ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグー#9

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@nezumi_a

ヒフウ・イン・ナイトメア・フロム・リューグー #9

2014-04-19 17:27:21
@nezumi_a

「バカなー!ス、スキュレー=サンがー!」サザジマ先生は第二コントロールルームで絶叫した。モニターにはニンジャスレイヤーによって両断されたスキュレーが爆発四散する瞬間が映し出されていた。「有り得ない!不可能だ!スキュレー=サンと水中戦をして勝つなど有り得ないすぎる!」1

2014-04-19 17:29:06
@nezumi_a

衝撃のあまりよろめく。そしてタイピングを続ける研究員を他所に、コントロールルームを抜け出した。研究員たちはLAN直結したうえに、薬物ブーストも行っているために気付かない。サザジマ先生はそのまま所長室へと向かう。「ニンジャスレイヤー=サンめ、よくも貴重な被検体を……!」2

2014-04-19 17:32:08
@nezumi_a

二名のニンジャはザイバツからの預かりだ。それが両方とも死亡したとなれば責任の追及は免れられないだろう。ニンジャスレイヤーによる犯行であろうと関係はない。不始末が起き、それにより損益が生じたのだ。誰かが責任を取らなければならない。そしてこの施設の責任者は自分だ。3

2014-04-19 17:34:31
@nezumi_a

得体の知れないニンジャ結社の事だ、片腕をケジメしたぐらいで済む事態とも思えない。良くてケジメ後にアラスカ送り、セプクの可能性も十分にある。幸い、ハッキングはキョート支社からの支援もあり、施設のコントロールはほぼ奪回出来ている。あとは研究員たちに任せても大丈夫だろう。4

2014-04-19 17:37:35
@nezumi_a

「ともかく隠蔽を済ませなくては」サザジマ先生は所長専用の個人端末に座るとLAN直結し、手の指を展開した。おお、見よ。サザジマ先生の両手はサイバネ義手であり片手の五指が十指に分裂!両手合わせて二十本の指になった!ヨロシサンの管理職であればこの程度の改造はチャメシインシデントだ!5

2014-04-19 17:41:15
@nezumi_a

ヤバイ級ハッカー並のタイピング速度でデータを改竄消去!ニンジャ二名の改造手術のデータは特に念入りに削除する。これが明らかになればザイバツとの個人的なコネクションが失われてしまう。上層部がバイオテックを毛嫌いしているザイバツ内に、懇意のニンジャがいるという事実は実際大きい。6

2014-04-19 17:45:21
@nezumi_a

そしてスキュレーのデータをバックアップ、これは実際生命線となるだろう。「貴重なデータだった」スキュレーを失ったのはかなりの痛手だった。漁村の社から奪ったニンジャソウルを宿す謎の遺物。おそらくは過去に存在したリアルニンジャ縁の品だろう。7

2014-04-19 17:49:20
@nezumi_a

マグロを意のままに操ったジツはおそらくフドウカナシバリ・ジツの亜種。ヒュプノ系の性質も兼ね備えた強大なジツだ。そのメカニズムは完全に解析されたわけではなく、不明な点が多い。「あのジツはきっと応用が利く」しかし肝心のスキュレーが死んでしまっては研究を進めることも叶わなかった。8

2014-04-19 17:53:26
@nezumi_a

今すぐに遺物を回収しに地下プールに飛び込みたかったが、ニンジャもクローンヤクザも居ない状態で行くのは無謀すぎる。施設内に危険極まりない敵ニンジャが徘徊しており、しかもそれはヨロシサンに明確な悪意を抱いているのだ。プラントのハッキングに失敗した今、次に賊どもが狙うとしたら……。9

2014-04-19 17:58:31
@nezumi_a

「アイエエエ……」あの時聞こえた「ニンジャ殺すべし」の言葉。ジゴクの底から湧き上がる蒸気のような恐ろしい声。恐怖の記憶がフィードバックし、失禁しそうになるのを堪える。ヨロシサン管理職とはいえ所詮は非ニンジャ。ニンジャの苛烈な殺意を感じて精神に異常を来たしても不思議はないのだ。10

2014-04-19 18:03:31
@nezumi_a

データ消却を終えたサザジマ先生は、PVCブリーブケースにフロッピーディスクとパンチドテープを慌しく詰め込む。いつあの赤黒ニンジャが来るとも知れない。屋上のヘリポートに急がねば。エレベーターを使いたかったが、ハッキングの影響か動いていない。サザジマ先生は毒づくと階段へ急いだ。11

2014-04-19 18:09:01
@nezumi_a

「こんなはずではなかったんだ……スキュレー=サンを司令塔にバイオマグロとマリンヤクザによる水上の連携戦術を商品とし、ザイバツとアマクダリに売り出すはずだった……」見えない何者かに言い訳するかのように呟く。今は身を隠さなくては。12

2014-04-19 18:13:45
@nezumi_a

「査問会は所長代理を立ててやり過ごそう、代理がセプクしてホトボリが冷めた頃にケジメして帰ればなんとかなるはずだ」ナムサン!血も涙もないトカゲの尻尾切りめいた保身!しかしヨロシサンという万魔殿を生き抜くためには必要な事なのだ。階段を登りきった。非常扉のロックは所長権限で解除。13

2014-04-19 18:18:24
@nezumi_a

扉をくぐれば、役員用のヘリコプターが暗闇の中に駐機している。ヘリはオートで飛ばせる。「まだ大丈夫だ、私はこんなところで終わったりしないぞ」「何が大丈夫なんだい」誰も居ないと思っていたヘリポートに何者かが居た!「アイエッ!?」14

2014-04-19 18:21:32
@nezumi_a

ヘリコプターの影から白髪の大男が現れた。「な、何者だキサマ!ここはヨロシサンの私有地だぞ!」「知ってるよ。アンタ。階段を上ってきたんだな、ゴクロサン。エレベーター止まってたもんな」男の言葉で察する。「キサマがハッカーか!」「名推理だな。で、アンタが所長のサザジマ=サンだな?」15

2014-04-19 18:25:49
@nezumi_a

大男の手元でガチリ、と硬い音が鳴った。「ち、違う!所長は第二コントロールで本社と通話中だ!」実際にキョート支社からの追求を受けているのは、先ほど所長代理に任命したばかりのヤマノ係長だが。「そうかい。だがな、そこのドアは所長権限じゃないと開かないはずなんだが?」「グッ……!」16

2014-04-19 18:31:37
@nezumi_a

インガオホー!自分が逃げるまでに他の職員がヘリコプターを使って逃げない為の予防策が裏目に出た!「じゃあな。ブッダによろしく伝えてくれよ」ガンドーの声はツキジのダンジョンの冷凍マグロよりも冷たく、そしてジゴクめいた静けさがあった。 17

2014-04-19 18:36:27
@nezumi_a

―――――――――18

2014-04-19 18:40:04
@nezumi_a

ガンドーが屋上でZBRタバコを吹かしていると、外壁からニンジャスレイヤーが昇ってきた。赤黒の装束は傷だらけで、地下での戦いの激しさを物語っていた。「首尾は」「すまねぇ、ハッキングは失敗だ。途中から本社が出張ってきやがった」「そうか」フジキドは短く答える。19

2014-04-19 18:43:56
@nezumi_a

「いちおう潜伏性のウィルスを撒いておいたが、効果が出るかは微妙だ。次はやり方を考えないとダメだな。スマン」ガンドーは二度謝った。彼も今回のヨロシサンの非道には激しい怒りを覚えていた。自分の持てる能力を駆使し、このプラントに潜む邪悪を徹底的に破壊するつもりだったのだ。20

2014-04-19 18:48:01
@nezumi_a

しかし力及ばず、施設のコントロールは奪還され、マリンヤクザ培養プラントのデータも破壊できなかった。ガンドーは己の力不足を痛感すると共に、フジキドが相対している敵の巨大さを知るのだった。「だが、何の収穫もなしってわけでもないぜ」ガンドーは火傷をした指でブリーフケースを指差した。21

2014-04-19 18:52:11
@nezumi_a

ブリーフケースは認証した持ち主のバイタルサインが消えると、内部の機密を守るために発火する仕組みだったのだ。ヨロシサンの情報セキュリティの厳重さに唸る。猛然と燃え出したブリーフケースから、ガンドーはかろうじて一枚のフロッピーディスクを拾い上げる事に成功していた。22

2014-04-19 18:56:18
@nezumi_a

「残りも全部持って帰ろう。わずかな手がかりでも欲しい」フジキドは言った。「そうだなパンチドテープも専門家に頼めばなにか残ってるかも知れねぇ」ガンドーは燃えカス同然のケースの中を見て肩をすくめた。「そういえば」僅かな静寂の後、フジキドが口を開いた。「さっきの二人は」23

2014-04-19 19:00:26
@nezumi_a

「ヤクザは地下に行ってない、俺が隔壁を閉じたからな。たぶん無事だろ」言いつつ首をひねるガンドー。何者か全く見当もつかぬ二人組だった。なぜこのような深夜に、しかもこのような場所に居たのか。ウカツな観光客であっても警報の鳴り響くヨロシサンの施設に踏み込むだろうか?24

2014-04-19 19:04:06