《IF戦闘》ゲス対決

【強欲】アーネウス(@s_akiyui) VS 【暴食】ムロホ(@ratan_ruten)
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ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ザリ、と革靴が地面を掻いた。乾いた風が通り抜け、白衣がはためくと共にさほど長くない金糸が揺られる感覚が齎される。細められた碧が見るのは一面の瓦礫の山で、建物らしきものは見当たらない。当然の如く人の気配もなく。何処までも延々と続くのではないかという瓦礫の山だけが此処にある。

2014-02-07 00:39:46
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

瓦礫、と単に言っても様々だ。コンクリート片や鉄骨、木材——それに混ざって、死体も幾らか。まともなのは雑草の生えた地面くらいなもので、左右に聳える瓦礫の山に死体を見つける度、男はそっと祈りを捧げては、また歩き出す。

2014-02-07 00:39:58
カーデ @ratan_ruten

廃材の山。天を突き刺さんと聳え立つガラクタの塊。 その上で世界を眺める姿が一つ。 藍色のコートをはためかせ、肌を撫でる風の感触を楽しみ笑みを浮かべる男。 スラリと高い細身な身体がガラクタの山頂に立つ光景は、下から覗けばまるでアルミの塊に爪楊枝が突き刺さっているような気分にさせる。

2014-02-07 00:52:45
カーデ @ratan_ruten

音はしない。時折風に吹かれた塵共がカタカタと未練がましく鳴るだけの世界。 何処を見渡しても、色を失ってしまったおびただしいほどの粕の残骸の数々。 そんな光景も束の間、山頂に立つ男の視界に一つの動く影が映される。 それは、ばさりと白衣をたなびかせ悠々と歩いている。

2014-02-07 00:56:34
カーデ @ratan_ruten

そして、塵と共に積み重ねられた遺体〈しょくりょう〉に手を合わせ弔う。 「おや、面白そうなのが来たようですねぇ……」 ぺろり、と。それを見る男の下がクレーンのように動く。その口元は先ほどから欠けた月のように歪められており変わることはない。 どれ、と呟くと猿が飛ぶように

2014-02-07 01:01:08
カーデ @ratan_ruten

自分が立っていた瓦礫の山を滑り降り、白衣の男の背後へと着地する。 ぴょんと飛ぶごとに埃が舞い、喉や鼻を刺激しにかかり咳ぐ口をついて出る。 しかしその間も男は口元を固めたように変えることはなく笑みを浮かべている。 「こんな所に旅行ですか珍しい」 白衣へと、声を飛ばす。

2014-02-07 01:04:05
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

首にかけた十字架に触れ、目を閉じて祈りを捧げる。何も出来なかったのは残念だが、今更言っても詮無いことだ。今は、ただ己に出来る最大限を。そうして再び歩き出そうとした男は、一瞬足を止めそうになった。気配を感じたのだ。死ではない、生の気配。意外なこともあるものだ。

2014-02-07 01:26:47
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

そう意識の片隅に留めつつもその主を探すことは無く、男はゆっくりと歩を進めた。 途切れない瓦礫。果たしていつまで続くのかと考える背に、隠しもしない気配が降りる。 「……おや」 それが先程の気配の主だということは考えるまでもない。掛けられた声に男は静かに振り返る。

2014-02-07 01:26:55
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「これは驚きました。私以外にも人がいらっしゃったとは」 人好きのする微笑を浮かべ、柔らかく言葉を紡ぐ。しなる碧に映るのは、藍色のコートを纏った男で。 「散歩をしていましたら此処に着いてしまいましてね。……貴方はどうして此処に?」 スッと彼が降りてきた方に目を向けながら、尋ねた。

2014-02-07 01:27:01
カーデ @ratan_ruten

振り向いた男は金髪碧眼と美男めいた出で立ちをしており、その表情には人の良い笑みが張り付いている。 年端もない少女一人を落とすには十分そうな雰囲気だ、とひとりごちるとお返しにと崩さぬ笑顔を向ける。 「僕はちょいと野暮用でして……なぁに、ちょっとした旅行です」

2014-02-07 01:40:35
カーデ @ratan_ruten

指をついと動かし飛行機を形作る。 笑顔を浮かべた大の男がすると少し不気味だ。 「あ、紹介遅れました。僕はムロホと言います以後お見知り置きを」 スッと手を差し出す。細い指を相手の胸に向け握手を求める。

2014-02-07 01:46:41
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「旅行でしたか。良い旅になるといいですね」 返る笑顔にも、静かに言葉を返す。名乗り、差し出された手に、ああそうでした、と恥ずかしげに頭を掻く。 「先に自己紹介をするべきでしたね。初めまして、私はハインリヒ・エーベルハルトです。ハインリヒとお呼びください」

2014-02-07 01:57:56
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

革の手袋を外して、相手の手に自らの手を重ねる。そのまま軽く握り、狐目を見つめ。 「貴方のことはムロホさんと呼んでも宜しいですか?」

2014-02-07 01:58:17
カーデ @ratan_ruten

「おや、良いんですか? そう呼ばれるの密かに夢だったのですよ。中々名前で呼ばれる機会が無かったもんで……。と、失礼。では貴方の事はハインリヒさんと……?」 そう呼んでも構わないか、と語尾に込める。 軽く握られた手に体温を感じつつ首を傾げる。

2014-02-07 02:18:07
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「ええ、構いませんよ」 笑みを浮かべ、宜しくお願いします、と付け加える。この出会いが何を生むかは分からないが、悪い展開に転がらないことを祈るばかりだ。 握手していた手を離し、再び革手袋をはめる。直接の接触はどうにも苦手だ。困ったものだ、と心中で呟いた。

2014-02-07 12:38:09
カーデ @ratan_ruten

男の言葉にどうもこちらこそ、と返し腕を引っ込める。 相手の雰囲気や言動に自分と同じ何かを感じ、ムロホは喉を鳴らす。 これは面白いかしれないと。 「あぁ……所でハインリヒさん。こんな寂れた風景ではそれが大分音を上げているんではないですか?」 それ、と彼の腹部を指差す。

2014-02-07 13:05:29
カーデ @ratan_ruten

要するに、お腹が減ってないかという質問だ。 「もし宜しかったら僕が色々足しになるものを持っているのですが……。あぁ、いえいえ顔を引き千切って差し出したりするわけではないですよ?」 口元を隠し、くつくつと抑えた笑いを吐き出す。

2014-02-07 13:08:39
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

唐突な話題転換には、驚きが先に立った。目を丸め、瞬きを二、三度。指差されたのは己の腹部で、どうやら空腹では無いかと聞かれたらしい。顔を千切って上げるなど極東のヒーローでもあるまいに、と小さく笑い声を零して、目を細めた。 「そうですね。丁度、小腹が空いたなと思っていたところでして」

2014-02-07 13:23:31
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

さして言うほどは気になっていない。だが、折角の好意だ。無碍にするのは良くないだろう。 「御相伴に預かれるのでしたら、是非」 ハインリヒは両手をポケットに入れて、頷いた。

2014-02-07 13:23:36
カーデ @ratan_ruten

「おや、それは良かった。小腹に適したものが山ほどありますよ」 ポケットに手を突っ込んだハインリヒとは反対に、ムロホは手を挙げぷらぷらと掲げる。 「えぇ、それで最近広めていることがあるんですがねえ。食べ物を頂く前に手を合わせいただきますという言葉を捧げるという儀式がありまして」

2014-02-07 20:09:57
カーデ @ratan_ruten

爽やかな笑みをハインリヒに向けながら、自身は手を合わせる。 慎重にいかぬば、楽に騙せる相手ではないと探りつつ。 「これをすると食べ物が美味しくなるんですねぇ。言葉や習慣って大変不思議なものですねえ」 しませんか?と首を傾げる。 今ここで相手がしなくても良いのだが気分は上がる。

2014-02-07 20:12:50
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「極東の食事様式ですね」 ムロホの言葉に、ハインリヒは軽く頷いて答える。極東の知識ならば、小さな雇い主の影響でそれなりに持っていた。 「食前の祈りのようなものでしたよね。まあ其方の方がだいぶ短いですが」 そう言いながら、ムロホに倣うように手を合わせる。

2014-02-07 21:16:40
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

こんな瓦礫の山の中で客というのもおかしな話だが、相手が食べ物を振る舞うと言っている以上、ハインリヒは客だ。相手に合わせるのが礼儀だろう。

2014-02-07 21:16:41
カーデ @ratan_ruten

ハインリヒの言葉に、おや知っていましたかと驚き呟く。 あんな辺境の地の事にまで知識ぐ及ぶとは中々侮りがたい人間だ。 「それでは、いただきます」 ハインリヒが自分と同じ動作をしているのを確認し、言葉を重ねる。 その瞬間、ハインリヒにとっての世界はがらりと変わる。 罪科、発動。

2014-02-07 22:00:39
カーデ @ratan_ruten

「さぁ、此方をどうぞ」 ただの尖った割れたガラスの破片をハインリヒへと差し出す。 勿論、傍目から見てしまえばただムロホが彼にガラスを食えと言っている光景にしかならない ーーが。 「チョコクレープです」 それは、ハインリヒには偽りのない言葉であろう。

2014-02-07 22:03:57
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