#トラ泊神戸支部~加古の過去語り編

トラック泊地神戸支部の提督や艦娘たちのお話。 今回は提督視点ではなく加古視点で、トラ泊神戸支部に第六戦隊の四人が着任したころの話です。
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ですか @desuka_desuyo

重巡寮の1室。古鷹型の部屋で、あたしは一人ベッドに腰かけていた。姉妹艦の古鷹は第6戦隊の馴染みである青葉と共に出撃しており、もう一人の馴染みで、青葉の妹艦である衣笠は遠征へと出ていた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 02:16:04
ですか @desuka_desuyo

静寂に包まれた部屋で、あたしは着任したての頃を思い返していた。泊地が設置され提督が配属されたばかりの時に、あたしはここに着任したのだった。それは重巡の中では最古参である摩耶に次いで2番手であった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 02:33:00
ですか @desuka_desuyo

まだまだ戦力的に乏しかった当時は、旧型艦であるあたしにも第1艦隊として出撃の命が下っていたが、それも摩耶の姉妹艦である鳥海や、戦艦たちの着任から、少なくなっていった。泊地で出撃する艦隊を見送ることが多くなった頃、同じ第6戦隊で馴染みのある衣笠が着任したのだった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 02:40:45
ですか @desuka_desuyo

衣笠は艦娘としての実装が遅れていたため、早期に着任となったことで提督も一目置いていたようだったが、それも正規空母の配属によって陰に隠れることとなった。そのためか衣笠も多く出撃することは無く、あたしとともに泊地でお留守番となっていた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 02:48:11
ですか @desuka_desuyo

泊地での待機時間はたいてい衣笠とのおしゃべり時間となっていた。その中でどちらの姉が先に着任するかなんていう一種の賭け事のようなこともしたのだった。そしてそれはあたしの勝ちとなった。 主力級の艦娘がそろっていくなか、あたしの姉である古鷹が着任したのだ。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 02:54:05
ですか @desuka_desuyo

「加古、衣笠、会いたかったよ。元気だった?」 そう言ってあたしたちのところへ来た古鷹はこちらの顔を見て微笑んでいたが、どこか寂しげな顔に見えた。それを見たあたしは、なぜか目の前の古鷹が昔と違うと感じたのだった。あたしの持つ記憶は艦船時代の古鷹であるはずなのにだ。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:00:23
ですか @desuka_desuyo

あたしはすぐに古鷹の違和感に気が付いた。もともと周りに気を利かせるくせに自分のことは全く顧みない節はあったが、今の古鷹はそれに拍車が掛っているように思えたのだった。古鷹はいつも周りの心配をして何か思いつめた顔をしているのを、無理やり笑顔で隠しているように見えた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:12:11
ですか @desuka_desuyo

あたしのだらけ癖もこの頃から本格的なものになったんだったかなと思い返す。それは周りに気を使っている姿ではなく素の古鷹である時間を増やそうとしたことの副産物であった。あたしは古鷹が自分にだけ気を張らずに接してくれることを利用したのだった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:20:25
ですか @desuka_desuyo

あたしがだらければ妹思いの優しい古鷹はあたしの面倒を見るためあたしと共にいる時間が増えるだろうと。そうすれば少しは気を張ってばかりの時間が減らせるんじゃないかと。そしてその考えはある意味正しかった。あたしといる時だけは、古鷹が昔のように笑ってくれたのだった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:23:53
ですか @desuka_desuyo

そんな時、この泊地に第6戦隊最後の一人が着任したのだった。 「あちゃ~。青葉が一番最後ですか」 あたしたちに会うや否や、青葉は頭を掻きながらそんなことを呟いた。衣笠は青葉が言い終わった途端抱き着いていた。頭を撫でながら甘えんぼの妹ですねぇなんて青葉が言っている。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:35:24
ですか @desuka_desuyo

「古鷹さんと加古さんもお久しぶりです。これでやっと第6戦隊全員揃いましたね。青葉嬉しいです」 青葉は本当に嬉しそうで、抱き着いたままの衣笠と戯れる。あたしも久しぶりの出会いに心が躍った。だが、古鷹だけは違った。 「どおして青葉はそんな顔をするの?」 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:40:07
ですか @desuka_desuyo

そう言ってじっと顔を見つめてくる古鷹に、青葉はたじろいでいた。衣笠もきょとんとした顔をする。たぶんあたしもだろう。 「青葉、そんな変な顔してますか?」 「変な顔じゃないけど……本心じゃないように見える」 古鷹の言葉に一瞬だけ青葉の顔が引きつったように見えた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:46:47
ですか @desuka_desuyo

「そんなわけないじゃないですか! みなさんと会えて青葉はとっても嬉しいですよ!」 先ほどよりもハッキリとした声には、青葉の戸惑いと不信感に対する嫌悪が感じられた。 「でも……」 「青葉、他の人のところにも行ってきますね。じゃ、また後で」 青葉が古鷹の言葉を遮る。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:52:38
ですか @desuka_desuyo

小走りに去っていく青葉の姿を、古鷹はじっと見つめていた。表情からは何を考えているのか分からない。あたしの視線に気が付いたのか、古鷹はこちらを向いた。 「ゴメンね、空気悪くしちゃって。私も先に戻るね。」 そう言って古鷹は、青葉とは逆側の自室の方へと駆けて行った。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 03:56:36
ですか @desuka_desuyo

あたしと衣笠は廊下に取り残される。 「さっきのなんだったんだろうね?」 声を掛けつつ衣笠の方を見ると、彼女も何か考えごとをしているようだった。あたしの言葉も耳に入ってなかったのか、顎に手を当ててじっとその場にとどまっていた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 04:01:20
ですか @desuka_desuyo

「衣笠、どうかした?」 あたしがもう一度聞くと衣笠が顔をあげて答えた。 「いや、古鷹に言われて私も青葉の様子がなんかおかしいなと思ってさ。何がおかしいか分かんないんだけどさ」 「そうか? あたしは普通だと思ったんだけど」 衣笠の言葉に驚きつつ答える。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 04:06:16
ですか @desuka_desuyo

衣笠はあたしの答えにそうかなぁとだけ答えて黙り込んでしまった。もし衣笠の言うことが本当なら、古鷹はあたしや妹である衣笠ですら気付けない青葉の違和感に気が付いたというのだろうか。どれだけ考えてもあたしには、青葉の違和感の原因が思い当たることは無かった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-13 04:11:07
ですか @desuka_desuyo

青葉が着任してから数日。あたしは青葉と古鷹の様子を注意して見ていたが、二人の関係は特に拗れたりはしていないようだった。古鷹も青葉も普通に接しているように見える。ただ、古鷹が普段通りでないことだけはよくわかった。 #トラ泊神戸支部

2014-03-18 06:21:33
ですか @desuka_desuyo

あたしは、古鷹が他の人とは比べ物にならないくらい青葉に気を使っていると感じた。会話の中身だけでなく、表情や仕草まで細かく見ているのではないだろうか。見た感じでは普通なのにそう感じるのは妹の勘というものなのかもしれない。それでもあたしはこの勘が正しいと思った。 #トラ泊神戸支部

2014-03-18 06:32:27
ですか @desuka_desuyo

一度だけ古鷹と青葉が言い合ってるのを見かけたことがある。あれは任務の為、三川艦隊の編成で出撃した日の前日だっただろうか。珍しく古鷹が声をあげていたのが記憶に残っている。まぁ、慌ててあたしが駆け寄ったら何事もなかったように振る舞われたんだが。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 22:47:05
ですか @desuka_desuyo

あの時何を話していたんだろうか。そんなことを考えていると、誰かに声を掛けられた。振り返るとそこには駆逐艦の吹雪が立っていた。 「加古さん、ちょっといいですか」 「どうしたの?」 あたしがそう答えると、吹雪は周りを見渡してから口を開いた。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 22:56:05
ですか @desuka_desuyo

「青葉さんのことなんですけど、なんか変だと思いませんか? よそよそしいというか、他人行儀というか。上手く言えないんですけど」 吹雪に言われて青葉の言動を思い返す。言われるまで気付かなかったが確かに青葉はあたしたちにまで丁寧な言葉を使っていたように思える。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 23:00:43
ですか @desuka_desuyo

「加古さんも青葉さんのこと気にかけてるみたいだったので話したんですけど、余計なお世話でしたか?」 「そんなことないよ。ありがとうね」 そう言って吹雪の頭を撫でてやる。緊張していたのか吹雪はほっと溜息をついた。駆逐艦の子にまで気を遣わせてしまうとはと自分に呆れる。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 23:14:29
ですか @desuka_desuyo

古鷹や衣笠の言っていた青葉の違和感は分かった。だからといって何ができるというのだろう。たぶん青葉はあたしたち、いやそれだけじゃなく他の誰に対しても距離を取っているんだろう。つまり青葉の気持ち次第なのだ。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 23:44:17
ですか @desuka_desuyo

そんな関係が変わったのは新三川艦隊の任務の日だった。旗艦は天龍。それから衣笠、あたし、鳥海、青葉の順で殿は古鷹だった。出撃前、俺が旗艦になるとはな、と天龍が驚いていた。古鷹と青葉は鳥海の後ろ側なので、進撃中二人の様子はよく分からない。 #トラ泊神戸支部

2014-03-20 23:59:35