#リプくれた人でプリキュアパロやる

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さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

家庭環境に首を突っ込むべきではないのかもしれない。だが、詠と江都子は家族ぐるみの付き合いをしている。ならば、詠が暴走してしまう前にトモカと連絡を取ってほとぼりが冷めるのを待つべきだろう。「ありがとう、エドちゃん!」「うん、まあ、うん」

2014-02-26 00:57:38
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

幼子のように笑う詠に、少し不安になる。詠とトモカが喧嘩をするなど一度もなかった。お互いに、親子間の仲直りの仕方など知らないはずだ。「……なるようになるとしかね」「何がだ」「うわ、びっくりした」

2014-02-26 00:58:03
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

背後からかかった声。「あ、どっちんだ」「……その呼び方、やめろ」長身痩躯、短い髪を東道怜(とうどう・れい)が不機嫌そうに眉をしかめる。男子生徒と比べても高い部類に入る長身とは対照的に、中学二年生にしてはいささか発育不良な胸から斜めがけのバッグを外す。

2014-02-26 00:58:18
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「家出すんの?」「聞いてんじゃん」「聞こえたんだよ、あたしが盗み聞きしたみたいに言うな」ぶっきらぼうに答える。「無理だろ、須部に家出なんて」「無理じゃないよ!」「無理」「無理じゃない!」「無理だよ、炊飯器も使えないような奴に家出なんて」「……無理じゃない!」

2014-02-26 01:02:29
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「ちょっと、東堂さん……冷たくない?」「……実際、無理だろ。須部に家出なんて。猫がねこふんじゃった引けると思うか?」それだけ言うと怜は椅子に腰掛けた。「……エドちゃんもそう思ってるの!?」「えぇ……なんでそうなるの?」いきなり向いてきた矛先に動揺だけを覚える江都子。

2014-02-26 01:03:59
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「ちょっと、冷たくない?」「……実際、無理だろ」それだけ言うと怜は椅子に腰掛けた。怜なりに「……エドちゃんもそう思ってるの!?」「えぇ……なんでそうなるの?」いきなり向いてきた矛先に動揺だけを覚える江都子。正直無理としか思ってないが、それを口にすれば余計ややこしくなる。

2014-02-26 01:04:48
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「もういいよ!い、家出するんだから、学校なんて余裕でサボっちゃうもんね!赤髪っちのところで買い食いだい!」「あ、ちょっ、マジで!?ヤズ先生怒っちゃうよ!?」「家出するからいいの!」それだけ言うと、詠は駆け出した。 流れこんでくる生徒たちの流れに逆らって学校を飛び出す。

2014-02-26 01:06:22
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「って、ことあったんだよ。みんなひどいと思わない!?」「そうだねぇ……」短く刈り込んだ髪と瞳を隠すサングラスをしたいかにも妖しい赤髪の男へと愚痴を垂れ流す。男の名前は誰も知らない。ただ、赤髪と呼ばれている。彼は黒塗りの屋台ワゴンで営業している移動喫茶『真夏の夜の夢』の店主だ。

2014-02-26 01:10:26
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

アイスティーを折りたたみのテーブルに置き、腰を曲げてストローに口をつける詠に対し、ただうんうんと頷きながら相槌を打っていた。「でもさぁ、みんな詠みんのこと心配してるんだよ」「心配するのがひどいんだよ!私、そんな子供じゃないし!」その言葉こそが子供の証であることに詠は気づかない。

2014-02-26 01:11:43
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「ま、詠みんの成人<反抗期>祝ってことで。ほら、アイスティーしかないけどいいかな?」「ありがと!赤髪ちゃん大好き!」すでに三杯目となるアイスティーに口をつける。砂糖、ミルクともにたっぷりだ。「……お母さん、なんで恋人なんて作ったんだろ」「うーん」「パパが居たのに」

2014-02-26 01:17:58
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「大人は淋しいからね、人肌恋しくなっちゃうのさ」「淋しいの?私が居るのに?」「詠みんだって、お母さんが居るのに今は淋しいだろ?」赤髪は笑う。詠は笑わない。「アイスティーでも飲んでさ、のんびり考えようよ。人生長いんだしさ」

2014-02-26 01:21:47
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

真夏の夜の夢から離れ、詠は一人考えていた。確かに、母との生活は満たされていたが、同時に淋しさもあった。 何かが欠けていることは、本能的に悟っていた。うつむき、脚を止める。「……………………よし!決めた!」家出は明日からにしよう。人生は長いんだから、今日も明日も同じだ。

2014-02-26 01:23:27
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「明日から本気出ーす!」詠はおおきく顔をあげて、雄叫びをあげた。女らしさという言葉から遠い少女でもあった。昼間だというのに星が光った。星すらも詠の前途を祝して「……ぉぉおぉぉおおおおおお!!!」 昼に星が光りますか?いいね?

2014-02-26 01:25:25
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「い、痛い……」「す、すまぬ……すまぬ……全てはイノッチが……」空に光ったもの、それは星ではなかった。ポフという奇妙な音を立てながら顔にぶつかった物体を詠は目を丸くしながら引き離す。「君、なに?」「俺、康一君」「……」

2014-02-26 01:27:25
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「街頭テレビ見てたらトラックに吹き飛ばされた……イノッチが面白すぎるからいけない……」「テレビって……250mぐらいあるよ、あのテレビのある交差点から、ここ」「死ぬかと思った」普通は死ぬと思う。

2014-02-26 01:28:09
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「で、君、なに」「俺、康一君」「私、詠」「よろしく」「で、君、なに」「俺、康い」「もういいよ」 詠がツッコミに回ったのは生涯初のことであった。 「君、羊?」「羊じゃねーよ!康一君だっつんってんだろ!耳不自由な人かお前!?」

2014-02-26 01:28:53
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「なんていうか、現世面白すぎんね。誘惑多いよ。どこにもカラオケあるとか神だわ」「私は面白くないけどね……いや、康一君のことは面白そうだとは思うけど……」「なに?ハッピーじゃないの?駄目だよそれ。笑ってないと、良い明日は来ないよ」羊ではない康一君なる物体は偉そうだった。

2014-02-26 01:31:32
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「ほら、元気出せって。あそこにもいい年こいてハッピーなカップルも居るんだしさ。今日だけは俺の胸貸してやんよ」「べ、別に恋人とか欲しいわけじゃないし……!エドちゃんもどっちんも私にはまだ早いって言ってるし……!」恋人、それは詠にとって物語の中だけの存在だった。

2014-02-26 01:34:10
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

だが、一方で、妙にリアルな言葉になっていた。先日、恋人出来たと母から聞かされた時。その人と結婚も考えていると言われた時。物語の中から『恋人』は飛び出してきた。さながら、悪夢のように。「……あ」そして、現実に居る限り、常にその存在は付き纏う。トモカが恋人と並んで歩いていたのだ。

2014-02-26 01:35:35
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「いいとしこいてハッピーだねぇ、甘酸っぱいねぇ。大人だからってドロドロする必要なんてないよな」康一君は手元の本をパラパラと読みながら嬉しそうに言う。悪気はなかった。しかし、その言葉は詠を傷つけるに十分なものだった。

2014-02-26 01:36:44
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「……幸せそう」詠の見たことのない顔だった。いや、遠い昔に見たことのある顔。父と、一緒に居た時の顔。満たされた顔。忘れていた、忘れていたかった顔。 「……み~つけた」

2014-02-26 01:37:31
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「忘却の香り、見っけ」「ゲェー!お前は!」見知らぬ声と、康一君の声が重なる。悪意と、恐怖の声だった。「ぼ、忘却のウッカリデス!」「地図んところの妖精じゃないか」「ぼ、忘却って……この子を狙ってんのウッカリさん!?」

2014-02-26 01:40:27
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

「彼女は忘れたがってるからね。ならば、忘れさせてあげようじゃないか。それが僕の優しさ」「なにが優しさだよ!」「見てるだけでいいさ……さあ、耳を済ませてごらん」チク、タク、チク、タク「さあ、巻き戻るよ。君の時間が……」

2014-02-26 01:42:01
さすらいのヒモ🔞 @7WJp_Ebou

時計の針の音が響く。「させねえって!」それを遮るように康一君が背中に背負った薪を投げつける、しかし、ウッカリデスは意に介さない。「弱すぎですな」チク、タク、チク、タク「戻るよ、戻るよ……君の時間が戻る……君は、どんどん戻る、子供、赤ん坊、お母さんの中……」

2014-02-26 01:43:13
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