亜欄さんのSSまとめ

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紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「そこに隠れているのは誰かな?」 花畑の門に向ってくすりと笑い掛けるが、犯人は出てくる気配がない。空になったスプレー缶を愛おしく眺めながら、遠い昔に出ていった少年を思い浮かべた。【灰の門・4】

2014-02-02 16:13:43

19 盲目の魔法使い

紅藤あらん @alansouki

「なんだろう…これ…」 銀髪の隙間から覗く瞳は固く閉ざされている。魔法使いは倒れている少女の胸に耳を当てると鼓動の音を聴き、素早く担いだ。散らばった紙を纏めると固く閉ざした瞳でその紙を凝視した。 「地図…」【盲目の魔法使い・1】

2014-02-02 16:20:48
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 少女が目を覚ますと同時に聞いたのは自分の情けない腹の音。鼻腔をくすぐるいい匂いにベッドから起きると迷いなく部屋の扉を開けた。 扉の先では銀髪の者が鍋をかき混ぜていた。 「起きた?」【盲目の魔法使い・2】

2014-02-02 16:26:24
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「はい…」 「君って地図作ってるんだね」 嬉々として言われれば頷く顔も火照る。空腹を知ってか…魔法使いはテーブルにスープを…これはスープと言っていいか分からない黒い液体を差し出した。 「見た目は悪いけど、よければ」【盲目の魔法使い・3】

2014-02-02 16:35:37
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 匂いはいいが…少し怖いな… 「あの、目、見えてます?」 「見えてないよー、でもオーラは分かるよ」 くすっと笑った顔は中性的で魔法使いの全貌を掴めなくさせている。このまま狩られるじゃないだろうか、と思ったが空腹には耐えられず一口飲んだ。【盲目の魔法使い・4】

2014-02-02 16:40:59
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「美味しい…」 「良かった」 「あの、オーラって…」 「私、魔法使いだから」 「魔女、じゃなくて?」 「それは秘密」 語尾にハートをつけたような台詞はさらに魔法使いの性別を不明なモノにする。【盲目の魔法使い・5】

2014-02-02 16:52:49
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「いいなぁ私も早く外を見たいな」 にっと笑われた手にあったのは彼女の地図だった。 「目がやっぱり…」 「いや、時期じゃない」 「時期?」 「いつかね、この扉をノックしてくれる者達が現れるのさ。それまで待ってる」【盲目の魔法使い・6】

2014-02-02 16:55:18
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 魔法使いの世界は盛大みたいだ。 固く閉じた世界は誰かと旅している未来を見ているだろう。 「ご馳走様」 空になったスープは彼女の足を外に向かわせるには十分の活力を与えていた。【盲目の魔法使い・7】

2014-02-02 16:58:07

20 螺子

紅藤あらん @alansouki

音がしてぶっ飛んだ部品に彼女はまたか、と溜め息をはいた。いつも最後が上手く組み上がらない。 「もう…何がいけないのよぉ」 投げ出したレンチはコンクリートの床に落ちてどこかへと消えた。【螺子・1】

2014-02-02 17:15:40
紅藤あらん @alansouki

@alansouki これが決まれば、この街はもっと変われるのになぁ… ぼやくが外の雑音は相変わらずだ。スラム街は今日もゴロツキと貧困の巣穴。 「メスを僕が入れてあげたいな」 目の前にはまだ瞳を開かない人工生命体が管を絡ませてその時を待っていた。【螺子・2】

2014-02-02 17:21:00
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「早く目覚めさせてあげるからね、二人でこの街をいいところにしよう」 螺子が一本足りない。それは愛情なのだろうか… 閉じた瞳にキスを落とす。まだ彼女は目を開けない。【螺子・3】

2014-02-02 17:24:36

21 ぬいぐるみの合奏団

紅藤あらん @alansouki

指揮棒を振れば人形達は答えてくれた。どうしてこんなことが出来るのか、それは秘密だ。 拍手の音は気持ちいい。 スポットライトに照らされた彼女の頭部は合奏に合わせて左右に揺れる。【ぬいぐるみの合奏団・1】

2014-02-02 17:29:34
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 楽器を持った人形がぺこっと礼をすると、一際拍手が大きくなった。彼女の出番はサーカス団の中でトリだった。今日も満足して人が帰っていってくれる。 端に控えた団長も彼女の出来に笑顔だった。【ぬいぐるみの合奏団・2】

2014-02-02 17:33:08
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「今度はアルパカも一緒に合奏させてよ!」 「人形しか無理!」 「何で緊張しないのよぉ」 わいわいとはしゃぐ少女三人はいつもの恰好を脱ぎ捨て白んできた空に駆け出した。【ぬいぐるみの合奏団・3】

2014-02-02 17:37:23

22 サーカス

紅藤あらん @alansouki

「紳士熟女の皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」 決まり文句で始まるステージは不敵な笑みを浮かべた青年の背を照らし出した。 ステッキを振るうその手から現れた花を最前に座る少女に渡す。【サーカス・1】

2014-02-02 17:40:58
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「皆様には不思議の世界に誘わせていただきます。宜しければ最後までお付き合いください」 黄色い声が上がった。団長の出番はここまでだが、彼のルックスに集まる女子がたまにいるのだ。彼はその少女にキスを投げ、団員が控えている舞台袖に捌ける。【サーカス・2】

2014-02-02 17:43:56
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「いってらっしゃい」 緊張している少女の肩を叩くと彼女は大きな瞳で団長を見上げた。 今日も成功するだろう。信頼を寄せている団員は確実にやってくれる。 拍手が舞台から聞こえ始めた。【サーカス・3】

2014-02-02 17:47:39

23 刀とペンギン

紅藤あらん @alansouki

「なんだお前、小さい癖にぶつかりやがって…」 「おい、それはわたしのことを言っているのか?」 ぎろりと睨むと男は片眉をあげて凄んだ。こいつ、わたしが弱そうって絡んできたのか? 馬鹿だ… 「お嬢ちゃんよぉ、目上の人間に睨んでんじゃねぇよ」【刀とペンギン・1】

2014-02-02 17:53:50
紅藤あらん @alansouki

@alansouki こういう馬鹿にはお灸をすえた方がいい。 掴みかかってきた腕を避けると、鞘ごと刀を抜き取り鳩尾に突き立てた。 「雑魚だな…」 男は無言で倒れていく。【刀とペンギン・2】

2014-02-02 17:59:33
紅藤あらん @alansouki

@alansouki 「小さいからって絡んでくるんじゃねぇよ…実力を見極めろ馬鹿」 唾を吐き出すように言葉を吐き出す。と、その眉間に皺を寄せた顔が見る見るうちに驚きへと転じていく。ゴロツキの足元に…ふわふわした生き物が歩いていた。【刀とペンギン・3】

2014-02-02 18:07:27
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