#リプくれた人でプリキュアパロやる

0
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

気付けば、だだっ広い丘の中に立っていた。空を仰いでも、太陽も月も星も何もない。それでいて淡い光に照らされた奇妙な丘だった。何もない「無」という恐怖が、少女の心を染める。

2014-02-25 15:35:10
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「珍しいな、ニンゲンの客人だなんて」そんな恐怖を察したかのように、突然、本当に突然、人が姿を表した。髪の長い痩せぎすの体躯をした男だった。背中を隠す長い髪は夜の闇のように暗い色をしており、にこやかに微笑んだ瞳は十六夜の月のように妖しく光っていた。

2014-02-25 15:36:40
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「時々、迷い込んでくる子は居るけど……人間は珍しいなあ、それも君みたいな小さな小さな子供が」大きな岩に腰をかけ、男はそう言った。顔には感情の色のない能面の笑み。「ここ、どこ?パパは?」「ここは希望ヶ丘。パパは知らない。僕の名前は秘密。君の名前は?」

2014-02-25 15:38:14
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「ウソ」「ウーソちゃん?」男がからかうように言ったが、少女は応えない。「きぼーがおか、こんな淋しいところじゃない」希望ヶ丘、それは少女の住む街。そこはこんな何もないところではない。

2014-02-25 15:39:18
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「淋しいかな?」「さみしいよ」「まるで君みたい?」「……」「ああ、泣かないで。ごめんよ、意地悪して」男は少し笑ったが、やはり能面の笑みだった。そして、どこからか飴玉を取出して少女へと手渡した。

2014-02-25 15:40:04
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

少女は飴玉を口に含み、俯いた。男も何も言わず、ただ少女の言葉を待つ。「……パパ、居なくなっちゃったの」「そっか」「パパはどこかとおいところに行っちゃったんだって、ママが言ってた。あたしとママ、捨てられたの」

2014-02-25 15:41:42
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「死んじゃったんだね」「死んじゃう?」「ああ、なるほど」少女はまだ死の意味を理解していなかったようだ。男は微笑んだ。例の能面の笑みではなく、感情を持った笑みだった。

2014-02-25 15:42:17
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「大丈夫だよ、君のパパはね、君を捨ててなんかないんだ」「ほんと?」「本当さ、だから、君はこんなところに来ちゃいけないよ」「……これをあげる。魔法で奇跡な手鏡、ミラクルマジミラーだよ」

2014-02-25 15:43:46
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「カッコ悪い」「カッコいいよ」「カッコ悪い」「カッコいいって」「カッコ悪いよ……」「それは君のパパの目の代わりをしてくれるんだ」「カッコいい」「子供は素直が一番」愛おしそうに手鏡を撫でる少女を、男はやさしく見つめた。

2014-02-25 15:44:11
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「成長していく君の姿を見せてあげてね、きっとパパも見たかっただろうから」「うん!」「だから、君も忘れないでね」「うん?」「パパのこと、ママのこと、友達のこと。そして、僕のこと」

2014-02-25 15:45:09
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

次の瞬間、少女は布団の中にいた。枕は濡れている。昨晩、泣き疲れて眠ってしまったのだ。体を起こす。すると、枕元に手鏡が置いてあった

2014-02-25 15:47:26
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

自身さえも覚えてない不思議な夢から十年が経った。幼女は少女へと変わり、父の死の意味も知り、少女、須部詠(すべ・よみ)は十四歳を迎えた。いつものように古びれた手鏡で身だしなみを整える。目を覚まし、カーテンを開け、手鏡を覗く。父の死の日から常に続けてきた、普段通りのルーチンだ。

2014-02-26 00:36:45
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

しかし、詠の心には並々ならぬ決意が溢れていた。それは学生鞄の隣に置いた大きな大きな登山用のリュックサックと同じ程の大きな決意だった。今日も母はいつものように帰りが遅いだろう。その隙に、家を出る。出かけるんじゃない、家を出るのだ。俗にいう家出というやつだ。

2014-02-26 00:38:29
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

黙々と、真剣な表情でシリアルを口にする詠。母、須部トモカはその様子を奇妙だとは思わなかった。詠は少々思い込みの激しい少女であり、奇天烈な行動を取ることには評判があった。ただ、人様の迷惑になることと危険なことはやらないで欲しい、そう思うだけだ。

2014-02-26 00:39:54
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「行ってきます」「いってらっしゃい」母、須部トモカの声を背に受けて家を出た。これで母と会うことは二度とないだろうと考えると、世界にモザイクが生まれた。トモカはあまり外であくびをするような女性には育って欲しくないとしか思わなかった。淑女、と呼ぶには詠は精神的に幼かった。

2014-02-26 00:42:37
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「家を出るの」「ほーん」「もう絶対戻らない、私、今日から須部詠じゃなくなるの。ただの詠になるの」学校に来るなり、幼稚園からの友人である江都子(えとこ)へと決意表明を行う詠。「で」対して江都子の反応は冷ややかであった。どうでもいい、というよりは、驚くことにも疲れたような声色だった。

2014-02-26 00:44:06
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「今日泊めて」「言うと思った」小さくため息をつく。さて、どうしたものかと江都子は頭を回転させる。いつもの無理難題にしては、少々突飛すぎる。常識やこちらの迷惑について語ってもしょうがない。ひとまずは詠の行動の原因である、家族関係について探ってみることにした。

2014-02-26 00:46:18
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「あのね、詠。まずはあたしの話を聞いてね」「うん」江都子の言葉に素直に頷く詠。詠は素直で明るく、素行も良好だ。ただ、常識を身につけていなかった。「簡単に家族をやめるなんて言っちゃ駄目。おばさん、悲しむよ」「お母さんは悲しまないよ!私とパパのこと、もう忘れちゃったんだもん!」

2014-02-26 00:49:49
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

やはり親子喧嘩か。とは言え、それはおおよそ見当がついていた。しかし、『私とパパのことを忘れていた』とはどういうことだろうか。「おばさんが詠のこと忘れるわけ無いじゃん。たった二人だけの家族なんだよ」「違うよ!もうお母さんの家族は私じゃないの!」

2014-02-26 00:54:43
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「……どいうこと?」「お母さんに……恋人が出来たの」「……あー、うん」思ったよりも深刻な話であった。江都子は少し考えを変える。複雑な事情だ。どんな行動を取るのが正解だろうか。「…………」「お願い。ただ布団を貸してくれたらいいから」「……わかったよ、今日は泊まりなよ」

2014-02-26 00:55:22
1 ・・ 5 次へ