国際シンポジウム「現代美術をコレクションするとは?」

国立国際美術館で開催された国際シンポジウム「現代美術をコレクションするとは?」 @azusa_hashimoto さんによる振り返り。 [シンポジウム概要] 日時: 2014年3月1日(土) 10:00ー16:30 続きを読む
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az @azusa_hashimoto

3/1に勤め先で開催された国際シンポジウム「現代美術をコレクションするとは?」を聴講しました。企画者は主任研究員の植松由佳です。英国テート美術館の保存部門のキュレーター二人をゲストに迎えて行なわれました。プログラムはこちら。http://t.co/CtHIrpLKQm

2014-03-03 01:11:33
az @azusa_hashimoto

(続き)現代美術を扱う美術館は、絵画や彫刻といった伝統的なジャンルに加えて、写真、映像、パフォーマンス、プロジェクトなど、さまざまなフォーマットの作品を「収集」「保存」「展示」していますが、その方法論は確立しておらず、各館手探りで工夫しながら行なっているというのが現状です。

2014-03-03 01:16:24
az @azusa_hashimoto

(続き)作家や作品、あるいはそれを成立させる社会的コンテクストについて議論する機会、すなわち収集の対象となる作品の芸術的価値についての議論は多々行なわれてきましたが、それを「どうやって」収蔵し保管し展示するのか、ということについの議論は、全国美術館会議などのほぼ限られた場でしか

2014-03-03 01:20:42
az @azusa_hashimoto

(続き)行なわれてきませんでしたし、ましてや新しいメディアを用いた作品について考え方や方法論をシェアする場はありませんでした。その意味で、今回のシンポジウムは(勤め先で行なわれたという意味では)手前味噌ながら、大変素晴らしい機会でした。現代美術を扱う全国の美術館から学芸員が参加し

2014-03-03 01:22:41
az @azusa_hashimoto

(続き)意見を交換しただけでなく、テート美術館のケース・スタディから大きな学びを得ることができました。テートは「タイム・ベースト・メディア」という考え方を導入し、コンサベーションチームが適切な収集・保存・展示を戦略的に行い始めて15年以上が経過しています。

2014-03-03 01:26:53
az @azusa_hashimoto

(続き)タイム・ベースト・メディアというのはビデオやスライド、フィルムやサウンド、コンピューターなどテクノロジーに依拠した作品で、表現様式に時間軸を伴います。厳密な定義は作品解釈次第かもしれませんが、いわゆる映像作品や、映像伴うインスタレーション作品、ティノ・セーガルのような

2014-03-03 01:28:02
az @azusa_hashimoto

(続き)パフォーマンス作品なども含まれます。日本ではさすがにパフォーマンス作品自体を収蔵した例はないようですが、プロジェクトを作品として収蔵した例は21美などにありますし、また反芸術以後多様な素材と技法を用いた長期的な保存を想定していない作品や、コンピュータープログラムを

2014-03-03 01:30:55
az @azusa_hashimoto

(続き)用いた作品、映像作品のデータ問題、メディアコンバートの問題、再生機確保の問題、再演性の問題など、さまざまな作品の形態に美術館のレジストレーションや保存・展示がどのように対応していくのか、各館の取り組みが紹介されたり、意見が交換されました。

2014-03-03 01:34:03
az @azusa_hashimoto

(続き)もちろん日本と欧米の美術館組織の組み立ては違います。日本の学芸員はジェネラリストであることを求められ、例えば私の勤め先には学芸員は8名程しかおらず、全員で展覧会を企画し、収蔵品を管理し、貸出し業務(うちは多いです)にあたり、その他ほんとうにさまざまなことをやっています。

2014-03-03 01:39:02
az @azusa_hashimoto

(続き)欧米の大きな国立館でしたら、例えば8名キュレーターがいれば、同数かそれ以上のレジストラー、コンサバター、リサーチャー…とキュレトリアルチームだけで数倍の規模になります。嘆くのは簡単なことなのですが、問題は日本の現状にあわせて何ができるのかという現実的解決だと思いました。

2014-03-03 01:42:16
az @azusa_hashimoto

(続き)今回のシンポで紹介されたテートの取り組みでとりわけ参考になったのは、収蔵前にpre-acquisition reportを作成するということです。作品の詳細、展示フォーマットの詳細、機材リスト、展示に必要なスタッフ人員と時間、展示空間の詳細、消耗品リスト(品番まで)、

2014-03-03 01:47:52
az @azusa_hashimoto

(続き)展示に必要な芸術的知識、電気系統の備考、メンテナンス項目、安全に関する項目などが基本になります。同時に、作家へのインタビューも録画します。例えば、作品のパーツが摩耗したときは交換していいのか、するとしたらどういう選択肢があるのか、あるいはしないのか。

2014-03-03 01:49:48
az @azusa_hashimoto

(続き)メディアコンバートをしてもいいのか、よくないのか。ブラウン管か液晶かみたいな議論もここに回収されます。詳細挙げるときりがないので省きますが、とても重要なのは、この段階で作品性をキュレーターとコンサバターがとにかく徹底的に把握するということです。

2014-03-03 01:52:56
az @azusa_hashimoto

(続き)作品性を正確に把握するために、作家からできるだけの言葉を引き出し、保存や展示に際するあらゆる可能性を確認していくそうです。収蔵に向けて動き始めてから実際に収蔵されるまでに、しっかりとした準備をして2年近くかかることも珍しくないとおっしゃっていました。作品性の把握は、

2014-03-03 01:56:38
az @azusa_hashimoto

(続き)さまざまな環境下で十全に展示するために非常に重要となります。その際に展示に伴うリスクも徹底的に洗い出します。鑑賞者に及ぼすリスク、作品そのものに及ぼされるリスク、周囲に展示される作品へのリスク。こうしたことを積極的に明らかにし、それをマネージすることで作品を生かす、

2014-03-03 01:59:29
az @azusa_hashimoto

(続き)という態度は、日本の美術館に欠けていると痛感しました。危ないからやめる、クレームがきそうだからやめる、わかりにくいから展示しない、という消極的な話がよく聞こえてくるのですが、作品性を正しく理解でき、説明が可能ならば、そうしたリスクは積極的にマネージして引き受けるべき。

2014-03-03 02:02:19
az @azusa_hashimoto

(続き)つまり作品を理解し鑑賞する力、作家に対するリスペクトの態度のボトムが違うんだなあと反省しました。収蔵前のこうした手続きをきちんと踏むことによって、美術館を取り巻く組織や鑑賞者への説明責任を果たすことができるというわけです。

2014-03-03 02:05:40
az @azusa_hashimoto

(続き)もうひとつテートからの発言で大きくうなずいたことは、恒久性のない作品を収集「しない」ことは、アートにおけるひとつの大きな部分を失うことになるだろう、という考え方が紹介されたことです。もちろん美術館に収蔵されることが美術の全てではまったくありませんが、後に参照される可能性を

2014-03-03 02:10:41
az @azusa_hashimoto

(続き)考えた時、やはり美術館はひとつの可能性の場となります。何か「する」ことに伴うリスクは想像しやすいですが、「しない」ことに伴うリスクは見えにくいですから、ちょっとはっとした瞬間でした。普段、目先の業務に溺れていると、こういう発想がどうしてもできなくなります。苦笑

2014-03-03 02:13:29
az @azusa_hashimoto

(続き)とはいえそんな事前調査を十全にできるような人件費予算がついてたら苦労しないよね、とやさぐれることは簡単なわけなんですが、そこはどう粘って行くかってことで、地道に取り組んでいくしかありません。完全なる斜陽産業である日本の美術館がなんとかやっていくために、個人的な見解ですが、

2014-03-03 02:17:13
az @azusa_hashimoto

(続き)理想主義になりすぎないこと、原理主義に陥りすぎないこと、過去の経験を尊重しつつも経験主義に陥りすぎないこと、が大事ではないかと感じました。十分な時間と予算がないなかで、理想を求めすぎても挫折するだけですから、まずははずせない部分を可能な範囲で押さえるような取り組みが

2014-03-03 02:19:42
az @azusa_hashimoto

(続き)重要かと思いました。また作品がどのジャンルにあてはまるかということをしつこく同定するような議論に必要以上にすることは、積極的な収蔵においては足かせになってしまうように思いました。それと関連しますが、いわゆる「前例」にとらわれすぎると、新しい表現形式の作品を

2014-03-03 02:26:39
az @azusa_hashimoto

(続き)積極的に収蔵するのは難しくなってしまいます。それぞれの作品が大変ユニークなタイム・ベースト・メディアにおいてはさまざまな考え方があるため、培った経験則は重要ですが、それは作品を殺す方向でなく、生かす方向で当てはめていくのが理想ではないかと思いました。

2014-03-03 02:28:09
az @azusa_hashimoto

(続き)最後の方は個人的な見解でした。夜中に長々と連続ツイートすみませんでした。ほんとはRealKyotoのブログにまとめようかなと思っていたんですが、なんだかTwitterの方が呟きやすくてこんなになっちゃいました。またしばらく静かになります。笑 おやすみなさい!

2014-03-03 02:29:54
az @azusa_hashimoto

昨夜は夜中の大量のツイートで、たくさんの方がRTしたりお気に入りにして下さり恐縮です。あそこまで長くなるつもりはなかったので、本当に読みにくかったなあと後から反省…。

2014-03-04 00:04:15