《IF戦闘》ゲス対決

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

いただきます——その言葉と共に、風景が一変する。何もかもが美味しそうな食材に変わり、匂いまでもが美味しそうだ。 「凄いですね、貴方は」 私はこの手のことは何もできませんから、と微笑んで、差し出されたチョコクレープに礼を述べながら受け取る。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

これもまた美味しそうだ、と目を細め、口に近づけようとして——止めた。視線は、ムロホへ。 「食べる前に、礼も兼ねて一つお話がしたいのですが、宜しいですか？」 人好きのする笑みを浮かべたまま、穏やかに尋ねる。

カーデ @ratan_ruten

表情の色を一切変えぬまま、いえいえそれほどでもとハインリヒに返す。 このハインリヒという男、どこか神経質そうで料理などは出来るようにも見えるのだが。 「はい？どうしました？」 ハインリヒにより向けられた穏やかな笑みと言葉に応答。内心早く食べろと催促。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「いえ、大した話ではないのですがね。私には雇い主がいまして。これがまたなかなかに扱いづらいお方なのですが……その方はよくこう仰るんです。『知識はあればあるほど良い』ってね」 当たり前すぎて退屈な話でしょう？ そう言って笑みを深め、くつくつと笑い声を零す。脳裏に浮かぶは少女の姿。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「ですが私はそれに感謝してるんですよ。何せ彼女が私に与えた知識は膨大ですからね。言語については特に、ね」 彼女の話を馬鹿にしたことは幾度もある。だが、侮ったことはない。細まる目は静かにムロホの姿を映したまま柔らかくしなり、手に持ったチョコクレープをムロホへと向けて。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「さて、『暴食(mroho)』さん？」 ハインリヒは笑う。 「食べてみせてください」

カーデ @ratan_ruten

「おやおや……随分とその彼女とやらは聡明そうだ」 差し出されたガラス片を手に取るとニヤリ、とこれまでより更に深まった笑みを刻む。 すかさずそれを口元に運び、突入。 「視覚聴覚感覚。僕の『酷食』は全て完璧なハズなんですけどねぇ」 ばきり、とガラスが割れる音が喉を鳴らす。

カーデ @ratan_ruten

勿論その音でさえもハインリヒにはクレープを飲み込む音にしか聞こえやしないのだろうが。 一度疑われてしまっては無駄であろう。 「いつから気付いていました？」 笑顔を絶やさず、お面のように変わらず。ガラスが身体を通り内臓諸共傷つける感触を文字通り味わう。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「ええ、とても」 頷き、笑う。彼女はハインリヒの知る誰よりも聡明で純粋だ。まあ、ハインリヒが彼女に雇われている理由は何を置いても彼女の金払いの良さが理由なのだが。 ムロホの身体の中へ消えて行くチョコクレープ。随分と簡単に食べて見せるものだ、と感心しながら、彼の疑問に答えた。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「貴方が名を名乗った時点で、既に」 とは言え、あれが幻覚であることは勘だった。大罪を簡単に信用すべきでないと分かっていたから疑ってかかっていたものの、雇い主のように本物を創り出している可能性は否定出来なかった。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

だが、ムロホの言葉で確信した。視界に映る一面の食料は全て、幻覚だ。 「もしも人を騙したいのであれば、座名を名乗るのはオススメしませんよ」 くつりくつり、口端を持ち上げる。

カーデ @ratan_ruten

「いやいや、名乗るべき名前などとうに捨てた身でしてね。ペッパーアンドフォーカーなんて大それた名前もありますが……」 口すぼめ、やめる。食人鬼の頃の名前など、教えて何になるのか。恐怖というスパイスはこの男には通用しなさそうだ。 「それに、俺は騙すよりも食す方がメインなんでねえ」

カーデ @ratan_ruten

同時、舌舐めずりとナイフを抜き出す動作を行う。 両手にキラリと光る獲物を持ち相手に突きつける。 勿論、ハインリヒからは同じ長さのペロペロキャンディくらいにしか見えないだろうが、本当は長さの違うククリナイフ。 「しかしそんな前から気付いていただなんて、準備抜群ってことですねぇ？」

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「そうでしたか」 ムロホの言葉に笑みを返す。しかしそれは決して穏やかなものではなく、相手を馬鹿にしたもので。 「……私は——」 騙す方が、好きですよ。食事なんかよりも、余程ね。誰に聞かせるわけでもなく、小声でそう呟く。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

向けられた二本のロリポップのシュールさを嘲いながらも、警戒は解かず。 「さあ。先程も言ったでしょう？私は幻覚(この手のこと)は何も出来ない、と。ですがまあ、そうですね。もしも期待をなさるなら、応えましょうか」 ムロホの言葉にもまた、嘲りを返して。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「改めまして、ムロホさん。私は『強欲』——アーネウス」 白衣のポケットから麻痺薬の入った試験管を二本取り出し、ムロホへ向けて放り投げる。そして素早く抜いた銃でそれを撃ち抜いた。 ——麻痺薬のついでに銃弾にも当たってくれれば有難いのだが、と心中で笑いながら。

カーデ @ratan_ruten

「あぁ、良いですねぇそのいきがる感じ……とても良いスパイスになりますねぇ」 ぞくりぞくりと身体に走る電流に震え浸る。獲物を食らうのは、狩りから楽しむべしだと前から決めているのだ。 「……っ！甘い……！」 ハインリヒが座名を名乗り、瞬間短い筒のような物がちらつくと

カーデ @ratan_ruten

次点、高速で弾丸が襲いかかる。なんとかそれをナイフで弾きまた避ける。 しかし目の前には更に粉のようなものがチラつき。 「チィっ！また麻痺毒ですか……！？」 吸った所からピリリと身体に嫌な物が走る。まるで全身が他人の身体のよう。

カーデ @ratan_ruten

「あの筋肉馬鹿や爽やかバカといい、この麻痺といいつくづく嫌いになりそうですよその座(強欲)は……！」 イラつき吠える。強欲という座でロクな目にあったことがない。欲が深いのは全員厄介な愚か者ばかりなのだろうか、と内で悪態をつく。

カーデ @ratan_ruten

「あぁイラつきますねぇ、全く不愉快ですよ貴方たちは！！」 ぐっ、と腹を凹ませる。瞬間食道を何かギラリとした物が通過し口元に現れる。 そして、射出。アーネウスと名乗る白衣へと。 「小さい仕込みナイフです」 くふふ、と笑う。何時ぞやかに披露してから得意になり入れっぱなしだ。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「おやお気に召していただけなかったようで残念です。特別製の銃弾なのですがね」 しかし、弾かれ、避けられたことは想定内。取り乱すことなく、それどころかクツクツと楽しげに笑みを浮かべてムロホの挙動を観察する。苛立ちに吠える姿は愉快の一言に尽きた。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「ハハ、奇遇ですね。私も『強欲』なんて座に着いてる人たちは苦手でして。出来れば会いたくない」 長い黒髪の女や、学生服の少女。どちらも良い記憶が無い。貴方が『暴食』で良かった、頭が悪くて助かります——そう嘲り。 射出されたナイフを寸前で躱す。勘の良さと反射神経には自信があった。

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

頬が微かに切れ、血が出ている感覚もするが気にすることでもないだろう。 アーネウスは再び白衣から二本の試験管を取り出して投げ、銃で撃つ。今度も中身は麻痺薬だが、撃ち込んだ銃弾は四発。さて今度は全て避けられますかね、と嘲った。

カーデ @ratan_ruten

「わざわざ鉛を身体に喰らう趣味はないんですよねぇ」 まぁ貴方のことは喰らいますが。呟き、走る。強欲へと目掛けまっすぐに、途中鉛が頬を掠め更には二発ほどが肩へとめり込むが痛みは無視。 あくまでも目標は目の前の獲物のみ。 「ほぉらっ！」 ククリナイフを白衣目掛け投擲。

カーデ @ratan_ruten

その挙動の中、また手足が痺れるような感覚が襲い身体がぐらつくが何とか二本目も投げ切る。 「おやおや、卑怯なことでもしないと勝てないんですかねぇ？」 がくん、とまた身体は沈む。身体に耐性でも出来て然るべきではあるがどうにも事は上手くいかない。