【第二部-小話】鈴谷と熊野とシュークリーム #見つめる時雨

鈴谷×熊野
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鈴谷視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

談話室で扶桑さんからの差し入れの箱を開ける。中にはシュークリームが入っていた。山城さんと一緒に出撃すると、たまにこんな役得がある。サクサク生地で超美味しいんだよね、これ。舞鶴の街で買ってきてるというのは聞いたことあるんだけど、今度ちゃんと場所教えて貰おうかな。

2014-04-02 21:00:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「いっただっきまーす」 一口かじる。パイ生地のようなサックサクの軽い食感。そして、中にたっぷり詰まったカスタードクリームと生クリームの滑らかな口当たりが、鈴谷の舌を楽しませてくれる。程よい甘さに、思わず「美味しい」と声が出た。

2014-04-02 21:05:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そんなにがっついて、はしたないですわ」 隣に座る熊野に窘められた。まぁまぁ、こういうのは美味しく食べた人が正義だから。ちょっとくらい良いじゃん、ね。 「あっ…あっ」 熊野の戸惑う声がしてそちらを見ると、熊野が皮からはみ出るクリームと戦っていた。何だかじっと見てしまう。

2014-04-02 21:10:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

熊野はクリームが漏れでた箇所に唇を添えて、軽く吸い上げた。どうやら危機を脱したようだ。 「何見てるんですの、鈴谷…」 いんや、別に。特に助けようとか、そんなつもりもなかったし。ただ、ホント、何となく見てた。熊野の唇柔らかそうだなーとか、そんなことは考えてない。決して。

2014-04-02 21:15:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

シュークリームを食べ終え、舌鼓を打つ。…あ、指にクリーム付いてる。舐めとってしまおうか。 「……ねぇ」 鈴谷の声に、熊野が振り向く。澄んだ蒼い瞳が、鈴谷を見る。そんな熊野に、鈴谷はクリームのついた指を差し出した。何となく。うん、何となく。そう自分に言い訳をする。

2014-04-02 21:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「……」 熊野が無言でクリームのついた鈴谷の指をじっと見る。特に困惑する様子もない。熊野の瞼は普段と何ら変わらないペースで、瞬きをしていた。少しして、熊野が身を寄せ、髪を耳にかきあげる仕草をした。 「……ん」 鈴谷の指が、熊野の唇に包まれた。

2014-04-02 21:25:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

熊野の舌が、鈴谷の指を這う。熊野の温度と、湿度が、鈴谷の指から伝わってくる。 「……」 熊野が無言で鈴谷の指を解放した。クリームは綺麗になくなっていた。代わりに、熊野の口腔で分泌されたものが、鈴谷の指に付着していた。それを…じっと見つめる。

2014-04-02 21:30:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…どうしたんですの?」 熊野がキョトン顔をする。 「いや…本当に舐めてくれるなんて思ってなかったから」 「…そうして欲しかったんじゃありませんの?そう顔に書いてありましたわ」 …そう顔に書いてあったからって、躊躇なくしてくれるものだろうか。

2014-04-02 21:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「熊野。鈴谷も食べていい?」 熊野がさっきと同じ顔で鈴谷を見つめる。そして食べかけのシュークリームの中身にそっと指を入れ、それを鈴谷の前に差し出した。 「召し上がれ?」 …鈴谷はそれにそっと手を添え…熊野の方へもっていかせた。 「…鈴谷?」

2014-04-02 21:40:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

熊野の指についたクリームを、熊野の頬につける。そして…それを舌で舐めとった。 「…甘い」 熊野はスッと微笑み、指に残ったクリームを鈴谷の唇で拭った。 「おかわりは、いかが致しまして?」

2014-04-02 21:45:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…うん、頂戴」 熊野を少しずつ組伏せるような姿勢にする。熊野は何の抵抗もなく、身体を横にした。…よく考えたら、ここ談話室じゃん。いいのかな?…誰もいないし、少しくらいならいいかな。いいよね?

2014-04-02 21:50:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あらあらあら…お熱いのねぇ」 「うわぁ!?」 ソファーの上から荒潮が鈴谷達を眺めていた。慌てて熊野から飛び退く。い、いつからいたの…? 「いつからって、そうねぇ、鈴谷さんが熊野さんに指を差し出した辺りからかしらぁ」 うぇ!?そ、それってほぼ全部見てたってこと…!?

2014-04-02 21:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「あらぁ…熊野さん、大丈夫ですか?」 見ると、熊野がソファーのクッションに顔を埋めていた。さっきまでの余裕は何処へやら…熊野も見られたことは相当恥ずかしかったらしい…。ゴメン…。超ゴメン…。

2014-04-02 22:00:45
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そういえば、私、聞きたいことがあったんですよぉ。三隈さん、見ませんでした?」 荒潮が思い出したように言った。さっき空母寮へ向かってるのをみたけど…。 「ありがとうございます。司令官から伝言預かってるんですけど、どうも見つからなくって。助かりましたぁ」 そ、そう…。

2014-04-02 22:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

荒潮が去った後、熊野は体をゆっくり起こしてきた。 「…部屋、戻ろっか、熊野」 「…ええ」 シュークリームの入っていた箱を片付け、立ち上がる。…今度は絶対、部屋でやろう…。そう心に誓った…――。

2014-04-02 22:10:20