バルトーク

バルトーク好きなぱぷりりかさんによるバルtalk。
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ぱぷりりか @papririka

さて、ようやくバルトークは真にバルトークとなる準備が整いました。残ったピースは新古典主義。バルトークは「舞踏組曲」の後、作曲活動上では2年間沈黙します。そして1926年、「ピアノソナタ」「戸外にて」を引っさげて戻ってきたバルトークは、以後傑作を次々と生み出すこととなります。

2014-03-25 10:12:24
ぱぷりりか @papririka

バルトーク「ピアノソナタ」http://t.co/mYdTmZlhPR 強靭な骨格を持つ音楽です。より対位法的、よりシンプルで、古典的な形式を兼ね備え、かつ民俗音楽の語法が息づいています。多彩なリズムは素材の一つとなり、機能和声だけに頼らないことが多彩な不協和音の開放を導きます。

2014-03-25 11:08:26
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ぱぷりりか @papririka

バルトークがこの時までにバロック以前の音楽を調べていたことは確実でしょう。ストラヴィンスキーやヒンデミットは1920年代すでに新古典主義の作品を書いていましたし、新ウィーン楽派も大変凝縮された作品を発表していました。この流れにバルトークも呼応しました。

2014-03-25 11:18:05
ぱぷりりか @papririka

ストラヴィンスキーがバロック音楽へ立ち返り、シェーンベルクが無調から12音技法へ突き進むとき、バルトークは民謡とともにどちらともつかない独自の道を歩みます。分かりやすい調性音楽を書くことはしませんでしたが、無調に賛成することもありませんでした。

2014-03-25 11:33:59
ぱぷりりか @papririka

バルトークのいわゆる中期の音楽、特に弦楽四重奏曲第3番や第4番は急進的な作品です。しばしば無調と評されるものの、実際には激しい複調であったり、旋法を多様に使っていたりして、最後には必ず主音に戻ってくる構成がとられます。機能和声が捨て去られたこともありません。

2014-03-25 11:41:40
ぱぷりりか @papririka

バルトークは中期の頃から、そして後期にはますます対位法的な音楽を指向するようになり、さらに楽曲全体を支配する形式の対称性に異様なこだわりを見せるようになります。「ピアノ協奏曲第2番」「弦楽四重奏曲第5番」にその成果が結実します。

2014-03-25 11:58:36
ぱぷりりか @papririka

エネルギー迸る独奏ピアノの上行と「火の鳥」終曲主題の早回しファンファーレで始まる「ピアノ協奏曲第2番」は、祝典的な雰囲気とエンターテイメント性を持ちながら、バルトークの作曲技法がこれでもかと発揮されています。http://t.co/mYdTmZlhPR

2014-03-25 12:16:54
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ぱぷりりか @papririka

ピアノ協奏曲第2番の構成をざっと述べましょう。第1楽章はソナタ形式、第2楽章はABA'の三部形式からなる緩徐楽章、第3楽章はロンド形式、と古典派に通ずる楽式を採用しています。第3楽章は第1楽章の変奏となっており、曲全体としてX-ABA'-X'という対称的な構造(アーチ形式)です。

2014-03-25 12:45:02
ぱぷりりか @papririka

ピアノ協奏曲第2番第1楽章では、ソナタ形式の再現部で第1主題が反行形で再現され、提示部との対称性が明確に表現されます。そして第3楽章では第1楽章の主題がロンド形式のなかで変奏されながら次々と登場します。

2014-03-25 12:55:56
ぱぷりりか @papririka

主題を変奏する方法として反行形や鏡映形は頻繁に用いられますし、リズムを変えて全く違う表情を持たせることも多いです。曲中、展開や再現としてカノンやフガートが登場するのも特筆すべき点です。こうした技法はベートーヴェンに原点があります。

2014-03-25 13:02:03
ぱぷりりか @papririka

ピアノ協奏曲第2番は管弦楽法にも大きな特徴があります。第1楽章は管楽器と打楽器のみによる伴奏、一方第2楽章は主部が弦楽器と打楽器のみ、中間部が木管楽器による伴奏です。そして第3楽章にてようやく管弦楽全体が用いられます。

2014-03-25 13:08:34
ぱぷりりか @papririka

そうそう、先程「ベートーヴェンに原点があります」と書きましたが、それはもちろん同時にバロック以前の音楽に由来するものでもあります。

2014-03-25 13:10:26
ぱぷりりか @papririka

ピアノ協奏曲第2番では、ピアノの響きを管弦楽と合体させて強化する試みも行われています。第1楽章のカデンツァではティンパニがシンクロしますし、第2楽章ではピアノの減衰音が弦楽器によって延長されます。

2014-03-25 13:14:25
ぱぷりりか @papririka

ピアノ協奏曲第2番にあっても、ハンガリーの民俗音楽の語法は明確に現れています。それはリズムパターンであったり、旋律の終止の仕方であったりといった形であり、もはや旋律の引用ではなく音楽の骨格の一部として溶け込んでいるのです。

2014-03-25 13:22:41
ぱぷりりか @papririka

8分音符や16分音符を主体とする機械的な動きは、バロック音楽を取り込んだ結果であるという指摘もあります。バルトークの音楽の中には、古い音楽から新しい音楽に渡る様々な要素を見つけ出すことができます。

2014-03-25 13:26:44
ぱぷりりか @papririka

バルトークの弦楽四重奏曲第5番でも対称性が楽曲の構成原理となっています。5楽章からなり、第1楽章と第5楽章、第2楽章と第4楽章がそれぞれ対になっています。中心には第3楽章が据えられ、楽曲全体としてはABCB'A'というアーチ形式になっています。

2014-03-26 01:12:46
ぱぷりりか @papririka

バルトーク「弦楽四重奏曲第5番」http://t.co/v2RU7iJ9F2 バルトークはこの時期から分かりやすさ、明確さを意識するようになります。過激な不協和音は減り、はっきりとした調性が聞き取れる部分も増えます。それでもなお、バルトークにしか書けない音楽です。

2014-03-26 01:17:33
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ぱぷりりか @papririka

弦楽四重奏曲第5番の第1楽章はやはりソナタ形式で、再現が反行形によってなされたり、提示部とは逆の順序で再現部が構成されるなど、対称性が厳格に形式を規定しています。対となる第5楽章は第1楽章の主題が再帰するほか、主題とその反行形、逆行形、逆行系の反行形全てを使った展開がなされます。

2014-03-26 01:35:01
ぱぷりりか @papririka

弦楽四重奏曲第5番の第2楽章と第4楽章は静謐な緩徐楽章で、互いに変奏の関係になっています。点描的な傾向にある書法はウェーベルンを連想させるかもしれません。第2楽章は「夜の音楽」とされますが特に抽象的で、ほとんど純粋な緊張と弛緩が原動力であるように感じられます。

2014-03-26 01:49:01
ぱぷりりか @papririka

第3楽章はスケルツォ−トリオ的な性格です。中心にあるためにこの楽章は他の楽章からやや独立したような格好をしています。「ブルガリア風に」と書かれているもののそれは拍子のみであり、それ以外の要素はブルガリアとは全く関係ありません。バルトークは民謡を解体して要素を取り出し再構築します。

2014-03-26 01:56:49
ぱぷりりか @papririka

バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」は必ずと言っていいほど傑作として挙げられる曲です。http://t.co/LKjwxVnswC 弦楽五部は左右に分割して配置され、その間に打楽器群、ハープ、ピアノ、チェレスタが置かれるという特殊編成です。

2014-03-26 02:14:32
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ぱぷりりか @papririka

緩急緩急からなる全4楽章構成で、交響曲に匹敵する規模を持ちます。第1楽章はフーガ、第2楽章はソナタ形式、第3楽章はABCBAの五部形式、第4楽章はほぼロンド形式です。

2014-03-26 02:26:00
ぱぷりりか @papririka

(やれやれ弦チェレについて何を書いたものか)

2014-03-26 02:34:29
ぱぷりりか @papririka

楽曲全体を支配する原理としてアーチ形式は採用されなかったものの、どの楽章にも第1楽章の主題が変形して登場することで全体の統一が図られます。また、厳格な音楽に始まり、特有の緩徐楽章を経て、エネルギッシュな舞曲に終わるという構成は相変わらずです。

2014-03-26 02:41:08
ぱぷりりか @papririka

第1楽章は神秘的なフーガで、主題は五度圏を巡りながら次々と登場します。主題はAから入りますが、続いて完全五度上のE、完全五度下のD、さらにH、G、Fis、Cと五度圏を互い違いに進んでいき、Aの反対側であるEsでクライマックスを迎えます。

2014-03-26 02:46:02