オイランドロイド・アンド・アンドロイド #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

時間は前後する!……イッキ・ウチコワシによる電撃的突破作戦決行の300秒前。過剰労働エンジニアたちが詰める制御室にて。 43

2014-01-26 22:38:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは…?」ユンコは作業チャブに並ぶ美しい腕の数々と、それと向かい合う作業着サラリマンを見た。「シリコン技術者です。ネコネコカワイイの球体関節を、最高級オモチシリコンで覆う。もちろん手作業です。技術が違います。誇りです」ツキヨシ主任が語り、彼女のためだけのツアーを続ける。 44

2014-01-26 22:49:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジジジジ……ジジジジジ……こちらのサラリマンは、制御基盤の一個に対して危険なハンダ付け作業を行っている。防護手袋も換気設備も必要としない。ユンコは驚いた。「彼がメイジンの域にある証拠です。支えています」ツキヨシが誇らしげに言う。静かなるテックの息づかいが制御室を包んでいる。 45

2014-01-26 22:54:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘッドホンを片耳に当て、波形を読む壮年のサラリマン。その横を二人は無言で通り過ぎる。ダンス同期技術者だ。黙々とターンテーブルをスクラッチする彼の左サイバネ義手には、薄れかけたオムラ・メディテックの紋。「ネコネコカワイイ・ジャンプまで10秒!」突如、中央のUNIX班が叫んだ! 46

2014-01-26 23:03:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは驚き、周囲を見渡す。「ネコネコカワイイ・ジャンプまで10秒!」主任も叫ぶ。「ネコチャン!カワイイコ!同期パターン良し!」「誤差!許容範囲内!」「カワイイコ!右膝関節部負荷許容範囲!」「許容範囲!」「システム総じ緑な!」「オームーラ!」「オームーラ!」「オームーラ!」 47

2014-01-26 23:09:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミュージックですかー」「ジャンプ、ダンス、ジャンプ!」大型モニタから歌声が聞こえる。そして「ネコネコカワイイ・ジャンプ成功!誤差0.01秒以下!」「「「「カワイイヤッター!!!」」」」制御室がカンフル剤めいた熱気と拍手に包まれ、サラリマンたちはまた各自の作業へと戻る。 48

2014-01-26 23:13:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「AI自律制御じゃないの?」ユンコが問う。「もちろん自律制御です。だがそれを確実にモニタリングし、備える。これを見て頂きたかった。我々はチームです。一人一人が歯車だ。組み合わさりテック!それは夢です。巨大な機関です。それは巨大な力を生みます」彼の言葉はどこか機械めいていた。 49

2014-01-26 23:21:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

最後に二人は、重箱めいた黒漆塗りの大型記憶装置と、その横にスタンバイ配置されて静かに目を閉じる二体の予備機体の前に立った。「エッ……カワイイ」初めてネコネコカワイイを間近で見たユンコの胸の奥で、マイコ回路が回転する。右目の瞳孔の文字が「家庭用」「医療用」と激しく切り替わる。 50

2014-01-26 23:29:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「小さいでしょう。私はオムラを愛している」主任は言った。「巨大なピストンの駆動。ジェネレーターの唸り。そして破壊力。それら全てを。そして彼女らは、極限まで圧縮された超高密度のテックなのです。密度で言えば原子力空母にも負けないテックと愛社精神が籠っています。つまり強いのです」 51

2014-01-26 23:38:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

巨大モニタの画像は二体を追い続ける。「オムラグループ健在時は、彼女らのボディそのものを十フィート級に大型化し、大規模ライブでの可視性を高める改善案も本社から出されました。しかし、その計画が実行に移される事は無かった」「正解だと思う」ユンコはAI衝動を制御しながら返した。 52

2014-01-26 23:48:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは何故ですか?大型化すれば兵器転用も容易です」主任が問う。「エッ、何故って……そんなの全然、カワイイじゃないから」「……そうです。力のコンセプトが違う。我々もそれを拒んだ。貴女は聡明だ。流石はジャーナリストだ」「誰にでも解る事じゃない?」「時には、そうではないのです」 53

2014-01-26 23:55:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それに可哀相。いいように使われて」「彼女らは気に病みません」「機械の人形だから?」「それも違います」「機械じゃない?人間?」ユンコは己の祖を前に問うた。「違います。人間めいた自我は無い」「じゃあ、何?」「テックの結晶です。厖大な力を生み出す機関です。そして哀しいかな……」 54

2014-01-27 00:04:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私たちには、その力を何に使えば良いのか、今もって解らないのだ。オムラが答えを示すはずだった。だがオムラは我々を、彼女らを、愛してはくれなかった。テックを途切れさせてはならない。そのために我々は制御し、維持する。彼女らの望みは生存だ」主任は狂信者めいて静かに、力強く言った。 55

2014-01-27 00:15:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネコネコカワイイ・ジャンプ成功!誤差0.01秒以下!」「「「「カワイイヤッター!!!」」」」二人を取り残し、制御室は再び熱気に包まれた。手を握り合い目を閉じた二体の待機ドロイドは静かに同期パトスを刻む。「それでも忠誠心は、オムラなの?」「無論、私の忠誠心は永遠にオムラだ」 56

2014-01-27 00:23:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは複雑な気持ちだった。目の前に居るテック救済論者は、まるで機械のようだ。「何て言えばいいか、解らないわ。父さんも、オムラだったから……」「シツレイでなければ、貴女のお父さんの名前は?」「トコロ・スズキ……」「トコロ・スズキ……」主任は疲弊したニューロンでそれを復唱した。57

2014-01-27 00:35:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

過剰労働でニューロンを混濁させた主任は、にわかにはその名前の意味を理解できなかった。二人は制御室の動乱から取り残されていた。「君は、まさか……」主任が何かを言いかける。ブガー!ブガー!ブガー!ブガー!次の瞬間、制御室で無情なるサイレンが鳴り響き、非常ボンボリが回転していた! 58

2014-01-27 00:41:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私たちも以前から抑圧的暗黒メガコーポに対し闘争心を高めていました!」ネコネコカワイイがアジテートを!?制御室に戦慄走る!!「何が起こっていますか!?」「画像解析急げ!」「イッキ・ウチコワシです!」「アイエエエエエ!」「音楽が無限ループバグです!アイエエエエエエ!」 59

2014-01-27 00:48:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!主任!何人かカロウシしました!」「アイエエエエエエ!遠隔強制停止できません!」「アイエエエエエエ!ニンジャがいます!」「……パニック起こすな!予備機体準備!3班と4班来い!ステージから物理強制停止試みる!」スイッチが入ったかのように、主任が指揮を執る! 60

2014-01-27 00:59:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ……!」ユンコのモーター回路が不意に作動し、エンベデッド憎悪がマイコ回路AIを圧倒する!「ニンジャを……許さないです!」彼女は激しい怒りに突き動かされ、主任らと並んで走った!制御系が戦闘用AIに切り替わる!視界がレッドアラートに満ち、ユンコはそれを受け入れる! 61

2014-01-27 01:12:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

煽動は最高潮に達しようとしている!「打倒、暗黒メガコーポ!」「打倒、傀儡政府!」「暴力!破壊!転覆!革命!この着火点たるスタジアムは新時代の革命広場として永遠に人類の歴史に記録されるであろう!」ナムサン!ユンコは、ナンシーは、技術者らは、この大暴動を食い止められるのか!? 62

2014-01-27 01:27:45