『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#7
「ゴリラ……殺すべし!!」ゴリラスレイヤーの背が白銀に輝き、筋肉が膨張する。シルバーバック。だが、他の部分は赤黒く染まったままだ。連戦による疲労から、これが精一杯なのである。 45
2014-02-25 19:34:38ゴリラスレイヤーとダークゴリラは同時に回転を開始し、同時に離陸する。高速回転するゴリラスレイヤーとダークゴリラは、空中で暴れコマの如く衝突した。回転数はゴリラスレイヤーが勝り、ダークゴリラの高度が落ちる! 46
2014-02-25 19:36:25高度優勢を奪ったゴリラスレイヤーは、ダークゴリラの頭部を狙う。ゴリラ・ストンピング!!「グワーッ!!」だがダークゴリラはバランスを変化させることで軸をずらし、辛くも致命傷を回避。ワザマエ! 47
2014-02-25 19:37:16……しかし、ゴリラスレイヤーのストンピングはダークゴリラの右肩へダメージを与えていた。このままヘリ回転維持は困難、そう判断したダークゴリラは着地するべく高度を下げた。ゴリラスレイヤーもまた着地を試みる。 48
2014-02-25 19:43:00ゴリラスレイヤーにとって、慣れぬゴリコプター飛行は体力消費が大きく、今はそれが致命的な隙に繋がりかねない。戦いの場は地上へと移る。だが、ゴリラスレイヤーのゴリラ洞察力は、ダークゴリラの右肩ダメージを看破していた。 49
2014-02-25 19:43:23そして、ダークゴリラの着地姿勢がそれによって僅かに崩れた事もまた、ゴリラスレイヤーは見逃さなかった。故に、畳み掛ける。ゴリラスレイヤーも満身創痍に近い。持久戦は望むべくも無いのだ。ゴリラスレイヤーは着地と同時に跳躍、一気に距離を詰めた!! 50
2014-02-25 19:44:30ダークゴリラの迎撃は間に合わない!!体勢を立て直す時間が足りぬのだ!!ゴリラスレイヤーは手刀を作り、大きく振りかぶる。全てを終わらせる。「ウオオオオーッ!!」咆哮。己の復讐は、ここで全て。ナラクピテクスの殺意が己と同期し、流れ込む! 51
2014-02-25 19:45:43(((トドメオサセー!!)))「ウオオオオオーーッ!!」ゴリラスレイヤーは白銀に輝く手刀を振り下ろす!!だが、ゴリラスレイヤーの手刀はダークゴリラへは届かなかった。「……パープルゴリラ。何故」飛び出したパープルゴリラがダークゴリラを庇い、手刀を受け止めたからだ! 52
2014-02-25 19:47:16ダークゴリラは体勢を立て直し、パープルゴリラを抱えながらゴリラスレイヤーから距離を取る。「何故」ダークゴリラは再び聞いた。ゴリラスレイヤーの手刀はパープルゴリラの心臓を直撃していた。もう、長くはあるまい。 53
2014-02-25 19:50:53「あんた……人間、だったんだってね」掠れる様な声でパープルゴリラは言った。「道……理で……」その後の言葉は続かなかった。パープルゴリラはダークゴリラの腕の中で息絶えたからだ。その顔は、どこか満足気であった。 54
2014-02-25 19:52:04ダークゴリラは無言でパープルゴリラの身体を地面へ横たえ、立ち上がる。その瞳はゴリラスレイヤーを正面から見据えていた。その心中を察する事は出来ない。だが、ダークゴリラは構えを取った。ライオンの様な構えを。 55
2014-02-25 19:56:27この時のゴリラスレイヤーとダークゴリラの間合いはゴリラ4匹分。両者共次の手は決まっている。シット・スロワー?否!そのような豆鉄砲では、相手に有効打を与える事など出来ぬ。ゴリラスレイヤーとダークゴリラは、静かに油断無く前進し、距離を詰める。 56
2014-02-25 19:57:57ゴリラ3匹分……ゴリラ2匹分……両者は互いに隙を見いだせず、ゴリラ半匹分の距離にまで詰まる。この距離ならば、パンチが届く。即ち、先に隙を見せた側がダメージを負う。その後に残るは、暴力と暴力の衝突である!!そして! 57
2014-02-25 19:59:27「ウォーッ!!」「グワーッ!!」ゴリラスレイヤーの先制ゴリラパンチがダークゴリラの頭部を直撃した!!至近距離では一瞬の気の緩みが大ダメージを齎す。バナナの木の間に張られた綱を渡るような、極度の集中が必要なのだ。だがダークゴリラは耐える!! 58
2014-02-25 20:00:51ウホウホ!ウホッ!ウホーッ!!「ウオーッ!」「ウオォーッ!!」「ギャオオオオオオ!」「ギャオオオオオオ!」ウオオオ!ウホウホ!「アンギャアアアア!!」ウホホンホ!! 59
2014-02-25 20:01:50「ウォーッ!!」「ウォーッ!!」「ギャオオオ!!」「ギャオオオ!!」ダークゴリラとゴリラスレイヤーは至近距離での攻防を繰り返していた。傷付いたゴリラスレイヤーとダークゴリラ。共に譲らぬ。だが、徐々にゴリラスレイヤーはダークゴリラを押し始める。 60
2014-02-25 20:02:40(((良いぞ……良いぞ、小奴を倒せ!)))ゴリラスレイヤーはダークゴリラの右肩へと噛み付く!「ギャオオオオ!!」ダークゴリラは絶叫!!……そして、劣勢のダークゴリラは、かのバナナ型刃物を取り出し、握らんとする! 61
2014-02-25 20:04:17だが、その一瞬が致命的な隙となった。ゴリラスレイヤーはダークゴリラの刃を叩き落とし、もう片方の腕で心臓を掴み、握り潰した。ダークゴリラの身体は力なく倒れ伏す。バナナ型刃物が地面に落ち、二つに割れた。 62
2014-02-25 20:05:21ダークゴリラは絶命した。その遺体からはオブシディアン色の毛が抜け、身体は縮み……残されたのは、ただの人間の男の死体であった。仇は滅び、ゴリラスレイヤーの復讐は終わった。………… 63
2014-02-25 20:06:44だが、ゴリラスレイヤーのゴリラ視力は、見つけてしまった。瓦礫の影に蹲る子供のゴリラの姿を。セクトのトップ、ゴリモト・チバ。彼は旗印だ。彼を殺さねば、セクトは再び蘇るやも知れぬ。殺さねばならぬ。(((殺せ))) 64
2014-02-25 20:08:15ゴリラスレイヤーはゴリモト・チバへと歩み寄った。チバは動かない。……いや、身体が竦んで動けぬのだろう。(殺せ)己のニューロンをナラクピテクス、否、己の殺意が責め苛む。ゴリラを殺し尽くせと。ゴリラスレイヤーは両腕を組み、振り上げる。 65
2014-02-25 20:09:34「ゴリラ……!」脳裏に、人だった頃の光景がフラッシュバックする。大切な家族。幸せな家庭。暖かい日々。もう戻らぬ。永久に戻らぬ。「ゴリラ……」だがゴリラスレイヤーは苦悶する。 66
2014-02-25 20:11:22「父さん……」ゴリモト・チバが震えながら呟く。戻らぬ物のために戦うのは、正しい事か。間違っている。復讐は、ただ正義の天秤を水平に戻すためだけの作業だ。過ちによって、過ちを正す。それだけだ。 67
2014-02-25 20:13:56そんな事は、悩み尽くした。ならば何故ゴリラスレイヤーは悩むのか。ならば、どうする?生かすか?人に戻すか?そんな術は無い。それでも、ゴリラスレイヤーの腕は、まるで自分の物では無いかの様に静止していた。 68
2014-02-25 20:16:55これまでに多くのゴリラを殺してきた。ゴリラも命だ。それを奪った。ナラクピテクスが原因ではない。ゴリラスレイヤーの意志で奪ったのだ。何故此処で立ち止まるのか。ダークゴリラを倒したからか。 69
2014-02-25 20:17:57