- kojirase_tokiya
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「ひ、聖川さん、あの、その…… ――ちょっと、出直してきます」 「おお、一ノ瀬か。奇遇だな……出直すのか?」 「はい。ちょっと心の準備が出来ていないので出直します。次の角で待ってますのでそのまま直進してください」 「わかった。ではまた次の角で会おう」
2014-04-05 13:16:52「!! やばっ、トキヤこっち来た!! 次の角まで逃げよう!!」 「……もの凄い形相だね……しかも全速力で走ってきてるから余計怖い」
2014-04-05 13:17:21「ふぅ…ふぅ…。よし、次に聖川さんがこの角へ辿り着くまでの一分間、台詞を復唱しなければ……ごほん。ぶつぶつ……」
2014-04-05 13:20:29「――ズボンからカンペ取り出して読み上げてるよ。たった二言三言の誘い文句なのに」 「プレイボーイなレンなら十言くらいその場でぺろっと言えるだろうけど、トキヤにとっては入学したての男子中学生が女子と初めて接触する時の一言並みに難しいんだよ」
2014-04-05 13:21:15「うーん、確かにそれは言葉を選ぶね。でもその例えはさり気なくイッチーに失礼じゃないかな?」 「トキヤの奥手さと陰での妄想力は中学生の比じゃないからね。昨日も夜遅くまでマサの写真と見つめ合いながら台詞の練習をしてたよ」 「それはちょっと気持ち悪いね」
2014-04-05 13:22:11「しかも『あまりにも聖川さんが眩すぎて、長時間見詰められません』とか言い出して最終的にはサングラスかけてた」 「普通に気持ち悪いね」
2014-04-05 13:23:07「あと最近のMacの検索履歴も『デート 誘い文句』とか『デート 会話』とか『散歩 誘う 自然』とかで埋め尽くされてた」 「……それはイッキが気持ち悪いかな」 「だってえ! 気になるんだもん!!!」 「あっ、ちょっと待って聖川が来たみたいだ」
2014-04-05 13:24:07「えっ、あっ、うっ、ひ、聖川さん、あの、その…… ――ちょっと、出直してきます」 「ああ一ノ瀬。また次の角でな」 「…………」 「……何も言わないであげて」
2014-04-05 13:25:30「そろそろ何も突っ込まずに適当な会話でつなげるのも限界だよ。『次の角~』のくだり、何回目だっけ」 「……五回目です」 「イッキもそろそろ気持ち固めないと、廊下の角なくなるよ」
2014-04-05 13:26:43「大丈夫。マサの行き先はコンビニだから」 「コンビニのなら棚のお陰でたくさん角あるから大丈夫とかそういう話じゃないし、まず絵面が気持ち悪いからね。いやだよ俺行く先々の棚の角にイッチーが待ち受けてるなんて」
2014-04-05 13:27:55「そういうの慣れてないんだよ、優しく見守ってあげて……!!」 「寧ろ俺と聖川は変なものに慣れさせられそうだけどね。突っ込み不在のカオスという恐ろしい空間に今にも呑み込まれそうなんだけど」
2014-04-05 13:29:06「ひ、聖川さん、今日は、いい天気ですね」 「あ! マサ来たみたい!!」 「! しかも今回は全く脈絡もない鉄板ネタだけど一応会話の切っ掛けは飛ばせたみたいだね」
2014-04-05 13:30:06「おお、一ノ瀬。奇遇だな。確かに今日は久しぶりに天気もいい。ここ最近は曇りや雨でどんよりとしていたからな。洗濯日和で何よりだ」 「ええ、雨になるとお洗濯ものが乾かなくて大変ですよね」
2014-04-05 13:31:25「そういえば最近、部屋干し用の良い洗剤が出てきたな。香り付け用のびいず等も店頭に並んでいると聞く」 「先日、ビーズを試しましたが好評でしたよ。寿さんや音也はまるで猫の子のようにずっとタオルに夢中でした」 「それは凄いな。是非お勧めを教えて貰えないだろうか」 「そうですね確か……」
2014-04-05 13:32:19「…………」 「最悪の話の繋がり方だね。聖川の奴とイッチー、洗剤の話をしてるみたいだ。奥手かつ現在脳内大暴走中で何の応用力もきかないイッチーには酷だよあれ」 「トキヤが心の中で男泣きしてるのが、見えてくる……」
2014-04-05 13:33:28「今の季節限定の香りとかもあるのだろうか?」 「!!! そ、そうですね……桜の香り、とかですかね……」 「偉いトキヤ!!」 「滅茶苦茶棒読みで目も泳ぎまくりだったけど、まあ合格かな」
2014-04-05 13:34:15「桜か……そういえば、めろんぱんの桜味が出ていたな」 「…………。 あ、もうご試食なさいましたか?」 「ああ。なんというか……杏仁豆腐のような味がした」 「わかります。桜味のあの舌の上から鼻腔に留まるような甘い香りは、杏仁豆腐に近いものを感じますよね」
2014-04-05 13:35:23「ああああああ!!!」 「ああいう謎の食レポは冷静に返せるんだねイッチー」 「ねえレン、ちょっと」 「えっ、どうしたんだいイッキ、えっ」
2014-04-05 13:36:42(……どうやっても話をつなげられない。もう、諦めた方が良いのでしょうか) 「? どうしたんだ。一ノ瀬」 (こんな意味のわからない、しかも何の生産性もない会話を聖川さんにさせるなんて、よりにもよってこの私が聖川さんの時間を無駄にしてしまうなんて) 「一ノ瀬、そういえば今日は――」
2014-04-05 13:37:32「レン! すっごかったねえ表通りの桜!(棒読み)」 「あれこそ満開って言うんだろうねえ。今年は雨が多かったから、花が白っぽくて、とても幻想的だったよ(棒読み)」 「あーあ、あれ見ないなんて勿体ないなー。今日が見頃だろうなー、明日はもう全部落ちちゃってるかもなー(棒読み)」
2014-04-05 13:39:22「――!!!」 「……どうした一ノ瀬、顔が真っ赤だぞ」 「な、んでもありません……(音也め…しかもレンまで…!!)」
2014-04-05 13:41:39「…………。 そうだ。一ノ瀬、この後時間はあるか」 「……? 私ですか。もう収録は終わったので今日一日、フリーですが」 「では、共に桜を見に行かないか」 「えっ」
2014-04-05 13:42:41「今日が見頃なのだろう? お互いもう仕事も終わり、一日暇のようだし、表道りから土手までの桜の並木道を眺めながらゆったり散歩するのはどうだろうか?」 「えっ」
2014-04-05 13:43:33