【twitter小説】猫の管理人#3【ファンタジー】

街に猫が増え続けている…清掃ギルドの青年は猫をなんとかしようとするが、そのとき夢に現れたのは猫の魔法使いだった。小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
減衰世界 Twitter小説
rikumo 822view 1コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:02:49
     家に着くと電信が一つ届いていた。恋人からだ。少し考え事をしすぎたせいか、その知らせは大きな心の癒しになった。 『こんどの しゅうまつ しょくじでも しましょう へんじ まってます』 59
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:08:17
     電信はそう記されていた。電信機がバチンバチンと紙のテープに文面をタイプし、スリットから吐きだす。忙しいレウンだったが、恋人は何度もデートに誘ってくれた。レウンはそれが嬉しかった。 60
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:15:54
     だからこそレウンは彼女にとても感謝しているし、会う時には何かプレゼントを包んでいった。しかしそう簡単に会えるわけではない。自由が欲しい。もっと自由になれば恋人ととも気兼ねなく愛を語れるのに……。 61
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:21:54
     そうだ、猫になれば全てが自由だ。猫のように、自由に歩き回り日差しの下木陰でくつろぐことだって出来る。一日に必要なだけ餌を取ったら、後は昼寝をするだけでいい。そうなれば、どれほど幸せなことか……一瞬彼は猫への願望に倒れかけた。 62
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:27:30
     しかし、そこではっと我に返った。そうだ、自分が猫になったら恋人はどうなる? 彼女は人間のままレウンを失うことになる。それはいやだ。自分にいままでこれほど尽くしてきた彼女を裏切れない……。レウンは猫への期待を打ち消しソファーに横になった。 63
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:32:32
     ネクタイも取らずに、レウンはそのまま眠りに落ちた。恋人と一緒に猫になることは可能なのだろうか。しかし、彼女の意思もあるだろう。彼女は猫になんかなりたくないかもしれない。夢の中で彼は猫を見ていた。 64
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:37:26
     レウンはペットショップの中にいた。ケースの向こうには仔猫が眠っている。レウンとケースの間は硝子の壁があった。そうだ、どんなに渇望しても自分は猫にはなれない。あまりにも多くのしがらみを抱えすぎて猫になることができないのだ。 65
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:43:02
     管理人はこのしがらみは害悪だと言った。だが、自分にとって愛おしいものも少なくはないのだ。全てを無にするつもりはない。全てを抱えて、レウンは生きている。それでいい、それで十分だとレウンは思った。 66
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:48:21
     もし何か悲しいことがあって愛しい全てを失ったのなら、全てを捨てて猫になることも出来るだろう。もしかしたら管理人が猫になったのも、そういった悲しいことがあったからなのかもしれない。だが、幸いにも自分はまだ大丈夫だ。 67
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-09 20:53:22
     そのことを、明日管理人に伝えてこよう。そうしよう……そしてそのままレウンは深い眠りに落ちていったのだった。 68
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 17:42:33
     その次の日仕事を終えた後、レウンはカフェで夕食をとり目的の家へ向かった。場所は昨日聞いておいた。街外れの廃屋だ。たしかにあそこにはボロ屋があった。だが、向かってみるとどうだろう、そこには立派な屋敷が立っていたのだ! 69
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 17:47:29
     色とりどりのネオンで装飾された軒下はまるでパーティー会場のようだ。キラキラと電球で飾られた入口のドアが眩しい。コインを入れて動く自販機が光って幾つも並べられていた。建物は4階建てで、2階から上は闇に沈んでいる。 70
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 17:51:45
     狭い土地に押し込められるように立っている屋敷。その前にはやはり大量の猫がたむろしていた。瞳孔の開いた目で一斉にこちらを見てくる。気押されつつも、猫の尻尾を踏まないように注意深く歩み寄る。 71
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 17:57:23
    「こんばんにゃー!」  突然ドアが開き、タキシード姿の猫の管理人が顔を覗かせた。レウンは驚きつつも、なんとかして昨日考えたことを管理人に伝えようとした。だが、それより先に管理人が話を始める。 72
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:06:39
    「いま先客が来てるにゃー。ちょっとおもてなしに忙しいにゃー。呼んでおいて失礼して申し訳ないにゃー」  そう言って彼は奥へ引っ込んでしまった。ドアの向こうからはさわやかな紅茶の香りがする。笑い声や歓談する声もささやかながら聞こえた。 73
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:11:57
     一瞬レウンは全てを捨ててこの歓喜の輪に入りたかった。足元の猫たちがニャーニャーとすり寄っては身体を足にこすりつけてくる。だがレウンはそこで踏みとどまった。ネオンがチカチカと点滅し、羽虫が飛び交う。 74
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:18:30
     光の溢れる軒下には一つのベンチがあった。フレームが錆びた金属で出来た、木製の落ちついたベンチだ。自販機で缶コーヒーを買うと、レウンはベンチに座った。風は暖かく、疲れた身体がリラックスする。缶コーヒーの熱がじんわりと手に伝わった。 75
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:26:15
     屋敷の中からは楽しそうな声が聞こえてきた。猫の生活も楽しそうだなと思いつつも、自分は外にいるという状況がどこか人間として生きる自分の主張に思えた。缶コーヒーの蓋を開けて、ゆっくりと香りを楽しむ。 76
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:31:36
     そのまま缶コーヒーを飲んでしばらく待っていると、再びドアが開いて管理人が姿を現した。 「いやはや、申し訳ないですにゃー。早めに切り上げるはずがなかなか盛り上がってしまって……どうです、猫になる気はないかにゃー。よければ一緒にパーティーを楽しもうにゃー」 77
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-10 18:38:12
     レウンは、それに笑って答えたのだった。 78
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-12 08:56:42
    「猫になるお誘いですが……すみません、遠慮させてください」  レウンは笑って、管理人に断りを告げた。管理人は少し驚いたものの、すぐその猫の顔を笑顔に変えた。残念そうではないようだった。 79
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-12 09:03:42
    「やはりあなたは人間の道を選んだにゃー。残念だけど、それはいい選択だにゃー。きっとそうにゃー」 「申し訳ない。せっかく誘っていただいたのに……」 「いいにゃー」 80
  • 減衰世界 @decay_world 2014-04-12 09:14:04
    「レウン様はきっと人間を捨てるのに躊躇する素晴らしい物を持ってるにゃー。それは幸せなことにゃー。それを捨てさせることは自分にはできないにゃー」 「そう、私には待っている人がいるんです。私の帰りを待っている人が……」 81

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