ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグー#9

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@nezumi_a

企業のスパイにしては素人すぎるし、荒事に慣れているようにも見えなかった。「もう祈るくらいしか出来ねェよ」「そうだな」ニンジャスレイヤーは回想する。スキュレーとのイクサの最中、確かに、何者かの助勢を感じた。もしかしたらあの二人、あるいは。「いや、まさか」25

2014-04-19 19:08:39
@nezumi_a

「どうした?」ガンドーが訝るが、フジキドは答えず、ただ首を振っただけだ。あの時交錯したバイオ金魚らしき影。一瞬、ニンジャソウルらしき気配を感じた気がするが、さすがに確証がなかった。「ガンドー=サン」「アン?」「……いや、何でもない」26

2014-04-19 19:13:34
@nezumi_a

ヘリコプターをハッキングしていたガンドーは怪訝な表情で振り返ったが、何も問い返してこなかった。フジキドは(人間以外にもニンジャは存在すると思うか?)と問おうとし、やめた。ガンドーにそのような質問をしても無意味だ、人間以外のニンジャが出てこようと、それが敵であれば殺すしかない。27

2014-04-19 19:21:10
@nezumi_a

自分の歩いている道とはそのような道なのだ。フジキドは夜空を見上げた。先ほどまで出ていた雲も晴れ、ドクロのような月が覗いている。普段は不気味に見える月が、何故か今夜は美しく見えた。28

2014-04-19 19:24:07
@nezumi_a

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2014-04-19 19:26:24
@nezumi_a

翌日。宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの両名はリゾートビーチに居た。徹夜明けの状態だ。「結局さー」備え付けのビーチチェアーで寝ていた蓮子。水着の上からアロハシャツを着た姿だ。「人魚の噂って何だったのかしらねー」隣でトロピカルジュースのおかわりを連呼していたメリーが振り向く。30

2014-04-19 19:31:32
@nezumi_a

「あんまり深く考えないほうがいいんじゃないかしら。特に今回は」気だるくに答えるメリーはチュウ、ストローを吸った。オーガニックフルーツの果汁が喉を潤す。「それ果糖でしょ、太るわよ」「今日はいいのよ、徹夜で消耗したから」メリーの言葉に理屈など無いが、怠いのは蓮子も同じだった。31

2014-04-19 19:34:24
@nezumi_a

それ以上の追求も面倒なので海の家仕様とやらのヤキ・ソバをもそもそと頬張る。これも無料だ。大雑把な味付け。普段なら二口で閉口するだろう。しかし不思議と旨く感じた。これが海の魔力か。「彼、どうしたかしら」と、メリー。「魚だし、海に落ちても無事なんじゃないかしら」32

2014-04-19 19:36:47
@nezumi_a

蓮子はヤキ・ソバを口に運び続けながら答える。思い出されるのは喧騒。鳴り響く警報、銃声、ヤクザスラング。そして、「ニンジャ……」オカルト仲間の間で密かに語られる闇の住人。妖怪説や過去の超人、近代テックの産物など諸説あるがその真偽は定かではない。33

2014-04-19 19:39:10
@nezumi_a

キョート、ガイオンでのニンジャ関連情報は余りに少なく、話題に上ることさえ珍しい。秘封倶楽部の二人であってさえ、このクマノイセに来るまでニンジャの存在を失念していたくらいだ。超常現象めいた存在はこれまでにも何度かお目にかかっている二人だったが。「生きた心地がしなかったわー」34

2014-04-19 19:42:19
@nezumi_a

蓮子はテルなんとかと言ったニンジャから感じたプレッシャーを思い出す。「ソウヨネー」メリーはトロピカルジュースに浮いているカットフルーツの星型に、昨晩飛び交っていた特殊な投げナイフを思い出す。「まぁ、今回はこれでよしとしましょう」35

2014-04-19 19:45:14
@nezumi_a

そう言うメリーの手には、レンズめいた物を日に翳す。貨幣トークンよりも少し大きい程度のそれは、遮光ドーム越しの太陽光に透かすと複雑な紋様が七色の影を映した。磁気フィルムにも見えるそれは、同じものが蓮子の手にもあった。36

2014-04-19 19:48:08
@nezumi_a

昨晩、ヨロシサンの施設からドサクサに紛れて脱出した二人は、そのまま宿まで夜通し歩いて帰ってきた。朝日も昇ろうかという時間に帰着し、そのままベッドに倒れこんだ二人は泥のような眠りに落ちた。そして目を覚ました時、部屋のチャブの上にこれが置かれていたのだ。37

2014-04-19 19:51:21
@nezumi_a

当然部屋には鍵は掛かっており、ホテルの部屋は十八階だ。これだけではミステリーかセキュリティの問題かという天秤だ。だが蓮子がフロントへ怒鳴り込む寸前に、メリーがこの謎の物体は魚のウロコに近いものだという事を『視』抜いた。38

2014-04-19 19:54:53
@nezumi_a

そして、ウロコの色やサイズを調べ、該当もしくは近似のバイオ魚類が近隣に生息していない事だけを確認すると、蓮子はメリーと共にビーチへと繰り出したのだった。ビーチの利用のチケットが今日までだからというだけではない。無性に海を見たくなったのだ。39

2014-04-19 19:58:17
@nezumi_a

「いい天気ねー」メリーがその豊かなブロンドを風に靡かせる。「そうだ、花火大会」「あ」メリーの提案に蓮子も身体を起こした。今日の夜が晴れる保証は無かったが、二人には間違いなく晴れるという確信があった。手の中にある虹色のウロコは、そう信じるに足る証拠だと信じている。40

2014-04-19 20:00:18
@nezumi_a

メリーが立ち上がる。「それなら夜までにあちこち見て回りましょう。私もオーガニック・マグロを食べたいわ」蓮子が立ち上がる。「ならオススメの店があるわ」二人は頷きあうと、街へと歩いていった。ビーチにはトロピカルな音楽が流れ、調整された日差しが眩しい。波間に小さな影が跳ねた。41

2014-04-19 20:03:06
@nezumi_a

「ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグー」終わり

2014-04-19 20:03:27
@nezumi_a

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XX1 【テルビューチェ】バイオサメの顎を移植したおぞましきバイオニンジャ。戦闘時には変身し、そのジゴクめいた歯列による噛みつき攻撃を得意とする。手持ちの武器(テルビューチェ)に使われているバイオサメの牙は抜け落ちた自身の牙を再利用したもの。◆殺◆

2014-04-19 21:44:39
@nezumi_a

◆忍◆ニンジャ名鑑#XX2【スキュレー】ヨロシサンのバイオ技術を集結したシー・キメラ。シャチめいた頭、腕に電気ウナギの電気鞭、脚はタコと、見る者を狂気に陥れる異形の身体を持つ。その身体を活かしオクトカラテや電気ショック等、多彩な能力でニンジャスレイヤーを苦しめた。ちなみに男◆殺◆

2014-04-19 21:48:10
@nezumi_a

◆忍◆ ニンジャ名鑑#XX3【ツナミ・ニンジャ】ニンジャ大戦で敗北し落ち延びたオールドリアルニンジャ。魚竜に姿を変えたり付近の天候を操作するなど数々の強大なジツを有したが、今は力の源を失い自分のヨーカイヘンゲ・ジツを解くことも出来ないほど弱っている。◆殺◆

2014-04-19 21:48:48