【第一部-拾九.五】誰かを心配する白露と村雨 #見つめる時雨

白露×村雨
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白露視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「いっちばーん!」 一番に母港に辿り着いたあたしは高らかに言った。これで遠征が終了。母港に帰り付くまでが遠征だもんね。無事に終わって良かった!でもすっかり深夜だよ…早くお風呂に入りたいなぁ。 「じゃあ、提督へ報告に行ってくるわね」 旗艦の能代さんが言った。

2014-02-25 00:00:57
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

能代さんは報告へ、あたし達駆逐艦は手に入れた資材を抱えて倉庫へ向かう。よいしょ、よいしょ。 「早くお風呂に入りたぁ~い…」 後ろで荒潮があたしの気持ちを代弁してる。うう…声に出されるとあたしもその気持ちが増してくるよう…。

2014-02-25 00:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ほら、喋ってないで行くわよ」 朝潮の歩く速度が増し、先に行ってしまう。 「あ!待ってー!」 これじゃ一番になれない!あたしは朝潮の後を追った。 「あ、ちょっと…そんな急かさないでよぉ…」 荒潮もあたしの後付いてくる。

2014-02-25 00:10:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「きゃっ…!?」 何かに躓くような音が聞こえ、後ろを振り向くと荒潮がバランスを崩して倒れそうになっていた。あ…危ない!! 「荒潮!!」 「うわぁ!?」 朝潮に資材を押し付けられ、必死にそれを抱えた。資材で前が見えない…。そして足がプルプルしてるよぉ…!?

2014-02-25 00:15:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

弾薬が散らかる音が聞こえた。荒潮、転んじゃったのかな…!? 「あ、荒潮!?大丈夫ー!?」 そうだ、これ置けばいいんだ…!あたしはゆっくりと資材を床に下ろした。そして荒潮の方を見ると、朝潮が荒潮を抱きとめていた。よかった…間に合ったんだ。

2014-02-25 00:20:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「荒潮、大丈夫?ごめん、急かせちゃって…荒潮?」 荒潮が朝潮にしがみついたまま離れようとしない。…どうしたんだろう。 「…あ…な、なんでもない…。も、もう…ゆっくりお願い…ね」 そう言って朝潮から離れた。 「…あ、白露ごめん、資材押し付けちゃって…」

2014-02-25 00:25:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ううん、いいけど…荒潮は大丈夫?」 「…え!?だ、大丈夫に決まってるじゃなぁい…」 荒潮が散らばった資材を集め始めた。あたし達も一緒になって箱に入れる。…よし、これで全部かな! 「ごめん、白露。歩くのゆっくりでお願い」 「ちょ、ちょっとぉ…大丈夫だって言ってるのに…」

2014-02-25 00:30:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

資材を倉庫に運び終える。ふぅ、これで任務完了!お風呂入りたぁい…。 「じゃ、さっさとお風呂に入っちゃいましょう」 「さんせー!」 一日中海風に晒されてたせいで、体中ベトベトする。肉体労働で汗もかいたし、早く洗ってスッキリしたかった。

2014-02-25 00:35:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

三人で廊下を歩いて大浴場へ向かう。すると、向こうから村雨が歩いてくるのが見えた。 「村雨、お疲れさまっ」 …って、あれ…村雨?返事がない… 「村雨ってば」 すれ違いざまに肩を叩いた。 「…あ、白露…、おかえり…」 村雨…どうしたんだろう…

2014-02-25 00:40:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

村雨の様子が気になったけど、どうせ部屋で一緒になるし、取り敢えずお風呂に入ることにした。そういえば村雨、ここのところずっと元気なかった気がする。うーん…何か悩みでもあるのかな。お風呂上がったら聞いてみよっと。

2014-02-25 00:45:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ふう…さっぱりしたぁ!何?お風呂シーン期待したの?スケベー

2014-02-25 00:50:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

自販機の前に立つ。冬で寒いけど、体ぽかぽかしてるし、冷たいのにしよっと。えっと紅茶… 「あ…」 もしかして熱いの押しちゃった…?取り出し口に手を入れると、あつあつの缶が出てきていた。…どうしよう、今は温かいのは飲む気にはなれないし…食堂のお茶も今は温かいのしかないし…

2014-02-25 00:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

しょうがない、もう一本買おっと…。あたしはもう一本買い、一口飲んだ。 「ふー、あー、おいしい!」 あ、こっちの温かいのどうしようかな。…そうだ、村雨にあげよう。確かミルクティー好きだったはず…。あたしはそんなことを考えながら、部屋へと向かった。

2014-02-25 01:00:43
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

部屋の扉を開けると、中は真っ暗だった。もう寝ちゃったのかな…?でも流石にこのままでは歩けやしない。ごめんねー、明かりつけるよー… 「…って、うわぁ!?」 村雨が部屋の隅っこでうずくまってた。び、びっくりしたぁ… 「村雨、どうしたの?そんなとこで…」 布団も敷いてあるのに…

2014-02-25 01:05:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「……」 村雨は顔を膝に埋めたまま動かない。うーん…。 「村雨ー?」 …やっぱり何も言ってくれないので、取り敢えず隣に座った。飲みかけの紅茶を一口飲む。 「…ごめん…」 村雨が小さな声でぼそっと言った。よかった、返事してくれた。少しほっとする。

2014-02-25 01:10:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…どうしたの?村雨…。最近ずっと元気ないよ?」 …村雨は答えない。話しにくいことなのかな。だったらしょうがないけど…。 「…今日の遠征ね、すっごく大変だったんだよ。輸送船団の護衛だったんだけど、途中で深海棲艦と遭遇しちゃってね。まぁ、そんな時の為の護衛なんだけど…」

2014-02-25 01:15:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

村雨は黙っていた。聞いているのかわからないけど、話を続けた。 「それでね、重巡のフラグシップっていうの?そいつが出てきてね…」 紅茶で喉を時々潤しながら、今回の遠征を思い返す。 「危うく魚雷喰らっちゃいそうになっちゃったんだけど、朝潮が助けてくれて…」

2014-02-25 01:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…くしゅんっ」 村雨がくしゃみをした。いけない、冷えてきたのかな。 「村雨、寒いなら布団に入った方がいいよ」 布団に入るように促してみたけれど、村雨が動く気配はなかった。でも、このままじゃ風邪引いきゃうかも…。…そうだ。 あたしは立ち上がり、掛け布団を取ってきた。

2014-02-25 01:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「よいしょ」 村雨に掛け布団を被せる。これでいくらかマシなはず。あたしはまた村雨の横に座った。 「でね…」 「…白露…」 …話を再開しようと思ったら、村雨があたしの名前を呟いた。 「…寒いの…白露…」 え、寒い!?えっと…どうしよう…そうだ!もう一枚かければ…

2014-02-25 01:30:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

あ、そうだ…もっと温まる方法があった。…あたしは村雨に掛かっていた布団をまくり、一緒に入った。雪山でも凍えそうになったら体をくっつけて暖を取るっていうよね。…雪山行ったことないけど。 「どう?暖かい?」 「……っ」 「わっ!?」 …村雨が、抱きついてきた。

2014-02-25 01:35:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「どうしたの、村雨…」 村雨は、あたしの肩に顔を埋めたまま動かない。…少しすると、村雨の嗚咽が聞こえてきた。村雨、泣いてるの…? 「…グス…ゅぅ…」 何かをつぶやいてるけれど、よくは聞き取れなかった。…そうだ、温かい紅茶があったっけ。…でも今は飲めないよね。後であげよう…

2014-02-25 01:40:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

あたしは村雨の身体を支えながら、背中を擦ってあげた。…村雨って、こんなに軽かったんだ…。村雨が何で泣いてるのかは分からない。でも、いつもしっかり者の村雨が、あたしを頼ってきてくれてることが少し嬉しかった。…いいんだよ、一番に頼って。白露は、村雨の一番近くにいるつもりだから

2014-02-25 01:45:22