茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第1199回「見ることができないからこその、三種の神器」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイートをお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、先日、非常に深く感じ入ったこと。

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みさ（１）先日、天皇陛下と皇后陛下が伊勢神宮に参拝されるために新幹線で移動される映像があった。その際、おつきの方々が、うやうやしく二つの黒い箱を持っていらした。皇室に永く伝わるとされる「三種の神器」のうちの、「八尺瓊勾玉」と、「草那芸之大刀」であると報道された。

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みさ（２）三種の神器のもう一つ、「八咫鏡」は、伊勢神宮にご神体としてあるとされている。今回の遷宮を機に、天皇陛下、皇后陛下が伊勢神宮に参拝されるにあたって、三種の神器のあと二つが、両陛下とともに伊勢に移動した、その様子をとらえたニュース映像であった。

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みさ（３）それは、大変印象深く、また感動的な風景であった。古代の「神話」から延々と受け継がれる象徴が、現代科学技術の象徴である新幹線（ぴかぴかに磨き上げられた特別車両だったとのこと）に乗って名古屋へと旅する。そこには、深いドラマがあった。

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みさ（４）ところで、「三種の神器」は、記憶にある近代の歴史においては、その「実物」を誰も見ていないことになっているはずである。そのうちの少なくとも「八尺瓊勾玉」、「草那芸之大刀」については、皇居内に実在するはずであるが、確か両陛下さえ、それをごらんになっていないはず。

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みさ（５）皇室の「正統性」の象徴であり、皇位継承の際に継続性を担保するもっとも重要な「三種の神器」が、一切その実体を見ないものとしてある。ここに、日本文化の最も興味深い特徴がある。ロンドン塔には、イギリス王室の象徴である王冠があるが、それは誰が見ても王冠である。

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みさ（６）伊勢神宮のある高位の方とお話した時に、正殿に「八咫鏡」があるかどうかなどということは、そもそも触れるべきことではないとおっしゃっていた。遷宮の際に、なんらかの措置がとられているはずであるが、それが何なのか、あるのかないのか、一切触れない。大変興味深い。

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みさ（７）「平家物語」には、幼い安徳天皇が、「波の下にも都が」と入水されたとの記述があり、「三種の神器」のうちの少なくとも一部は、この時に失われたという説もある。いずれにせよ、三種の神器は、その所在がどうなのかとか、物証、経験主義的に証明されるべきものではないのである。

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みさ（８）仏像が日本に伝わってからの興味深い変化は、「秘仏」にある。長野の善光寺のご本尊は「絶対秘仏」であって、ご開帳すらされない。信長を始め、何人かの権力者が秘仏を我が意のままにしようと試みたが、そのような干渉を乗り越えて、今日にまで伝えられてきていてる。

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みさ（９）先日の天皇陛下、皇后陛下の伊勢御参拝を伝える映像でもっとも深い印象は、あの黒い箱の中に、物理的実体として三種の神器のうち二つがあるどうかは、本質ではない、という共通理解であった。日本文化のこの特性は、グローバル化した現代だからこそ、世界にもっと伝えられてよい。

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以上、連続ツイート１１９９回、「見ることができないからこその、三種の神器」でした。