茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1191回「正直が、いちばん」

脳科学者・茂木健一郎さんの3月11日の連続ツイート。 本日は、今朝起きて、寝転がりながらネットを巡回して考えていたこと。
4
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイートをお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、今朝、起きて、寝転がりながらネットを巡回して考えていたこと。

2014-03-11 06:48:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(1)Honesty is the best policyという言葉がある。「正直が、一番」ということわざ。日常生活においてはもちろんだが、科学は、この「正直が、一番」という言葉を、何段階も高めて、深めて、一つの方法論にすることで、発展してきた。正直こそが、科学の本質である。

2014-03-11 06:50:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(2)科学における「正直」は、日常におけるものよりより厳しい。自分の良心に照らして正しい、というだけでは足りず、その自分の良心の前提になっていることすらを疑う。さらに、論文の査読者にも徹底的に疑ってもらう。そのようにして、みんなで、「真実」に到達しようとするのだ。

2014-03-11 06:51:34
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(3)このような、科学における(理想化された)正直の政策は、世間一般とは違うから、当然齟齬が生じる。世間は、画期的な成果が出たと聞けば、ドラマティックな物語にしたがるし、スターを作って、あがめようとする。しかし、そのような欲望の方向と、科学の本質は違う。

2014-03-11 06:52:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(4)科学におけるスターは、世間が望むような振る舞いはしない。控え目だし、自分の成果について、最後まで慎重で、懐疑的である。派手なジェスチャーで、結果を喧伝するということはしない。世間は、そんな科学者の振るまいにがっかりするかもしれないが、底に徹する正直さが、科学なのだ。

2014-03-11 06:54:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(5)昨日、山梨大学の若山照彦教授の会見を、NHKのニュースサイトや、新聞各社のウェブで見て、このような方ほど、「正直の政策」という科学の精神を体現した、本当のスターであると感じた。自分が共著者として名を連ねた論文を、撤回することを提案している。

2014-03-11 06:56:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(6)若山教授の説明は、きわめて冷静かつ論理的である。自分の担当した実験については、確信がある。しかし、その前提になる科学的事実について、いくつかの疑念が判明し、確信が持てなくなった。だから、論文を一度撤回して、精査して再び投稿すべきであると、若山教授は言う。

2014-03-11 06:57:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(7)ここで注目すべきは、「撤回」という提案は、あくまでも技術的な視点からのものであって、そこには何らの価値判断はないということである。論文が主張している科学的事実が、掲載されているデータでは裏付けられない(データそのものの出自に疑いがあるから)と、若山教授は冷静に述べる。

2014-03-11 06:58:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(8)私は、若山教授とは面識がないが、素敵な方だなと思った。NHKのニュース映像では、黒っぽい服を着ているが、マスコミ各社との会見では、「HAWAII」と大きく描かれたパーカーを着ていらっしゃる。実験室での日常をほうふつとさせる、素敵なコスチュームだった。

2014-03-11 06:59:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

しい(9)今回のSTAP細胞の騒動が、どのような結末を迎えるのかは、わからない。しかし、今回の若山教授の判断、行動は、「正直の政策」という科学の精神を伝えるのに、すばらしい教師であったと思う。短期的に自分の身を守るためにウソをつくことは、長期的な利益にはならないのである。

2014-03-11 07:01:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、以上、連続ツイート1191回「正直が、いちばん」でした。

2014-03-11 07:01:58