完全ノープラン艦これ与太話【ネイビー・アライヴ・インポッシブル】#5

春魔解丼 @vespiking

立ち昇る暁の光に照らし出され、無慈悲なる終末の御使いは今、旭日の御旗を掲げた友軍編隊となって光臨した！爆撃が巨大猫の身体を打ち据え、爆雷が壁這い上がり猫を襲う！長き航海を終え、遣独部隊が帰還した！闇の終末を、暁の勝利を手土産に！ 20

春魔解丼 @vespiking

『ＢＭＯＯＯＯＯ！！！』だが巨大猫は今だ健在である！爆撃を振り払い、両腕で立ち上がりこちらへ向かう！満身創痍の、弾薬尽き果てた司令室へと！アブナイ！ 21

春魔解丼 @vespiking

弾薬尽き果てた？本当にそうか？否、我々は知っている。この圧倒的消耗篭城戦において唯一人、未だ弾一発すら打ち出していない艦が、たった一隻奥歯を噛み締め耐え抜いた最後の戦士が、立っている！鎮守府中央塔の最上部に！暁の光に照らされて！ 22

春魔解丼 @vespiking

「第一次攻撃隊、発艦！」流星改が、烈風が、彗星十二型甲が、そして着艦し弾薬補給を終えたJu87C改が！持ちうる最強の艦載機郡が、巨大猫を、有象無象の小型猫を、世界の歪を焼き尽くす為に今！飛び立った！ 23

春魔解丼 @vespiking

一方中央塔では、暁の光を帯びて発艦した、もうひとつの編隊が奮闘していた。北上の間に合わせ爆雷投射機とは格の違う、対潜水艦用決戦兵器群！オートジャイロ・カ号観測機！水上爆撃機・試製晴嵐！陸海軍の産み出した決戦兵器が空を駆け、壁を這う猫を撃ち落していく！ 24

春魔解丼 @vespiking

そう、山城である！山城が北上にかわり、壁這い猫の駆逐に乗り出したのだ！そして今、壁猫の駆逐を適任者に委ね、その任から解き放たれた北上の魚雷管は、４０門すべて巨大猫を睨み付けていた！鎮守府最強と目される、昼戦開幕を飾るに相応しい破壊兵器が！ 25

春魔解丼 @vespiking

「さあぎったんぎったんにしてやりましょうかねえ！！！」魚雷！！魚雷！！魚雷！！機銃！！爆撃！！機銃！！爆撃！！魚雷！！魚雷！！爆撃！！爆撃！！爆撃！！魚雷！！魚雷！！そして魚雷！！爆発！爆発！爆発に次ぐ大爆発！！！さしもの巨大猫の巨体も……破裂！爆発四散！！ 26

春魔解丼 @vespiking

だが安心するのはまだ早い……　巨大猫の出現した工廠床の大穴から、ぞろぞろと不吉な足音が聞こえる。『猫』である……『猫』の大群が！際限なく湧き出そうとしている！暗がりの中から！ 27

春魔解丼 @vespiking

ところで読者諸氏は思い出して欲しい！執務室に集結したのは６隻の精鋭部隊、そして阿賀野が入渠ドックからの途中参戦。この場にいるべき艦娘は……７隻！だが、皆様に見える艦影は……飛龍、北上、山城、夕立、羽黒、阿賀野……６隻！では、残る１隻は！？ 28

春魔解丼 @vespiking

戦艦霧島は入渠ドックにいた。飛龍の第一次攻撃隊発艦とほぼ同時、霧島は窓を飛び出しドックに向かって駆けていた。列強を震撼させ、世界最強と目されるおそるべき敵艦を建造せしめた、その圧倒的速力でもって！今回、その速力がもたらすのは、敵艦ではない！　――入渠ドック最奥、専用修復室！ 29

春魔解丼 @vespiking

「やっぱりね。信じてた」「あら。お礼のひとつも言えません？」「言うわよ、あとでね。全部の仕事が終わってから」「そうね。それでいいわ。じゃ、今すぐ言いなさい」「任せて」 30

春魔解丼 @vespiking

夕張が駆ける！入渠ドックから一直線、重い艤装を引き摺って、爆散する巨大猫を尻目に、大穴の前へ！ 31

春魔解丼 @vespiking

最新鋭のアクティブソナーが、縦穴の敵影を捉える！三式爆雷投射！投射！さらなる投射！！高所の有利を掌握した夕張に、小型猫など何匹湧こうと蟻も同然！穴の底から轟音が響き、アクティブソナーから反応が消えた。地下にも、地上にも。 32

春魔解丼 @vespiking

---------------------- 33

春魔解丼 @vespiking

夕立、羽黒、阿賀野の３隻は修繕液プールに沈みながら、やかましい工事の喧騒を他人事のように聞いていた。入居ドックに直接的な破壊がなかったのは、３隻にとって幸運であったし、高速修復剤の倹約が叫ばれていた時勢もまた、幸運だった。身体の自由はないが、長期休暇は悪くない。 34

春魔解丼 @vespiking

「たいくつっぽいー。ぶくぶく」不満を口にする夕立も、外から飛んでくる飛龍の怒号を聞いて、顔だけニヤニヤと笑っている。また工事妖精がぽかをやらかしたらしい。阿賀野は相変わらず幸せそうだ。背中からありったけの劇薬を突っ込まれ、ずいぶんと楽しい幻覚を見ているらしい。 35

春魔解丼 @vespiking

つかの間の平和を満喫する二隻に挟まれて、羽黒だけは気分が沈んでいた。あのときの高揚感。思い込みの自制。油断と敗北。そして、大暴れ。自分の嫌な部分を、改めて全部見せられた。自分は何一つ変わっちゃいない。戦いたくない？本当に？ 36

春魔解丼 @vespiking

苛立った飛龍の怒号が、羽黒の耳にも届いてくる。飛龍の苛立ちを、羽黒は少しだけ理解できたし、それでもやっぱり、真逆だな、とも感じていた。 37

春魔解丼 @vespiking

【ネイビー・アライヴ・インポッシブル】終わり。

春魔解丼 @vespiking

（親愛なる読者の皆様へ：ほんじつの更新にて、通し番号14が２度観測されるという謎インシデントが発生いたしましたが、冷静に考えてこれは猫のしわざではないか？バグ、超常現象、そういったもの……科学は万能でない。あなたがた、少し神秘に目を向けよう……ロマン……）