ロマさんの文章

ロマネスコ @romanescox

鎧を切りつけた刃から火花が散る。完璧に敵の虚を突いた。しかし『ハガネ』の装甲には1mmの傷すら確認できない。流石はランキング２位…その防御力は尋常ならざるものであり、武器自体の強化にポイントを振っていない自分では、まさに太刀打ちできない。

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「その程度かァ！？新人！！」 ハガネの岩をも砕く拳打！回避の為のスキルアイコンを開く間もなく、その豪腕がボディを穿つ。一瞬呼吸ができなくなるほどの衝撃が身体の芯をかけ登り、意識が確かに寸断されたのを感じた。

ロマネスコ @romanescox

端の壁まで俺の身体はブッ飛ばされ、強かに背中を打った衝撃で手放しかけていた意識を無理矢理取り戻させられる。虚ろな目でＨＰバーを確認すると、今の一撃で2/3の体力が消失していることに愕然とした。

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「どうした？立てよ。お前もライダーだろう？今の攻防程度で戦意喪失なんざ！」挑発めいた言葉で語りかけながら、自らの両拳を打ちつけて重々しい音を鳴らすハガネ。こいつの言う通りだ。

ロマネスコ @romanescox

ここで負けるわけにはいかない。俺はこのエリアでＨＰを喪失したプレイヤーがログアウトせずに『死体』という状態で残像し続けるのを見てしまっている！恐らく、これは仕様外の状況！常識外の環境！

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スキルスロットの中から俺が唯一取得している攻撃スキルを選択する。この時点でハガネを打倒することは不可能だということは分かった。俺とあいつではレベルが違い過ぎる。ならば、こちらの全力攻撃で一瞬でも隙を作り、戦闘領域外へ脱出する他ない。

ロマネスコ @romanescox

この世界における『スキル固有システム』には感謝せざるを得ない。俺の能力は俺だけのものであり、百戦錬磨のハガネですら今から自分に向けられる攻撃は初見なのである。おぼつかない足取りで立ち上がった俺は、剣をハガネに向ける。正眼の構え！

ロマネスコ @romanescox

「正面からこの鎧を断てるとでも！？」ハガネが吠え、突撃してくる。こちらも駆け出して剣を振り上げる！間合い、距離にして８ｍ弱！身体能力が極限上昇している俺達にとって、それは目と鼻の先じみたものである！

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ハガネは空中で俺の剣を殴って弾き、もう一方の拳でトドメをさそうとしているようだった。もしそれが成立すれば確死必殺！避けねばならない！この刃が、弾かれることだけは！

ロマネスコ @romanescox

緊張状態により限り無く引き伸ばされる一瞬！ゆるゆるとおぞましく流れる時間の中で互いの視線が交錯する。このトップランカーにとって、俺は当然のように排除すべき虫けらに過ぎない。だが、この一瞬においてのみ、大なり小なり…策を持っているとい点で俺達は平等！同じ戦士なのである。

ロマネスコ @romanescox

「なにぃ！？」驚愕するハガネ！何故か！？己の体勢が若干崩れたから！何故か！？己の拳が予想外なことに空を切ったから！何故か！？捕らえるべき刃がそこに無かったから！何故か！？俺が！その剣を手放したからである！！

ロマネスコ @romanescox

能力『操り狩人の柄（ﾊﾝﾄﾞｰﾙ）』！スキル解放中のみ、俺は剣を直接持たずとも自在に扱える！故に、手離された剣は完璧だったタイミングで振るわれた拳を避け、ハガネに直撃する！しかも、狙うは装甲の継ぎ目！いかにヒヒイロノカネに包まれた戦士といえど、ここは明白たる死角！

ロマネスコ @romanescox

致命傷を求めようというのではない。たった数ドット分のダメージでよいのだ。それで、状況は逆転する！肩部装甲の継ぎ目にぴたり！吸い込まれるように落下する剣。必然的に直撃！成功である。俺の策が相手を討った！

ロマネスコ @romanescox

しかし、ハガネは呻き声の一つも漏らさず…恐ろしく冷静な指摘を俺に放つ。「素人が…お前、今『やった』と思っているのか？」肩に剣を受けたままその腕が振り上げられる！「やったと思いこんでいいのはァッ！」迫る危険！信じられない！相手の身体には今の攻撃でもかすり傷すら与えられなかったのだ！

ロマネスコ @romanescox

「確かに敵を！殺しきった時だけだァッッ！！」豪腕爆裂！必殺！必殺である！

ロマネスコ @romanescox

続く！