ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/10/22

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い短い物語です。 過去のまとめ http://togetter.com/id/laybacks
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@mia_lemoria

「シャーベットひとつ、レモンとラムネのダブルで。トッピングにアラザンとアンゼリカ。」店員はにこりと笑い、シトリンとアクアマリンをアイスディッシャーで削り取る。薄っぺらなコーンに盛られた黄色と青の石片に、銀と緑のガラス粉をまぶす。煌めく、透明な嘘を齧るのだ。 #twnovel

2010-10-22 00:08:44
soundsea @soundsea

昼の教室で机の上を片付けてから広げるのは一冊の便箋だ。定型文としての冒頭だけを書いては手が止まる。書きたいことは決まっていて、文章さえも何度も何度も頭の中で繰り返しているのにただ手だけが動かない。そして今日も何もかけないままチャイムが響き、彼女は紙を一枚破いた。 #twnovel

2010-10-22 00:19:03
ひょろ @hyoro4779

『現代千一夜』 #twnovel 「じゃあ、私は貴方のために千一夜物語を語ってあげる」作家だった女が夫のプロポーズに返した言葉。毎晩一話ずつの寝物語。だが肝心の千一夜目にしてネタが尽きた。女は仕方なくtwitterを立ち上げ検索ワードを入れる。ワードはもちろん”#twnovel

2010-10-22 00:20:54
ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 鉄の国では雨はとても危険な存在だ。鉄の鳥は屋根のある所に身を隠す。体が雨に濡れてサビないようにする為だ。雨宿りしている鉄の鳥が下を見下ろすと鉄の犬が雨の中を歩いている。サビるぞ。鉄の鳥は胸の中で思ったが、仲間の鉄の鳥が教えてくれた。あいつはステンレス犬だと。

2010-10-22 00:25:34
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 美術部を引退する際、後輩達から寄せ書きの絵画版、「寄せ絵」を貰った。一枚のカンバスに各々の笑顔が描かれている。隙間には美術室の風景や私の横顔が見えた。一部空白があるのは、長期入院している後輩の分だった。空白は二年後、美大で再び私の後輩となった彼が埋めてくれた。

2010-10-22 00:48:29
ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 夜の砂浜に私はいた。懐中電灯を手に持ちながら目的であるあのシーンを求めて歩いている。しばらく歩いていると、暗闇の中で女性の声で呼び止められた。「ここから先は立ち入り禁止区域になります」20XX年動物プライバシー保護案が可決されて海亀の産卵は見ることができない。

2010-10-22 00:59:53
layback @laybacks

引っ越したばかりの部屋で缶ビールを開ける。ニュースが始まったのでTVのボリュームを上げた途端。壁ドンされた。さすが安アパート。壁が薄い。寝る前にシャワーを浴びていると今度は排水口から手が出てきた。「あのぉ、石けん貸してもらえません?」さすが安アパート。床も薄い。 #twnovel

2010-10-22 01:44:20
はたなか茶 @cha_hatanaka

10の言葉に2つの嘘を混ぜるのが良いらしい。そこで他愛ない嘘をひとつ。重大な嘘をひとつ。他愛ない真実と渾身の真実を、沢山。素直なばかりの男にはどれも見分けがつくまいよ。ほら、貴方の表情。どれに傷つきどれに感動したか。愚かなばかりの私にはどれも見分けがつかないよ。 #twnovel

2010-10-22 03:55:42
伊久新之助(いくしんのすけ)@GooglePlusRefugee @nattosansai

#twnovel 僕は長靴を履いて釣りに来ているポーランド人を見つけて声をかけた。「何を釣りに来ているんですか?」「長靴さ。今履いてる長靴の片方には、魚を入れるんで、履いて帰る分を釣らないと」すると、長靴が釣れた。「クソッ、左足じゃないか!」彼は釣り上げた長靴を海に投げ捨てた。

2010-10-22 04:30:38
雨之森散策 @t_amamori

昔の彼女と偶然街で再会した。傍らには小さな女の子。もしかして―と言いかけると「これはもう一人の私なの」と笑う。「私が付き添ってもう一度人生を変えてゆくのよ」そう言うともう一人の彼女と示し合せたように笑った。「あなたもでしょ?」すると僕の隣の老人が赤面して頷いた。 #twnovel

2010-10-22 04:47:03
浅葉積木 @tsumiki_a

水分を与えすぎると根が腐るというので、水やりをできるだけ控えた。熱い夏をなんとか越えたとホッとしたのもつかの間、いきなり寒くなった秋のせいで成ったばかりの実が朽ちて落ちた。あの人に注がれる時期を逸した水分が、私の中にあふれて目から零れた。 #twnovel

2010-10-22 07:13:09
@K_Ichida

#twnovel 夫と息子の様子がおかしい。夫は毎日深夜にこっそりと息子の部屋にしのんでゆく。様子をうかがっていると、あえぎ声や「父さん、そこだめ」という声がする。禁断の関係だ。いけない。私は思わず、息子の部屋の扉を開けた。するとそこにはエロゲに興じるふたりの姿。

2010-10-22 07:51:51
来戸 述 @kido_novle

#twnovel そのお手伝いロボットは自分を修理することができた。燃料は豊富にあったので、人間なしで生きることができた。最後の人間が死んで人類が滅亡したとき、ロボットは造られてから初めて故障した。ロボットは自分で配線を引き抜いて永遠に停止した。己の存在理由を修理したのだった。

2010-10-22 08:23:57
ゆきみち @yukizzy

灯りの落ちた遊園地で今夜も君とデート。カイロ代わりは缶コーヒー。『やっぱり私といると寒い?』そうじゃない、もう秋だから。『コーヒーが羨ましい、私は君を暖められないのに』変な所に対抗したね。『だって触れられないって寂しいよ…』80年待ってて、僕がそっちに逝くからさ #twnovel

2010-10-22 13:03:07
140字物語 @shortshortshot

三重の鍵で閉じ込めてあるはずの義父が台所にいた。「どうしたの?おじいちゃん」「朝食はまだかのう」「やだ、朝食なら三年前に食べたじゃありませんか」「そうだったかのう」「さあ、お部屋に戻りますよ」食事をやらなくなって数年たつのに一体義父はいつまで生き続けるのだろう。 #twnovel

2010-10-22 14:32:18
@K_Ichida

#twnovel 僕の前を人造人間らしいヤツが歩いている。歩き方がぎこちないから、きっと間違いない。僕は試しに、そいつを車道に突き飛ばしてみた。ロボットなら平気なはずだ。でも、ぐちゃっと血を出してつぶれた。違ってた。次は、もっとロボットっぽい山田くんのおじいさんで試してみよう。

2010-10-22 15:42:47
みもとりも @mimoto_rimo

#twnovel 時間が経っても腐らない、束ねると強靭になる「髪」の不思議な力は人のエネルギーを吸って伸びるからと聞いた。失恋して心が弱っている時、髪を切るのはその為だとも。アタシはロングヘアーのせいで、こんなに泣き虫になったのか。切ろう、アイツの想い出ごとバッサリと。

2010-10-22 16:06:07
@Hiyoko_T

#twnovel 数日続く曇り空を父と娘は仲良く見上げた。「お空青くならないね」「ならないな」「雨降らないね」「降らないな」相槌を打っていた父がふと娘を呼ぶ。「あそこに龍神様がいるよ」指し示す先には、どんより雲に紛れる長大な龍。驚く娘の顔にぽたりと一滴。竜神がつれてきた雨だった。

2010-10-22 16:27:22
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 冬着のポケットに、枯れ草。机に出してみて思い出した。「ぱぱにあげゆ!」葉の数の意味も分からず摘んだ、小さな手いっぱいの白詰草。笑顔をよせて妻と探し、一本だけ見つけた四つ葉だ。朽ちたそれを、今さら押し葉にしてみよう。手からこぼれ落ちる前、確かにあの幸せがあった証。

2010-10-22 19:13:52
たくわん @takuwan_takusan

「ポッケコーン」が発売された。それはポケットの上から叩いて熱化学反応を起こすことでポップコーンを作る商品だった。ブームにまで発展したが、某日デモ隊が爆竹代わりに大量使用したため、販売が中止された。音だけならまだしも、鳥の大群が飛来する事態になったのがまずかった。 #twnovel

2010-10-22 20:19:20
よしのちほ @chiho_yoshino

花瓶の花が枯れてしまった。栄養剤も入れたのに。それなら、と、鉢植えを買ってきた。なのにしばらくしたら、やはり枯らしてしまった。意地になって、今度は花壇を作って種を蒔いた。けれど芽が出ることはなかった。どうしても私はうまく育てられない。花も、恋も。 #twnovel

2010-10-22 20:32:39
渋澤怜 ✍️🐈🎨🪕🇻🇳 @RayShibusawa

「ねえねえママ、なんでお昼はお星様出ないの?」「それはねえ、お空の上にいる神様達が面白いことを言うのは大体夜だからよ」「じゃあママ、お星様が死ぬ前にすごく明るく、真っ赤に光るっていうのは?」「超新星爆発? ああ、あれは、赤ふぁぼの末のふぁぼ死よ」 #twnovel

2010-10-22 21:30:37
しぃとろん @seatoron

「大切にして下さい」瓶の中に小さなカメが入っていた。俺はそいつを家に連れ帰った。餌をよく食べるのに大きくならず、 反対に日に日に小さくなっていく。育て方が悪いのだろうか?いつのまにか、最初にカメを見つけた場所に戻っていた。「誰かにかわいがってもらえよ」瓶を置く。 #twnovel

2010-10-22 22:33:47
添嶋譲 @literaryace

放課後、妹っていいよなぁとヤツはほざくので「なわけあるか。パンツ一枚でいるの見たらゲンナリするぜ」と返す。夢のようだと吠えるのをガン無視した。帰宅。妹はソファで寝ている。ったく、こんなののどこがいいんだか。頭に来たのでソファを蹴っ飛ばす。ヤツはまだ起きない。 #twnovel

2010-10-22 22:40:38