- ColorfulOberon
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「みんな、お腹いっぱい、か。うん。それは、いいね。皆しあわせだ」 微笑を深めて、こくりとまた頷く。 「僕は、……僕が、王になるところを、想像できなくて」 いつでも、どこでも、自分は輪から離れた端で、本を読んでいる。そんな気がする。 「僕にとりえなんて、ないし」
2014-03-09 23:15:16「僕みたいな、王になるのが想像できなくて、やりたいこともないような人より。きちんと、やりたいことがあって、皆をしあわせにするヴィジョンが見えている人が王になった方が、いいんじゃないかな」
2014-03-09 23:15:19「だろ?」 嬉しげに、誇らしげに。 けれど、とりえが無いと聞いては、険しい顔に。 「何言ってんだよ! シエルは文字が読めるじゃんか。そんで、沢山の本を読んで来たんだろ? それオレにゃ出来ねーぞ。それって凄ぇ事だろ。大体オレ、本読もうとしたらヘタすりゃ寝るぞ?」 捲し立てた。
2014-03-09 23:22:36「……すごい、こと」 本を読むことをそんな風に褒められたことはなくて、思わず頬を染めて表情が綻ぶ。 「ありがとう、そんな風に言われたの、初めてだ」
2014-03-09 23:45:16「おう、凄い事だ!」 大真面目に、大きく頷いた。綻んだ表情を見た少年は、目元も頬も、全てを緩ませて。 「シエルの回りの奴は、そんな凄ぇことに気づかなかったのか? いやそうか、気づいたから言わなかったんだな。きっとそうだ!」 力いっぱいの、おおいに違っていそうな結論。
2014-03-09 23:59:08「そう、なのかな。そうかもしれないね」 周りは書物談義をするような人ばかりだったけれど、自分よりも嬉しそうな彼をがっかりさせたくなくて、その結論に同意する。褒められたという事は事実なのだから。 「でも」 思い出してしまった、という風に瞼を伏せ。 「先にゆけるのは、ひとりだ」
2014-03-10 00:27:59「おう、きっとそうだって!」 シャルシエルの周囲が嫉妬に満ちた者達で溢れて居たかの様な思い込みも其の侭に言葉は続き、 「……────ああ、だからこそ」→
2014-03-10 00:51:36「だからこそ、シエル。オレは、王になりたくない、だなんて理由で扉を譲られたく無ぇからな。……何が出来るかも考えねぇウチに、お前にしかできない事もわかんねーうちに、どっちが相応しいなんて、比べられねーよ」
2014-03-10 00:53:33「そっか。……そうか」 ディーダイの言うことは尤もで。自分なりに一番良い選択をしていたつもりだったのだけれど、むしろその態度は彼にとって失礼だったのではないかと気づく。 「ごめん。僕は、貴方と、僕自身に、ちゃんと向き合っていたつもりだったのだけど、そうじゃなかった」 だから。
2014-03-10 01:38:23「もちろん! オレも知りたい!」 シャルシエルの思案に掛けた時間に比べ、安請け合いかと思われる様な即答を返して。 思い出した様に、その場で軽い跳躍。 「あ! アレだぞ、シエルはオレのやる気も、王になりたい気持ちも認めてくれたろ? そこは何も考えてなかったりしないよな? な?」
2014-03-10 01:55:33「うん。それは、もちろん」 彼の気持ちは、尊重したつもりであるし。 手始め、とばかりに唸る。 「そうだねぇ……僕が王になったら、何ができるかな」 本を読んで知識の持ち合わせは、あるけれど。それを運用できる知識がない気がする。皆をしあわせにできる、自分なりの方法が思いつかない。
2014-03-10 03:16:40「おう、だろ!」 よかった、と、安堵に息をつき。 静かに唸る音色を耳に。待つ間、ゆるゆるとハミングを立てて。 「───そだなァ。そんじゃさ、シエルは、王になったら、まず何が必要ンなると思う?」
2014-03-10 20:08:11「王に、必要なものか……」 再び、ううんと唸り。 「皆のことを想えること、かなぁ。皆がしあわせになれるように、気を配れるようになること?」 少なくとも、自分が民ならば。そんな王さまであってほしい。
2014-03-11 00:36:13「お前、そっから考えるんだなァ」 考える間と、その後の答え。へらと緩んだ、聞けて嬉しい、そんな顔。 「そしたら、王様が皆を想う……のは自分でやるこったから、いっか! じゃあ、皆に幸せになってもらうためには、シエルだったら、みんなに何をしようとする?」
2014-03-11 00:43:34「僕が?……僕がみんなにできることって、なんだろう……」 彼に導かれて、ゆっくりと、自分の思考をたどっていくような感覚。 「みんなになんて、きっと僕には一度にはできないから、少しずつ、手の届くところから、その人たちのお願いを叶えてあげたいね」 僕にできる限りのちからで。
2014-03-11 00:52:22「おう、シエルがだ!」 そうだ、と大きく首を縦に振る。 「はは、そーだな。叶えてくれるっつったら、きっとムチャなお願いしてくる奴とかいるもんな!」 きっと一度にぜんぶは難しい。言う通りだと。→
2014-03-11 01:01:36「いーやシエル、そんなことないって! だってお前は今、オレの願いをいくつか、叶えられるぞ?」 タン、タンと雲の上を弾んで。腰に手をあて、胸を張った。
2014-03-11 01:04:05「え?」 そんな返答は予想外で。微かに目を見開きながら、首をことり。 「僕がディーに?何ができる?」 その声音にはほんの、ほんのすこしだけ必死さが含まれている。
2014-03-11 01:13:12声を聞いて、向けた笑顔は、いかにも自信たっぷりの様相。蜜柑色の目は、露草色から空色を向き、無数の書架を見回す。 「シエル、オレさ。字って読めねーけど、ここに、どんな本があるのか知りたくってさ」 くるり一回転、青年へとまた笑う。 「聞かせて欲しい」 目は、真剣に。
2014-03-11 01:21:21「……そんなので、よければ。もちろん」 本に興味を持ってくれたのが嬉しいと言わんばかりに相貌をふにゃりと崩す。 無限に続くかのような書架の群れを見上げ。 「……その、ディーの真上から、そこまでのは、物語。お伽噺からつい最近のまで、だいたいなんでもあるね」 広い範囲を指しながら。
2014-03-11 01:41:04「反対側のこっちは、論文とか、ちょっと小難しいもの。それから……」 ぐるり、視線を巡らせる。 「あ、あっち側は、子ども向けかな?絵本が多いみたいだ」 頬をわずかに紅潮させながら、心底楽しそうに、そこにある本たちを説明していく。
2014-03-11 01:42:59少なくとも見目が年上の青年が、少年には、まるで褒められた子供の様に見えて、つられて頬を崩した。 「えっ、モノガタリ? これ全部が!?」 本は、大小様々あれど文字で埋め尽くされている事は知っていた。一冊だけでも大量の情報なのに、棚ひとつを埋め尽くす全てが、そうだと言うのか、と。
2014-03-11 01:49:16「ほえー……ろ、ロンブンってなんだ? あ、えほんってアレだろ、字がでかくて、きれいな絵で一杯だったぞ!」 説明を受ける度に見回す本は、厚みも大きさも、字の形も全て異なる。 「すげえ、すげえよ。お前、本当に、本好きなんだなぁ」 相当に驚いたのか、言った後に口が閉じていなかった。
2014-03-11 01:54:05