【忍殺二次創作】アンダーガイオン日常風景-朝食

発掘。
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プロフィール編集テスト @hilo_taoka

「エー……肉、肉ないな、どうするかな、コレ」ツルジ・フシムラはブツブツと呟きながら冷蔵庫の中身を漁る。アンダー暮らしの白い肌を橙色の庫内灯が照らす。「アッ、卵あった、あった、コレでいい」ショーユ工場の労働で荒れた手が、つるりとしたバイオ鶏卵を掴む。 1

2013-05-08 23:31:24
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ツルジは左手にバイオ鶏卵を持ち、冷蔵庫から半メートルほど離れた流し台に向かう。そしてその上に置かれた白いスイハンキの蓋を開けた。「まだ柔らかいな、イケル」スイハンキとは日本の家庭に常備されている、白米を適切な硬さに炊き上げて保存する機能に特化した調理器具である。 2

2013-05-08 23:34:42
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「未来未来未来未来未来……」小声で調子はずれの歌を口ずさみながらスイハンキの白米を茶碗に移し「もうない!」歌にあわせ、生のバイオ鶏卵を白米の上に割り落とす。更にその上に、少量で充分な香りが出るよう調整されたショーユ・スプレーを吹き付ける。 3

2013-05-08 23:38:41
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生卵、白米、ショーユをハシでかき混ぜ、黄色いリゾット状にする。「へへ、簡単でいいじゃねえか」これはタマゴカケと呼ばれるキョート料理の一種である。魚介類の入手機会に乏しいガイオンにおいて、タンパク質を手軽に補給するために考案されたもので、フランス料理のウフ・ア・ラ・コックに近い。

2013-05-08 23:43:26
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全体にショーユが行き渡るまで攪拌した後、ハナブシを上にまぶす。元々キョート料理に必須であったハナブシも現在では殆どがバイオ製品に取って代わられ、その栽培農家はキョート郊外に僅かな数が残るのみだ。 5

2013-05-08 23:45:16
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黄色い粘液質に包まれたコメを前にツルジは手を合わせた。「イタダキマス!」ブディズム由来のこの食前の祈りもハナブシ同様絶滅危惧となって久しい。ツルジの習慣は、彼が元々上層の富裕層出身であることを伺わせる。祈りを終えると、ツルジはタマゴカケを無心にかき込み、咀嚼もせずに飲み込む。 6

2013-05-08 23:49:38
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茶碗いっぱいのコメを食べ終えると、ツルジは溜め息をついた。「ショーユかけすぎたな……」屋外から聞こえてくる人々のざわめきが、自然光の届かぬアンダーガイオンにも朝が来たことを知らせていた。 7

2013-05-08 23:53:54