ドリル・イェーガー＃３

劉度 @arther456

「敵艦沈黙！」「油断するな、第二波に備えろ」局地戦闘支援艦・轟天号は、既に三隻の巨大駆逐艦を撃沈させていた。しかし艦長の神宮司に油断はない。何しろ蔵王が氷山空母姫・ハバクックを倒せなければこの作戦は失敗なのだ。48

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「……ッ！？艦長、あれを！」見張りが叫んだ。指を指した方向に神宮司は双眼鏡を向けようとして、止まった。双眼鏡を通さなくてもあれは見える。海上に突如として現れた、氷の巨人だ。「何だあれは」「魔力性質一致！氷山空母姫です！」「100m、いや、120mはあるぞ！？」49

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氷の巨人が腕を振り下ろす。砲弾が着弾したような巨大な水柱が上がった。「轟天号より蔵王へ。状況を報告されたし！」『こちら蔵王！目標が氷を身に纏って巨大化した！一度距離をとって……クソッ、追ってきた！』氷の巨人が轟天号へ向かってくる。追われる蔵王より遥かに大きい。50

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「左舷電子砲用意！蔵王の後退を援護する！」「はっ！左舷電子砲用意！」轟天号の主砲は冷凍砲である。氷の巨人に撃っても意味がない。「目標、射程内！」「てぇーッ！」左舷からレーザー光線が発射され、巨人の肌を削り取る。大したダメージではないが、巨人の気を引くことができた。51

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「艦娘１、接近！陸奥です！」蔵王の方から一人の艦娘が近づいてくる。「こちら第一艦隊旗艦、陸奥よ！艦長、敵を引きつけつつ後退して！私が援護するわ！」「感謝する！」轟天号が進路を変え、氷の巨人から逃走し始める。時折陸奥が砲を撃つが、氷が分厚すぎて歯が立たない。52

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『蔵王より轟天号へ！敵の解析が完了した！』蔵王から通信が入る。『あれは鎧だ。巨人の胸部にハバクックの本体がある。そこに直接ダメージを与えない限り、氷の体は再生するぞ』「なるほど。打開策はありますか？」『……無い。火力不足だ』「ぬう……っ！」53

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「艦長！敵に動きが！」振り返ると、氷の巨人が再び腕を振りかぶっていた。その手には、巨大な氷山。「進路、マル・ヨン・ゴー！衝角起動！その後、全員衝撃に備えろッ！」ドリルが回り始めた時、巨人が手に持った氷山を投げた。圧倒的質量の氷が、放物線を描いて飛んでくる。54

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氷は轟天号の前方に着弾した。凄まじい衝撃が船体を襲う！「ぬおおっ！」更に氷山にドリルが突き刺さる。ドリルは氷を抉り始めるが、追われている状況では致命的なタイムロスだ。巨人が迫る！腕を振り上げる！『やめろぉ！』振り下ろした腕に陸奥の一斉射撃が命中する。腕は逸れたが止まらない！55

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CRAAAAAASH!「ぬおぉっ！」凄まじい衝撃が轟天号を襲った！轟音と閃光に目が眩むが、何とか気を取り直し、神宮司は怒鳴る。「被害状況、知らせっ！」「ッ、各ブロック、被害状況報告！」外を覗いた神宮司は絶句した。轟天号最大の武器であるドリルが、無くなっている。56

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「艦首機関室、応答しろッ！」返事はない。辺りを見渡すと、先ほどの氷山を見つけた。ドリルは突き刺さったままだ。「艦前方消失！衝撃でメイン機関室が損傷！副砲も半分が駄目になっています！」副長が叫ぶ。隔壁のお陰で浸水は免れているが、戦闘不能。しかし敵は目の前にいる！57

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『神宮司大佐！早く逃げて！』陸奥が砲を連射するが、氷の巨人の圧倒的質量を貫けない。「機関全速後退！少しでも船を動かせ！」だが、轟天号が動くよりも、巨人が腕を振り上げるほうが早い。第二撃が艦橋に振り下ろされるまさにその時、巨人の動きが止まった。何かを見つめている。58

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『なんとか、間に合ったようだな』通信が入った。陸奥でも、提督の声でもない。若い男の声だ。神宮司を始め、ブリッジにいる全員が、巨人と同じ方向を見やる。天気は快晴。冬空の太陽を受け、洋上に立つ鋼の巨人の体が輝いた。ジプシー・デンジャー。米国の誇る、人類最強の機甲戦士である！59

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【ドリル・イェーガー】＃３おわり＃４へ続く

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～話の内容には全く関係ない元ネタのお話～ 空母『レイ・ハリーハウゼン』の名前は同名のアメリカの特撮映画監督より。ストップモーション・アニメの技術を確立させた、モンスターの神様。パシリムのラストにも名前が出てる。

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～元ネタその２、オペレーション・アララト～ アララトは旧約聖書に出てくる山の名前。ノアの方舟は洪水の後ここの山頂に漂着した。ノアは洪水が引いたかどうか調べるため、最初にカラスを放ったが帰ってきた。次に鳩を放ったところ、帰ってこなかったので洪水が止んだことを知った。

劉度 @arther456

……で、なんでこれが作戦名になったかっていうと、何故か『ハバクック』を脳内で『方舟を意味する単語』と誤変換してしまい、そのまま文を書いてしまったから（