- ColorfulOberon
- 1186
- 0
- 0
- 0
【空中の叡智の間】 『扉』の先、儚き雲に浮かぶ無数の書架、この『場』へと導かれましたるは、このお二方。 @Orange_dedie 《橙》のディーダイ @Blue_shalciel 《青》のシャルシエル #七色妖精
2014-03-08 18:01:46『扉』が現れる。滅びゆく世界でなお、鮮やかな色を湛える六色の前に、その『扉』が現れる。 「六色の『王候補』よ。『扉』を開き、『玉座』を望め。」 誰の言葉か、音なき声が、あなたを導く。 さあ、『扉』を開かれませ。どうか、いずれの方も、悔いの残らぬ『話し合い』を。 #七色妖精
2014-03-09 18:00:47扉が開かれ、喧しい軋み音で啼いた。 其の扉が、間もなく勢いつけて閉じられ、扉の縁と枠の打ち合う喧噪が響く。 ややあって訪れる第三の騒音は、音感の有る者には耐え難い程に音程のズレた鼻歌。 「おお、おぉ。こりゃー広いなァ!」 自然に語尾を上げながら、橙色が雲の上で跳ねた。
2014-03-09 19:19:10目の前に現れた扉。たった一人の王を選ぶために世界が用意した入口を、柔らかく目を細めて見ていた。 「行くか」 緊張感に欠けた、のんびりとした声音。扉を開けば、そこは雲の上。幾重にも並び立つ本棚に目を見張る。 「これは、すごいな。いつまでもいられそうだ」 一冊を手にし、ぽつりと。
2014-03-09 19:26:55響いた喧噪に視線を向ければ、橙色が視界に飛び込んだ。 「やあ、はじめまして。僕は《青》のシャルシエルというんだ。貴方の名前を訊ねてもいいかい?」 のんびり、ほのぼの。そんな形容がしっくりとくる口調で、穏やかに微笑みながら問いかけた。
2014-03-09 19:27:00喧噪とは対極な先客の声に、忙しなく飛び跳ねるのを止めて立ち止まる。 一度きょろりと見回して瑞々しい青色を見つけ、目を見開き。犬歯を覗かせ、穏やかな様相へと人懐っこい笑みを浮かべて。 「よ、そこに居たのか。悪ィ悪ィ、青くて一瞬見落としちまった!」→
2014-03-09 19:35:57悪びれなく言うと、跳ねた歩調で距離を詰めるべく駆け出した。静穏の色が距離を変えなければ、此方が立ち止まるのは数歩の距離を開いた所。 「おう、こっちこそ初めましてだ、シャルシエル、《青》の候補さん。オレはディーダイ、《橙》のディーダイ。よろしくな」
2014-03-09 19:41:15「《橙》のディーダイだね、よろしく」 見落とされたらしいことは気にせず。むしろ慣れっこだ。いつでも楽しそうな人だな、という感想を人懐っこそうな表情に抱く。 「さっそくで、悪いのだけど。貴方は王になりたい?」 ことり、首を傾げて、純粋な子供のように問う。
2014-03-09 19:56:17指を開いた片手を差し出し、握手を求める仕草。 邂逅を喜んだか、青年の感想を見て取ったか、或いは両方か。至極、嬉しそな侭。 「そりゃなりたいさ、勿論」 同じ角度に首を傾げ返しながら、目を瞬かせ問いに答える。 「シャルシ……悪ィ噛む、シエルでイイか。なりたいのはお前もだろ?」
2014-03-09 20:14:01「うん、シエルでいいよ」 やわらかく頷いて、差し出された手を取り握手。そして、困ったように眉尻を下げ。 「それがね、僕自身は、そんなに王になりたいわけじゃあないんだ。ディーダイ、貴方が王になりたいというなら、貴方が先に進むべきだ。と、思う」
2014-03-09 20:19:57「おう、あんがとな、シエル。オレもディーとかダイでいい」 王になりたいのではないのか。その問いへの答えを聞き、怪訝そうに眉間にシワを寄せた。取って貰った手を握り、そっと緩め、少年は腕組みの姿勢を取った。首を逆側に大きく傾げて。 「じゃ、シエルは何で此処に? 理由、無いのかよ?」
2014-03-09 20:25:58「そうだね、じゃあディーと呼ばせてもらおうかな」 自身の言葉にうん、とひとつ頷いて。何故此処に、という問いには恥ずかしげに頬を掻く。 「僕に、理由らしい理由は、ないんだ。強いていうなら、選ばれてしまったから」 自分の意思とは関係なく、王候補に選ばれたから、来たのだと。
2014-03-09 20:36:13「おう!」 大きく頷き返した。頬掻く仕草を暫し見つめ、今度は顎に手を当て。 「理由も無く、来られるモンなのか? ……あ、嘘言ってるって意味じゃ無いぞ!疑問だっただけ!」 両手をバタつかせ、それから考え込む。青年の手元に視線を落とした。 「じゃ、好きな事とかは? その、本とか」
2014-03-09 20:50:30きょとん、と一瞬、呆けて。 「『選ばれた』は、理由にならないかな?」 しょんぼり頭を垂れつつ、彼の視線の先にあった手元の本を見ればすぐに穏やかげな表情に戻る。 「そうだね、本は、好きだよ。学ぶことは、尊いから」
2014-03-09 21:03:29「……ナルホド。いや、なるわ。凄ェ理由になる」 その一言を耳に目を見開いた後、感嘆を混じらせた声で納得した旨を告げた。 本に移る視線に、目元を和ませ、にっかりと歯を見せた笑顔。 「そっか。シエル凄ェな。オレは文字とか、からっきしでさー」 読めるのかー、と、本へ腰を屈めて。
2014-03-09 21:16:05「よかった。ディーが納得のできるような理由が、答えられないかもしれないと、思ったから」 理由になる、と言われあからさまにほっとした表情を見せた。 「文字は、言葉とはまた違うものを伝えるから。ディーが王になったら、少し、学ぶといいよ」 彼が先に進むのが当然のように、あっさりと。
2014-03-09 21:27:13「いんや? お前が選ばれた理由も、ちょっとわかった気がするし」 隠そうともしない安堵の様子。少年は、そう受け取って、ヒュゥと口笛を吹いた。大層酷い音の。 「たとえば、どんな? ───いやまァ待った待ったちょっと待った、まだ時間は有ンだし、ちょっと待とう。な、シエル」 慌てた。
2014-03-09 21:38:28「そう?」 理由が分かったという彼の言葉にも、ずいぶん音の外れた口笛にも、はにかみつつ笑う。 「たとえば―そうだね。言葉は、その人を、その人の今を、如実に示すけれど。文字は遠い時間を、今に運ぶ。…えと、わかるかな」 自分の説明が説明になっているか不安で、付け足すように言葉を重ね。
2014-03-09 21:58:08そして、 「待つ?うん。ディーの言う通りまだ時間はあるから、すぐには行かなくてもいいと、思うけれど」 やはりディーダイが行くことを前提とした、少々ずれた返答をする。
2014-03-09 21:58:11「おう……んー? あー」 また一度、大きく頷き。それから説明に、唸り声。長考の結果、膝を打った。 「───わかった! シエルが今こうして喋ってンのはオレしか判んねーけど、今のを字にしといたら、オレが忘れても残る! どうだ!」
2014-03-09 22:08:17「いや、ああ、そーなんだけど……おう、いや、そうなんだけどそうじゃなくて、オレ、このままじゃ王になっても納得いかねーっ」 布越しに橙の頭を、ワシャワシャ掻きむしり。 伝えるにも、いかんせん伝えるに相応しい言葉や方法が見つからず、酷く落ち着きのない様子を見せて。
2014-03-09 22:13:27「ああ、それだ。ディーは解り易くするのが上手だね」 文字は、ずっと残る。その人がいたという証を残せる。 納得いかないと頭をかきむしる彼には、やはり不思議そうな顔をして。 「納得いかない?……ええと、僕が先に進むに相応しくない理由がほしい、とか?」
2014-03-09 22:24:01「よっしゃー! 褒められた!オレ凄ぇ!」 正解した!と、全身で喜んだ。両手でグッと握り拳。それも束の間、また考え込む。 「相応しくない……かぁ。なんかそれも違ぇ気がすんだけど、でも多分、そういう事なのかもなぁ。だってお前とオレとじゃ、王んなった時にすること絶対ェ変わるじゃん」
2014-03-09 22:39:23「そうだね、きっと、全く違う未来になるだろうね」 その未来を想像するかのように、虚空をぼんやりと眺める。 「ディーは、王になりたいんだよね。王になって、何がしたいの?」 僕には、それがないから。と付け加え。
2014-03-09 22:55:49「だろ?」 つられて虚空を見たが、何もない。首を捻った。 「オレね、王んなったら、みんな腹いっぱいにしたい! シエルは、ほんとに無いのか?」
2014-03-09 23:05:15