カルテル鎮守府の日常

尾形ザッカロニ💉💉 @SHOKATU_KOMEI

轟く砲撃、乾いた銃声が響く。およそ20分くらいたった頃だろうか、砲撃も銃声も止み、静けさが辺りを支配し始めた。月明かりに照らされる中、辺り一面が血の海で、内臓をぶちまけたり、腕や脚または首を失った深海棲艦の無惨な姿が浮かんでいた。 #カルテル鎮守府の日常

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そんな吐き気を催すような凄惨な光景の中、トンプソンを持って返り血を浴びた男と、艤装を着けた艦娘たちがいた。手にはM1897を持った眼鏡を掛けた『霧島』、一○○式機関短銃を持った『不知火』、九六式軽機関銃を持った『長門』、M1935を二丁持った『金剛』だ。 #カルテル鎮守府の日常

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更に、M1911を二丁持った『摩耶』、StG44を持った『大井』と『北上』、PPSh41を持った『響』、BARを持った『陸奥』･･･その他にも、ステン･ガンやM3、MP40など様々な銃を持った艦娘が立っていた。 #カルテル鎮守府の日常

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この状態を見れば圧倒的な火力で深海棲艦の集団を全滅させたと誰もが思うだろう。ただ、これは戦争だ。このトンプソンを持った男･･･提督の率いるカルテルはたった今、とある深海棲艦のカルテルとの麻薬戦争に勝ったのだ。 #カルテル鎮守府の日常

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「霧島と金剛、お前達は息のある敵がいないか確かめてこい。その他はこっちの負傷者と死者のチェックだ」 顔にかかった返り血を拭いながら提督はそう命令した。命令から数秒も経たぬうちに全員が言うとおりに動いた。 #カルテル鎮守府の日常

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「助ケ･･･テ･･･」 そんな命乞いには耳を貸さず、淡々と霧島は息のある深海棲艦に鉛玉をぶち込んでいく。返り血を浴びながら無慈悲に息の根を止めていく様子はさながら戯曲のような美しさだった。 #カルテル鎮守府の日常

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「初春と叢雲が脚を失って大量出血で、高雄と加古、古鷹、秋雲が体のあちこちに機関銃の弾を受けてほぼ即死･･･というところです」 不知火の簡略で分かりやすい報告を受け、提督は顔をしかめた。 「予想以上に多かったな。だがこれは戦争･･･仕方ないことだ」 #カルテル鎮守府の日常

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思えばここまで勢力を広げるのにそんなに時間はかからなかった。 国の密命で設立されたこのカルテル鎮守府は約半年ほどで東南アジアをはじめ、中国大陸の一部にまでカルテルの勢力範囲を広げることができた。 #カルテル鎮守府の日常

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「最初は耳を疑ったよ。麻薬で稼いで資金と物資の不足を打開しろと命令されるなんて」 「それは不知火もです。陸での作戦行動なんて思いもしませんでした」 「それで鎮守府も本土から東南アジアに移されるなんてな。正直言ってこのうだるような蒸し暑さは大嫌いだ」 #カルテル鎮守府の日常

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「....金剛」 「何デスか？」 「ブツと金は回収できたか？」 「勿論デース！かなり上物のブツが手に入りましたヨ～」 「いいだろう。しかし...どうしたものか。たった今俺たちは敵カルテルを１つ壊滅させた。だが敵カルテルはまだたくさんいる」 #カルテル鎮守府の日常

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「でも取引相手はたくさんいます。アメリカのギャングにもマフィアにも味方が...」 榛名が脚を負傷した比叡に肩を貸しながらそう言った #カルテル鎮守府の日常

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「ルチアーノ、ランスキー、シーゲル、コーエン....確かにアメリカにも取引相手は山ほどいる。いつ手を切られるか分からんがね」 「....銀行強盗はどうでしょうか？」 榛名が思い切ったことを言う。 「....どこの銀行をだ？」 「連合国のですよ」 #カルテル鎮守府の日常

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「一体どうやってだ？オーストラリアに行くってのか？」 「その通りです」 「馬鹿げた話だ。敵だらけの場所に突っ込んでいくなんて。ブッチとサンダンスのつもりか？」 #カルテル鎮守府の日常 #カルテル鎮守府の日常

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「....う。では中国大陸の銀行を」 「それならいいだろう。お前をその計画のリーダーとする。連れはお前が選んでいい」 「了解です」 「司令」 間髪入れず、提督を呼ぶ声が聞こえた。 「うおっ、霧島。もう終わったのか？」 「はい、簡単な『作業』ですから...」 #カルテル鎮守府の日常

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「まあ....ちょうどいいところに来たな。新たな仕事だ」 「どういう仕事ですか？」 「榛名が数名引き連れて大陸の方に銀行強盗に行く。そろそろ大陸でも覇権を握りたい。大陸で阿片捌いてるカルテルがあるだろ？同じ日に襲撃しろ」 「了解です」 #カルテル鎮守府の日常

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「金剛、アメリカに行ってシーゲルとの商談をまとめてこい。前と同じルートで大丈夫だろうが、気を付けろよ」 「提督ぅ～、そんなの言われなくてもわかってマース！」 この油断が裏世界では命取りになる。提督は不安感に包まれた。 「...とりあえず摩耶も連れていけ」 #カルテル鎮守府の日常

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ベンジャミン･シーゲル･･･ バグジーという渾名があるが、シーゲル本人は嫌っている。 映画スターのような顔立ちに鍛え上げられた180cmを超える体格... ラスベガスとかいう辺鄙な土地に目を付けて色々やろうとしているようだが･･･ 「いまいち信用ができん」 #カルテル鎮守府の日常

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2日後...金剛と摩耶はラスベガスに入った。 もちろん秘密のルートによる不法入国だ。 いつものごとく、こちらが仕入れた上物の『薬物の王様』ことヘロインを金剛が持っている。 摩耶はボディガードとしてワルサーPPKを隠し持っている。 #カルテル鎮守府の日常

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その頃...グレート･メドウブ刑務所では... 「そうか。近いうちに"提督"と取引があるのか...」 ラッキー･ルチアーノこと、チャールズ･ルチアーノは思案した。 「マイヤーはどう考えてるんだ？奴らのことを」 「過度な信頼は禁物だと」 「俺と同じだ」 #カルテル鎮守府の日常

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「ノーマン、マイヤーにこう伝えてくれ。『しばらくは様子見だ』とね」 「分かりました。では、私はこれで失礼いたします」 ノーマン･バルマーはそう言ってコートを羽織り、帽子を被って立ち去った。 「何があるか分からない。それがこの世界だ」 #カルテル鎮守府の日常

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ノーマン･バルマーは1906年6月18日に生まれた。 既に36歳で20代の時ほど思うように体が動いてくれないこともある。 だが彼は、ルチアーノとランスキーとは子供のころからの知り合いだった。 #カルテル鎮守府の日常

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バルマーは策略に長けていた。 ただ、決して銃が扱えないというわけではない。 彼自身、ルチアーノやランスキーの命を受けて何人も殺していた。 ただ、そんな彼にも理解のできないことはあった。 艦娘とその提督である。 「彼女らと彼の正体は何だ？何が目的だ？」 #カルテル鎮守府の日常

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この世界でこういう疑問を持つと命取りになるということは知っていた。 ただ、そんな彼でさえ提督と艦娘の存在意義と目的は分からなかったのだ。 「ミスター・シーゲルに連絡しよう」 #カルテル鎮守府の日常

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「ハロー、ミスター･シーゲル。バルマーです」 「ノーマンか。久しぶりだな...何の用だ？」 「鎮守府との取引のことです」 「ああ、奴らとの取引か。気を付けろとでも忠告したいのかね？」 「ええ、その通りです」 「言われなくとも分かってるさ。奴らは油断ならん」 #カルテル鎮守府の日常

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「あと....これは個人的な意見ですが、ウィスラーには気を付けてください」 「ウィスラー...ああ、私と対立している奴だろ？麻薬取引で商売をしてる ...」 「そうです。彼が行動を起こすかも....」 「その時はその時だ。疑いなく奴らが死ぬかもしれない」 #カルテル鎮守府の日常