【クレイジーレッグズ】 福間健二 2factory59

一九五〇年代のロックンローラーで、特別に愛着のあるのが、ジーン・ヴィンセントである。一九三五年生まれ。代表曲は一九五六年の「ビー・バップ・ア・ルーラ」。一九五五年、歌手になる前の軍隊時代にオートバイ事故で大けがをした。それ以来、左足に障害があった。一九六〇年、イギリス・ツアー中にエディ・コクランらと乗ったタクシーが事故をおこした。コクランは亡くなったが、ヴィンセントは助かった。一九七一年に三十六歳の若さで病死したが、ぼくは一時期、その死を事故死だとカンチガイしていた。ジーン、Gene であり、そのGがここでの「歌うG」。もうひとりのぼくの大事なGは、一九二五年生まれで一九九五年に自殺した哲学者ジル・ドゥルーズ。ジル、Gilles である。彼が〈シェットランドウールの、ピンクのセーター〉を着ていた映像が残っている。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

待っていた。眠れない三角形の底辺。夜を大きな、使い途のない指にして。やがて東京の、人の死が、だれの手の、握りしめる力とも無縁になる時代が来た。まだ出会えない。逆光の、クレイジーレッグズ。何をこすり、何を割るのか。痛みと音楽はここにある。(クレイジーレッグズ1)2factory59

2014-03-10 08:10:04
福間健二 @acasaazul

署名のない作曲のために。二キロメートル。夜明け、家並みの上を舞うやわらかい色のスカーフ。歩くべきだ。耳でわかる空気の明るさ。内面を、目で追って描写している、死後を生きる、目のきれいなお父さんはいまでもいる。いいこと、ちっともしないけど。(クレイジーレッグズ2)2factory59

2014-03-11 08:20:06
福間健二 @acasaazul

背中と背中。「生まれる前から存在していた傷に体をあたえるために生まれた私たち」。理由の影と同期して、それを、何の真似でもないにせものにする、体から逃げる影。壊れた柵の上の、シェットランドウールの、ピンクのセーター。だれが着ていたのか。(クレイジーレッグズ3)#2factory59

2014-03-12 08:05:31
福間健二 @acasaazul

事故死と自殺。歌うGと思考するG。ある時、ある場所。大地の力を、もうひとりのGが乗って生き抜く波にする。三月八日の国立の、三人のサックス奏者のように。推理小説。天と地のあいだ。だれの分身だろう。水で酔い、内面を微粒子にして噴出する。(クレイジーレッグズ4)#2factory59

2014-03-13 08:58:57
福間健二 @acasaazul

何を蹴って、何を眠らせるのか。通路と光の作用。罠にかかる動物を興奮させる脚線の、滑り摩擦。計算通りにはいかないさ。シントー・シュラインの裏。梅林。いい香りがする。事実。だれかの待ち伏せ状態に浸透する「私たち」のことは心配しないで。(クレイジーレッグズ5)#2factory59

2014-03-14 08:39:30
福間健二 @acasaazul

理論を食べてやせた。分析に飽きてふとった。何もしないで消えた。気の弱い東京のキツネ、そのスーツの中に隠されている歴史。ほとんど退屈だが、天使の出現する場面はある。穴があいちゃうんだものね。大きな指、暴発。キツネ、キツネ、二十一世紀の!(クレイジーレッグズ6)#2factory59

2014-03-15 09:06:00
福間健二 @acasaazul

彼が亡くなり、彼女が亡くなり、やがて無計画な大阪の、苦しむ三角形は、おりる坂道を自分で用意する。しぶとい。T・レックス。G・エッグズ。C・レッグズ。ひとりで何人分もの声を出して、大正区で火焔菜を買う。オーブン、二三〇度で九〇分だよ。(クレイジーレッグズ7)#2factory59

2014-03-16 08:34:50
福間健二 @acasaazul

炎とではなく、静かさ。よろこびをわかちあう竜と歩いた。建物、橋、液体をフレームの外におき、残る楕円球と色素の、このケーキのただなかに達する。静かさ、もう少し。「私たち」の狂った脚が思考するのは、まだ生まれていない音楽において、なのだ。(クレイジーレッグズ8)#2factory59

2014-03-17 09:04:10
福間健二 @acasaazul

金属の管のように、やがて指が発達して、影で注意を引く。まずいと思っても、やってしまうことがある。クレイジーレッグズ、それはきみの名前だ。電気設備のいらない「卵」のなかに生きる夢の、目覚めぎわにやってしまうことを、いま、きみとしたい。(クレイジーレッグズ9)#2factory59

2014-03-19 09:33:43
福間健二 @acasaazul

朝の九時から午後二時まで。キープ、カーム。義足のGを遠ざける。そうしていたい。でも、むり。自然も技巧も求めない出来事の残骸に咲く花と不規則な足音の影を再構成した「人間であることの恥ずかしさ」。書くのも、ざわめくのも、それがあるから。(クレイジーレッグズ10)#2factory59

2014-03-20 09:19:14