常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③

島薗進 @Shimazono

0常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』低線量被ばくの健康影響につき山下俊一氏は根拠不明の楽観論を振りまいたhttp://t.co/bJ8qfgEjJ5　がその背後にはＡＢＣＣ（放影研）による原爆被害の評価の危うさという問題がある。以下、常石氏独自の分析。

島薗進 @Shimazono

１常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』76号。「放射線被害調査の基礎データとなっているのがＡＢＣＣが原爆被害から5年後、1950年から取り組んだ疫学調査だ。ＡＢＣＣの調査目的は２つあった。ひとつは前回指摘したように原爆の効果の測定だった。もうひとつは」

島薗進 @Shimazono

２常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③「「核エネルギーの平和的利用にとって、極めて貴重な知見」を得ることだった。こう指摘しているフランシス委員会はＡＢＣＣの活動活性化を目的としてミシガン大学の著名な疫学研究者、Ｔ．フランシス・ジュニアを長として1955年に組織された。

島薗進 @Shimazono

３常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③「米国大統領の「平和のための原子力」演説は1953年末のことだった。その2年後のフランシス委員会の発足は、ＡＢＣＣを核の商業利用に資するデータを準備する組織に変えるための第1歩だった。国連などの国際機関がチェルノブイリ事故の被害の」

島薗進 @Shimazono

４常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』76号「広がりの確定の基礎としているのは、こうした歴史を背負ったＡＢＣＣが公表してきたデータだ。その結果、山下が言うように、国際的にはチェルノブイリの放射線の被害は子供たちの甲状腺ガンのみ、ということになっている」

島薗進 @Shimazono

５常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』76号。「それに懐疑的な菅谷の指摘はすでに見た。また原爆被害者について、近年司法の場で、政府の被ばく認定を覆す判断が相次いで出されている」。「ＡＢＣＣの調査は疫学調査だが、その一番の欠陥は不適切なグループ分けである」

島薗進 @Shimazono

６常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』76号。「疫学調査の成否を決めるのは対象群の選定だた、それが不適切ということは、調査そのものが無効、ということだ。80年代になっての批判はまさにこの点にあった」。シュミッツ＝フォイエルハーケの論文がその口火を切った。

島薗進 @Shimazono

７常石敬一「3・11が破壊…の神話」③「ＡＢＣＣの疫学調査が被ばくから5年後となったのにはいろいろな理由があった」が、それはさておき、「放射線被ばくの疫学調査の場合、被ばく被害の状況に差がない２つのグループについて比較し、被ばくした側にのみ見られる変化、例えば小児甲状腺ガンの」

島薗進 @Shimazono

８常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③「発生があれば、その原因は被曝にある、と結論される。被ばくから5年後、どうしたらそうした比較対照できるグループ分けが可能だろうか。このときまだ手帳は制度化されていない。市内で直接被ばくした人のグループに対応する集団を同じ」

島薗進 @Shimazono

９常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③『神奈川大学評論』76号。「バックグラウンドを持つ人とすると、同じ市内で爆心地から遠くにいた人となるが、それは原爆による放射線被害の疫学調査の対象群となるのだろうか」。実際には、爆心地から２．５km以上離れた地域の居住者＝対照群１と

島薗進 @Shimazono

１０常石敬一「3・11が破壊…ふたつの神話」③被ばく以降の転入者等＝対照群２を比較対象とした。「被ばく者の被ばく量さえ推定値でしかない」「対照群１や２は対象群となり得るのだろうか。被ばく者と対照群２とでは環境が違いすぎる。対照群１の人々の被ばくはゼロとは考えられず、広島・長崎の」

島薗進 @Shimazono

１１常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③「黒い雨が降ったような一定の地域に住んでいた場合、知らない間に内部被ばくを多く受けている。被ばく者と対照群１との比較では高線量被ばく者と低線量被ばく者との間の疫学調査となり、他方対照群２との比較では参考廷後のデータが得られるだけで」

島薗進 @Shimazono

１２常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③「疫学調査としては意味を持たない。ほぼ5年後に本格的な調査が始まったチェルノブイリの放射線被害者の調査が、疫学調査の条件を満たしていないとＵＮＳＣＥＡＲは批判しているが、同じ批判はＡＢＣＣの調査にも向けられなければならない」。

島薗進 @Shimazono

１３常石敬一「3・11が破壊したふたつの神話」③この後、常石氏は原爆被災者の内、最初の5年間に死亡した人が考慮されていないという問題について述べていく。広島・長崎もチェルノブイリも最初の5年間が空白だ。福島では希望的観測を排し、その間の医療ケアを徹底するべきだという。（続）