【twitter小説】猫の管理人#3【ファンタジー】

街に猫が増え続けている…清掃ギルドの青年は猫をなんとかしようとするが、そのとき夢に現れたのは猫の魔法使いだった。小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

「それは恋人かにゃー?」  管理人は微笑んでいった。どこか、昔を懐かしむような、そんな目をしていた。 「ええ、私には愛するひとがいます。もし恋破れるようなことがあれば、あなたの国を探しに行きますよ」 82

2014-04-12 09:19:17
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「そのときは!」  びしっと背筋を伸ばし、恭しく礼をする管理人。 「そのときは快く受け入れるにゃー。我らが猫の国、もうすぐ実現するにゃー。もうすぐ、もうすぐなんだにゃー!」 83

2014-04-12 09:26:22
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 管理人はどこからかステッキを取り出し、コンコンと地面を叩いた。すると、ネオンがバチバチと火花を散らし、自販機がでたらめに点滅する。玄関にたむろしていた猫たちはみな2本足で立ちあがり、手をつないで輪になった。 84

2014-04-12 09:31:02
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 そこから猫の大合唱が始まった。レウンはベンチに座ったまま身動きが取れなくなっていた。館はガタガタと振動し、バラバラに散らばって夜空に舞いあがっていく。管理人は猫の輪の中心で、ステッキをタクトのように振っていた。 85

2014-04-12 09:36:57
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「猫の国はすぐそこさ、猫の国はすぐそこさ、急げ! 猫の国へ!そこは猫の楽園、猫の全てがある国――」  猫の歌はやがて人間の言葉になり、大合唱はいつまでも続いた。ネオンは飴のようにぐにゃぐにゃと曲がり、光の軌跡になった。 86

2014-04-12 09:41:06
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 そして全てが大合唱と光の渦に巻き込まれた。レウンはベンチから振り落とされて、地面にぽっかりと空いた暗黒の渦の中へ落ちていく。猫は次々と飛び立ち、空中を舞った。館の残骸と共に、彼らはどんどん空高く舞い上がっていく……。 87

2014-04-12 09:47:45
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 レウンはそこで目を覚ました。彼はベッドに横になって寝ていたのだ。あれは夢だったのだろうか。しかし、机の上には冷めた飲みかけの缶コーヒーが置いてあった。レウンは一息をつくと、もう一度ベッドに沈んだ。 88

2014-04-12 09:55:17