのは負けフラグだろうが…」 8
2014-01-16 12:50:29…二人は契約書を交わした。勝った方の条件で星護はABに参加する。途中で参加を降りられる諸条件、怪我や病気、死亡の場合の対応…など多岐に渡る内容は、9割方記入済みだった。 「ずいぶんしっかり用意してきたみたいだね?」 どうせなら名前もちゃんと覚えて来て欲しかったところだ。 9
2014-01-16 13:00:29去年の星護のデッキや戦闘パターンも分析済みだろう。しかし今のデッキは既に全く違う。弱点も常に対策済み。去年の自分など簡単に倒せる。ゲームに限らず、万事において常に昔の自分を倒せる様に努力している。そうでなければあの幼い母親は守れない。そんな彼の去年を前提とした対策は無意味だ。10
2014-01-16 13:10:29星護は準備を終えると不敵に笑った。すると勇矢も笑い返し、こう言った。 「僕の勝ちだ」 「最初から勝利宣言なんて、それこそ負けフラグだろ?」 「いーや。このゲームの結果は関係ない。もう契約書サインしただろ?」 邪悪な笑みの勇矢。 「!?」 星護は言葉を失う。 11
2014-01-16 13:20:29「君は僕と大会に出なければいけない。ついでに予算額以上の取り分を確保出来た。七橋が『金にこだわる奴』って言ってたからな。半分持ってかれる覚悟はあったから安い買い物だったよ」 「勇!それでもし負けたらどうする気だ!?」 「え?七橋…『実力も確か』って言ったのはお前だろ?」 12
2014-01-16 13:30:29「言ったけどさ…」 「なら優勝は狙える。最悪でも三位は堅い。事故や病気でもなきゃ投資分以上は回収出来る。だろ?」 いっそ呆れた様な表情で勇矢は言った。彼は星護のことは知らなかった。裕岐の人物評と、その評価の基準となる裕岐自身の能力、それだけで星護の実力を判断したのだ。 13
2014-01-16 13:45:29「勇…」 勇矢は疎遠になっても自分に一定の信頼を寄せていた。その事実に裕岐は静かに感激していた。 「……流石、浅空先生の息子だね。良いよ。今その実力とやら、見せてあげるよ」 一方の星護。プライドに火が着いた。二人は駒にカードを装填し、バトルが始まった。 14
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