2014年3月23日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #9

更新九回目のまとめです。 青葉の編集した戦線文庫の違和感。そして熊野の語る青葉。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

重巡寮の廊下を、私は肩を落として歩く。半休をもらって時間があったので、鬼怒に話を聞けた余勢を駆って今のうちに熊野にも話を聞こうと勢い込んで重巡寮に戻ってみたものの、最上曰くあいにく熊野は今朝遠征に出ていってしまったのだ。帰ってくるのは数日後だという。

2014-03-23 00:58:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

うちの鎮守府は昨晩深海棲艦の夜襲を受けたばかりだというのに、今日は出撃も遠征も普段通りにやるそうだ。ちょっと驚いたけれど、霧島さんや鳥海が言うにはその方がいいらしい。昨晩の襲撃が威力偵察だとしたら、深海棲艦たちは私たちが今日どう対応するかまで観察しているだろう、と。

2014-03-23 01:03:47
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それなのに今日出撃や遠征に艦隊を出さないようでは、うちの鎮守府ではあの程度の襲撃でも艦隊の立て直しに四苦八苦していると思われて更なる襲撃をこうむる危険があるという。だからこそ出撃も遠征も普段通りにすることで、鎮守府の戦力はあの程度では小揺るぎもしないことを見せつけるのだ、と。

2014-03-23 01:10:53
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

二人が言う理屈に納得はしたけれど、私の出ばなをくじかれた感は否めない。とはいえ愚痴っても仕方がないので、自分の部屋に戻ることにした。昨晩はあまり寝ていないし、鬼怒に話を聞きながらお腹も満たされたので少し眠い。休める時に休んでおくのも大事な仕事だしね。

2014-03-23 01:18:08
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

自分の部屋に帰りついてドアを開ける時、ふと思い立って隣の古鷹型の部屋をそっと開けてみた。椅子に姿勢良く腰かけて1ページ1ページ丁寧に雑誌をめくる古鷹ねーさんの後ろ姿が見える。今朝朝食をとりに出た時と全く同じ姿に感心半分、呆れ半分な気持ちになる。

2014-03-23 01:25:25
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ドアを閉じようとすると、ページをめくる古鷹ねーさんの手が止まった。そのまま食い入るように開いたページを見つめている。私からは体の陰になって見えないけれど、よほど興味を惹く記事でもあったのだろうか。気になったけれど、いつまでも覗き見しているわけにもいかない。ドアをそっと閉じる。

2014-03-23 01:30:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ドアを開けて自分の部屋に入ると、テーブルの上に雑誌が置かれていた。古鷹ねーさんに貸す雑誌を漁った時に片づけ忘れたかと思いながら取り上げると、表紙には私が写っていた。思わず面食らい、雑誌を取り落しそうになる。困惑しながらよくよく表紙を確認してみると、一緒に間宮さんも写っている。

2014-03-23 01:37:10
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それでようやく思い当たることがあった。先月だったか、青葉にいきなり呼び出されて間宮さんと一緒にポーズをとらされて写真を撮られたことがあった。説明を求めると「戦線文庫の表紙が決まらないって言われたので青葉が独断で衣笠と間宮さんに決めたんです」と屈託なく言われたのだ。

2014-03-23 01:42:05
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

戦線文庫というのは、うちの鎮守府のスタッフで発行している雑誌で、青葉が編集に関わっている。『戦線文庫』は元々戦時中に海軍省が海軍の将兵一人一人に無償で配っていた月刊誌の名前だ。小説やグラビアなど意外と柔らかい内容が中心で、長期間海の上にいた私たちの乗組員の貴重な娯楽だった。

2014-03-23 01:51:59
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

今の戦線文庫の方もそれを踏襲して訓練中の艦娘たちを写した写真や艦娘たちが寄稿したエッセイやコラム、普通の雑誌のようなファッションや美容特集といった内容が載せられている。この雑誌は鎮守府の艦娘たちの娯楽の一つであるとともに、限定的ながら民間にも配布されているという。

2014-03-23 02:01:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

深海棲艦の攻勢が始まり、それに対抗するために私たち艦娘が生み出されたけれど、いまだに艦娘を得体の知れないものとして忌避する層が民間人には根強い。戦いの結果今のところ世界の各大陸間の最低限の通商路だけは取り戻せているので、民間人が艦娘の戦っている姿を目にすることも少なくなってきた。

2014-03-23 02:07:41
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

一部には「もう艦娘はいらないんじゃないか」などという声もあるという。艦娘に対する無知・無理解がそうした状況を誘発していると考えた鎮守府では、鎮守府の広報活動の一環として戦線文庫を民間にも流通させることにした、という事情らしい。

2014-03-23 02:11:16
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そのために表紙も柔らかいものにしたいという。とは言え、自分の顔がでかでかと表紙を飾っている雑誌があちこちに配られているのはさすがに小っ恥ずかしい。騙し討ちで写真を撮られた後に事情を聞いた私が抗議すると、青葉は事もなげに「え?いいじゃないですか。衣笠可愛いですし」とのたまった。

2014-03-23 02:15:35
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私があんぐりと口を開けていると青葉は「じゃあこれでいきますね。間宮さんもご協力感謝です」と出ていってしまった。その後出撃が重なって忙しくころっと忘れていたけれど、まさか本当に表紙に使われるなんて。恥ずかしさに顔から火が出そうになる。ああもう、青葉のやつどうしてくれようかしら。

2014-03-23 02:22:37
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ため息をつき、雑誌のページをぱらぱらとめくる。駆逐艦娘たちが間宮さんでアイスを頬張っている写真や、観艦式の写真などに見覚えがある。つまり、青葉はあろうことかこの部屋の私の前で堂々と編集作業をやっていたのだ。気づかなかった私も私だけど、青葉もふてぶてしいったら。

2014-03-23 02:32:01
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ぶつぶつ言いながらグラビアのページをめくっていると、何か引っかかるものを感じた。はっきりと言葉に出来るわけではないけれど、心にもやもやがかかったように何かが気になる。一体なんだろうと思いながらベッドに転がり、1ページずつ目を通していくが、このもやもやの正体はつかめない。

2014-03-23 02:38:45
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

寝転がっていると、さっきの眠気が戻ってきたのを感じた。雑誌を持つ腕に力が入らなくなってくる。寝ちゃだめ、せめてこのもやもやを晴らしてから、と思うものの、抵抗むなしく私は安らかな眠りに落ちていった。

2014-03-23 02:42:31
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

数日後。熊野が遠征から帰ってきたと聞いた私は部屋を飛び出し、鈴谷と熊野の二人部屋に向かった。熊野が行っていた遠征は40時間かかる通商破壊作戦だったので、待っている間だいぶやきもきさせられた。今のうちに捕まえとかなきゃまた遠征に行ってしまうかもしれないと思うと気が急く。

2014-03-23 02:47:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

熊野の部屋の前に着き、ドアをノックする。そう言えば加古を忘れてきたとその時ようやく気づいたけれど、ここ数日は寝てるか仕事を放り投げて古鷹ねーさんに世話を焼かせてるかしかしていなかったので、いても仕方ないかと思い直す。それにしても、返事が返ってこない。部屋の中から何か声が聞こえる。

2014-03-23 02:51:50
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

もう一度ノックをしても返事がないのでゆっくりとドアを開けると、鈴谷と熊野の言い争うような声が聞こえてきた。 「だーかーらあ!何で遠征行くと何でもかんでも拾ってきちゃうわけ!?」 「あら、だってこの海鳥の羽根綺麗だと思いませんこと?こちらの貝殻も珍しい形をしていますわ」

2014-03-23 02:55:35
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

誇らしげにそれらの戦利品を手に取った熊野を前に、鈴谷が頭をかきむしって金切声をあげる。 「そうやってガラクタばっか拾ってくっから鈴谷たちの部屋がゴミだらけになるんじゃん!貸して!捨てるから!」 「嫌ですわ!記念になりますし、もしかしたら何かに使うかもしれませんし」

2014-03-23 02:59:43
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「何に使えんのそんなもん!お願いだから少しは捨てさせてよ!」 「鈴谷はすぐそうやって物を粗末にしますのね。いつ何時何が起こるかわからないのですから、それに対する備えとして……」 終わりそうにない押し問答を目の当たりにして、私は意を決して声を上げそれを止めなければならなかった。

2014-03-23 03:05:08
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ああもうめっちゃ恥ずかしい……。この部屋他人に見られるとか……」 鈴谷が顔を覆ってさめざめと泣きまねをする。泣きまねではあるけれど、確かに所狭しと段ボールやら紙袋やらがひしめき合っているこの部屋はちょっと圧迫感がある。視界の端の袋の中には、お茶の葉らしきものが詰め込まれていた。

2014-03-23 03:11:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

本来ならさっさと本題に入るべきだけれど、あまりに興味を惹かれて熊野に尋ねる。 「つかぬことをお聞きするけれど、あのお茶葉はなんで取っておいてあるの?」 熊野が胸を張って答える。 「あら、ご存じありませんの?お茶の葉は畳の上の掃除に使えるんですのよ?」

2014-03-23 03:16:00
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