有田芳生氏による「日本社会に蔓延するヘイトスピーチへの対応策」をテーマとした参議院法務委員会質問

参議院議員・有田芳生氏の参議院法務委員会での質問の模様とその内容を実況したまとめ。
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有田芳生 @aritayoshifu

法務委員会でヘイトスピーチを繰り返す差別団体に公共施設を貸す基準を聞きました。総務省担当者も法務副大臣も予想通りの一般論。山形県は在特会の実体を把握し、断固として貸し出しを拒否しました。現場の差別問題への対応が問われます。人種差別撤廃条約2条d項からも拒否しなければなりません。

2014-04-24 15:30:39
有田芳生 @aritayoshifu

法務委員会が終りました。浦和レッズの「差別撲滅5か年計画」など、スタジアム内外で取り組みがはじまりました。ところが日本社会全体ではヘイトスピーチが野放し状態。差別発言が予想される講演会に公的施設が貸し出しされています。谷垣大臣は「啓蒙が大切」と言いますが、それでは対応できません。

2014-04-24 15:42:30
山梨 @yamanashii

しかし有田さん細かいところまでよく頭に入れてますね。

2014-04-24 11:30:31
kato82sub @kato82sub

第186回国会 法務委員会 第12号 平成26年4月24日(木曜日) kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangii… 以下まとめの時の。 有田芳生氏による「日本社会に蔓延するヘイトスピーチへの対応策」をテーマとした参議院法務委員会質問 togetter.com/li/658892

2014-06-27 05:28:52

第186回国会 法務委員会 第12号 平成26年4月24日(木曜日)の詳細

第186回国会 法務委員会 第12号
平成二十六年四月二十四日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十七日
    辞任         補欠選任
     上月 良祐君     森 まさこ君
     酒井 庸行君     宮沢 洋一君
     豊田 俊郎君     吉田 博美君
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     大沼みずほ君     石井 準一君
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     山下 雄平君     島尻安伊子君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     島尻安伊子君     山下 雄平君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     宮沢 洋一君     山田 修路君
     吉田 博美君     堀井  巌君
 四月二十四日
    辞任         補欠選任
     石井 準一君     吉川ゆうみ君
     堀井  巌君     古賀友一郎君
     山田 修路君     馬場 成志君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         荒木 清寛君
    理 事
                山下 雄平君
                若林 健太君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
    委 員
                石井 準一君
                古賀友一郎君
                馬場 成志君
                堀井  巌君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                山田 修路君
                吉川ゆうみ君
                江田 五月君
                前川 清成君
               佐々木さやか君
                行田 邦子君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
                糸数 慶子君
   国務大臣
       法務大臣     谷垣 禎一君
   副大臣
       法務副大臣    奥野 信亮君
       外務副大臣    岸  信夫君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  平口  洋君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   中村  愼君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   安浪 亮介君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   垣内  正君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   今崎 幸彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   裁判官訴追委員会事務局側
       事務局長     岡本  修君
   政府参考人
       内閣府男女共同
       参画局長     佐村 知子君
       警察庁長官官房
       審議官      荻野  徹君
       警察庁長官官房
       審議官      塩川実喜夫君
       警察庁生活安全
       局長       辻  義之君
       金融庁総務企画
       局参事官     小野  尚君
       金融庁総務企画
       局参事官     長谷川 靖君
       総務省自治行政
       局長       門山 泰明君
       法務大臣官房司
       法法制部長    小川 秀樹君
       法務省民事局長  深山 卓也君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省矯正局長  西田  博君
       法務省人権擁護
       局長       萩原 秀紀君
       法務省入国管理
       局長       榊原 一夫君
       文部科学大臣官
       房審議官     中岡  司君
       文部科学大臣官
       房審議官     永山 賀久君
       厚生労働大臣官
       房審議官     鈴木 俊彦君
       国土交通大臣官
       房建設流通政策
       審議官      吉田 光市君
       国土交通大臣官
       房審議官     広畑 義久君

    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (建設分野における外国人材の活用に係る緊急
 措置に関する件)
 (ヘイトスピーチに対する法規制に関する件)
 (裁判官の分限裁判と弾劾裁判に関する件)
 (総合法律支援施策の充実に関する件)
 (個人保証制度の見直しに関する件)
 (取調べの可視化等刑事司法制度改革に関する
 件)
 (法務分野におけるTPP交渉に関する件)
 (入国管理センターの医療体制に関する件)
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、酒井庸行君、上月良祐君、豊田俊郎君及び大沼みずほさんが委員を辞任され、その補欠として森まさこさん、石井準一君、山田修路君及び堀井巌君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に山下雄平君を指名いたします。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣府男女共同参画局長佐村知子さん外十七名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。今週も質問に立たせていただきます。
 今日は、まず、インターネット上の仮想通貨についてお聞かせいただきたいと思います。
 仮想通貨の一つ、ビットコイン、そういうものの取引所のマウントゴックスという会社が破産手続に入る見通しになっております。これを利用している方のいわゆる財産が失われると、多くの方が財産が失われるという事態になっています。マウントゴックスに限らず、ビットコインの盗難や取引停止というものが相次いでおります。
 日本では、こうした問題が表面化して、ビットコインに対して非常にイメージが悪くなってきたんだと思いますけれども、欧米では、その匿名性だったり、また海外への送金の手数料が非常に安いということで利用が拡大しております。マウントゴックスと同じような問題が今後も十分起こり得ると思うんですけれども、国内での被害が広がる可能性もあると思います。また、こうしたビットコインに関しては、ネット上での振り込め詐欺での仮想通貨の送金に使われるとか、マネーロンダリングに悪用されるという事態も十分想定されます。
 これまで想定していなかった仮想通貨を一律で規制するという法律は現状ないとは思うんですけれども、現行法で何らかの犯罪が成立しないんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) ビットコインをめぐる問題につきまして何らかの犯罪が成立しないのかということでございますけれども、犯罪の成否、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断される事柄でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○山下雄平君 刑法などに抵触するかどうか個別具体で判断するということでありましたけれども、この仮想通貨というのは個別具体に事情を把握するのが非常に難しいというのが特徴だと思います。政府も答弁書で、全体像を把握しているのではないというふうにおっしゃっています。現行体制では、刑法だったりまた民法だったり、いろんな法律にそもそも抵触するような事例があったのかどうかというのを把握するのが非常に難しいと思います。
 では、そうであるならば、法務省として、罰則なども含めて新たな法整備が必要ではないのか、そういった検討をなさっているのかどうか、お聞かせください。
○政府参考人(林眞琴君) このビットコインにつきましては、まさしくその全体像を現在把握しているものではございません。その上で、ビットコインそのものを明確に位置付ける法律というものについても、例えば法務省所管のものの中に見当たらないということがございます。そのことから、現時点において法務省として何らかの検討をする予定にはございません。
 もとより、他省庁における情報収集等の状況も踏まえまして、必要に応じて対応を考えてまいりたいと考えております。
○山下雄平君 法務省として新たな法整備を現状では想定していないということでした。ただ、そうであれば、利用する方というのは一層自己責任が求められるわけですし、自覚が求められるということだと思います。
 ただ、一方で、先ほども申し上げたように、欧米では非常に利用が広がっています。日本政府としても実態の把握というのは非常に重要だと思います。政府も答弁書で、ビットコインの実態等が明らかでないという認識を示されています。そして、さらに答弁書で、現在、関係省庁において連携を図りつつ情報収集に取り組んでいるというふうに述べられています。
 ただ、この問題に関して、政府として主体的にどこの役所が取り扱うんでしょうか。政府は、ビットコインに関しては貨幣や金融商品ではないというような見解を示されております。つまり、金融規制とかの対象ではないという見解ということだと思います。
 では、ビットコインなどの仮想通貨について、どこの省庁が中心になって情報を収集しているんでしょうか。各省庁が所掌の範囲に限って、省庁ばらばらで情報を収集しているんでしょうか。仮想通貨は貨幣や金融商品として扱わないのであれば、金融庁が仮想通貨の所管ではないという認識で間違いないんでしょうか。そうであるならば、金融庁としては、金融庁以外のどこかの役所が一元的にこの問題に関して情報収集している、そういうことを把握していらっしゃるかどうか、そういう役所があるかどうかということを把握していらっしゃるかどうか、お聞かせください。
○政府参考人(長谷川靖君) お答えを申し上げます。
 先生、仮想通貨ということで御指摘ございました。仮想通貨には様々な形態のものが存在すると考えられるため一概に申し上げることは困難ではございますけれども、御指摘のビットコインということに限りますと、現行の銀行法や金融商品取引法において位置付けられているものではございませんで、その取引等を金融庁が所管しているものでないということはそのとおりでございます。
 いずれにしましても、このビットコインにつきましては、その情報を一元的に把握している省庁はないと承知しておりますけれども、当庁を含む関係省庁が連携しながら情報収集に努めているところでございます。
○山下雄平君 金融庁さんがおっしゃったように、一元的にどこかの役所で情報収集しているという、現状そういう体制ではないという認識でした。
 これまで想定していなかった仮想通貨、ビットコイン含めですけれども、こういった事態に関して各国とも戸惑いながらも今対応を模索している段階だと思います。中国やロシアなんかは、そもそもこのビットコイン自体を認めないと、禁止するというような姿勢のようです。一方で、欧米は、容認しながらもその実態を把握して、犯罪の温床にならないように、そしてちゃんと課税できるようにというような対策を打とうとされております。
 日本も、このままの状態で普及がどんどんどんどん進んでしまうと、政府として個人や企業の金の流れというものが非常に把握するのが難しくなる、そう思います。そうすると、犯罪の事実が認定するのが非常に難しくなったり、所得が捕捉できずに税収が減ったり、若しくは金融機関だったり金融政策というものが意味を成さなくなったりしていく可能性も多分にあると思います。政府としても、どこかで一元的に情報収集、所管するような体制が必要じゃないかということを付言させていただきたいと思います。
 では、次は全く別の話題に移らせていただきたいと思います。
 我が国が、現在、持続可能な成長を実現して日本経済を再生するためには、強靱な企業の経営基盤をつくることが必要です。
 一方で、建設産業の分野においては、労働者の不足が非常に深刻になっております。これは、我々自民党、公明党の以前の政権、そしてその後の民主党政権で公共投資を大幅に削減して、そして建設産業の縮小のスパイラルをつくってしまった、そうしたことが原因ではないかなというふうに思っておりますけれども、こうした反省を踏まえて、第二次安倍内閣では公共投資に力を入れて国土強靱化に取り組んでいます。そのことにより、建設産業、この分野が非常に構造的な人材不足に陥っている。そしてさらに、東日本大震災からの復興、そして二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの関連施設の整備だったり道路の整備だったり、そういったもので建設需要の増大が見込まれています。
 そういうことに関して政府としても緊急的に対応を取らなければならないということで、四月四日の関係閣僚会議で建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を取りまとめました。言わば、外国人技能実習制度を拡充して建設現場の人手不足を技能がある外国人で補おうと、そういうことだと思います。
 では、まず、この外国人の入国の許可や在留資格の認定は法務省の所管だと思いますけれども、これまでの外国人技能実習制度の概要と、この制度における影響をどのように分析しているのでしょうか。また、この制度の対象となる産業分野というのはどういうところがあるんでしょうか。
○政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。
 技能実習制度につきましては、開発途上国等への技能等の移転による人づくりへの協力を目的とする国際貢献のための制度であり、技能実習生は雇用契約に基づき、最長三年間、技能等を習得する活動を行うものです。
 この制度は、平成五年に創設され、平成二十五年末の時点では約十五万人の技能実習生が在留するなど、我が国の社会に定着している制度となっております。技能実習制度で受け入れられる業種につきましては六十余りの業種がございますけれども、例えば建設分野ですとか製造業等での分野での受入れがなされております。
○山下雄平君 こうした制度が定着したということで、今回の、いわゆる緊急的に今の建設需要に対応するために制度を拡充しなければならない、していこうということだと思います。
 三年間の技能実習を終えた外国人の方に特定活動という在留資格で更に働けるようにしていくと、そういう制度だとは思いますけれども、今回の制度改正の概要とその狙いを説明してください。また、外国人活用には懸念の声もあります。政府として何が課題だと考えていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(吉田光市君) お答え申し上げます。
 今回の建設分野における外国人材の活用に関する緊急措置につきましては、復興事業の更なる加速を図りつつ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けまして一時的に増大いたします建設需要に的確に対応するため、まずは国内人材の確保に最大限努めることを基本とした上で、大会の成功に万全を期することが重要との観点から外国人材を時限で受け入れるものでございます。先般、関係閣僚会議で取りまとめがなされたものでございます。
 委員御指摘のとおり、治安への影響ですとか人権問題などを懸念する声もございますことから、今回は特別の監理体制を新たに構築することとされてございます。関係省庁の連携の下に、適切に対応してまいりたいと考えてございます。
○山下雄平君 この建設産業に関しては、現場の代理人などの技術者や、鉄筋工や重機のオペレーターなどの技能労働者が特に不足しているというふうに聞いております。また、この産業に関しては、高齢者がすごく増えて、若者の割合が極端に減っていると、そういった事態も聞いております。
 技能労働者の推移はどのような状況に今あるんでしょうか。また、その年齢構成はどうなっていますでしょうか。そして、そうした状態になった原因をどのように分析されているのか、ほかの、建設産業以外の分野と比べて特出した影響があるのかどうか、そうしたこともお聞かせください。
○政府参考人(吉田光市君) 建設技能労働者数につきましては、この数年、被災地の復興事業の本格化等によりまして、一旦離職した人が再び戻りつつございます。平成二十二年の三百三十一万人を底に、足下の平成二十五年では三百三十八万人まで回復してございます。しかしながら、ピーク時であります平成九年の四百五十五万人と比較いたしますと約百二十万の減ということで、大幅に減少しているという状況でございます。
 また、年齢構成につきましても、平成二十五年には、五十五歳以上が約三四・三%、また若いところの二十九歳以下が一〇・二%ということでございます。全産業と比較いたしまして高齢化が著しく進行している状況でございます。
 これらの要因といたしましては、建設投資の急激な減少の中で、仕事がなく賃金も払えないといった理由から多くの技能労働者が離職をし、その上、高齢化が進行して若年の入職者が減少するという構造的な問題が発生していることによるものと考えているところでございます。
○山下雄平君 私が新聞記者のときを思い起こすと、当時、私は、野党の谷垣総裁の番記者をしておった後に、民主党政権の国土交通省の担当に異動するときに谷垣さんに話に行ったときに、今のこの建設、公共投資の大幅削減でこの産業がどうなるのか、本当にそれでもつのかどうかというのを記者の目で見てほしい、自分も国土交通大臣を短い間だけでもした、だからそういう懸念を持っていると言われたことを今すごく思い出しておりました。
 先ほど国土交通省の話にもありましたが、外国人の活用ももちろんですけれども、国内の人材を何とか活用できるような体制をつくっていかなければ、この高齢者が非常に多くて若者が少ないといういびつな構造を改善していくのは難しいと思います。
 では、政府として、国内人材の確保のために今後どのような施策を打っていく考えなのでしょうか。
 この産業に関しては、緊急時、いろいろ国土を守っていくためには建設産業の方に非常に政府として、行政としてお世話にならなければならないことがたくさんあると思います。だからこそ、その人材の確保というのは非常に大切だと思っております。しかし、建設会社の人に話を聞くと、今後の公共投資の推移が不明なので雇用をなかなかしづらい、設備投資や更新をするのが難しいというような話もよく聞きます。その結果、経済活性化のための社会資本の整備の補正予算を執行しようとしても、人材不足で入札不調や不落が続いているんじゃないかというふうにも懸念しております。
 建設産業の国内人材の雇用を促進するためには、以前のように五か年計画を策定するなどして将来のビジョンを明確に示していく必要があるんじゃないかというふうに考えますけれども、政府としての考えをお聞かせください。
○政府参考人(吉田光市君) 委員御指摘のとおり、建設分野におきます担い手につきましては、まずは国内人材の確保に最大限努めることが基本と考えてございます。そのためには、離職者の復帰を促すあるいは高齢者に踏みとどまっていただくといったようなことと併せまして、女性、若者の入職を促進することが大変重要であるというふうに考えてございます。
 このため、まず技能労働者に対しまして適切な賃金が支払われるようにするなど処遇改善を進めることが必要でございます。そこで、私ども、公共工事の設計労務単価を昨年四月、また本年二月の二度にわたりまして大幅に引き上げますとともに、社会保険の未加入といったような問題もございますので、社会保険への加入の徹底の取組を進めているところでございます。
 また、委員御指摘のとおり、中長期を見据えまして、インフラの維持管理など、建設産業が担う仕事につきまして将来にわたる安定的な見通しを示すといったようなことも必要と考えているところでございます。
 加えまして、ダンピングの防止ですとか、担い手の確保、育成を総合的に進めるため、現在、建設業法等の改正案を今国会に提出し、御審議をいただいているところでございます。
 さらに、関係機関の代表者も交えまして、建設産業活性化会議におきまして総合的な対策の検討を進めているところでございます。今夏を目途にその方策について取りまとめを行ってまいりたいと考えているところでございます。
○山下雄平君 最後になりますけれども、もちろん国内人材も活用しなければならない、一方で、生産年齢人口が減っている中で外国人の活用もしていかなければならない。これは建設産業にとどまるわけではないと思います。
 今後、いろんな懸念もある中で、外国人の方の活用というものを政府としてどのように取り組んでいくつもりなのか、入管行政を所管する法務省として今後の方針をお聞かせください。
○政府参考人(榊原一夫君) 外国人労働者の受入れ範囲の拡大につきましては、我が国の産業、治安、労働市場への影響など国民生活全体に関する問題といたしまして、国民的コンセンサスを踏まえつつ、政府全体で検討していく必要があるものと認識しております。
 法務省といたしましては、政府全体の検討により現行の外国人の受入れ範囲を拡大することとなった場合には適切に対応することとしております。
○山下雄平君 終わります。
○有田芳生君 民主党・新緑風会の有田芳生です。
 日本が二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックを迎える、しかし日本社会の質が問われているんじゃないか、そういう問題関心から、先月の三月十三日に、ヘイトスピーチ、すなわち差別扇動、そしてヘイトクライム、差別に基づく犯罪について質問をさせていただきました。
 その中でも、一つの問題としてお聞きをしたテーマとして、サッカーの浦和レッズのサポーターの心ない何人かが、サッカースタジアムにジャパニーズオンリーと、日本人だけ、外国人は駄目だという掲示を行ったことが大きな社会問題となりました。
 それ以降、質問が終わった数日後だったと思いますけれども、これまでにない最も重要な違反だということで初めての無観客試合が行われました。その後、浦和レッズでは差別撲滅の五か年計画というものを設定をしたと聞いております。
 最初に文科省にお聞きをしたいと思いますけれども、この浦和レッズが設定をした差別撲滅五か年計画、資料などを読んでみますと、スタジアムにおいては、今後は再発防止のために全ての横断幕、ゲートフラッグ、旗類、装飾幕等の掲出を禁止したと。ちょっと行き過ぎじゃないかと思うぐらいの厳しい対応が取られているとともに、問題を起こした選手がいれば、あるいはサポーターがいれば、とても厳しい対応をこれから取るということが明らかにされました。その詳細についてまず文科省にお話を伺いたいと思います。どういう計画なんでしょうか。
○政府参考人(永山賀久君) 四月十五日に、浦和レッズ、それからNGO機関で国連の友アジアパシフィックという機関ございますけれども、そこが差別撲滅に向けたアクションプログラム、ゼロトレランス、絶対に許さないという五か年計画を策定いたしました。
 この計画では、まず、いかなる理由による差別も絶対に許さないという態度を表明しております。さらに、差別撲滅に向けた二〇一八年度までの取組と目標が掲げられております。
 具体的には、選手、指導者に対する教育研修活動のほか、ファンやサポーターに対する啓発活動、有識者との意見交換、勉強会等を実施することとされておりまして、これらを通じて計画最終年度でございます二〇一八年度までに、FIFA、国際サッカー連盟、これが示す人種差別に関するルールに対する理解者の比率について、例えば選手等は一〇〇%、来場者は八五%とする等の数値目標が設定をされております。また、その進捗状況については、第三者委員会を設置いたしまして検証を行いまして、これを国連に設置されております平和と開発のためのスポーツ局へ報告するというふうにされておるところでございます。
 以上でございます。
○有田芳生君 今浦和レッズの差別撲滅五か年計画についての御説明をいただきましたけれども、その根拠となるのは、FIFA、国際サッカー連盟の懲罰規程だと思いますけれども、非常に厳しい規程がありますが、その内容についてお示しいただけますでしょうか。
○政府参考人(永山賀久君) 昨年FIFAが規約を改定をいたしまして、御指摘のような非常に厳しい規程を、例えば、何か違反があった場合には、二年間、来場者についてスタジアムに入れないとかいったものを定めております。これはFIFAの主催の試合に限られておりますけれども、各国のサッカーに関する統括団体、そういったものもそれを参考にして定めるということで、日本サッカー協会等も同様の規程を定めている、昨年改正したというところでございます。
○有田芳生君 今御説明がありましたけれども、FIFAの懲罰規程というのはこう書いてあります。人種、肌の色、性別、言語、宗教、又は出自等に関する差別的あるいは侮蔑的な発言又は行為により、個人あるいは団体の尊厳を害した場合、以下のとおり罰則を科するということで、選手が違反した場合には、原則として最低五試合の出場停止及び十万円の罰金。そして、同じチームで同じような行為を行った者がいれば、勝ち点の減点処分、初回は三点、二回目以降は六点と、そしてさらには参加資格を剥奪するとか。あるいは、サポーターの場合は、当該チームに対して四十万円以上の罰金を科す、そして浦和レッズが行った無観客試合のように、重大な違反には、観客のいない試合の開催、試合の没収、勝ち点の減点あるいは競技会の資格剥奪などを行うと。
 今御説明ありましたように、違反者が観客、サポーターなどの場合には、最低二年間、スタジアムへの入場を禁止すると、そういう厳しい罰則がサッカー界では既に決まっており、浦和レッズもそういう差別撲滅の五か年計画ということを、第三者機関を設置することを含めて、差別をなくしていこうという、そういう努力はなされている。
 しかし、皆さん考えていただきたいんですが、先月の法務委員会での質問でも御紹介をいたしましたけれども、サッカーのスタジアムとその周辺ではこういった厳しい差別をなくしていく取組がなされているにもかかわらず、日本社会全体では差別扇動がいまだ行われているし、それがやまない。
 例えば浦和レッズのスタジアムで掲示をされたジャパニーズオンリー、日本人だけという外国人差別の張り紙掲示というのは、先月もお示ししましたように、北海道から沖縄までいまだ酒場あるいは銭湯などにも掲示をされている。でも、そのこと自体が今、日本社会で大きな問題にはなっていない。
 そういうことを含めてサッカー界ではそういう新しい取組が進みつつあるんだけれども、それでは日本社会では一体どうなのかということについて、まず警察庁にお聞きをしたいんですけれども、この数年間、警備情勢を顧みてという回顧と展望などには、そういう差別扇動を日常的に行っている右派系市民グループをめぐる動向が掲示をされておりますけれども、どういう変化、特徴があるんでしょうか。この数年間に限ってで構いませんけれども、御紹介いただけますでしょうか。
○政府参考人(塩川実喜夫君) 今議員御指摘いただきましたいわゆる右派系市民グループは、極端な民族主義、排外主義的主張に基づきまして運動を展開しております。その中で、一部の過激な参加者は人種差別的な街頭宣伝活動に取り組んでおります。こうした中、カウンターと称する、右派系市民グループに対抗する行動に取り組む反対勢力も出現しておりまして、両者の間で暴力事件なども発生しております。
 警察といたしましては、こうした暴行事件などについて厳正に対処しているところであります。
○有田芳生君 右派系市民団体の行動について具体的にお示しください。そういう一般論ではありません、聞いているのは。
○政府参考人(塩川実喜夫君) お答えします。
 例えば昨年、平成二十五年中、デモなどの前後及びその過程において、いわゆる右派系市民グループ関係者九人を暴行で検挙するなどしております。
○有田芳生君 具体的なことは語るのが難しいんだろうとは思いますけれども、この委員会でも何度も御紹介をしてきましたけれども、例えば東京の新大久保、コリアンタウンになっておりますけれども、そこで、在特会、在日特権を許さない市民の会などの集会、デモなどにおいて、例えばシュプレヒコールの中で、殺せ、殺せ、朝鮮人というようなことがもう当たり前に続いていた。あるいは、デモが進行する中のシュプレヒコールの中で、更地にしてガス室を造るぞ。つまり、自分たちがやるぞというだけではなくて、差別の扇動を周りの人たち、国民に、つまりインターネットでその映像が出ているわけですから、そういう扇動が行われている。そのことがこの数年間ずっと続いているわけなんですよね。
 しかも、更に重大なのは、ここしばらくの間、これも前回お聞きをしましたけれども、ガス室を造れというような発言とともに、ナチス・ドイツのハーケンクロイツの旗を掲げて行進している者がいて、ガスマスクまで着けているという者がいる。
 四月二十日はアドルフ・ヒトラーの誕生日でした。この四月二十日に池袋で集会、デモが行われました。皆さんにお示しの資料の一枚目の左側を見ていただきたいんですが、この四月二十日の池袋の大東亜共栄圏実現国民大行進においても、ハーケンクロイツの旗を掲げて堂々と行進をしている。そこで主張していることは、ユダヤ人の虐殺なんてなかったんだということとともに、いわゆるあの慰安婦についても、こじきだ、売春婦だ、そういうことがずっとデモの行進中掲げられていた。
 こういうことがもう常態化しつつあるというのが今の日本社会なんですよね。これはもう言うまでもなく、ドイツなどでこんなことをやっていれば即逮捕ですよ。逮捕されるだけではなくて、その人たちがもう職を失うような、そういう社会の質をドイツの場合は厳しいものを持っている。だけど、日本社会ではこういうことが続いていて、しかも、去年の二月、大阪の鶴橋での同じような差別デモにおいては、十四歳の中学生の女性が、当時、南京大虐殺知っているだろうと、あんたたちが出ていかなければ鶴橋大虐殺やりますよと、そういう言葉をマイクで語った。それがアメリカのCNNなどを含めて世界中の報道機関に広がっていった。
 そういう事態において、今お示ししましたけれども、ハーケンクロイツ、毒ガスマスクなどを着けたデモ行進などがずっと続いているという状況の下で、これは本当に世界中に、日本社会というのは一体どうなっているんだろうかということを強く危惧されていると思うんですよね。
 これもまた先月お聞きをしましたけれども、イギリス大使館の渡航者情報、イギリスから日本に旅行に行く人たちへの注意事項として、日本に行ったら、今ナショナリズムが非常に高まっていて差別デモみたいなのがあるから、それを見たらすぐに逃げなさいと、そういうことまで掲げられている。そういう事態をやはり私たちは解決していかなければいけないんだろうというふうに思っております。
 そこで、警察庁にもう一度お聞きをしたいんですけれども、最近の特徴をお聞きしましたけれども、例えば、この一か月において何かこういう行動について変化があったかどうかというのを確認されているかどうかということをまずお聞きいたします。
○政府参考人(塩川実喜夫君) いわゆる右派系市民グループによるデモなどの取組については最近でも行われておりまして、例えば、今議員御指摘のとおり、今年の四月二十日には東京都豊島区内において行動がありまして、その際にハーケンクロイツの旗が使われていたというようなことも承知しております。
○有田芳生君 次に、法務省の人権擁護局にお聞きをしたいんですけれども、こういう差別事象というのが減ることなくずっと続いていて、さらには、私の印象では特にこの数年間非常に異常なものが現れてきている。そういうことについて、法務省の人権擁護局は、例えば、先月質問して以降の日本社会の差別事象の変化、動向というものを確認されておりますでしょうか、お答えください。
○政府参考人(萩原秀紀君) ただいま委員御指摘のありましたデモなどにおいて特定の国籍の外国人を排斥する趣旨の言動、これが引き続き行われており、それがヘイトスピーチということで取り上げられていることは認識しておりまして、法務省の人権擁護機関では、どのような啓発活動を実施していくべきかを検討するためにも人権状況の把握に努めております。
 いわゆるヘイトスピーチにつきましては、報道や現場状況の確認、人権相談や情報提供などによって状況の把握に努めているところでございまして、今後とも、デモの状況を引き続き注視し、その状況を踏まえ、外国人に対する偏見や差別の解消を目指して啓発活動に取り組んでいきたいと考えております。
○有田芳生君 さらに、警察庁にお尋ねしたいんですが、これはマスコミ等でも報道されましたから御存じの委員の方々も多いと思いますけれども、四国の遍路休憩所に差別落書き、具体的に言えば韓国人差別という書き込みがあったということは何度も報じられましたけれども、その実態についてどのように把握されていますでしょうか。
○政府参考人(辻義之君) お答えをいたします。
 ただいまお尋ねの事案でございますけれども、現在、関係県警察におきまして所要の捜査を進めさせていただいているところでございます。
○有田芳生君 罪状はどういうことになるんでしょうか。
○政府参考人(辻義之君) 現在捜査を行っているところでございますけれども、一般論として申し上げれば、このような事案については軽犯罪法違反に該当し得るものというふうに考えているところでございます。
○有田芳生君 具体的に言いますと、四国の遍路に差別落書きがあったのは、徳島県が現在確認されているだけで十一か所、十七枚、四市三町なんですよね。さらに、愛媛県では十三か所、八市町、遍路ノートの書き込みには十ページにわたって差別落書きがありました。さらには、香川県では四市で十か所。もう本当に至る所に差別落書きが四国で続いているという、徳島県知事の記者会見などでも、こういう憂えることを何とかしなければいけないと。
 御承知のように、四国のお遍路の場所というのは、世界遺産の暫定リストに登録をして、うまくいかなかったんですが、更に平成二十八年度に再チャレンジしようという、そういう準備がなされているときにこういう差別落書きが行われたことによって、徳島県知事の記者会見でも、人権侵害そのものだと、何てことをしてくれたんだと、憤りを禁じ得ない、そういう思いが強いという見解を表明をされております。
 こういうことが全国各地で広がっている。だから、デモとか集会というのは、私たちがそこにいればびっくりするようなことが起きて、ああ、何だこれはと思いますけれども、ジャパニーズオンリーからお遍路についての差別落書きなどなど、私たちの身の回りにもちょっと目を凝らしてみればいろんなことが起きている。
 私は、一昨日、新橋の駅に行ってまいりました。そして、関係者からお話を聞きました。JR東日本でもこういう事態が起きております。資料の一の右側の方に写真を掲示しておきましたけれども、新橋駅のトイレの中にも、これは中国人に対する差別落書きが発見をされました。それだけではなくて、品川、それから南千住、亀有、更に言えば、最近で言えば、普通電車のグリーン車の中に朝鮮差別の書き込みが行われていた。
 こういうことに対して、私たちは外から見ていると分からないんだけれども、トイレに行ってもじっと見なければ、いろんな掲示がありますから分かりませんけれども、新橋駅では、そこにお示しをしたように、差別の落書きというのは日本国憲法の基本的人権の尊重の精神に反するものだと、こういうことを掲示をされております。
 そして、その右側には法務省などが啓発に作成をされたポスターですね、「心ない落書きで傷ついている人がいます」。このイメージキャラクターはやなせたかしさんが描かれたもので、人KENまもる君、そして人KENあゆみちゃんということで、人権イメージキャラクターソング「世界をしあわせに」というのはやなせたかしさんが作詞をされているんですが、こういう啓発活動がなされているということは非常にすばらしいことだし、もっともっと広げていかなければいけないというふうに思いますが、しかし、もっとひどいことが続いているということを、やはり私たちはその対策を考えていかないといけないだろうというふうに思っております。
 法務省、このJR東日本などでの差別落書きについて、どういう把握をされていますでしょうか。
○政府参考人(萩原秀紀君) お答え申し上げます。
 そういった差別落書きの問題でございますが、JR東日本の例につきましては、個別具体的なところは控えさせていただきますけれども、一般的な例としては、差別落書きが発見された場合、その場合は、その現場付近に先ほど委員から御指摘のありましたような人権の啓発のポスター、こういうものを掲示するなど、そういった適切な措置をとるようにしております。
○有田芳生君 繰り返しますけれども、浦和レッズ、そしてJR東日本など、そういうところでの差別をなくしていく努力というものが続いているわけですけれども。
 それでは、次にお聞きをしたいのは、政府として、あるいは地方自治体として何が必要なのかということについて、法務省、副大臣などにお聞きをしていきたいんですけれども、例えば、三月十六日に東京の豊島区にある豊島公会堂で在特会、在日特権を許さない市民の会などの集会とデモが行われました。これ、担当者に聞きますと、在特会が申し込んだということについては了解をしたから貸したんだと。全国各地の公共施設にいろんな団体が会場を借り出すということは、これはもう毎日あり得ることですけれども、しかし、そこに社会的に問題があると言われている団体が貸出しを申し込んだときに、まず総務省にお聞きをしたいんですけれども、どういう規定があるんでしょうか。
○政府参考人(門山泰明君) お答えいたします。
 会館等はいわゆる公の施設に当たるわけでございますが、地方公共団体が設置いたします公の施設の利用につきましては、地方自治法第二百四十四条の第二項という規定がございまして、正当な理由がない限り利用を拒否してはならないと規定されております。また、同じ条の第三項におきましては、利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならないこと、こういう規定があるところでございます。そのほかの地方自治法第二百四十四条の二第一項というのがございます。そこで、地方公共団体は、公の施設の設置及びその管理に関する事項を条例で定めると、これは条例事項ですということになっておりまして、法律を受けました各地方公共団体の条例におきましては、利用の許可ですとか取消し、あるいは使用料の額ですとか徴収方法などについて定めるという形になっております。
 それぞれの条例におきましては、地方自治法に基づきまして、利用を拒否するためにどういう正当な理由があるかということを具体化した条文が入っている例が多うございますが、例えば、施設設置の目的に反すると認めるとき、あるいは公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めるとき、管理上支障があるときなどといったようなことに該当するときには利用を承認しないことができるといったような規定があるのが通例かと存じます。
 いずれにいたしましても、地方団体は、地方自治法とそれぞれの団体の条例に基づきまして利用の可否を決定しているというものでございます。
○有田芳生君 そこに加えてもう一度お尋ねしたいんですけれども、例えばある団体が日常的に差別行為あるいは差別発言というものを集団で行っている、そういうことが認知されているときに、そういう地方自治法二百四十四条あるいは各該当の公共施設の関わる条例ですよね、公の秩序であるとか様々な規定がありますけれども、そういうものに反するということを事前に認識することによって、会場は貸し出せませんよという対応を取ることはできないんでしょうか。
○政府参考人(門山泰明君) お答えいたします。
 結局、ただいま申し上げましたとおり、地方自治法二百四十四条第二項の、正当な理由がない限りは利用拒否ができないということになっておりまして、利用拒否ができる場合については条例でそれぞれ、具体的に定めているわけでございますので、それぞれ地方自治法の解釈、それから条例の解釈となるわけでありますが、やはり憲法二十一条に定めます集会、言論その他一切表現の自由と、この保障との関係ということは大きな問題としてあるわけでございまして、最高裁を含めまして判例も多々ございます。そういったものを考慮して自治体としては判断をしているものと承知いたしております。
○有田芳生君 法務副大臣にその点でお聞きをしたいんですけれども、憲法二十一条、表現の自由、それと、日常的に差別行為をしている団体、その団体が公共施設を借りたいといった場合、憲法二十一条、表現の自由に基づいてそれはやはり認めざるを得ないんでしょうか。どのようにお考えですか。
○副大臣(奥野信亮君) 憲法上問題があるかどうかということは私がお答えするような立場にはないと思うんですが、一般論として言うならば、御指摘のような公の施設における集会の開催を制限するということは、施設の管理者において判断される事柄である上、集会の自由にも配慮することが必要であるんじゃないかなと、私はそう思います。
○有田芳生君 その集会の自由、表現の自由に基づいて公共施設で差別的な発言、扇動というものが行われる。そうした場合、やはりどう考えていけばいいのか、具体例をお聞きをしたいと思います。
 五月十一日に大阪府門真市民文化会館で講演会が準備をされております。先に門真市民文化会館の条例をお示ししておきますと、会館の利用を許可しない場合はどういうときかというと、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めるとき、これはもう当然のことですけれども、しかし、その五月十一日に門真市民文化会館で行われようとしている集会は、御承知のように、二〇〇九年、京都朝鮮初級学校を襲撃し、あるいは徳島県教組襲撃事件で逮捕をされて有罪判決を受けた人物がこの門真市での会場を借りている。
 御本人がインターネット上にそのときのやり取りも音声で公開をしていますけれども、どういう集会かというと、これも語らなければ伝わらないんで、もうあえて最小限にして口にさせていただきますけれども、朝鮮人というのはうんこを食べるんだと、そのことについての講演会をやるんだということを言っている。それを堂々と主張をして、門真市は会場を貸している。
 彼はこう書いている。単に毎日新聞が門真市はヘイト集団に公民館を貸さないとか言うので、まあこれは事実と違うんですけれども、当てこすりで借りただけであると。借りることができた既成事実だけでも十分な話だ。これは活動といえば活動のうちだけど、それほど深い意味はない。
 そして、そういうことをやる人物の、その日の、五月十一日に予定されている講演会の協賛団体、うんこ喰っとけの会、堂々と書いておりますよ。公教育の給食で、まあこんなことははばかるんですが、朝鮮子弟にはおかずにうんこを出すのが一番だと考えます。五月十一日の講演会では、朝鮮人のすばらしい食文化について理解を深め、朝鮮人に限定してその普及を目指そうではありませんか。取りあえず、申請は、他文化共生の時代、朝鮮の食糞文化を尊重しよう。こういう中身で公共施設を借りていて、貸しているんですよ。これ、いいんですか、こんなことは、許されることなんですか、公共の秩序に反していないですか、お答えください。
○政府参考人(門山泰明君) お答えいたします。
 具体の事案につきましては詳細承知いたしておりませんが、今ございました門真市文化会館条例におきましては、条例第七条で会館の利用を許可しない場合、具体的に列挙されておりまして、御指摘ありました公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めるときというほか、三つの号が立てられております。
 したがいまして、この解釈になることかと存じますが、会館の使用等につきましては判例多々ございまして、例えば最高裁の判例だけでも、平成八年八月の上尾市の福祉会館の判例ですとか平成七年三月七日の泉佐野市の市民会館の利用に関する判例などがございますが、いずれも、原則として、もう明らかに差し迫った危険の発生等具体的に予想されるといったような場合に許可しないことができるといったように非常に限定的な判例が示されておりますので、自治体としてはそれらに考慮した上で使用許可処分等行わざるを得ないものと思っております。
○有田芳生君 これはもう醜悪な差別そのものだと私は考えますけれども、地方自治体の現場で差別に対して非常に敏感に機敏に対応すれば貸出しを拒否することはできるし、そういうところがあるんですよ。
 昨年、山形県で在特会の会長などが講演会をやるということで会場を借りました。そのときに、私は、昨年秋でしたか、山形県に行って担当者などから具体的に話を聞きましたけれども、やはり、これまで逮捕事案が出ている団体であり、そして、その団体が集会を開けばどんな差別的なことが講演会で語られるか十分予想ができるということで会場を貸出しを拒否しているんですよね。具体的に一か所だけ言いますと、山形県は、逮捕事案を含む過激な活動状況を見ると管理上適当ではないと貸出し拒否しているんですよ。
 だから、現場の努力があればこういうことをやはり抑えていくことはできるわけで、表現の自由の問題などと議論をしていく水準でないものはやはりきっちりとした対処を取るべきだというふうに考えるんですけれども、法務副大臣、いかがでしょうか、憲法二十一条との抵触などはこれはないんでしょうか。
○副大臣(奥野信亮君) 個別具体的な事情に基づき判断すべきものと理解しております。一般的な形でお答えするのは非常に難しいというふうに感じます。
○有田芳生君 では、もう一度お聞きをします。視点を変えてお聞きします。
 法務副大臣、人種差別撤廃条約の第二条、人種差別の禁止についてどのように書かれていますか。
○副大臣(奥野信亮君) どう書いてあるかということですか。そうじゃなくて、私の理解ですか。
○有田芳生君 はい。
○副大臣(奥野信亮君) この条約の求める義務については、一般に、憲法の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障に配慮しつつ履行しているものと理解しております。
○有田芳生君 ちょっと違うんですね。つまり、いや、それでいいんですけれども、人種差別撤廃条約の第二条、人種差別の禁止は、締約国は、だから裁判所も地方行政機関も含めてですけれども、全ての適当な方法により遅滞なく遂行する義務、つまり差別をなくさなきゃいけないと規定して、これは日本の法律にもなっているわけですよ。あるいは、第二条一項の(b)項には、個人や団体による人種差別も後援せず、擁護、支持しない義務を負うと。義務なんですよ。あるいは、もう先にお示しをしますけれども、人種差別撤廃条約の第四条、(a)項、(b)項は日本政府は留保をしていますけれども、その(c)項、国や地方の公の当局、機関が人種差別を助長し又は扇動することを許さない、こういう規定があるわけですよ。
 だから、こういう人種差別撤廃条約の規定に基づき地方自治体の現場がしっかりとした対応を取れば、やはり山形県のようなことはできるというふうに私は考えているんですよね。だから、そういう意味でも、この差別扇動の問題というのは、これからも政府も地方自治体もしっかりと考えていかなければいけないというふうに思います。
 その流れの中で、人種差別撤廃条約には日本は一九九五年に加入をしておりますけれども、人種差別撤廃委員会からの質問事項に対して、日本政府が二〇一三年、昨年の一月に報告書を出しております。
 外務副大臣にお聞きをしたいんですけれども、その七十二項、どのように書かれていますでしょうか。そのポイントをお示しください。
○副大臣(岸信夫君) その政府報告の中の、これは留保の理由を述べておるわけですけれども、その七十二項ですね、右留保を撤回し、人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の扇動が行われている状況にあるとは考えていないと、このように書いてあります。
○有田芳生君 そこが私はずっと疑問で、何度も何度も法務委員会などでも質問をさせていただいているんですけれども、要するに、政府の認識ではこの日本社会には人種差別思想の流布も扇動もないんだと。こういう判断は、どこが調査をされてこういう判断されたんでしょうか。
○副大臣(岸信夫君) 今のお問合せでございますけれども、立法措置等をとることを検討しなければならないほどの状況ではないということでございますが、本報告につきましては、関係省庁と協議の上、政府全体として作成したものでございます。
○有田芳生君 その政府全体としてという、その個々の部署というのはどういうところなんでしょうか。どこの部署が調査をされて誰が判断したのか。日本に今、人種差別思想の流布も扇動もないという根拠となる資料はどういうものがあるんでしょうか。
○副大臣(岸信夫君) これにつきましては、政府全体として様々な要素を総合的に勘案した上での判断ということでございますので、その過程につきましてはつまびらかにお示しすることは差し控えたいと思いますけれども、関係の省庁につきましては、内閣官房、人事院、内閣府、警察庁、総務省、法務省、文科省、厚労省及び国交省、こういうふうに考えております。
○有田芳生君 もうここで繰り返しませんけれども、特に昨年以降、もっと振り返れば、今日も少し触れましたけれども、二〇〇九年京都朝鮮初級学校襲撃事件、徳島県教組襲撃事件、水平社差別街宣事件、あるいはもっと遡れば、一九九七年にブラジル人の少年が日本人の集団によって何の罪もないのに殺害されるという、ヘイトスピーチどころかヘイトクライム、差別事件というものが起きている。そういうことがずっとこの日本社会で、今紹介した一九九七年以降でも続いているんですよね。そういうことを踏まえて、本当に日本政府は昨年一月の報告書の中で、今の日本には差別の思想の扇動もない、そういうことが言えるのかどうかなんですよね、流布も扇動もないというんですから。その根拠がおかしいじゃないですか。もしそういう調査をやったならば、誰がどういう責任で、どういう資料を集めて、どういう判断で差別思想の流布も扇動もないと言ったのか、そこのところをお聞きしたいんですよ。
 もう各省庁で調査されたというのは今お示しいただきましたけれども、じゃ、谷垣法務大臣、法務省について言えば、人権擁護局がやはり重要な役割をこれまでも行ってくださいましたし、これからも重要な部署だと思うんですよね。この日本に差別思想の流布も扇動もないという判断をしたときに、法務省の人権擁護局は何か調査なり判断というのはなさったんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) これは、政府全体の調整の中で最後こういう結論になったんだと思いますが、個別の作成経過は私は必ずしも十分につまびらかにできるわけではございません。
 ただ、委員がおっしゃいましたけれども、人権擁護行政というのは一種のADRみたいなところがございまして、確実に違法行為である、確実に例えばあるいは不法行為を構成する、こういうところであれば、またそれなりの法の発動というものがあり得るわけですね。
 だけど、まだそこら辺りがどうなるのか分からないというような事例、いろいろなお訴えがあったり申立てがあったりして、そういうものを言わば、何というんでしょうか、裁いてきたといいますか対策を講じてきたという経験はございますので、そういうものを法務省としてはいろいろ判断の材料にしているのではないかというふうに、私も十分ここはまだ分かりませんが、そんなふうに考えております。
 それで、今いろいろ御議論を聞いておりまして、先ほど総務省の方からも御答弁がございました。いろんな施設を貸すのがいいのか悪いのかというようなことで、総務省がお挙げになったのは、それぞれの条例の規定の仕方は様々だろうと思いますが、さっきお挙げになった、何かもう私記憶は定かではありませんが、善良な秩序を害するおそれがあるというような場合には拒否できるというようなことをおっしゃいました。私も、それぞれの条例、法務大臣として有権的に解釈する権限を持っているわけではありませんが、場合によってはそういうものは使える場合があり得るのかなという印象で聞きました。
 他方、しかし、善良の風俗を害するという条項の発動というのは、これはほかの政治活動の自由とか表現の自由に対して考えますと、なかなか使いにくい条項であることも事実だろうと思うんですね。そこらは相当それぞれのところで運用には御苦労があるんだろうと思いますし、また、それぞれの運用される方の意識というものもあるんだろうと思います。
 それで、私たちとしては、やっぱり今できる、できるというか、今しなきゃならないのは啓発、啓発ということは今やはりできることであるし、やらなければいけない、こういうふうに思っているところでございます。
○有田芳生君 時間ですので終わりますけれども、やはりヘイトスピーチの問題というのは、諸外国を見ても、表現の自由か法規制かという、どっちかというような堂々巡りになってしまっているというところがあるので、そこのところは、やはり現実、具体的なところから日本をもっとより良い社会の質に変えていかなければいけないというふうに考えております。
 昨日、小川敏夫議員を会長にしまして、超党派で、与党の方々も加わっていただきまして、人種差別撤廃基本法を求める議員連盟を結成いたしました。これは理念法ですけれども、やはりそういうガイドラインから作って、差別を少しでもなくしていく日本社会にしていくと。これは超党派での取組ですので、また皆様方も是非よろしくお願い申し上げますということをお伝えしまして、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
○前川清成君 おはようございます。よろしくお願いいたします。
 それで、先ほど山下委員の質問を聞いておりまして、谷垣大臣、山下さんに、当時記者だった山下さんに対して、公共工事が減少し、建設業の将来が心配だと、当時、野党自民党の総裁であった谷垣大臣が御発言されたと、こういうことでございました。確かに、その発言がうそだったという意味ではありませんが、敬愛する谷垣大臣が、ただただ、じゃ、公共事業さえ増やせばいいんだというコンテクストでおっしゃったのではないだろうと、こういうふうに思いますので、一点だけ確認をさせていただきたいことがあります。
 それは、国土交通大臣も御経験されましたが、財務大臣も御経験されました。釈迦に説法ですが、私たちの国は一方で一千兆円を超える借金を抱えています。これは、国民一億二千七百万人、一人八百万円ずつの借金です。言うまでもありませんが、私たちの三年三か月に築いた借金もありますが、その大半は自民党政権がつくった借金です。
 しかも、この一千兆円の借金、今年消費税を八%に引き上げました。税収が五十兆円というふうに見込まれています。しかし、九十兆の一般歳出、四十兆円の赤字国債、消費税を更に引き上げるかどうかという点で申し上げれば、消費税を引き上げても、これまで同様に国が独り占めするというわけにはいかないと思います。何らかの割合で地方にもお渡しをする。さらには、その消費税の税収、これは経済の規模によっても変動しますけれども、おおむね一%で二兆円強、すると、今の基礎的財政収支の赤字を止めるだけでも消費税率はざっと二五%にしなければならないし、言うまでもありませんが、基礎的財政収支のプラス・マイナス・ゼロになったとしても、まだ未払の分は借金が増えていくと。
 私たちも、コンクリートから人へというふうにお約束をして、七兆二千億あった公共事業費を四兆五千億まで圧縮をしました。しかし、私たちも、快適な道路で移動したいし、高速道路、高速鉄道があって、全国あちらこちらに便利に移動したい、国民の皆さん方もそう願っておられると思います。しかし、日本の人口が一億二千八百万人をピークに、二〇五〇年には一億人を割り込む、二一〇〇年当時には五千万人程度になる。人口がどんどん減少していく、経済も縮小していく、さらには少子高齢化が進展していく、社会保障費の歳出増は避けることはできない、こんな中にあって、公共事業費をどのように考えていくか、私は極めて難しい問題だろうと思っています。
 もしも、先ほどの山下議員の引用された御発言に関連して、日本の財政に関してどのように考えておられるのか、一千兆円という借金に関してどのように考えておられるのか、お答えをいただけたらと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 財務大臣をやりましたのも国交大臣をやりましたのも昔のことでございまして、法務委員会で私が今の問題をお答えする資格があるのか、ちょっと悩みながら立たせていただきました。
 しかし、先ほどの山下議員の、私の名前を挙げて言われました、私記憶は定かでありませんが、確かに山下さんにそういうことを申し上げたんだろうなと思います。それで、そう考えました背景は、かつての自民党政権時代に、やはり財政非常に厳しゅうございましたから、毎年三%ずつ公共事業を削るということを相当長い間やりまして、私もその一番最後の頃の国土交通大臣、短い期間でありますが、やらせていただいたわけです。そのとき幾つか感じていたことがございまして、何というか、ぼんぼん公共事業を増やしていけるような、おっしゃるような財政事情の中ではなかなかそういう簡単な話ではないなというふうに思う一方、例えば、全国の豪雪地帯等で、それまでは例えば除雪、地元の土建屋さんといいますか建設業の方に頼っていたわけですが、そういうところも、もう雪をかく重機を持つ力もなくなったり、地元ではなかなか除雪する業者もいなくなってしまったという悩みもたくさん聞いておりました。
 さて、そういうことを考えると、何かこのままでいいのかなという問題意識を持っておりまして、そして、民主党政権になりましてからもそういう公共事業費の削減をかなり思い切ってなさった、それはやはり財政事情の危機的認識がおありだったからだと思うんですが、やっぱりかなり、ミクロに見ますとそういう問題が起きている、そういうことを私は強く感じておりました。
 もちろん、財政面を無視してやれという趣旨で申し上げたわけではございません。
○前川清成君 大臣のおっしゃる悩みというのも私もよく分かりますし、ある種、選択と集中も必要だろうと思います。ただ、先ほどの有田さんの議論に関連して申し上げれば、私は愛国心を持っているつもりです。愛国心を持っている方であれば、どなたであってもこの国の未来を心配せざるを得ないだろうと。その際に、この国の財政、このことを本当に心配しない、それは私は愛国心とは言えないのではないかと、こういうふうに思っています。
 その上で、この後、裁判所の嫌な話題を取り上げざるを得ませんので、その前に少し爽やかな話題をと思って通告したのが、私、二十年ぐらい前に中島千波さんの絵で石割桜というのを知りまして、ずっと行きたかったんですが、今週日曜日、家内と二人で見てまいりました。満開は過ぎておりまして残念だったんですけれども、しかし、花崗岩を割ってそびえ立つその石割桜の姿には感銘を受けました。
 この石割桜は盛岡地裁の構内にあるわけですけれども、樹齢が三百五十年ないし四百年というふうな説明が書かれておりまして、木に様々な針金が巻いてあったり、そういう補助の器材も付けてありました。天然記念物ということで、もちろん国として大事に管理されていると思いますけれども、それなりにお金も掛かるかと思います。他方、これもやはり後世に引き継いでいかなければならない、そういう国民の財産だろうと思いますので、まずは、最高裁におかれてこの石割桜、どのように管理しておられるか、お尋ねをいたします。
○最高裁判所長官代理者(垣内正君) お答えいたします。
 御紹介いただきましたとおり、石割桜は、盛岡地方・家庭裁判所の庁舎の前庭にございます。御紹介のとおり、樹齢が三百五十年から四百年と言われておりまして、国の天然記念物に指定されてございます。老木でございますので、専門の樹医、樹木のお医者さんですね、樹木医に相談をしながら造園会社に委託をしまして、剪定、害虫駆除、それから冬の時期には雪囲いを行ったりしております。桜周辺の除草作業は手作業で行ったりもしております。
 裁判所としましては、石割桜が傷まないように配慮をしながら管理しているというところでございます。過去三年で見まして、毎年十六万円程度を支出しております。そのほかに留意しておりますのは、前庭の舗装部分につきまして、水の浸透する素材を使って雨水が土の中に行き渡るようにしておりますし、それから、ちょっと前になりますが、平成十二年には約七十万円を掛けまして、樹木医会にお願いをして診断と治療を実施してございます。
 今後とも、裁判所としましては、石割桜に適切な管理をしてまいりたいと思っております。
○前川清成君 その上で、これから少し裁判所の嫌な話をするんですが、報道によりますと、裁判官出身の法務省幹部が、事もあろうか法務省省内の女子トイレを盗撮していたという報道がなされております。
 この件について、法務大臣、事実関係をお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 法務省の庁舎内のトイレで盗撮が疑われる状況がございました。そこで、法務省は、これにつき、盗撮かどうかその当時よく分からなかったものですから、疑われる状況ということでございましたので、建造物侵入ということで所轄警察署に被害届を提出して、今警察で捜査中でございますが、その捜査に協力しているという状況でございます。そして、本件は私ども法務省の庁舎内で生じたことでございまして、既に一部報道もございます。世間をお騒がせしていることも十分承知しておりますので、いずれその捜査の状況を見てきちっと御説明しなければいけないと考えております。
○前川清成君 大臣、今のお話によりますと、法務省の建物の中で何か盗撮が疑われるようなものが残っていたので、形跡があったので、警察の方に被害届を出して、警察の捜査の結果、実はその容疑者が法務省の幹部だったと分かったと、こういうことなんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) その辺は現在警察において捜査中でございますので、詳細は今の時点ではお答えを御容赦願いたいと思います。いずれ警察の捜査を見ましてきちっと私どもも御説明をしなきゃいかぬと思っております。
○前川清成君 捜査段階ですので、言うまでもありませんが無罪推定もありますので、今の段階で、その裁判官が何という方でどういうことをしたのか、お答えにならないというのはよく分かります。
 ただ、報道によると、一九九四年に任官したとか、年齢が何歳だと、こういうふうに出ているわけです。すると、申し上げませんが、司法修習四十何期かで、年齢も特定されていて、報道のとおり一番最後の仕事が、最近の仕事が財産訟務管理官ということであれば、当時の司法試験合格者が六百人とかそれぐらいの時代ですので、名前まで特定されてしまいます。私は確認していませんが、ソーシャルネットワーク上は名前も出ているそうです。もう少し、一方において、この時点で公表できないというのであれば、この辺の情報の出し方、とりわけ何期で年齢が幾つだと、この辺についても私は配慮があってもよかったのかなというふうに思っております。
 その上でお尋ねをしたいんですが、この件を離れて申し上げますと、裁判官が何か事件を起こした場合には弾劾裁判というのにかかることになっています。しかし、と同時に分限裁判というのもございます。この弾劾裁判と分限裁判との関係に関して、最近、鳩山訴追委員会委員長から最高裁に申入れがあったかと思いますが、最高裁、いつどのような申入れがあったでしょうか。まず、結論を端的にお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。
 昨年、平成二十五年十月に福岡地裁の判事が分限裁判により戒告の決定を受けた、この事件に関連いたしまして、今月の七日、鳩山委員長から最高裁に対して申入れがされております。
 申入れの内容でございますが、この福岡地裁判事が戒告の官報掲載と同日付けで依願退官したため、訴追委員会での審査の対象とする機会がなかったということで、今回のような事態を踏まえ、裁判官弾劾制度が機能する機会を確保することは裁判所に対する国民の信頼をより確かなものにすると考えられることから、最高裁判所においては、前回の意見の趣旨を更に踏まえて、今回のように、裁判官が故意によって被害者の権利を侵害するという犯罪を構成する行為などを行い、相応の非難を受けるべきであることが判明した場合も含めて、速やかに当委員会が審査を行うことができるよう、より一層慎重かつ厳正な対処をされることを強く希望するというものでございました。
○前川清成君 今の御説明ですと、委員会室にいらっしゃるほかの先生方何のことか分からないと思いますので、私から補足をさせていただきますと、福岡地裁の四十歳の裁判官が司法修習生の女性に無理やりにキスをしたと、こういう事件が起こりました。この事件を受けて、最高裁が分限裁判で裁判官を辞めさせたと。その結果として、裁判官でなくなりましたので訴追することがなくなった、弾劾裁判を開くことができなくなったと、こういう趣旨であります。
 これと、今回の鳩山委員長からの申出、分限裁判を行った結果、訴追の機会が失われてしまったという申出は初めてではありませんよね。
○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) まず、結論だけ申し上げますと、平成二十一年の四月十日及び同月二十一日、当時の裁判官訴追委員会の臼井日出男委員長から最高裁宛てに書面が出されております。
○前川清成君 それも言いたくないのか、おっしゃらなかったので私の方で補足をいたしますと、平成十九年に、枚方簡裁の裁判官が神戸市内の風俗店に行って女性店員にかみついてけがをさせたと、こういう事件であります。新聞の報道によりますと、無理やりサービスを超えるわいせつ行為をしたと。こういうことで、これも普通であれば、私は、裁判官の品位を著しく傷つけたということで訴追の対象になるかと思いますが、訴追が始まる前に分限裁判で首にしてしまったと。その結果として訴追することができなくなった、弾劾裁判を開くことができなくなったと。で、当時の臼井訴追委員長から最高裁に申入れがなされた。しかし、今回また同じようなことが繰り返されたので、同様に鳩山委員長からも最高裁に申入れがなされたと、こういうことです。
 最高裁はもちろん分かっておられるので釈迦に説法ですが、憲法の七十八条、裁判官は、裁判により、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されないと、こういうふうに書かれています。裁判官の身分を保障するためであって、おまえは病気だといって無理やりに例えば国家権力にとって都合の悪い裁判官を首にすることはできないということで、まず前段で分限裁判、病気の場合には裁判によって辞めてもらいますよと。そうじゃなくて、悪いことをした場合には、公の弾劾によって、つまりは国会にある弾劾裁判所によって罷免をしますと。これが憲法の趣旨であります。
 ところが、風俗店でかみついた裁判官も、修習生に無理やりキスをした裁判官も、弾劾裁判が始まる前に裁判所が、最高裁が分限裁判で辞めさせてしまったと。結果として弾劾裁判所が機能をしないと。私は、これは余りにも身びいきが過ぎてしまっていて、裁判所に対する国民の信頼を大きく失墜させてしまうのではないかと、こういうふうに思っています。
 そこでお尋ねをいたしますが、どのような場合には分限裁判を先行させてきたのか、どのような場合には訴追委員会の訴追を待つのか、お答えをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。
 裁判官が非違行為を行ったという場合でございますけれども、法律の立て付けで申し上げますと、裁判所法四十九条、それから、これを受けまして裁判官分限法が定められております。職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があった場合には、分限裁判によって懲戒されると、こう定められております。これに対しまして、職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき、また、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき、これは裁判官訴追委員会の訴追に基づき弾劾裁判所の裁判によって罷免されると、こういうふうになっております。最高裁におきましては、罷免事由があると思料するときは、これまでも訴追委員会に対し訴追請求を行ってきたところでございます。
 実際の個々の事件での運用の場面でございますけれども、最高裁におきましては、裁判官の非違行為につきまして、今申し上げました法の趣旨を踏まえながら、非違行為の内容を精査した上で、罷免事由があると思料するときはきちんと訴追委員会に対して罷免の訴追を求めてきたところでございます。罷免事由には至らないが懲戒事由があるというときには分限裁判による懲戒を行ってきたものでございます。
○前川清成君 憲法の趣旨に照らすと、弾劾裁判所あるいは訴追委員会があるわけですから、裁判官が犯罪を犯した場合には、それは罷免に相当するのかどうなのか、まずは訴追委員会あるいは弾劾裁判所の判断を待つべきではないかと。結局、裁判官が弾劾裁判を受けたくないと、そうしたら、自分で辞めますと申し出て、それを分限裁判で許可してしまうと。やっぱり身びいきだというふうな批判を私は受けかねないと思いますし、国民投票法が成立をいたします、やがて。与野党共に憲法の議論がこれから過熱していくと思います。こんなことを繰り返しておられたら、裁判所の独立、裁判官の独立に対する憲法上の保障というのもやはり議論の対象になってしまうのではないか。最高裁がもっと襟を正す必要があるというふうに私からも申し添えておきたいと思います。
 その上でですが、平成に入って弾劾裁判によって罷免された裁判官が三名います。最初は平成十三年ですが、十八歳に満たない児童であると知りながら、三人の児童に対して金を渡してホテルでわいせつな行為をした裁判官。次が、これは私も弾劾裁判所の裁判員として関わりましたけれども、同じ職場の書記官に対してストーカー行為をした裁判官。で、平成二十四年ですけれども、電車の中で女性の乗客のスカートの中を盗撮した裁判官。で、今の風俗店でかみついた裁判官。で、修習生に無理やりキスをした裁判官。ほかの分限裁判の事例は知りませんが、平成に入って、裁判官が辞めざるを得ない、弾劾裁判を受けざるを得ないというのは、広い意味での性犯罪ばっかりなんです。これはやっぱりメンタルヘルスの問題、私は取り組まなければならないんじゃないのか。
 人事局長のようにエリートで優秀で仕事が楽々ほいほいという方はそんなに仕事上のストレスを抱えていないのかもしれませんが、やっぱり一人の裁判官が、私は裁判所職員定員法の議論の際にも申し上げましたが、一人の裁判官が民事事件であれば三百件の事件を同時に抱えていると、その裁判をどれだけ早く処理するかによって人事評価が決まってしまうという今のありようでは同じことを繰り返してしまうのではないかと。その結果として、一生懸命頑張っている裁判官がいるにもかかわらず、裁判所への信頼がどんどんどんどん失われてしまうと。
 メンタルヘルスの問題についてはどのようにお考えになっておられるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。
 裁判所におきましても、裁判官を含め、裁判所の職員が健康で元気で仕事をしていけるように職場環境の整備に努めてまいってきているところでございます。
 メンタルヘルスという面でございますけれども、メンタルヘルス不全に陥る原因にはいろんなものがあるんだろうとは思いますけれども、裁判所におきましても健康管理医というものを置いておりますので、気軽に相談をしていける体制をつくっておりますところでありますし、何かそういう健康上の不全を感じたときには、周りの者に気軽に話をできるというふうな風通しの良い職場にしてまいりたいと考えております。
○前川清成君 私、事件が多過ぎて今気持ちがめいっていますと、そんな相談を裁判所の中の組織ですると、すぐさま裁判所の出世街道から外されてしまって、真実かどうかは分かりませんけれども、少年裁判ばっかり押し付けられてしまうということになるんだろうと思います。そんなのは私は実効性としては皆無だと思います。
 その上でお尋ねしますが、これは法務大臣になるのか最高裁になるのか分かりませんが、法務省の中でトイレを盗撮していた裁判官、この裁判官は今は裁判所を離れて法務省に勤めています。そうなりますと、この事件が明らかになって確定した段階ですけれども、訴追なりの手続はどのようになるのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今、ある程度事実関係を確定して前川委員おっしゃいましたけれども、現在捜査中でございますから、今のような個別に特定したようなものにお答えするのは、今、御容赦をいただきたいと思います。
○前川清成君 この事件についてお尋ねしたのではなくて、手続のことをお尋ねしているんです。別にトイレを盗撮した裁判官に限らず、裁判官として任官したけれども法務省に出向している方々は大勢いらっしゃいます。その際に、裁判官を一旦辞めて、判事を一旦辞めて検事になると。その段階で、法務省に勤めて検事という身分で例えば犯罪を犯した場合には、その元裁判官というんでしょうか、元々裁判官だった者に対する訴追等の手続がどうなるのかという手続のお尋ねでございます。
○国務大臣(谷垣禎一君) 全く一般論として申し上げますと、その場合はもう裁判官の身分を離れておりますので、検察官、つまり法務省に検察庁があるわけでございますから、法務省ないし検察庁としての処分をどうするかという問題になろうかと思います。
○前川清成君 この問題も今直ちにどうこうというわけじゃありませんが、例えば最高裁長官になられた寺田さんは長く法務省にいらっしゃいましたけれども、その寺田さんをみんな検事とは思っていなくて、裁判官だと思っています。たまたま法務省に出向していると弾劾の対象にならない。寺田さんが何かしたという意味じゃないですよ、一般論として申し上げているのですけれども、裁判所から法務省に出向している方々、ほかの役所に出向している方々はやっぱり裁判官なんだろうと。そうしたら、出向しているときに何かすると弾劾の対象にはならないけれどもというのはバランスとしてどうなのかなというふうに思っております。もちろん、裁判実務を担当いたしませんので、裁判の独立という点から考えると違う考え方もあろうかと思いますが、この点についてもまた検討をお願い申し上げたいと思います。
 その上で、嫌な話ばかり続きましたので、ちょっと未来の話をさせていただきたいと思います。
 二〇〇九年の十月に当時の千葉景子法務大臣から債権法、民法の改正に関して諮問がありまして、その後、法制審議会の中で議論が続いております。過日、質問主意書というのを出させていただいたんですが、これまでに八十六回、法制審の民法(債権関係)部会が開催されて、分科会が十八回、そしてそのトータルの審議時間、議論している時間は五百時間程度だと、こういうふうにお答えをいただきました。
 大臣御案内のとおり、この法制審の議論がいきなり始まったのではなくて、内田貴法務省顧問などが中心となられて、この法制審に先立って民法(債権法)改正検討委員会というのが二〇〇六年の十月に立ち上がりました。ここで二〇〇九年の四月に試みの案、試案を作成するまで、学者、そして法務省の関係者も入って議論が続いたわけですけれども、それは全体会議が二十七回、あるいは第一準備会も二十七回、第二準備会が三十回などなどありまして、会議の回数は全部で二百六十回。全て会議に費やした時間は千三百時間になるだろうと、こういうふうにお書きになっています。
 そうすると、およそ千八百時間も議論したということになるわけでして、やがてこの国会に提出されて、この法務委員会で議論することになるわけですけれども、仮にですよ、仮にその十分の一議論するとなると、恐らく今日のように五時間コースでも三十六回、一年の国会が全部飛んでしまうということになります。
 国会のやることは、立法府のやることは行政府としては口出しをしてはならないんだというふうに、過日、谷垣大臣からもおっしゃいましたけれども、私は、国会の審議、ほかの法案に与える影響等々も考えて政府として法案を提出されるというのはある種当たり前のことなのではないのかな、こういうふうに思っています。
 その上でお尋ねをしたいのは、法案がやってくると、一括して債権法の改正を全部法務委員会でやると、一年間、毎日毎日、毎回毎回民法をやるとなった場合ですけれども、それぞれ与野党でどれだけの準備ができているのかと。
 私たち民主党は、二〇一〇年に契約法改正ワーキングチームというのを立ち上げました。私が座長をさせていただいて、その当時、会期中はおおむね一週間に一回程度勉強会を続けさせていただきましたけれども、二〇一〇年の選挙で惨敗をいたしまして議員数が大幅に減りましたので、ワーキングチームを立ち上げるのはやめて部門会議の中で議論することにしています。昨年の部門会議の座長は私が務めさせていただきましたけれども、恐らく一年間に一回ぐらいしかこの債権法の問題は議論できなかったと思います。今年は小川先生が座長をお務めいただいていますけれども、やはり議論は一度しかまだしておりません。法制審で様々に議論が積み重なっていく中、民主党としてはまだ十分に議論が熟していないという状況であります。
 そこで、野党当時、自民党の総裁をお務めになった谷垣大臣にお聞きしたいんですが、野党当時の自民党でこの債権法改正については何か会議体を置かれたりとか議論はされたんでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) ちょっと私記憶が定かではございません。
 ただ、やはり民法改正となりますと、基本法中の基本法と、特に債権法ということになりますとそう申し上げて間違いじゃないと思いますので、恐らく自民党の法務部会関係でも何らかの報告を聞きつつ議論していたのではないかと思いますが、私、今のは確実なことを申し上げているわけではございません。
○前川清成君 それでは、奥野副大臣、昨年部会長をお務めになられましたけれども、御記憶の範囲で結構ですが、債権法に関しては議論されておられましたでしょうか。
○副大臣(奥野信亮君) 参議院から議論が始まったやつですよね、債権法。その議論のほかに債権法を部会で議論したかというと、私の記憶にはありません。
○前川清成君 これは、谷垣大臣、法案を提出されるに当たって是非ちょっとお考えをいただきたいんです。
 一括で絶対に出すなと言っているわけではありませんが、与野党共にそれほど議論が十分煮詰まっているとは言えない状況で、現行でいえば三百九十九条から七百二十四条まで三百三十か条。内田先生は御著書の中で、今の債権法というのは諸外国の債権法に比べて条文の数が少ないんだと、だから分かりにくいんだと、今回の改正は国民にとって分かりやすい民法改正にするんだと、こういうふうにおっしゃっていますので、条文の数も三百三十か条が仮に二倍になれば六百六十条です。これを私は一括して提出して一回の国会で議論するというのは大変きついのではないのかな、ほかの法案に対して大きな影響を生ずるのではないのかな。そうであれば、例えば急ぐ保証人を先に出すとか、何回かに分けてお考えいただくというのも私は一つの工夫ではないのかな、こういうふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かにこれは膨大なものになるんだろうと思いますが、今まで、基本法も、法制審議会から答申をいただいた場合には法案を速やかに作成して国会にお出しをするというのが例でございまして、今のところ、前川先生の御意見でございますが、法案を分割するということを特に想定して議論してきたことはございません。
 ただ、まだ御審議をいただいている最中ですので、どういう形で国会に御審議をお願いするかというところまでまだ周到な、何というんでしょうか、準備ができているわけではございませんので、今のところお答えできるのはその程度でございます。
○前川清成君 時間が残り少なくなってきて、もう中身の話が余り、中身の話を一点だけお尋ねしたいと思うんですが、定期借家権という制度がございます。これは、借地借家法ができたときは、転居の予定があるとかやむを得ない場合に限ってだけ認められていたんですけれども、平成十一年に、当時の議員立法で、およそ一般的に定期借家が認められるようになりました。
 これは、そもそも良好な賃貸住宅を提供するという目的での議員立法だったわけですけれども、例えば奥野副大臣の御地元の御所市の商店街、残念ながらにぎわいを失っていて、多くの皆さん方が買物は隣の橿原市にあるアルルに行くと。アルルの中は、お店、賃貸、これは大抵の場合は定期借家になっています。せっかく頑張って起業してお客さんも付いたと、お客さんも付いたんだけれども、定期借家契約なので、その事業者の側、例えばショッピングモールの雰囲気を変えたいとかそういう事情があった場合には、はやっているのに、そこでまだまだ商売したいのに出ていかざるを得ないというケースが大変多くなっています。
 そこでお尋ねをいたしますが、この定期借家に関して今法制審で議論がなされているのであれば御紹介をいただきたいと思いますし、実は今日、本人保証の問題等々でやりたかったんですが、起業、業を起こす方が激減しています。起業を応援するためにも、せっかく頑張って成功した、商売が板に付いた、それなのに定期借家で追い出されなければならない、追い出されてしまう、こういう事態を防ぐ必要もあろうかと思うんです。この定期借家に関してお尋ねして、私の質問を終わらせていただきます。
○委員長(荒木清寛君) 谷垣法務大臣、恐縮ですが、時間来ておりますので簡潔でお願いします。
○国務大臣(谷垣禎一君) 民法で賃貸借の規定の見直しということは、法制審の今の部会における調査審議のテーマに、対象になっております。例えば、敷金に関する法律関係であるとか、あるいは賃貸借が終わった後の原状回復義務をどうするかというようなことは規定の新設が検討されておりますが、今委員がお触れになった定期借家権につきましては、専ら借地借家法上の制度であるということで、この今の法制審の部会では見直しの審議はされておりません。
○前川清成君 終わります。
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。よろしくお願いいたします。
 私からは、法テラスによる法律支援についてお聞きをしたいと思います。
 超高齢社会を迎えるに当たりまして、高齢者への法的支援の在り方が課題となっています。これについては、私は、法テラスが取り組んでおります司法ソーシャルワーク、これが大変有用であると思っております。また、犯罪被害者、特に今命の危険にさらされているおそれの高いストーカー犯罪の被害者に対する支援、こういったところについても法テラスでの支援の充実を期待したいというふうに思っております。そして、東日本大震災の被災者に対する法的支援、これについては震災特例法がございますけれども、三年の時限立法ということになっておりまして、これで十分であるのか、疑問を持っております。
 この点、法務省では、高齢者、障害者が民事法律扶助を利用しやすくするための方策、また犯罪被害者への法テラスにおける法的支援の在り方などを検討する有識者検討会、これが開催されたというふうに聞いておりますけれども、このような検討会を立ち上げました理由は何でしょうか、またこの検討会に対する大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 総合法律支援法が施行されましてから十年たったわけですが、この十年間で相当日本社会は大きく変化してきていると思います。一つは、今指摘されたことですが、高齢化が急速に進行してきて、いろんな問題が生じてきている。それから、東日本大震災を経まして、今後、やはり忘れた頃にやってくると言いますが、大規模災害への備えというのが政府全体としても大きな課題でございますが、そういう、法テラスがそのときに、法テラスに対する期待も十年前とは大きく変わってきている面があると私は思っております。
 こういう社会情勢の変化に対応するために、つまり、法テラスがそういう社会全体の情勢の変化の中で国民の期待に応えてお役に立てるために、ここでもう一回きちっと検討してみる必要があると、それでこの検討会を立ち上げたわけでございます。
 この有識者検討会で充実した議論、検討を行っていただいて、そして、その結果を、より充実した、今申し上げたような情勢の変化に対応できるサービスを提供できるように持っていきたいと考えております。
○佐々木さやか君 この検討会の委員のメンバー、また検討事項、スケジュールについて教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 法務省では、今御指摘ありました、充実した総合法律支援を実施するための方策についての有識者検討会を設置いたしまして、本年三月十八日、その第一回の会議を開催しております。
 委員のメンバーは、学者、地方自治体や福祉団体の長、被害者支援団体、経済団体、それから消費者団体などの代表、弁護士、司法書士ということで、計十名でございます。
 検討事項は、民事の分野における法的支援の在り方といたしまして、高齢者、障害者や大規模災害の被災者などに対する法的支援の在り方、また、DV、ストーカーなど深刻な被害に進展するおそれの強い犯罪被害者に対する法的支援の在り方などでございます。
 スケジュールについてでございますが、第二回の検討会は四月の十五日に行われまして、四月二十五日に第三回の検討会が行われる予定でございます。その後はおおむね月二回のペースで開催する予定でございます。
○佐々木さやか君 検討事項のうちの高齢者、障害者に対する法的支援という点については、この検討会ではどのような観点から、またどのようなテーマを検討しているんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 認知力が十分でないなどの事情から自らが法的な問題を抱えていることを認識する能力が十分でない、あるいは意思疎通自体が困難であるなどの理由で自ら法的援助を求めることが困難な方々に対しましては、弁護士などが福祉機関などと積極的に連携をしてその法的問題の解決を図ることが有効と考えられるところでございます。
 そこで、このような観点から、高齢者、障害者に対して有効と考えられる法的支援の在り方ですとか、このような法的支援に係る法テラスの関与の在り方などを検討しているところでございます。
○佐々木さやか君 例えば、出張法律相談を行ったりとか関係機関と連携をするといったアウトリーチの手法を行うと、こういう運用面での改善というのは非常に重要なことだと思いますけれども、例えば、それだけではなくて、その入口に当たっての法律相談、これについては、場合によっては資力要件を緩和するですとか、それからスタッフ弁護士さんの人数も限られておりますので、こういった事件というのはかなり丁寧に関わる、言わば手間の掛かる事件ですので、体制の充実とともに、法テラスのスタッフ弁護士さんだけじゃなくて、それ以外の一般の弁護士の先生方もこういった司法ソーシャルワークに参加をしていただくことが必要だと思います。
 そのためには、弁護士が活動をしやすいように、そういった出張法律相談だったりとか、福祉、行政の窓口に付き添うような、そういう活動をするためのメニューとして、法テラスで法律扶助の専用のメニューを作るというようなことがあってもいいのではないかと思っております。そういった点も是非検討していただきたいと思います。
 次に、東日本大震災の被災者に対する震災特例法、これによってこうした災害被害者の方々には資力を問わず法的支援がされることになっているわけですけれども、大臣もおっしゃったとおり、また新しい大規模災害が起きた場合どうするのかと。こういう場合に速やかな支援をしていく必要があると思いますが、この点については、検討会においてどういう観点から、またどういったテーマを検討しているんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) ただいま御指摘いただきました大規模災害により多発する法的問題についてでございますが、この点につきましては、その早期解決が復興復旧の一助となり、迅速な支援が必要であるという観点から、今後発生する可能性のある大規模災害の被災者に対して有効な法的支援の在り方などを検討しているところでございます。
○佐々木さやか君 一定規模以上の大規模災害の被災者の方に対しては、資力にかかわらず法テラスの援助を受けることができるというような制度を是非検討をしていただきたいと思います。
 また、東日本大震災からも三年が経過したわけでございますけれども、これから集団移転などで住宅の建築が本格化をしていきます。そうした中で、例えば、土地の境界の問題だったりとか道路の問題だったりとか、ローンを新しく借りていく中で債務整理の必要性が顕在化するというようなことも私はあるのではないかと思います。こういった東日本大震災の被災者の方々への長期的な法的な支援の必要性というところについても、十分に調査検討をしていただきたいなと思っております。
 そして、DV、ストーカー被害者の方々への法的支援についてですけれども、現在ありますのは、民事保全法の接近禁止の申立て、こういったことを行う場合の民事法律扶助、それから日弁連からの受託業務でありますが、犯罪被害者法律援助事業、この二つがあるかと思います。しかしながら、この民事保全法の接近禁止の申立て等の場合の民事法律扶助というのは、必ずしも被害者の方の生命、身体を守るための早急の支援というわけではありません。また、日弁連からの受託業務については、国費ではなくて弁護士会費などで運営をされておりますので、制度としては十分ではないなと思っております。
 このDV、ストーカー被害者の方々が求めている法的な支援というのは、事後的なものではなくて、まさに今、現在進行形の犯罪から、再被害から身を守る、こういったところにあるわけでありますので、そのための法的支援の体制の整備ということが必要であると思っております。こういった支援というのは、国民の身体、生命、こういったものの安心、安全を確保するということでありますので、国の方で責任を持って行うべき支援であるというふうに思っております。
 こういったDV、ストーカー犯罪等の被害者に対する法的支援については、この検討会ではどういった観点から、またどのようなテーマを検討しているんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) ただいま御指摘いただきましたストーカーですとかDVなどの犯罪被害に係る法的支援につきましては、まずはこれらの犯罪に係る真に有効な防犯対策の在り方や警察その他関係機関と弁護士等との連携の在り方などを踏まえた上で、加害者と被害者との間に法的紛争が生じることや、当該法的紛争の処理それ自体が加害者に与える影響などにも十分配慮をしつつ、その再被害を防ぐ上での有効性の有無などについて検討する必要があると考えられるところでございます。
 そこで、このような観点から、有識者検討会におきましては、DV、ストーカー等、深刻な被害に進展するおそれの強い犯罪被害者に対して適切な法的支援を実施するに当たっての問題点、及びこれを解消するための方策について検討しているところでございます。
○佐々木さやか君 DV、ストーカー被害といいますのは、弁護士の複数選任が適切な場合もあります。また、弁護士が一人であっても、ほかの支援団体の方とかと一緒にチームになって行うといったことも工夫が必要になってまいりますので、こういったストーカー、DV事案の特徴というものも十分に考慮したサービスの在り方を検討していただきたいと思っております。
 この有識者検討会の検討結果というのは、いつまでにどのような形で、また誰に提出されることになるんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) いずれも喫緊の課題でありますことから、可能な限り速やかに取りまとめを行うこととしておりまして、その取りまとめにつきましては法務大臣に提出される予定でございます。
○佐々木さやか君 それも重要な課題でありますし、専門家の方々に検討していただいた検討結果は重要なものであると思いますけれども、この有識者検討会の取りまとめ、大臣に提出されるそうですが、この取りまとめというのは法務省を拘束するものなのでしょうか。その点、大臣に最後にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今これ様々な分野の有識者に、地方自治であるとか福祉、消費問題、あるいはジェンダー等々もございます、今熱心に御議論をいただいておりますが、そういうものを最後御報告にまとめていただきますと、恐らくかなりのものになるんだろうと思うんです。それで、我々としては、これを出していただいたら尊重しなければならないのは当然のことだと思っております。ただ、当然のことと簡単に申し上げましたが、それにはやはり予算を獲得し、予算よりもう少しまた難しいのは、執行体制というか人員をどう取るか、相当法務大臣としては頑張らなければ見通しが開けないなと思っておりますので、また御支援をお願いしたいと、このように思っております。
○佐々木さやか君 大変重要な問題ですので、是非頑張っていただきたいと思います。
 ありがとうございます。以上で終わります。
○委員長(荒木清寛君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、山田修路君及び堀井巌君が委員を辞任され、その補欠として馬場成志君及び古賀友一郎君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。
 今日は、まず初めに、取調べの可視化について質問したいと思います。
 三月二十七日に袴田事件の再審開始の決定が静岡地裁で言い渡されました。そして、私の住んでおります埼玉県におきましては、狭山事件で石川一雄さんが無実の罪を訴えて法廷闘争中であります。両事件とも、一九六六年、また一九六三年に起きたものでありまして、五十年間、事件が起きてから約半世紀たってもまだこのような冤罪であるという主張が両氏からなされているわけであります。この事件につきましては、取調べによる供述が任意性があったのか、信用性があるのかといったことも一つ問題となっていると認識をしております。
 今日は、そのような視点で、冤罪をなくすという視点で、取調べの可視化について質問したいと思っております。
 まず初めに、政府参考人に伺いたいんですけれども、取調べの録音、録画というのは試行的に今既に行われています。そこで、お聞きしたいんですけれども、どのような事件が対象となって録音、録画が行われているのか、そして実施件数、また公判請求された事件に占める実施件数の割合、そして録音、録画は、これ全過程が録音、録画されてはいないと承知していますけれども、それではどのような場面が録音、録画されているのか、お答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 現在、検察当局におきまして行っております取調べの録音、録画の実施状況等について御説明いたします。
 まず、検察当局におきましては、録音、録画の対象事件という観点から御説明いたしますと、現在、被疑者の身柄を拘束中の事件でかつ裁判員裁判対象事件、それから、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件、さらに、精神の障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、さらに、いわゆる独自捜査事件であって検察官が被疑者を逮捕した事件、こういった事件を対象といたしまして、公判請求が見込まれない場合であるなどの一定の事情がある場合を除きまして、被疑者が取調べ室に入室する時点から検察官が被疑者に対し録音、録画を終了する旨を告知する時点、又は被疑者が取調べ室を退室するまでといった取調べの全過程を含め、できる限り広範囲な録音、録画を行うなど、積極的な取組をしているものと承知しております。
 録音、録画の実施件数でございますけれども、昨年、平成二十五年四月から十二月までの九か月間で見ますと、その実施件数は約五千九百件、これに対して、実施しなかった件数は百十件であるものと承知しております。
 平成二十五年四月から十二月までのこのように取調べの録音、録画を実施した件数は約五千九百件でございますが、この間の、この同じ期間で、検察統計によりますと公判請求された事件数というのが約七万件でございますので、公判請求された事件数中、取調べの録音、録画を実施した事件の割合を計算いたしますと、約八%であるものと承知しております。
○行田邦子君 公判請求された事件数の数に対して、今、取調べの録音、録画というのは約八%ということでありました。そして、答弁いただいた中で、録音、録画の対象となる場面ができる限り広範囲にというふうにおっしゃっていますけれども、そこをもう少し具体的に教えていただきたいんです。
 私が承知している中では、全過程の録音、録画というのは基本的に余りなされていなくて、被疑者の弁解録取の部分と、それから供述調書の読み聞かせの部分、ここを中心に録音、録画がなされているというふうに承知していますが、そこら辺、いかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど四類型、対象事件に分けて申し上げましたが、例えば、昨年の平成二十五年四月から十二月までの九か月間で見ますと、まず裁判員裁判対象事件に関する録音、録画で見ますと、検察官の取調べで全過程の録音、録画が実施されたのは、全体の七六%で全過程の録音、録画がなされております。また、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件、これに対するものを見ますと、やはり全過程の録音、録画が実施されたのは約六三・七%。さらに、独自捜査で見ますと、やはり同期間でいきますと、独自捜査につきまして全ての取調べ全過程が実施されたのは約七七・八%などとなっております。
○行田邦子君 そうすると、裁判員裁判対象事件については、今七六%が全過程において録音、録画がされているということでよろしいわけですね。確認をさせていただきました。
 そこで、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 そもそも、この取調べの可視化、録音、録画についてなんですけれども、試行的に警察また検察で行われるようになったのは、これは裁判員制度の導入に合わせてというふうに承知をしております。これが一つの流れとしてあるわけでありますけれども、もう一つの流れとして、この取調べの録音、録画についてなんですけれども、冤罪をなくすという視点があろうかと思います。
 二〇一〇年の九月に厚生労働省元局長の村木厚子さんの無罪が確定しました。いわゆる郵便不正事件ですけれども、このことが契機となりまして、当時の法務大臣、柳田法務大臣が、大臣の私的諮問会議として検察の在り方検討会議を立ち上げて様々な議論がなされて、そこでは、もっと録音、録画の範囲を拡充すべきであるというような意見がかなり出されたと承知しています。その後、江田法務大臣に引き継がれて、この検討会議におきましては、また新たな場でしっかりと取調べの録音、録画については議論をするべきである、検討すべきであるといったことになりました。そこで、当時の江田法務大臣は、法制審に二〇一一年の五月に諮問をすると、このような経緯があるわけです。そこで、法制審の中では、新時代の刑事司法制度特別部会というのが設けられまして、そこで様々な議論がなされているわけでありますけれども、昨年の一月の下旬に、ここで基本構想というものが取りまとめられています。
 そこで大臣に伺いたいんですけれども、この基本構想の中で、取調べの録音、録画について二つの制度案が示されています。一つは、一定の例外事由を設けた上で、原則、全過程の録音、録画の義務化ということ、もう一つは、これは取調べ官の任意、裁量での録音、録画といった二つの案なんですけれども、ただ、いずれにしても、ここに書かれているのが、対象事件については、裁判員制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて制度の枠組みに関する具体的な検討を行いというふうに、裁判員制度対象事件の身柄拘束事件を念頭に置いてという注釈が付いています。
 私は、冤罪をなくすという視点から取調べの録音、録画ということを見たときに、その目的にこれではかなっていないのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 行田委員が今おっしゃったような経緯を踏まえて、法制審に新時代の刑事司法制度特別部会ができたわけですね。
 それで、去年の一月、私が法務大臣に就任して直後でございましたが、いわゆる基本構想というのがその中でまとめられまして、今おっしゃったように、取調べの録音、録画制度、いわゆる可視化の在り方に関しては二つ大きな、二つの柱といいますか案がありまして、そのうちの一つは、一定の例外事由を定めながら原則として被疑者取調べの全過程についての録音、録画を義務付ける制度案と、こういうふうになっているわけですね。
 それで、今この案につきましては、それまでの部会での議論を踏まえまして、まずは裁判員制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて制度の枠組みに関する具体的な検討を行うと、これは今、行田委員がおっしゃったとおりでございます。
 しかし、ここに書いてあることはそれだけではございませんで、要するに、その上、その結果を踏まえて更に対象事件の範囲の在り方について検討を加えると。決してここでの書き方は裁判員対象事件の身柄事件だけに絞れと言っているのではなくて、まず典型的にはそういった事例、事案でいろいろ制度設計の議論をして、更に対象をどう拡大していくかということを議論しようと、こういうことになっております。それで、この録音、録画事件の対象事件の範囲につきましては、今年の二月それから三月に行われました部会においても議論が行われているところでございまして、更に引き続いて議論をされることになっております。
 それで、私の立場は、今、諮問をお願いいたしましてその結論を待っている段階ですが、ややちょっと蛇足になるかもしれませんが、私、十一年前に国家公安委員長をやらせていただいておりました。その当時この可視化の議論が出てきまして、そのときの警察の反応は、そんなことをやったらもう日本の治安はめちゃくちゃになると言わんばかりの反応でございました。それから検察においてもかなり似たような反応であったと思います。それから十年たちまして、今度法務大臣にならせていただいたら、かなり雰囲気は変わってきたと私は思っております。
 要するに、検察におきましても、昔は、こういうことをやったら十分な取調べができなくなってしまって結局犯罪者を野放しにしてしまうと言わんばかりの議論でございましたが、やっぱりきちっと取調べをして可視化をしていくことには、それは取調べの観点から見てもいろいろメリットがあるというような認識も大分進んでまいりまして、私は、この可視化に関しては、全体の議論の中でかなり理解が深まってきたというか議論が深まってきたなという印象を持っておりますが、今の立場はその法制審議会の御議論を見守っているということでございます。
○行田邦子君 今大臣から、取調べの可視化についての警察、検察でのその捉え方の変遷というものも御答弁をいただきました。
 私が先ほど質問した基本構想の中で書かれているその書かれ方なんですけれども、これは読み方の、その捉え方の違いかもしれませんけれども、裁判員制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて制度の枠組みに関する具体的な検討を行いと書いていると、そうすると、やはりこれは裁判員裁判制度対象事件に限定されるんだというふうにもやはりミスリードされてしまうというふうに思うんですね。この後作業分科会で制度設計に関するたたき台も作っていますけれども、ここにおいても、やはり裁判員制度対象事件に対象を限定しているような、そのような流れになってしまっているわけです。ですから、私は、ここで、基本構想でこのようなことがあえて注釈として書かれているというのは、これは冤罪をなくすという視点から見るとおかしいのではないかなということをまず申し上げておきたいと思います。
 次の質問なんですけれども、この基本構想の中での取調べの録音、録画制度で二方向示された第二案目についてなんですけれども、これは取調べ官の一定の裁量に委ねるという案なんです。私は、これだと、当時、二〇一一年に当時の江田大臣が法制審に諮問したその問題意識を理解していないのではないかなというふうに思わざるを得ません。
 当時、江田大臣がどのように諮問をしたかというと、その内容なんですけれども、「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや、被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について、御意見を承りたい。」ということでありました。
 この取調べ官の一定の裁量に委ねるという案が、なぜこの基本構想の中で出てきたのか。大臣、当時諮問した大臣の趣旨を理解していないではないかという質問ですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど来出ております平成二十五年一月に取りまとめた基本構想におきまして、今言われたように、取調べ、それまでの部会での議論を踏まえまして、一つには、一定の例外事由を定めつつ、原則として被疑者取調べの全過程について録音、録画を義務付ける、これを第一案と言われておりますが、もう一つが、録音、録画の対象とする範囲を取調べ官の一定の裁量に委ねるとするもの、これがいわゆる第二案と言われておりますが、この二つの案がこの制度の枠組みに関する案、いわゆる対象事件の範囲というのは別にして、制度の枠組みという点においてはこの二つの案が出てきたわけでございます。
 その後、この二つの制度案を念頭に置いて具体的な検討を行うこととされまして、部会におきましては、この方針に沿って、この二つの制度案についてそれぞれ議論が進められてきております。そして、その第二案というものについては、取調べの一定場面について録音、録画を義務付ける案としてこれまで具体化されてきたわけでございます。
 そして、そもそもこの基本構想でございますが、これをもって何らかの制度の採否や内容を確定するというものではございませんで、部会におけるそれまでの議論をその時点で中間的に取りまとめるとともに、その後の制度設計に向けたその後の検討の指針とするために、この時点で部会の総意によって策定されたものと理解しております。そして、これまでの部会における審議の経過等を踏まえますと、第二案についても、それまでの部会における真摯な議論を踏まえて検討の対象とされてきたものでございます。
 いずれにいたしましても、今後でございますが、部会におきましては、こうしたこれまで進めてきた議論を踏まえまして、改めて事務当局が今後作成する試案を基にいたしまして、最終的な取りまとめに向けた議論、検討が進められることとなっております。法務当局としては、この部会において最終的な取りまとめに向けまして充実した審議が円滑に行われるよう努めてまいりたいと考えております。
○行田邦子君 この基本構想が中間的取りまとめだということで御答弁されましたけれども、実はこの基本構想を取りまとめる段階におきましても、少なくない何人かの委員から、これまで述べてきた意見が全く反映されていないのではないか、なぜこのような取りまとめになるかといったかなり強い意見がありました。議事録を見るとそのような記録になっております。そうはいっても、ここで基本構想が取りまとめられて、そして、専門家による作業分科会においても、この二つの方向性を基に制度設計のたたき台というものは作られるわけです。
 そして、今、特別部会でたたき台について議論がなされているわけでありますけれども、そこで、第一案目を基にしたたたき台について伺いたいと思います。
 第一案目の方は義務付けなんですけれども、一定の例外事由を定めつつ、原則として録音、録画を義務付ける制度ですが、この一定の例外事由というのをどのようにするのか、どのような範囲にするのかということが今議論がなされているわけでありますが、二月十四日にたたき台として出されたものを見ているんですけれども、これを見ますと、一定の例外事由というのがかなり幅広く取られています。一つは、記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情によると。そしてもう一つは、被疑者が記録を拒んだ、またその他の事情によると。そしてもう一つは、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときと。犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格その他の事情に照らし、被疑者の供述及びその状況が明らかにされた場合には、被疑者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる、若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあることによると。このようなことが書かれていまして、これだと例外事由というのはかなり広く任意に解釈をされてしまうというふうに思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) この基本構想に基づきまして、今御指摘のありましたように作業分科会でこれまでも議論がされてまいりまして、御指摘のとおり本年二月に行われました、第二十三回となりますが、その部会におきまして作業分科会における検討結果がたたき台として報告されまして、これを基に更に三回これまで議論がなされておりました。
 今お尋ねの部分のこの第一案における例外事由に関する点についても、当然この議論がなされております。その際の議論の状況を若干御説明いたしますと、例えば、その例外事由の在り方については、一方で次のような意見が部会で出ております。
 加害等のおそれによる例外、被疑者の拒否等による例外について、被疑者が録音、録画の実施を求めた場合にはこれを例外とすべきではないという意見でありますとか、被疑者の拒否等による例外について、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときという要件についてはこれを要件とすべきではないなどの意見がございました。また、その一方で、いずれもこのたたき台の例外というのが必要かつ相当であるという意見もございました。
 それ以外に、さらにこの例外という観点でいきますと、性犯罪を始めとする被害者のプライバシー保護等の観点からはこのたたき台の例外の範囲は必ずしも十分ではないという意見、あるいは組織的な犯罪については端的にその組織的犯罪であることを例外事由とすべきであると、こういった意見など、幾つかの様々な方向からの意見がこれまでなされ、議論がなされております。
○行田邦子君 そして、今取りまとめに向かっているところというふうに承知をしておりますけれども、私の考えですけれども、これは取調べの録音、録画の範囲を拡充することがプライバシーの保護に抵触するというような意見もありますけれども、それはむしろ、問題というのは、取調べの録音、録画を行うことそのものではなくて、その録音、録画されたものを公判でどのように使うのか、また使わないのかといった基準、線引きであり、また、証拠として情報開示、証拠開示をどのように行うのかといった、そのような線引きが重要なんだというふうに私は考えております。
 それで、大臣に質問なんですけれども、実はこの特別部会の委員というのは、これは法務省としては異例の人選だというふうに言われていますけれども、専門家とそれから専門家ではない方と、委員と幹事合わせて四十人から成るんですけれども、そのうちいわゆる非専門家、法曹界でない方が七人というふうになっています。その中には村木厚子さんも含まれています。こうした専門家ではない方から、例えば去年の一月の基本構想の取りまとめのときに、非常に自分たちの意見が、一般市民としての自分たちの意見が反映されていないという強い意見も出ていました。けれども、基本構想は取りまとめられました。
 そして、今回、この制度設計に関するたたき台でいろんな意見を非専門家が言っているんですけれども、なかなかそれを取り入れてもらえないというような背景で、お手元の資料にお配りしています資料一ですけれども、三月七日の特別部会におきまして、五人の委員から取りまとめに向けての意見というのが出されています。これをお読みいただくとお分かりになると思いますけれども、非常に文章は冷静で、また丁寧ではありますけれども、自分たちの意見がなかなか反映をされていないという非常にもどかしい思いやまた焦りといったことも読み取れるわけであります。
 そこで、大臣に伺いたいんですけれども、この法制審特別部会のこの議事進行に私は少なからず問題がある、またあったのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今資料としてお配りいただいた五人の方の意見書、私も読ませてこれはいただいております。
 それで、今、何かこの法制審議会の審議の在り方、議事進行の在り方に問題があったのではないかという行田委員の問題意識でございますが、これを、私もこの五人の一般有識者の委員の方々とこの問題で直接お話ししたことはございませんので、このペーパーを読んだということしかないのでございますが、ここに書いてございますのは、議事進行の話というよりも、もちろんお立場は全面可視化ということで書いてあるわけですね。しかし、その全面可視化が実務的に直ちにできないのであればこういう手法もあるというようなことを書いていただいておりまして、私はこの全体の議論の中で建設的な問題提起もしていただいているペーパーだなというふうに読みました。
 したがいまして、取りまとめに向けての一つのお考えを建設的に出していただいたのではないかと思っておりまして、こういったことも含んで幅広い観点からの充実した議論をしていただいて、良い結論を出していただきたいと私は思っております。
○行田邦子君 今大臣がおっしゃられたように、この取りまとめに向けての意見というのは実に建設的な提言だと私も思っております。このような意見が無視されないように、特別部会においての議事進行も、是非これ、法制審は法務大臣の任命によって委員が選ばれるわけですから、この法制審の特別部会でどのような議事進行が行われているのか、大臣としてもしっかり見ていただきたいというふうに思います。
 そして、次の質問に移りたいと思います。
 国連の拷問禁止委員会からの勧告についてであります。
 昨年の五月に国連の拷問禁止委員会から我が国が、日本政府が勧告を受けております。これは、日本が一九九八年に拷問禁止条約を批准しているわけでありますけれども、この昨年の審査というのは二回目に当たるわけです。そこでどのような勧告がなされているか。取調べ及び自白についての勧告がなされているわけでありますけれども、その中で、有罪判決が自白のみに基づいて下されることはないという日本側の発言や、取調べガイドラインがあるということには留意しつつも、けれども、やはり取調べの全過程を電子的に記録するなどの保護措置を実行し、その記録を裁判で使用できるよう保証するべきであるということが書かれております。
 この勧告について、大臣はどのような御見解を捉えていますでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 拷問禁止委員会の見解を示した文書で、全過程の可視化と電磁的な記録ということが盛り込まれている、もうこれは委員の御指摘のとおりでございます。
 それで、それに対応、対応してと言ってはちょっと違うのかもしれませんが、先ほど来御議論の法制審の新時代の刑事司法制度特別部会、これは今更言うまでもございませんが、過度に取調べや供述調書に依存した捜査、公判の在り方を見直していこうという問題意識で設けられたものでございます。そこで被疑者取調べの録音、録画、いわゆる可視化と、時代に即した新たな刑事司法制度の構築について今議論が行われているわけでございますので、それで、いわゆる可視化、これは捜査に与える影響や国民の安全、安心を求める期待ももちろんありますので、その辺は考えなきゃいけませんが、全体として、先ほど申し上げたような目的の中でバランスの取れた検討を行っていただかなきゃなりません。私はそれを強く期待しているわけでございます。
○行田邦子君 国連のこの勧告は、法的拘束力はないとはいっても、条約を批准している国でありますので、この勧告をしっかりと重く受け止めるというこれは責任はあるというふうに思っております。
 そしてまた、二百二十二の地方議会におきまして、警察や検察による取調べの録音、録画、可視化を制度化するよう意見書が可決されています。二百二十二の地方議会で、昨年末時点でこれだけの地方議会で可決されているというわけであります。これもやはり法的な拘束力はない、地方議会の意見書というのはないわけではありますけれども、ただ、それぞれの地域の代表者の集まっている地方議会におきまして、その住民の声を代弁するという意味で二百二十二の地方議会でこういった意見書が可決されたということは、やはり政府としても重く受け止めていただきたいというふうに思います。
 そして、ちょっと済みません、時間がなくなってきたんですけれども、次に個人保証の第三者保証について伺いたいと思います。
 ちょっと質問、済みません、飛ばさせていただきまして、まず政府参考人に伺いたいと思います。
 第三者保証について、思ったよりかその債務が重くて、そしてまた保証人の方にその債務が来てしまって生活が破綻するといった、そのような悲惨なケースというのが絶えないというふうに言われています。
 そこで伺いたいんですけれども、自己破産の件数と、そしてそのうち第三者保証の債務が原因の自己破産の件数を教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 破産申立ての件数につきましては、最高裁判所が行っている司法統計を通じて把握しております。
 直近の統計によりますと、平成二十四年で自然人の自己破産の申立て件数は八万二千九百一人、八万三千人弱というところでございます。ただ、この司法統計では破産に至った原因ごとの統計数値が把握されておりませんので、そういう意味では全国的な数値を法務省として把握はしておりません。
 もっとも、日本弁護士連合会が平成二十三年に破産事件における破産理由等の調査を行って、その結果を公表しておられます。それによりますと、調査をした破産事件、これは全国のサンプル調査でございますけれども、のうち、主な破産理由が保証債務であるものの割合は一九%程度であるというふうになっております。仮にこれを二十四年度の直近の破産申立て件数に掛け合わせますと、一万五千六百人ほどになるということになります。
○行田邦子君 一万五千六百人の方が第三者保証の債務が原因で自己破産に追い込まれているという数字であります。また、これによって、連帯保証債務による自殺者というのが、平成二十五年だと二十人、平成二十四年だと三十三人、また平成二十三年は四十三人という警察庁による自殺統計にもなっています。
 そこで、ちょっと最後の質問になりますけれども、今日は金融庁にお越しいただいていますので、質問したいと思います。
 金融庁は平成二十三年七月に監督指針を改正しまして、そこでは経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立するというふうになっています。ここに至った経緯と理由、そしてまた今その監督状況としてどの程度第三者保証人を求めている件数があるのか、お教えいただけますでしょうか。
○政府参考人(小野尚君) お答え申し上げます。
 経営者以外の第三者の個人連帯保証につきましては、直接的な経営責任がない第三者に対し債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという御指摘等が従来より行われてきたところでございます。金融庁といたしましては、このような御指摘等も踏まえまして、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を図るため、平成二十三年七月に金融庁の金融機関に対する監督指針を改正いたしまして、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めない旨明記したところでございます。
 私どもといたしましては、この監督指針に基づきまして、第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針というものにつきまして、金融機関の取組姿勢や取組状況を確認しているところでございます。
 この監督指針におきましては、ただ、一方で、一律に個人連帯保証を禁止するということは中小企業における円滑な資金調達の支障となるおそれがあることから、必要な最小限度の例外も認めてございます。具体的には、実質的な経営権を有している方、事業に従事する配偶者の方、事業承継を予定している方、また自ら連帯保証の申出を行った方等、経営者に準ずる方に限定しているところでございます。
 金融庁では、全ての金融機関における第三者の保証人を求めている件数を把握してございませんが、複数の金融機関に対しまして、例外としてどのようなケースにおいて第三者保証人を求めているのかヒアリングしましたところ、経営に従事している配偶者の方、代表取締役を退きましたが実質的に経営に関与している元社長やオーナーといったケースのほか、経営に実質的に関与してはおりませんが、身内の創業を支援する、あるいは取引先の代表者が独立間もない元従業員を支援するといった理由で自ら連帯保証の申出を行い、例外的に第三者の保証が付与されているケースもございました。
 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めない旨の監督指針を踏まえまして、引き続き適切な対応を図るよう金融機関に促してまいりたいと存じます。
○委員長(荒木清寛君) 行田さん、おまとめください。
○行田邦子君 はい。
 今、実務レベルでは既に経営者本人以外の第三者保証というのは求めないということで運用されているわけであります。ここはしっかりと、今議論が法制審でもなされていますけれども、民法におきましてもこの実務で行われていることを反映されるような法改正が必要だということを申し上げまして、私の質問を終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は、袴田事件と刑事司法改革についてお尋ねをしたいと思います。
 御存じのとおり、袴田事件は、一九六六年、私がまだ二歳のとき、静岡市、現在、清水区のみそ製造会社の専務さんのお宅で一家四名が殺害された強盗殺人放火事件です。この事件の被疑者、被告人とされた袴田さんが三月の二十七日、歴史的、画期的な再審開始決定によって釈放をされました。地方裁判所は、この袴田事件の第二次再審請求について、刑の執行停止とともに拘置の執行停止も決めて、その下で袴田さんが四十八年ぶりに拘置所の中から出てこられ、その様子、あるいはお姉さんの秀子さんから、今、袴田さんは入院をしておられますけれども、伝え聞くその様子を伺うたびに、私は冤罪が生み出す苦しみに胸が本当に痛む思いがいたします。
 この四十八年ぶりの釈放は、お姉さんの秀子さんや弁護団、そしてボクシング協会や、本当に国民的な広がりを見せている支援者の皆さんの努力があってこそのことであって、この関係の皆さんに心から敬意を申し上げたいと思うんですが、この冤罪であるということ、そして私たちは人道的であらねばならないということに鑑みたときに、実際に釈放されて、映像でも大臣御覧になっていると思いますけれども、その様子を御覧になって胸が痛みませんか。政治家としての感想をまず伺いたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 袴田氏につきましては、今委員がおっしゃいましたように、三月の二十七日、静岡地裁によって再審開始決定とともに拘置の執行停止決定がなされまして、それを受けて、検察当局、同日、袴田氏の釈放手続を行ったわけで、私も報道を通じまして御本人の様子を拝見したところでございます。
 しかし、個別の死刑確定者に関わる事項、感想、これは、法務大臣としては今申し上げるのは差し控えたいと思います。
○仁比聡平君 ですから、政治家としてと申し上げているんですね。当然、与党、野党、関係ありません。人道的にこの袴田さんの救援をという声はこの国会の中にも大きく広がっているのであって、私は、そうしたことも踏まえながら、まず袴田さんの拘禁症状について伺いたいと思います。
 既に二〇一一年の一月に、日弁連から人権救済申立て事件の勧告書が政府に出されています。ここでは、袴田さんの拘禁症状について、既に二〇〇七年に後見開始審判申立て事件に関して、家庭裁判所からの鑑定嘱託を受けた医師の鑑定書、それから二〇〇八年の八月にまた別の医師の意見書、そしてこの日弁連の調査の下で行われた三人目の医師の意見書というのが紹介をされているわけですけれども、その二〇〇七年の医師の鑑定書には、袴田さんに精神の障害があり、それは拘禁反応である。もし拘禁が解かれるならば、その能力を回復する可能性は極めて高いと、そう記載をされています。
 二番目の医師の意見書には、袴田さんは拘禁反応に罹患しており、誇大妄想、思考障害を呈している。治療を要し、強制的な投薬を含め、精神科病院への入院が望ましいが、それが不可能な場合には医療刑務所への移送が考慮されるべきである。死刑適応能力を欠いた現状にあると記載をされています。
 三人目の医師の意見書には、袴田さんの場合、そうした精神的障害に対して行われる薬物療法、生活療法、精神療法などが実際に施行されていない。しかしながら、精神障害である以上、通常に実施されるべき治療が必要であると指摘をされているんですね。
 この調査の中で、袴田さんの死刑判決の確定は一九八〇年ですが、その二週間後ほどから精神的変調が始まり、東京拘置所において、一九八四年の十二月以降、妄想的な言動が見られるようになった、八五年の九月以降、実在しない人物の結婚に関する手紙を発信したと、東京拘置所が裁判上の準備書面として事実を摘示しているわけですね。
 矯正局長、こうした日弁連勧告の指摘は事実ですか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 まず、個々の死刑確定者の健康状態でございますので回答は差し控えたいと思いますけれども、ただ、処遇場面での実情を踏まえまして一般論として申し上げますと、担当職員は、死刑確定者に限らず、担当しております被収容者の健康状態はもちろんのこと、日々の生活状況についても常に注意を払うようになります。したがいまして、日々処遇しておりまして何か問題がございましたら、必要に応じまして医務部門に連絡をし、医師の専門的見地から診察を受けさせる等行いまして、慎重な配慮を行っているところでございます。
 以上でございます。
○仁比聡平君 専門的な医師の診察や配慮が行われたら、どうして釈放された袴田さんがああした状態になっているんですか。二〇一一年のこの日弁連の調査の勧告を読みますと、日弁連の調査に対して法務省は、現時点において、つまり二〇一一年当時において、外部病院における診断、治療を行うべき病状にはなく、医療刑務所に搬送しなければならない病状はないと回答しておられるようですが、その認識を示されたことはそのとおりなのか、今現在もこの認識には変わりがないのか、お尋ねをしたいと思います。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
 個々の処遇状況でございますので、これも回答を差し控えたいと思いますけれども、ただ、一般論として申し上げますと、東京拘置所は医療法上の病院としての承認を受けておりまして、現在でも、精神科医を含む八名の常勤医師、それから十二名の非常勤医師、それから十名の看護師、十名の准看護師、その他薬剤師等六名の医療従事者が配置されておりまして、夜間においても、当直医師一名のほか准看護師が常に勤務しておりまして、何かあった場合には必要な対応を取る体制になっております。
 また、これ、一般的な被収容者でございますけれども、対応している、処遇している職員の変更も含めまして生活環境が変わったりしますと不安に感じる収容者もいる場合もございますし、それから、先ほど申し上げましたように、二十四時間三百六十五日彼らを処遇して彼らの様子を見ている刑務官がおりまして、確かに手の掛かることもございますけれども、そういうふうに常に注意を払っておりますので、東京拘置所の方において収容して治療するということについては、そういった判断であったんだろうというふうに考えております。
○仁比聡平君 何かあったときとか、刑務官が対応しているとか、刑務官に精神障害、病気を治すことができますか。実際に医師が、三人が三人とも拘禁反応であると言い、その拘禁が解かれるならその能力、精神能力を回復する可能性は極めて高い、二〇〇七年の時点でそう言い、強制的な投薬を始めとして入院が望ましいと言いながら、医療刑務所にさえ送致していないんでしょう。
 大臣、実際に釈放されて、四十八年間、日々死刑の執行におびえながら、袴田さんがどれほど精神的な苦痛を受けてきたか、その中で、医師の診断によれば妄想性障害という、こうした症状に陥っていったか、その有様がどれだけ苦悩に満ちているかというのは、今もう全国民の前に明らかなんですよね。拘禁中の、収容中のこの処遇について、これを是とするのなら、今現在も同様に刑の執行を受けている、あるいは収容されている、死刑の執行であればその執行を待たされている、そうした受刑者がたくさんいるという、収容者がたくさんいるということを否定できないじゃありませんか。
 この医療刑務所にさえ送らない、こうした判断について、これまでの袴田さんに対して行ったことについて、これ大臣、きっぱり反省して謝罪をするべきなんじゃないですか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 再審決定いたしまして、これから裁判所の判断があるわけでございますから、私としては、個別の死刑確定者の状況についてコメントをするのは差し控えたいと思います。
 ただ、今いろいろおっしゃいましたけど、例えば東京拘置所は医療法上の病院としての承認を受けている施設であるということは申し添えておきたいと思います。
○仁比聡平君 袴田さんの今後の生活保障について、現在どんな検討を行っておられるでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) この事件につきましては、現在、即時抗告を受けまして、再審開始の要件の有無につきまして審議、審査、審理中でございます。そういったことで、そうした現在の生活保障というようなことについては法務省としては検討を行っておりません。
○仁比聡平君 かつて冤罪事件で、例えば免田栄さんの生活保障に関する手だてを国会も含めて取ったことがあります。皆さんは、再審開始決定については、即時抗告をしているとか、その確定もしていないからというふうに言うけれども、そうやって一方で争いながら、この袴田さんの生活保障について全く検討しないというのは私はあり得ないと思うんですよね。
 これ、大臣、いずれの時期にかこれは私は再審が開始を必ずされて、その再審で無罪が速やかに勝ち取られることを確信をしていますけれども、仮にでいいです、そうした折にはこの生活保障あるいは刑事補償についてしっかりと対策を取ると、それは決意を伺えますか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 個別の事件について申し上げるのは差し控えますが、先ほど委員がおっしゃいましたように、刑事補償ないし、あるいは免田法案というのも議員立法で作っていただきましたね。そういった制度があることは当然でございますから、そういった制度の適用というのはきちっとその要件に合えばあるわけでございます。
○仁比聡平君 この袴田さんの再審における無罪が速やかに勝ち取られることを多くの皆さんが願っていると思いますけれども、その下で捜査機関が証拠隠しを続けるのかという問題について伺いたいと思います。
 まず、通告と順番違いますが、確定審、通常審において袴田さんの五つの衣類というのが決定的な証拠とされました。この一つ、ズボンがありますけれども、これは裁判で何度も着衣実験が行われながら、袴田さんはそれをはけないと、入らないということが明らかであったのに、検察はそのズボンに付いているタグ、Bと書いてあるタグがサイズを示すものであると一貫して主張して、そしてそのことが、裁判所によってもその主張が採用されて、有罪の極めて大きな証拠とされたわけです。ところが、そのBという表記はサイズではなくて色のことであったということが第二次再審請求において証拠開示で明らかになりました。
 これ、私もそのメーカーの方のインタビューをテレビでも拝見をしましたけれども、一番最初の当初から捜査機関に対しては、このBというのは色のことですとしっかりと話をしているのに、今更何でこんなことになっているのか訳が分からないと、そうしたコメントをしておられました。
 弁護団がある雑誌で語っているところでは、今回証拠開示に応じた検察官は、この証拠を出す前にメーカーのところに行って、当時の調書によるとBが色というふうに書いてあるけれども、つまり公判には提出してこなかった手持ち証拠の中には色であるというふうに書いてあるけれども本当かと尋ねたところ、メーカーの人から間違いなくBというのは色ですと答えられて、第二次再審で開示をするに至ったというわけですよね。
 これ、局長、なぜ通常審でこの証拠を提出をしなかったんですか。
○政府参考人(林眞琴君) ただいまのお尋ねにつきましては、個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 提出をしなかったどころか、うその実況見分調書を捜査機関は作っています。色であるということを聞き込んでいるにもかかわらず、それは寸法四、型Bという、そういう実況見分調書を作っているでしょう。局長、違いますか。
○政府参考人(林眞琴君) ただいまのお尋ねにつきましても、基本的に個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 もう一点聞きますが、袴田さんは、逮捕、起訴の時点ではパジャマを着て犯行を行ったと自白をさせられていましたが、事件から一年二か月後、公判が始まっているときにこの五点の衣類がみそタンクの中から発見をされたと。それで、検察は冒頭陳述を変更したわけです。ところが、この五点の衣類が一年二か月間もみその中に漬かっていたとは考えられない。にもかかわらず、このカラー写真を証拠として持ちながら、これを第二次再審になるまで提出をしませんでした。この五点の着衣のDNA鑑定は、弁護側も検察官側も行った結果、これは袴田さんと同じものとは言えないという結論も出たわけですが、ですが、このカラー写真もなぜ通常審で提出をしていなかったのか。それを提出していれば、一年二か月もみそだるの中に漬かっていたはずなんてあり得ないじゃないかと、明らかじゃないかと。いかがですか。
○政府参考人(林眞琴君) なぜ確定審での段階で開示しなかったのかということにつきましても、個別事件における検察当局の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 私は、今、個別事件、個別事件とおっしゃるけれども、警察もそして検察もどれだけの人数の捜査官がこの事件に関わってきましたか。捜査段階だけではないですよね。第二次再審に至るまで検察官何人も替わっていらっしゃるでしょう。その全ての検察官が証拠の評価を誤ってきたんですか。死刑判決を確定させる、描いたストーリーに反する証拠をあえて不開示にして、なかったものにして、結局、描いたストーリーをずっと維持するためだけにこの四十八年間、袴田さんを苦しめ続けてきたんじゃないんですか。そうしたことを市民が行えば、これは証拠の隠滅であり偽証ですよね。なぜ検察官だけそんなことやって許されるのか。局長、どうですか。
○政府参考人(林眞琴君) いずれにしましても、個別具体的な事件に関する評価にわたることでございますので、お答えについては差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 私は、検察官の証拠提出だって全くの自由裁量ではあり得ないと思います。個々の検察官がその証拠提出を適切に判断したのかと、前提として証拠の吟味が本当に適切に行われたのかということについて、そうやって口をつぐんで検証さえしないと、議論さえ拒むと。そんなことでどうしてこの冤罪を繰り返さないと言えますか。
 大臣、私、この袴田事件について、これまでも最高検による幾つかの事件の検証というのは行われてきましたが、それは最高検によるもので、私は到底事件の本質に迫ったものとは言えないと思いますが、第三者機関による、日弁連もかねてから求めてきました、第三者機関による冤罪のこの検証、再発防止、そのための刑事司法改革、そうした観点での第三者機関を、大臣、設けるべきじゃありませんか。
○国務大臣(谷垣禎一君) この個別事件に関しましては、今、即時抗告審で再審開始決定の是非が争われるわけですね。そういう段階でございますから、また当然その中で、証拠の評価等が裁判の過程の中で議論されると思います。そういう段階でございますから、私から、何というんでしょうか、これ以上のコメントは差し控えたいと思います。
○仁比聡平君 捜査機関がこの事件でそうしたストーリーを描いていった根源にも、虚偽の自白、違法な自白の強要が私はあると思います。実際に確定審の段階で、四十五通の自白調書のうち四十四通の調書は証拠能力を否定をされました。連日にわたる十二時間あるいは十六時間を超えるというようなそうした取調べ、この下での自白がこの袴田事件でも冤罪の根源にあるわけですね。こうした日本の刑事司法の在り方をきっぱり改めなければ刑事司法改革というのはあり得ないと私は思います。
 そこで、捜査機関による取調べの全過程の可視化について私一貫して求めてまいりましたが、検討状況について端的にお伺いしたいと思います。
 先ほども議論がありましたが、今、検察そして警察において試行が行われています。ここでは多くの場合が例外とされているわけです。その例外というのは、例えば被疑者が拒否しているとか、あるいは共犯者などの供述をすることが困難であるなどという事情で被疑者が十分に供述をすることができないなどというおそれがある場合、あるいは関係者のプライバシーなどの保護、あるいは協力確保に支障が生ずるおそれがある場合など、五つの例外が検察においては定められています。
 まず、刑事局長、この例外に当たると判断するのは一体誰なんですか。
○政府参考人(林眞琴君) 現在、検察において録音、録画の取組、試行を行っておるわけでございます。これは運用上の措置でございますので、これを、当該事件について録音、録画を行うか否かということについては、具体的に立証責任を負う検察官において個別事案ごとに具体的に判断しております。
○仁比聡平君 つまり、取調べを行う検察官がこの例外に当たるという判断をして録音、録画を行わないとしているわけです。
 警察庁はどうですか。
○政府参考人(荻野徹君) お答えを申し上げます。
 警察におきましては、裁判員裁判対象事件のうち、取調べ状況等を客観的に記録することが裁判所等の的確な判断に有効であると認められるものを対象といたしまして、そのうち、被疑者が録音、録画を拒否した場合でありますとか、録音、録画することにより、組織犯罪等において真相解明機能が害されたり、関係者のプライバシー等が害されるおそれがあるような場合、また録音、録画をすることが物理的に困難であるような場合を例外といたしまして録音、録画の試行を行っております。
 こういった警察における録音、録画の試行におきましては、警察本部の事件主管課長又は警察署長が捜査状況、供述等を総合的に勘案いたしまして録音、録画の実施を判断することとしております。こういった例外事由に該当するか否かの判断も含めまして、録音、録画の実施の判断は、警察の場合には個別の捜査員のみということではなくて組織的に行っているということでございます。
○仁比聡平君 そうした判断は、つまり録音、録画をしなかった理由についての判断は、これは何らかの記録になって、例えば裁判において示されることになるんでしょうか、林局長。
○政府参考人(林眞琴君) 具体的な裁判においてそのようなことが争点になるかどうかというのはその事件における審理によりますので、必ずしもそのような形が争点となる事件ばかりではないと考えております。
○仁比聡平君 そういう建前で記録はないという理解でいいのか。それから、そうした理由で録音、録画をしないとか一部にとどめるとか、そうした場合に調書は作成するのでしょう、それでも。
○政府参考人(林眞琴君) まず、具体的な事件で、検察において、現在その試行の録音、録画の対象となっている事件については、原則として録音、録画を実施し、全過程を含む広い範囲での録音、録画に積極的に取り組むとされておりまして、それに対して一部、先ほど御指摘ございましたような例外が定められております。
 そういった中で、録音、録画が実際に実施された場合に、併せてその供述調書を作成するかどうかということについては、これも、それは当該事件においてその供述調書を作成する場合もあれば、また作成しないこともあるものと考えております。
○仁比聡平君 つまり、作成して、なぜこの調書には録音、録画がないのかということが問題となり得るわけですが、その判断は検察、取調べ官やあるいは警察の課で行われるのであって、これが訴訟上に顕出されるわけじゃないということなんですよね。
 先ほど議論がありましたが、特別部会の基本構想において示されているこれからの可視化のありようについて、録音、録画の対象とする範囲は取調べ官の一定の裁量に委ねるとなっています。一定の例外事由を定め、取調べ官の裁量に委ねるというわけですね。私は、取調べ官による密室における人権侵害や誤判のおそれが厳しく指摘をされる中で議論をされているこの可視化について、その判断を取調べ官の裁量に委ねるということ自体が背理だと思います。
 大臣、そう考えませんか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今これは法制審で御議論をいただいているところですから、私はその結論を待ちたいと思います。
○仁比聡平君 この特別部会での、例えば映画監督の周防さんが東京新聞に厳しいインタビューを載せておられます。
 この基本構想は、密室での取調べや供述調書の作文を問題視するどころか、国民に支持され信頼を得るとともに治安維持に貢献してきたと言い切っている。捜査機関は取調べを根本から見直そうとは全く思っていない。ショックでした。取調べの全面可視化、証拠の全面開示、人質司法を改善することの三点の実現は最低限必要だと思っていた。だけど、検察、警察は自分たちを省みるつもりは当初からないと痛感をしたと語っていらっしゃいます。捜査側は十人の真犯人を捕まえるためなら一人くらいの間違いは仕方がないと思っていると感じたとも語っておられます。委員としてこの特別部会に参加をしてこられた方のこうした厳しい指摘をどう受け止めるのか。
 もう一つ、この特別部会を置く大きなきっかけとなったのは冤罪事件ですが、袴田さんのお姉さんである秀子さん、そして布川事件の桜井さん、杉山さん、足利事件の菅家さん、氷見事件の柳原さんが打ちそろって、この特別部会の在り方はおかしいと。例えば、袴田さんの声でいえば、取調べの可視化が骨抜きにされている、巌のようなことが二度と起きないようにしてほしい、こうして特別部会に要請に来られていますが、その中身は、全面可視化、全面的な証拠の開示、取調べへの弁護人の立会い、代用監獄の廃止ですよね。
 私は、今度の袴田事件の再審開始決定を受けて、こうした冤罪を繰り返さないという角度で始まった、そういう原点で始まったその特別部会の原点に立ち返って、冤罪を根絶するために出直しの議論をするということが今ほど求められているときはないと思うんですが、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今の法制審の御議論が、村木事件等々を踏まえて、検察の在り方がどうあるべきかと、取調べの在り方がどうあるべきかという問題意識で議論をしていただいているわけですね。私は、真摯に議論を行っていただいていると思っておりますので、その結論を待ちたいと思っております。
○仁比聡平君 四月の三十日にもこの取りまとめに向けての事務局案が出され、それが法制化されていくのかというようなことが伝えられる中で、当事者たちは極めて憤りを持っているということなんですね。
 最後に、この中でも新しい捜査方法と言われている盗聴、通信傍受の拡大について伺っておきたいと思いますけれども、かつて二〇〇一年に読売新聞に、二〇〇二年三月までに主要都道府県警や管区警察局に十数台の電子メール傍受装置を配備する計画というのが伝えられました。当時、FBIが秘密開発した傍受装置と同様の機能だと言われていて、サーバーを通過する全てのメールを一旦取り込んで、その後容疑者のメールだけを拾い出すという仕組みだと言われているが、本当に容疑者のメールしか記録しないのかどうかはプログラム自体を吟味しないと分からない、プログラムの中身を警察庁は公開する予定はない、そういうふうに報じられているんですが、これは実際に配備をされたのか。その後十数年たちますけれども、実際にメールやそしてSNSの通信傍受というのは可能なのか、お答えください。
○政府参考人(荻野徹君) お答え申し上げます。
 電子メールに係る通信傍受令状が発付された場合において、傍受を許可されたメールのみを記録するための装置といったものを平成十三年度予算に配備を行ったところでございます。
 それから、SNS等についてのお尋ねでございますけれども、警察といたしましては、通信の形態は電話、電子メールからいわゆるSNSと言われるものまで種々の形態があるわけでございますけれども、法律で認められた通信傍受が技術的にも可能になるように努めているということでございます。
○委員長(荒木清寛君) 仁比君、時間が来ておりますので、よろしく。
○仁比聡平君 はい。
 この部会では、そうした、私は恐るべきと思いますけれども、これまでの限定された対象犯罪から、窃盗なども含めた極めて広範なものに拡大しようという議論が打ち出されている中で、こんなことは絶対に許されないということを強く指摘して、質問を終わります。
    ─────────────
○委員長(荒木清寛君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、石井準一君が委員を辞任され、その補欠として吉川ゆうみさんが選任されました。
    ─────────────
○谷亮子君 生活の党、谷亮子です。
 本日の議題であります法務及び司法行政等に関する調査についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず初めに、二〇〇九年の当時の政権を挙げて、これは誘致競争に取り組まれてこられました成果といたしまして、本年、二〇一四年十月十九日から二十四日にかけまして、東京国際フォーラムを会場といたしまして国際法曹協会年次総会が開催をされることが決定いたしております。その年次総会は、弁護士のオリンピックとも言われておりますけれども、世界百か国以上の国々から五千人の法律の専門家が会する最大規模のイベントであるというふうに伺っております。
 また、谷垣法務大臣が世界の法曹界の一大イベントの開催国の法務大臣でいらっしゃいます。あらゆる世界の法律の最新情勢が把握できまして、海外とのパイプを築いて、今後、国際弁護士として活動するためのこれは絶好の機会であるとも言われております。
 そこで、最高裁判所にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、これまでの国際法曹協会年次総会に参加されてどのような成果を得てこられましたでしょうか、お伺いいたします。また、今回の年次総会の東京開催に当たりまして、最高裁判所として参加される分野と、そしてまたどのような方針で臨まれるのかをお伺いいたしたいというふうに思います。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
 国際法曹協会の年次総会は、諸外国の弁護士、裁判官といった法律専門家が一堂に会しまして、多くの国に共通する法律問題や法律事象に関して議論されるフォーラムであります。
 最高裁といたしましても、裁判官にとって世界の第一線で活躍する法律家との交流を深めることができる貴重かつ有益な機会であるというふうに認識しているところでございます。この総会には裁判官も古くから継続的に参加しているところでございまして、平成十六年の第三十回総会以降につきましては、毎回、最高裁判事が一名参加しているところでございます。
 今回東京で開かれます第四十回総会につきましては、裁判官部会、知的財産関係のセッションにつきまして裁判官をスピーカーとして推薦いただきたいという依頼を受けているところでございまして、職務に支障がないということはもとより当然ではございますが、東京で開かれるということでございますので、どのような形で参加することができるか、現在対応について検討しているところでございます。
○谷亮子君 御説明ありがとうございました。
 二〇〇九年に行われました二〇一四年年次総会の招致決定に際しましては、オーストラリアのシドニーと誘致決戦に非常にいい意味での競い合いをされたということでございまして、当時の総理大臣、そして法務省、国土交通省、東京都知事、そして国際観光振興機構が一体となって、国を挙げて誘致に取り組むにふさわしい内容があるものと、ただいま最高裁判所の方からの説明で分かりました。
 そこで、谷垣法務大臣にお伺いさせていただきたいと思いますが、法務省として、今回の国際法曹協会年次総会が日本の法曹界にとりましてどのような成果を期待していらっしゃいますでしょうか。また、そしてその後どのようなことにつながるとお考えでいらっしゃいますでしょうか。また、どのようなことにつなげていきたいとお考えでいらっしゃいますでしょうか。お伺いさせていただきたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 私も、法務大臣に就任した直後だったと思いますが、弁護士会の方々から、このIBA総会が東京で開かれると、それについては、それをよく認識して政府としてもこの重要な存在をよく、何というんでしょうか、頭に入れておけというようなお話をいただきまして、総理と官房長官にも、こういうことが東京で行われますということを申し上げたことがございます。それで、これはいわゆる法律家、多岐にわたる分野の法律専門家が世界各国より一堂に会しまして、様々な法律問題、特に最近のいろいろな法律問題、議論されるものというふうに伺っております。
 それで、私も法務省に参りまして、法制度支援であったり、それから日本の法律家が、日本人の世界に出ていく活動をどうしたらバックアップできるか、これは大企業というだけじゃなしに中小企業、零細企業でもそういう問題意識を持っておられるところがございます。
 それから、昨今の事件で申しますと、例えば国際司法裁判所で日本は残念ながら調査捕鯨では負けてしまったわけですが、ああいうところでももっと日本の法律家の活動というものが本来なければならないのではないか。あるいは、国際交渉等々でも日本の法律家がそういう中に戦力として参加するというようなことがあっていいのではないかというふうに思っておりまして、このIBAの総会は、諸外国の法律専門家と日本の法律専門家が交流する、そして視野を広げていくという非常にいい機会ではないかと思っているところでございます。大いにこの秋、期待を私もしております。
○谷亮子君 ありがとうございます。
 今、谷垣大臣の方からお話ございましたように、やはり法曹の国際化ということで、あらゆる分野での即戦力として今後活躍されることへつなげていただきたいというふうにも思いました。
 そして、今回の年次総会におきましては、まさに国際仲裁や国際租税、そして汚職防止など、百八十以上のワーキングセッションで様々な専門分野別の委員会を設けまして、各国から参加される法曹の方々がいろいろな意見交換を重ねる場が設けられるということでございますので、この機会に日本の法曹各分野が活用されまして国際化の弾みとなるように期待されているというふうにも思います。
 そして次に、議題を変えまして、法務省に関するTPP交渉につきましてお伺いさせていただきたいというふうに思います。
 TPP交渉の日米協議が四月二十一日から実務者レベルで再開されまして、アメリカ通商代表部のカトラー次席代表代行が来日をされて日米の関税協議が最終段階に入ったとされておりますけれども、農産品に掛ける関税の交渉ではまだかなりの距離があるというふうに、これは報道ベースでございますけれども、言われているようでございますが。
 アメリカのオバマ大統領も、昨日、来日をされまして、二十四日、本日ですね、首脳会談がまさに今行われているということで、その政治判断の最終的な段階ともこれは言われているし、期待をされているところもあるというふうに思います。
 そこで、TPP交渉の中で対象となっている市場アクセスの分野におきまして、投資やサービスの自由化が交渉分野として重要であるとの認識は、これは政府におかれましても、そして法務省におかれましてもこれは御認識されていると思いますけれども、資格、免許を相互承認することについての議論がどのような状況で行われているのか、是非お伺いさせていただきたいというふうに思います。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 我が国で医師、弁護士などの専門家として活動する際には、一般に国籍にかかわらず我が国の法律などで規定されている資格、免許が必要でございます。
 TPP交渉の具体的な内容につきましては、秘密保持契約がございましてこれを明かさないルールとなっておりますので、詳細についてお答えすることは差し控えたいと考えておりますが、個別の資格、免許を相互に認め合うこと、いわゆる相互承認でございますが、相互承認それ自体については議論は行われていないものと承知しております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいまの説明で、そうした資格、免許というのはそれぞれの国の法律や規定で定められているものが必要であるということでございますけれども、今後、やはりこのTPP交渉の中におきましては、資格や免許の規制緩和、こういったところが非常に当然、これは重要な柱として出てくる問題になってくるのではないかなと私は考えております。
 このTPP交渉におきましては、多国間でサービス貿易、そして政府調達、知的財産、また人の移動等々、多岐にわたるあらゆる分野におきましてこれは規制を緩和していくということが基本にあるというふうに思います。TPP交渉のテーブルに着いた時点ではいろいろな分野にわたって議論していこうという状況であったと思いますが、それから大分月日がたちまして、その間、日本国内におきましても各省庁であらゆる法律が成立をいたしまして、私は、ある意味、このTPPに向けた規制緩和策としての法律が幾つか成立してきているのではないかなと。
 法務省におかれましては、四月十八日に外弁法がこれは成立をいたしております。外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律が四月十八日、参議院で可決、成立をいたしておりますけれども、ある意味、こうした外国人の弁護士の方たちが日本での事務的活動、法人化をして企業化をしていくということは、これ一歩大きな前進だとは思いますけれども、外国の弁護士の方たちが、外国での、弁護士の資格を得て日本で弁護士として活躍するためには日本の司法試験を受けなければならない、合格しなければならないといったような問題もありまして、今後は、こうしたTPP交渉に参加していくに当たりましては、非常にその辺の弁護士としての活動の規制緩和を求めてくるのではないかなと。
 そして、ある意味、日本も今国際化、法曹の国際化を目指していくに当たりましては、相互間の行き来ということで、あらゆる分野でのそうした弁護士としての活躍というのが規制緩和を求めてこられるのではないかなというふうに私は感じた次第でございました。
 ですから、こうした人の移動の部分でちょっと伺いたいんですけれども、日本の法曹界の国際化が求められる環境にある中で、今後、資格、免許の相互承認に関して外国から要求があった場合、法務省としてどのような手だてをお考えでいらっしゃるのか、またどのような方針をお持ちなのか。
 今回、TPP交渉では、そういった状況であるというのは分かりましたし、国と国との交渉でありますから、ある意味口外できないというような部分もあるとは思います。しかし、今後、こうしたTPP交渉とは別に、国際化を目指していくに当たってこうした弁護士の方たちの活動の規制緩和というのが求められてくると思いますので、その手だてというのは準備をしておく必要が、必要になってもならなくてもしておく必要があるのではないかなと考えますけれども、その辺の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 今御指摘ございましたように、今後、資格、免許の相互承認に関して外国から要求があった場合、個別の資格、免許の相互承認を行うのかどうかという問題でございますが、もとより、国家資格制度の趣旨を踏まえ、この問題は我が国が主体的に判断するというものでございまして、法務省といたしましても、所管する資格、免許については適切に対応していくという所存でございます。
○谷亮子君 ありがとうございました。その時々で一番ふさわしい検討がなされていくということを御期待申し上げたいというふうに思っております。
 そしてまた、次の質問となりますけれども、今年は、外弁法の成立や、また法曹養成の目的からも、国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナーも、これは日本弁護士連合会主催の下、法務省そして外務省が共同して開催をされたりいたしておりまして、法曹の分野の国際化を目指す環境づくりというものがこれは着実に進んできている現況にあるというふうに思います。
 そして、そこで、TPP交渉の締結の次の段階になってくると思いますけれども、日本の法曹界の国際化に向けて大きな節目の年と位置付けられるというふうに思いますが、前回の法務委員会の質疑の中で谷垣大臣の御答弁にもございましたとおり、現在、法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会の下に法曹有資格者海外展開に関する分科会がこれは設置をされて検討がされているということでございますが、法務省といたしまして、今後、日本の法律事務所の海外展開と弁護士の国際化についてどのような方針で臨まれるのか、法務省としてお伺いさせていただきたいというふうに思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 今委員がおっしゃった、分科会でどういう議論をしてきたか。実は先ほど申し上げたことともちょっと関係があるんですが、一つは、海外に進出している日本人あるいは日本企業、それが現地で必要としている法的支援のニーズはいかなるものかと、それでそのニーズにどう対応して支援をしていくかということが一つですね。それから、これも先ほど申し上げた点ではありますが、中小企業も海外進出をいろいろお考えになって専門家の支援を必要としている、これがうんと多くなってまいりましたので、その支援、法的支援はどうあるべきかと。それから、結局根本的なことに戻りますが、国際的な分野で活躍できる、活動できる法律家の養成はどうあるべきかと。こういったことについて実践的な検討をこの分科会で進めていただきました。
 それで、国際的な分野で法律家が活躍する必要性については今までも随分いろんなところで指摘されてまいりまして、例えば、平成十三年の六月に司法制度改革審議会の意見書で、国際化時代の法的需要に十分対応するため、弁護士の専門性の向上、執務体制の強化、国際交流の推進、法曹養成段階における国際化の要請への配慮等により、国際化への対応を強化すべきであるとされておりました。
 それから、近年では、例えば、昨年の六月二十六日、法曹養成制度検討会議の取りまとめでも、関係機関、団体等の連携の下で、日本の弁護士の海外展開を促進して、また、日本の弁護士が国際案件処理についての能力向上に努めつつ、海外展開業務を充実させる必要があると、こういう記述もございます。
 それで、個々の法律事務所がどう海外展開をしていくかというのは、それぞれの事務所がそれぞれのお立場から適切に検討されるべきことでございますが、法律家全体として、法曹資格者全体としての海外展開を促進するということについては、これまでのいろいろな議論も踏まえまして、要するに、国際的な分野における活動領域をどう拡大していくか、それから法曹人材の育成、確保をどうしていくか、様々な観点から検討を進めていかなければならないと思います。
 ある程度明るい面もあるんですが、まだまだ道半ばという思いを強くしておりますので、一段とまた力を入れていかなければなりませんし、またこの参議院の法務委員会の先生方にも御支援をお願いしたいと存じます。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 谷垣法務大臣からの今お話がございましたように、あらゆる分野の議論というのが審議会等で行われているということで、弁護士の専門性の強化や、さらには活動領域をどのように広げていくのか、そしてまた、人材育成の確保といったことが、こうした国際化に伴うそうした環境がつくられつつある中では非常に重要なんだということが確認できたというふうに思います。ですから、こうした取組一つ一つが是非とも実を結ぶ成果が上げられますことを御期待申し上げさせていただきたいというふうに思います。
 そして次に、また議題を変えさせていただきまして、犯罪等の防止や事件の解決につながるとも期待されております防犯カメラの現況についてお伺いさせていただきたいというふうに思います。
 この防犯カメラの設置につきましては、これはいろいろな御意見があるようでございまして、近年そうした大変悪質な犯罪が増加しつつある傾向にある中で、やはりこうした防犯カメラの設置というのは是非やっていただきたいという声もある反面、やはりプライバシーの保護という観点からは、どのようにその映像が撮影されて、それが誰に確認をされて、どのように保管をされているのかといったようなプライバシーに関する問題というのが一つございます。
 そのような両方からの意見もある中で、東京都におきましては、今年度から、都内の全ての公立小学校約千三百校の通学路に防犯カメラを設置する事業に乗り出すことが最近の報道で伝えられておりました。東京都は、各区市町村教育委員会に協力を呼びかけまして、二〇一八年度までに六千五百台の設置を完了させる方針とのことでございました。また、東京都は、二〇〇四年以降、既に商店街や町内会などを対象に防犯カメラの設置費をこれは補助する事業を進めておりまして、費用の大半を都とそして地元の区市町村が負担するという仕組みで、二〇一二年度までに合計三千七百六十五台がこれはもう既に取り付けられておりました。
 また、子供を学校に通学させる御家庭におかれましては、やはり登下校の安全が図られる、また犯罪が抑止されることは大変に取り組んでいただきたいし、安心につながることでございますし、これに関連いたしまして、四月十八日に、これは議員立法で、児童の通学安全の確保に関する施策の推進に関する法律案を生活の党を含みます野党七党共同で参議院の方に提出をさせていただきました。
 また、内容といたしましては、子供たちを巻き込む交通事故を始め通学時の事故が相次いでいるということから、子供たちの安全と安心を守るため、通学時の子供の安全確保策について、国が基本基準、そして基本指針、そして市町村が基本方針を、そして児童通学安全計画を定める等の対策をこれは講じていくというものでございます。私も発議者の一人とさせていただいておりますけれども。
 そこで、警察庁にお伺いさせていただきたいと思いますが、これまで街頭や公共施設での防犯カメラの設置につきまして、これはどのように取り組んでこられましたでしょうか、そしてまた、監視カメラの設置とプライバシーの保護につきましてはどのような方針をお持ちでいらっしゃるのかをお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(辻義之君) お答えをいたします。
 警察におきましては、現在、街頭の防犯カメラの設置ということを進めておりまして、平成二十五年三月末現在でございますけれども、十八都道府県で九百二十一台設置をいたしております。
 街頭防犯カメラでございますけれども、犯罪の予防、事件の速やかな解決など、安全・安心まちづくりを推進する上で有効な手段というふうに認識をいたしておりまして、各都道府県警察におきましては、犯罪の発生状況等を踏まえ、必要な箇所に街頭防犯カメラの設置を行っているというところでございます。
 街頭防犯カメラを設置しております都道府県警察におきましては、プライバシーの保護に十分配慮する観点から、管理運用要綱を策定して、録画画像の保存期間や管理方法を定めるなどにより適正な管理運用を図っているところでございます。
 警察庁といたしましては、各都道府県警察におきまして設置する場合には適正な管理運用を確保しつつ行うべきものというふうに考えているところでございます。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま御説明いただきましたように、十八都道府県で九百二十一台設置されているということでありまして、非常にその取組というのは進められてきていると思いますけれども、ある意味、街頭防犯カメラの設置をしたということだけに安心をせずに、そうした防犯カメラの設置と同時に、やはり人的な安全対策、防犯の対策といったものも同時に行っていく必要があるというふうに思っております。
 そして、一方で、刑事手続の場でも、捜査に際しまして防犯カメラ映像が大きな役割を果たす事件がこれは増加をいたしておりまして、公判廷の、防犯カメラの映像がこれは証拠採用されることが増えてきております。しかし、防犯カメラの普及は先行しておりますけれども、法的議論は十分になされているのか、これは疑問が生じているところもあるという御意見もございます。
 また、防犯カメラに関する問題は、街頭に設置された防犯カメラが果たしている犯罪防止効果や捜査への支援機能、そして公共空間におけるプライバシーの問題、また街頭防犯カメラの法的規制、設置の根拠、そして録画、録音の撮影データの利用規制等、そしてまた、どういった方たちがこれは責任者として取り組まれていらっしゃるのかといったような、様々に異なるいろいろな局面が検討されるべきであるというふうに私は思っております。
 また、刑事手続における証拠としての利用についての議論がこれは同時に必要であるとも感じておりますし、最近の映像のデジタル方式による記録が普及をしておりまして、一方で改ざんも容易に行えるということもこれは議論が必要な背景にあるのではないかなというふうに私は思っております。
 実際の刑事裁判では、防犯カメラの映像が信頼度の高いものではないと言われている点もありまして、防犯カメラに記録された映像は有力な証拠の一つになり得ますが、他の証拠と併せても証拠としての立証性が決定的な証拠とまではできないときもあるということでございました。
 また、防犯カメラの今後の管理運営、設置を進めるに当たりまして、防犯カメラの証拠能力とそして証拠力はどのようなものなのか、これは明確にしていく必要があるというふうに思います。
 このことにつきまして、最高裁判所の御認識をお伺いさせていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(今崎幸彦君) お答え申し上げます。
 ただいまの委員の御質問は、裁判所の立場に引き直して申し上げれば、防犯カメラにより撮影されました映像が検察官による犯罪事実の立証のため、あるいは場合によっては弁護側が反証のために必要であるとして証拠としてこれを取り調べてほしいと、こういう請求が刑事手続の中であった場合にどのようにするかと、こういうような問題になるかと存じます。
 証拠能力というのは、御承知のとおり、ある資料を裁判で証拠として用いることができるかと、その法的許容性の問題でございますし、証拠力、証明力とは、その証拠が実際にその裁判の中でどのような事実認定に役立つのかと、こういう実質的な価値のものでございますが、これらはそれぞれの、ただいま説明しましたとおり、元々事件ごとに様々でございます。
 担当裁判体、事件を担当する裁判所が事件ごとに様々な事情、すなわち、委員の問題意識をお持ちでいらっしゃいます防犯カメラの設置、管理運営といったものに加えまして、そもそも起訴されている事件がどのような事件でありますかとか、あるいはそれが、この証拠によって何を立証しようとしているのかとか、あるいはさらに、そもそもそれが何を撮影し録音したものかと、こういった様々な事情を考慮して判断されるべきものでございます。
 このような性質上、裁判所の立場からは事前に一律の取扱いということを決められる問題ではないように考えておりまして、その意味で裁判所の事務当局としてはこの程度のお答えになるかと存じます。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいまの御答弁いただきました中では、やはり証拠能力や証拠力は案件ごとに個別に判断されるといたしましても、これは、犯罪が起きて、その判例の積み重ねを待っているだけではなくて、それがあらかじめ証拠となるということが明らかであるということが、設置者や管理運営者にとりまして、また国民にとっても安全につながっていくことが大切なことだというふうに思います。
 こうした防犯カメラの設置等につきましては、あらゆる方たちの、各自治体であったり、あとは一般的に御家庭の子供たちを始めとする保護者の御理解であったり、あらゆる協力が必要な中で今後取り進めていかれるというふうに思いますし、そうしたことがやはり犯罪抑止、また犯罪防止、また犯罪の解決等につながっていくということを更に期待いたしたいと思います。また、そういったことをやることで初めて犯罪の抑止につながっていくんだということがこれはっきり言えるということになってくると思いますので、今後につきましては、広報の手だてにまた更にしっかりと取組をお願いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 四月十日の法務委員会で、国連人権条約の個人通報制度について谷垣大臣にお伺いをいたしました。
 二〇一一年に子どもの権利条約の第三議定書の共同提案国となったのは民主党政権だったことは承知しております。しかし、女性差別撤廃条約の選択議定書について、自民党の女性に関する特別委員会で選択議定書批准の提言がまとめられたのは、谷垣大臣は野党時代というふうに答弁されましたが、これ実は谷垣大臣、与党時代のことでありまして、しかも大臣が懸念されていた司法権の独立についても、当時、懸念は払拭されております。谷垣大臣は、国内の確定判決と異なる内容の見解が出てきたとか、あるいは裁判係属中の事件については、今裁判をやっているのにこういうふうにせよというのが出てきたりというようなことでは、これはなかなか日本の制度と合わせていくのは難しいと答弁されましたが、これ事実誤認ではないかと思います。
 つまり、個人通報制度は、条約違反の有無の判断を求めて委員会に通報することのできる制度で、裁判所、司法機関に対する訴えではありません。通報先の委員会は、これは条約機関であって裁判所ではありません。その判断は見解と呼ばれ、裁判所の判決と違い法的拘束力はなく、司法の独立を侵す懸念はございません。実際に、四月二十一日現在で百四か国が加盟しておりまして、それらの国々は司法権が独立しております。また、裁判係属中の事件については通報できません。通報できるのは利用可能な救済手続を尽くした後で、つまり、日本の場合は最高裁の判決が確定した後ということになります。その上、委員会は基準を厳格に適用するために実際に使おうとするとハードルは高く、議定書が採択されて十年間で僅か十数例だったというふうに伺っております。選択議定書は、実際に使うメリットより、加盟しないことで差別撤廃に対して後ろ向きな姿勢を示してしまうというそのデメリットが大きいわけであります。
 ですから、自民党の特別委員会の提言において、我が国は、人権、民主化、法の支配、平和構築の分野で更なる国際貢献を行うことが期待され、選択議定書批准は、我が国の国際人権保障、男女平等への積極的な取組の姿勢を国際社会に示すものと述べているものだというふうに思います。
 OECD加盟国、三十四か国ありますが、女子差別撤廃条約の選択議定書に批准していないのは、他の国からの干渉を嫌い条約そのものに加盟していないアメリカはまず別として、チリ、エストニア、イスラエルと日本だけであります。当然、加盟国は司法権が独立しておりますので、日本の主張が国際社会に通用するものではないということをまず冒頭に申し上げて、質問に入りたいと思います。
 具体的な質問ですが、DVについてお伺いをしたいと思います。
 DV防止対策についてでありますが、警察庁が三月二十日に公表いたしました二〇一三年度中のストーカー事案及び配偶者からの暴力事案の対応状況によりますと、配偶者からの暴力事案も四万九千五百三十三件で、これ前年より一二・七%増加しています。DV法が施行されて最多を記録したことが分かりました。保護命令違反検挙ですが、これ百十件で、昨年より九・一%減少したということですが、この数値を見ますと、逆にDV防止の対策が十分に行われていないのではないかのその数値の表れだと思いますが、DV防止対策の強化をどのように行っていくのか、特に加害に対する施策について具体的にお伺いいたします。
○政府参考人(佐村知子君) 配偶者からの暴力につきましては、被害者の多くが女性でありまして、女性の人権を著しく阻害するもので、私ども、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題であると認識しております。また、件数についても先生の御指摘のとおりでございます。
 私ども内閣府といたしましては、昨年改正されました配偶者暴力防止法に沿って、若年層への啓発用のパンフレットを活用しての啓発の実施ですとか相談員などに対する研修などを実施しております。また、加害者に対する取組についてでございますが、この三月末に開催されました女性に対する暴力に関する専門調査会におきまして御議論をいただき、再発防止の観点からは加害者更生の取組が重要であることなど御指摘をいただいております。
 こういった御指摘を踏まえ、今後とも、私ども、暴力の防止に関する施策、また被害者の保護のための施策などに関係省庁と連携をしてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございます。具体的にはこれからというふうに思いますので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 佐村局長は退席して結構でございます。
○委員長(荒木清寛君) では、佐村局長、退席してください。
○糸数慶子君 次に、面会交流と養育費についてお尋ねをいたします。
 二〇一一年に行われた民法の一部改正で、民法上、離婚後の親子の面会交流、あるいは監護費用の部分の分担の明示がなされ、これは施行された二〇一二年四月から離婚届出用紙に取決め状況のチェック欄が設けられました。
 法務省はチェック状況の集計をされておりますが、施行後一年間でかなり効果があったことが分かりましたが、直近の集計状況はどういうふうになっているのか、政府参考人にお伺いいたします。
○政府参考人(深山卓也君) 今御指摘があったとおり、平成二十三年度の民法等の一部改正法律を受けて、その趣旨を周知する方法として、離婚届書の様式改正を行いまして、届書にチェック欄を設けております。
 このチェック欄を設けた届書の運用は平成二十四年四月から使用を開始しておりますけれども、平成二十四年の四月から平成二十五年十二月までのデータが集計できております。
 まず、面会交流についてですけれども、この間、未成年の子がいる夫婦の離婚届出件数全体は二十二万五千百二十三件ございました。取決めをしているという欄にチェックがされているものが十二万九千五百二十九件、比率にして約五八%でございます。また、養育費の分担につきましては、同じくこの間の二十二万五千百二十三件の中で、取決めをしているという欄にチェックがされているものが十二万九千三百三十二件、比率にして約五七%でございます。
○糸数慶子君 チェック状況、それから取決め状況共に増加しており、やはり離婚届出用紙のその様式変更が、面会交流やそれから養育費の取決めの改善につながっていることだと思います。
 実際の面会交流や養育費の支払状況は、法務省として把握されているでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 実際に養育費の支払や面会交流の実施の件数のデータについては、法務省としては把握はしておりません。
○糸数慶子君 厚生労働省は、これ全国母子世帯等調査で把握しているというふうに思いますが、件数が少ないために実数の把握はされておらず、直近の二〇一一年の調査は改正民法が実施されていないために直接比較することは難しいと思いますが、厚労省は面会交流と養育費の取決め実施状況を把握されているでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(鈴木俊彦君) ただいま御指摘ございましたように、母子世帯におきます養育費、それから面会交流の実施状況でございますけれども、直近、平成二十三年度の全国母子世帯等調査によりますと、養育費の取決めをしております母子世帯は全体の三七・七%、養育費を受けている母子世帯は全体の一九・七%となっております。また、面会交流の取決めをしております母子世帯は全体の二三・四%、面会交流を行っております母子世帯は全体の二七・七%となっている状況でございます。
○糸数慶子君 今数字を伺いますと、やはり養育費の支払などに関しましてはかなり低い数字でございます。あるいはまた、面会交流のその状況も、是非先ほどの数字に乗じて、また再度細かく調査をして、是非支払が行くような状況を展開をしていただきたいというふうに思います。
 次に、家裁の事件でも面会交流の問題が含まれている事件が多いと伺っておりますが、今年四月に正式加盟いたしましたハーグ条約でもこの面会交流の実現が求められています。その反面、DVなどがある場合、逆に面会交流に不安を持っている母親も多いと思うわけですが、安全、そして安心して面会交流に応じられる環境づくりが重要になると思います。
 面会交流センターの設置、これは今ある施設の転用でも可能だと思うわけですが、面会交流の支援組織、例えばFPICなどに対する援助や人材養成といったこと、あるいは面会交流実施の基盤整備も必要と思いますが、どのように取り組んでいかれるのか、具体的にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 離婚後も親子の面会交流が適切に実施される、これは誠に望ましいことだと思っておりまして、子供の利益という観点から、面会交流は父母が自発的に合意をした上で父母双方の協力の下に実施されるべきだと、こういうふうに考えてございます。
 厚生労働省といたしましては、こうした観点から、養育費相談支援センターを設置いたしまして、この中で、養育費の相談に加えまして面会交流の相談にも応じているところでございます。それからまた、都道府県などに設置をされております母子家庭等就業・自立支援センターございますけれども、ここに専門の相談員を配置いたしまして養育費あるいは面会交流の相談に応じてございます。こういったものの必要な研修それからサポートの業務を、公益社団法人の家庭問題情報センター、今先生から御指摘ございましたFPICに委託をして実施しているところでございます。
 さらに、平成二十四年度からは、父母の間に面会交流の取決めがありまして、かつ支援を受けるということに合意があるような場合、こういった場合に、地方自治体が面会交流の相談や日程の調整、それから付添いなどの支援、こういった事業を行ってございますけれども、これに対しても補助を実施しているところでございます。
 いずれにいたしましても、面会交流は、子供の健やかな成長にとって好ましいものであるということ、それから養育費を支払っていただく意欲につながるということもございます。こういった観点を踏まえまして、法務省を始め関係省庁と十分連携を図りながら進めてまいりたいと思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 ただ、この面会交流に関しても悲惨な事件なども起こっておりますので、やはり円滑な面会交流のための基盤整備も必要だと思いますので、今後とも頑張っていただくことをお願いしたいと思います。
 次に、家族の多様化と親子法制についてお伺いをいたします。
 家族のありようや価値観が多様化し、結婚や離婚、親子、相続、戸籍など家族に関する法制度は少しずつ見直されています。しかし、家族の形や意識の変化のスピードに法改正が追い付いていません。
 例えば、民法七百七十二条の嫡出推定規定については、早くから見直しが指摘されていたにもかかわらず法整備が進んできませんでした。立法当時は子供の福祉を考えてつくられた制度であっても、制定時には想定もしなかった問題に直面することが少なくありません。法務省も法改正の必要性を認識されているようですが、法改正には具体的には至っておりません。
 二〇一二年の衆議院法務委員会で、非配偶者間人工授精、AIDによる出生子が一万人以上誕生している一方で、生殖補助医療の行為規制や親子関係の法整備が行われていない問題が取り上げられました。これに関して、厚生労働省は、代理懐胎などとは違い、規制の必要はないというふうに答弁され、法務省は、法律上の親子関係は行為規制の問題と切り離して検討することが困難であると答弁されました。
 問題解決は先送りされましたが、また一方で、昨年十二月十日、最高裁は、性別変更後の男性を戸籍上の父と認める初の決定を行いました。性別変更後の法律婚を認めておきながら、生殖補助技術やDNA鑑定などの医療技術の進歩を想定していない時代にできた嫡出推定規定を見直すことなく、形式的審査を理由に、一方に甘く、また他方に厳格にする法務省の対応が厳しく指摘されたのだというふうに思います。最高裁決定を受け、法務省は、今年一月二十七日、性同一性障害で男性に性別変更後、法律婚をした夫とその妻がもうけた子について、嫡出子として戸籍に記載するように全国の法務局に通達をしています。
 そこで、政府参考人に伺いますが、親子法制の見直しの検討は現在どのような状況なのか、お伺いいたします。
○政府参考人(深山卓也君) ただいまの委員から御指摘があったとおり、生殖補助医療技術によって生まれた子供の法律上の親子関係というのは、民法が制定された当時には想定されていなかった問題が生じているものと思っております。
 もっとも、この点もお触れになりましたけれども、生殖補助医療によって生まれた子の法律上の親子関係の規律をどうするかというのは、生殖補助医療自体が医療行為としてどういう規制に服するのかという、その在り方についての法整備の内容を踏まえた検討が必要になると考えておりまして、例えば代理出産を認めるか否かというような点なども含めて、こういった点の医療行為としての法整備がされていない現状では、民法上の親子関係のみを先行して見直すということは相当でないというふうに考えております。
 この点に関する現状ですけれども、現在、生殖補助医療に関する議員立法に向けた検討が進められているものと承知しておりまして、その議論の状況を注視しているところでございます。
○糸数慶子君 そこで、谷垣大臣にお伺いいたしますが、この日本の医療技術は世界最先端を行くのに親子法制は最後尾だとやゆする声もございます。嫡出を推定する国は日本くらいで、父子関係を推定する制度に改めるべきだというふうに思いますが、この親子法制の在り方について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) まず、母子関係ですけれども、これは、明文の規定はないんですが、分娩の事実によって当然に母と子という関係が生ずるというふうに理解されておりまして、分娩者が母になると、こういうことですね。それで、これは母と子の関係を分娩という外形的な事実に係らせるということで、客観的な基準は明確になると。私は、これは合理的な根拠があると思うんですね。
 今度、じゃ、父と子、父子関係についてはどうかというと、さっき御指摘されましたように、妻が婚姻中に懐胎した子は嫡出子としてその夫の子であるという推定が働くようになっております。それで、この制度、今、糸数先生は批判的な見解を持っておられるように承りましたが、子の福祉のために親子関係、父と子の関係を早く確定すると、そうして家庭の平和を尊重するという考え方自体は、今日においても全く合理性を失ってしまったというわけじゃないと思います。私は一定の合理性があると思うんです。
 そこで、根幹はやっぱりそういうことなのかなと思うんですが、糸数委員が指摘されましたように、生殖補助医療、大変技術も進んできた。それで子供が出生するといった、その生殖補助医療によって出生するといった民法制定時には想定していなかったことがいろいろ起きてきている。こういったことにどう的確に対応していくかという意味で、親子法制を検討することは今非常に大事なことになってきていると思います。
 そこで、政府の中にもいろいろな見解があるんですが、民事局長が先ほど答弁しましたように、生殖補助医療によって生まれた子の親子関係の規律を検討するについては、私は、やはり医療規制についての法整備の在り方、これを踏まえた検討が必要であって、それを全然抜きにしてはなかなか整理ができないんじゃないかと思います。
 それで、現在、生殖補助医療に関する議員立法に向けた検討が進められていると承知しておりますが、その議論の状況を注目したいと実は思っているところでございます。
○糸数慶子君 医療技術が進んでいく中で、やはり法整備が追い付かず裁判になるケースも現実にあるわけです。現在行われているAID出生による問題も解決されてない中で、自民党では更なる生殖補助医療に関する検討も行われており、当事者団体からは子供の福祉の観点から懸念する声も上がっているということは申し上げておきたいと思います。
 森まさこ少子化担当大臣が、二十一日の政府の有識者会議、少子化危機突破タスクフォースで、少子化対策に向けて、一人の女性が一生に産む子供の平均数である合計特殊出生率に関して数値目標を設定するかどうかを検討する会議を設置する考えを示しました。これ、安倍総理が森大臣に、人口減少に歯止めを掛けるための目標の在り方を含め、対策の具体化を進めてほしいと指示したことを受けて、その検討会議設置の意向を示したというふうにされています。
 実は、昨年、この有識者会議で導入が検討されておりましたいわゆる女性手帳ですが、私もこれ、内閣委員会などで指摘をさせていただきましたけれども、女性団体などからは性と生殖に関する健康とそれから権利の侵害であるというふうに批判にさらされて、配付は見送られました。数値目標の設定はそれ以上に批判の声が上がるものというふうに懸念いたしております。
 安倍首相は、女性の活躍促進や少子化対策に熱心であり、とても期待しているところでありますが、残念ながら、女性のニーズに応えていないと言わざるを得ません。
 なぜなら、昨年の内閣委員会でも指摘したところですが、なぜ女性が子供を産まなくなったのか、若い世代が子育てに希望が持てなくなったのか、しっかりと分析し、そのニーズに応えなければなかなかその有効な対策を講ずることはできないというふうに思います。
 例えば、少子化を克服したフランスでは出産費用は基本的に無料です。そして、託児システムも充実しています。日本のようなパートやアルバイトのような不安定雇用はほとんどなく、労働者の九割が正規雇用です。また、非正規労働者であっても給与や社会保険について正規労働者と差別してはならないと、これは法律で定められています。さらに、手厚い家族手当や児童手当があり、働く親が育児と仕事をてんびんに掛けないで済むよう、有給休暇やそれから育児休業手当の制度を使い勝手の良いものに改善をしています。それらがやはり出生率の上昇につながったと言われております。まさに、国が、女性が自分の生き方を自分で選べるように支援しているのがフランスだというふうに、私も実際に視察をして感じました。
 フランスが少子化を克服したのは、職業分野、さらには家族分野の男女平等を進めてきたことが大きかったと言えるわけですが、差別撤廃が進まない日本とはどれも対照的と言わざるを得ません。
 今や選択的夫婦別姓制度は男女平等の試金石とも言われておりますが、しかし、その選択的夫婦別姓が認められたからといって男女平等が実現するわけではありません。例えば、その選択的夫婦別姓などを含めて民法改正すら認めない社会に男女平等はあり得ないということを強く指摘をしておきたいと思います。
 最後に、入管の問題についてお伺いをしたいと思います。
 茨城県の牛久の方で、法務省東日本入国管理センターで三月の末に二人の男性が相次いで死亡いたしました。その件について概要を御説明していただきたいと思います。
○政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。
 本年三月二十八日、収容中の三十代のイラン人男性が食事中に食べ物を喉に詰まらせて意識不明となったことから、直ちに喉の異物の除去に努めるとともに、速やかに救急車の出動を要請いたしました。病院に救急搬送後は医師による救命措置が行われましたが、翌二十九日、救急搬送先の病院でお亡くなりになりました。
 次に、三月三十日に、入国警備官が収容中の四十代のカメルーン人男性に異常を認めたことから、直ちに救命措置を講ずるとともに、速やかに救急車の出動を要請いたしました。病院に救急搬送後は医師による救命措置が行われましたが、同日、救急搬送先の病院でお亡くなりになりました。
 四月三日に実施されました司法解剖の結果、死因につきましては、イラン人男性につきましては食物誤嚥による窒息が原因の低酸素性脳症とされ、カメルーン人男性につきましては病死とされております。
 以上です。
○糸数慶子君 入国者収容所に関しましては、平成二十一年の法改正に伴って入国者収容所等視察委員会が設置され、活動を行っていると承知していますが、その活動について御説明していただきたいと思います。
 また、同委員会の意見の中で、入国者収容所の医療体制に関する意見、さらには要望などがあったのでしょうか、その意見に対してどのような措置がとられたのか、お聞かせください。
○政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。
 入国者収容所等視察委員会につきましては、平成二十二年七月に設置され、現在、第四期目の視察委員会が活動しているところであり、これまでに視察委員会から三回意見の提出をいただいております。その中で、医療体制に係る意見につきましては、第一期目に七件、第二期目に十一件、第三期目に五件の合計二十三件の意見の提出がありました。
 入国管理局におきましては、視察委員会から意見をいただいた後、措置の可否等を検討して二か月以内に視察委員会に報告していますが、その報告の際に措置としたものが十三件、対応を検討中としたものが十件でありました。
 視察委員会から意見等を受け措置したものの一例といたしましては、東京入国管理局におきまして、専門医の配置ということで歯科診療などを措置したことなどがございます。
 以上です。
○糸数慶子君 今、実際に指摘されたことに関しての具体的な動きについてもお伺いいたしましたけれども、このセンターでは二〇一〇年に男性二人が自殺しており、医療体制の不備や、それから長期に及ぶ収容の弊害を実際に指摘する意見もあるというふうに聞いております。
 この医療体制を含む入国者収容施設の抜本的改善に向けた谷垣法務大臣のその決意をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員が指摘されました、死亡者が続いたわけですね。私も、続くのはこれはどういうことだというので、よく調査をするように命じまして、今回のことに関して医療に特別な不備があったということではなかったと、今のところ私は思っております。
 ただ、入管のこういう施設の中には常勤医師の確保が非常に難しくなっているところがございまして、そういう施設では実際のところ、被収容者に対する医療を万全にするためには、何人も非常勤医師に来ていただくようにお願いするとか、あるいは緊急診療も含めた近隣の医療施設で医療を受けさせる等々な工夫が必要なわけでございます。
 それで、今後とも適正な被収容者の処遇を行うためにはこの医療体制の確保に努めなければなりませんというのが事務方が作った答弁書なんでございますが、これは実はもう非常に悩みが深いところでございまして、この委員会でも何度か御答弁申し上げたことがあると思いますが、矯正、つまり刑務所の方ではもう非常に医師の定員が確保できないという深刻な状況が更に進んでおりまして、入管の場合と基本的な要因は同じようなことなんですが、矯正の方が更に進んでいる、危機が進んでいる状況だと思います。
 そこで、いろいろ識者の御意見もいただきまして、今、職員である医師の処遇の在り方とか、あるいは研修の在り方とか、兼業の在り方、定年の在り方、さらには地域医療の連携の仕方等々、提言をいただきました。今、関係省庁と調整を行っているところでございまして、そういう調整は今回この入管の方の医療体制にも裨益するところがあるのではないかと思っております。
 ただ、そういうことをいろいろやりましても、例えば私の選挙区なんか見ましても、京都のかなり過疎地でございますと、首長さんの大きな悩みは自分のところの医療体制をどうしていくか、これは恐らく糸数先生の沖縄でも同じような事情があるんじゃないかと思いますが、いろんな市長さんや町長さんたちが、首長になって医者の確保でこんなに苦労するとは思わなかったと。どこでもそういう現象が現れている中で矯正やあるいは入管に医者を確保するというのは、これは相当困難があるのも事実でございます。
 ただ、私ども、有識者の検討をいただきました結論、速やかに改善を進めていかなきゃいけないと今努力している最中でございますので、またこの点についても御支援をいただければ有り難いと思っております。
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 大臣も悩みがかなり、いろいろ大変ではありますけれども、やはりこういう入管の中でも、それから刑務所の中でもそうですが、医療体制が今後充実できるような努力をまた改めてやっていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○委員長(荒木清寛君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時十四分散会