『ゴリラスレイヤー　ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#7

碌星らせん（ろくせい・らせん） @dddrill

最初のゴリラには、名前が存在しない。なぜなら、ゴリラは彼一人しか居なかったからだ。最初にゴリラとして目覚めた彼は一人だった。彼は、一部のゴリラに近い猿達をゴリラへと変え、ゴリラが生まれた。それがゴリラのはじまりである。 20

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最終的に、最初のゴリラは人間によって殺された。……だが、彼は様々な保険を残していた。ゴリラという種が滅びに瀕した時には、必ず舞い戻るようにと。ダークゴリラが掴んだ物はその一端に過ぎなかったのだ。 21

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「最初のゴリラ」は無言で手を動かす。何らかの念力に囚われ、瓦礫の中から一体のゴリラが浮かび上がった。メスのゴリラ……パープルゴリラである。「ウホ」(訳：良し)最初のゴリラは呟いた。オスとメス。その二つが居れば、少なくとも絶滅は免れる。 22

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「死ね!!」ダークゴリラは跳躍回転し、ゴリラ・キリを撃ち出す!!……だが、「最初のゴリラ」はダークゴリラの突進を片手で受け止めた。『せめて名を聞かせてはくれぬか』そして、口も手も使わず、そう伝えた。 23

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「ダーク……ゴリラ！」『ダークゴリラ……私が言祝いだ者の末裔よ』「巫山戯るな!!」『呪いと祝いは一つ』「巫山戯るな!!」ダークゴリラは最初のゴリラの腕を振り払い、距離を取った。祝だと？ 24

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(((塔が崩れ……蓋が外れたか)))ナラクピテクスの呟きをゴリラスレイヤーは無視した。あれが何であるかはどうでも良い。(((ゴリキド、どうする？)))「ゴリラ……殺すべし！」(((そうよのう、そうよのう！))) 25

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ゴリラスレイヤーはウサギの如く跳躍し、最初のゴリラへと接近。ギガントピテクスパンチを浴びせる!!……だが、それは不可視の壁に阻まれた。ネンリキだ。しかし、無駄ではなかった。「ンアーッ!!」最初のゴリラはパープルゴリラを取り落としたのだ!! 26

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『ナラクピテクス……種の根源へ至った者よ、何故争う？』最初のゴリラはナラクピテクスへと語りかけた。ゴリラスレイヤーではなく。『オヌシの如き阿呆は、ワシにも殺す以外の術が見つからんでの!!』ナラクピテクスの思念が、ゴリラスレイヤーを介さず答える。 27

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ゴリラスレイヤーとダークゴリラは、別個にニューロンを高速回転させる。「最初のゴリラ」を殺すために。最初のゴリラのネンリキは脅威だ。だが、幸い制限はある事が分かった。同時に攻撃を叩き込めば、破れるやもしれぬ。しかし、どうやって。 28

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(((ゴリラスレイヤー)))ナラクピテクスの声が響いた。(((ダークゴリラの武器を奪え)))(だが……！)(((あやつの武器は、ネンリキを突破出来る。オヌシのパワーと合わされば、殺せる)))(だが、譲るとは思えぬ) 29

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ダークゴリラは最初のゴリラと因縁が有る様だ。(((ならば、ナントカせよ)))逡巡の後、ゴリラスレイヤーのゴリラ戦術能力は結論を導き出し、ゴリラスレイヤーは動いた。ダークゴリラへ向けてではない。最初のゴリラに向けてだ!!((何をするゴリキド!!))(ダークゴリラならば動く！) 30

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それは、確信に似た願望であった。強敵、ダークゴリラならば、必ずや自分と同じ結論へ至る。目的は同じだ。最初のゴリラを殺す。果たして、ダークゴリラは動いた。但し、ゴリラスレイヤーへ向かって。だが敵意は感じぬ。(……そうか!!) 31

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ダークゴリラの意図を解したゴリラスレイヤーは、接近するダークゴリラを持ち上げ、投擲フォームを取る。『一つの命として生きる。一つの種として殖える。望むことはそれだけだ』最初のゴリラの声がニューロンへ響く。 32

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『それが何故、こうも争いを生むのか』「「殺すべし!!」」ダークゴリラとゴリラスレイヤーは同時に叫んだ。答えは一つ、復讐である。虐げられしものの償いは、その命を以っての外成し得ない。だから、殺す。殺される。ゴリラは、そうなってしまったのだ。 33

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「ウオオオオオーッ!!」ゴリラスレイヤー・ギガントピテクスはダークゴリラを投擲する。「ゴリラ・キリ!!」加速されたダークゴリラの刃は、最初のゴリラの腕を貫き、胸元へと届いた！刃がエネルギーを啜り、「最初のゴリラ」は雲散霧消した。 34

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最初のゴリラは滅びた。この場に残るは、ゴリラスレイヤー、ダークゴリラ、パープルゴリラの３ゴリラのみ。パープルゴリラは未だ意識を失っている様子だ。ゴリラスレイヤーとダークゴリラは向かい合った。 36

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最初のゴリラの滅び。これはダークゴリラにとっては悲願であり、ゴリラスレイヤーにとっては只の途中過程だ。ゴリラスレイヤーには戦う理由が有り、ダークゴリラには無い。……だが 37

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「この身体が戻るまでの余興だ。付き合おう」ダークゴリラはそう言った。己を敵と狙う者は討たねばならぬ。ゴリラの間に。「身体が……戻る？」「最初のゴリラの呪いは解けた。俺の肉体は、じき人の物へと戻る。……その前に、決着だ」 38

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(((そうか……奴は例外か)))(ナラク？)(((人の心にゴリラの姿を持つ呪い。あやつはゴリラ憑依者でもなくば、リアルゴリラでもない。ゴリラの姿を持った、ただの人間よ)))ダークゴリラが人間。 39

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ゴリラスレイヤーは精神の揺らぎを感じた。己の復讐の意味。だが、ゴリラは、罪なき人々を虐げ、命を奪った。ダークゴリラは実行犯に過ぎぬ。ゴリラは悪だ。そして、目の前には敵が居る。揺らぎは一瞬で収まり、上書きされる。鍛え抜かれた殺意によって。 40

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「ダークゴリラ……殺すべし」ゴリラスレイヤーの姿は再び、赤黒のゴリラのそれへと変わる。ギガントピテクスは強力なパワーとウェイトを持つ反面、自立することが難しい。空中戦を得意とするダークゴリラ相手には、不利な戦いを強いられるのだ 41

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「ウオォォーッ!!」「ウオォォーッ!!」ダークゴリラとゴリラスレイヤーは咆哮した。これから始まる戦いを告げる狼煙の様に。どちらが勝とうと、ゴリラは滅びる。最初のゴリラは潰え、ゴリラディセンションシステムは既に崩壊したのだから。 42

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ゴリラ憑依者とは、ゴリラソウルに憑依された存在だ。彼らの多くは己の過去かソウルに引き摺られ、人とゴリラ、何れかの在り方を選択する。そして、その肉体は、遺伝的には人とゴリラの中間に位置するのだ。 43

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しかし、ここに対峙する二者の肉体は、純粋なゴリラのそれであった。だが、その心は違う。ゴリラの身体に人の心を宿した者。ゴリラの身体に怨念を宿し、鬼と化した者。共に、歪な存在。 44