【まどマギ】夜を越えて【二次創作】

※魔法少女まどか☆マギカの二次創作です。二期がこんな感じならいいなーみたいなやつです。 ※「叛逆の物語」以降のイメージで書いてます。ネタばれ注意。 ※なんかいかにも後篇って感じで始まりますが前篇は特にありません。あらすじだけ置いておきます。 続きを読む
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ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「最後だよ、ほむらちゃん」 白い光をまとった少女は静かに言う。右手をそっと差し出して。 「返して」 満身創痍のほむらの手には小さな宝石。もうそれだけしか残っていない、鹿目まどかの魂のかけら。 「嫌よ」 かすれた声で、ほむらは拒絶する。

2014-05-05 03:31:59
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「あなたには渡さない。まどかは人間として生きるの。私の願ったこの世界で」 そう言ってほむらが指し示した町は、しかし彼女自身と同じようにぼろぼろで、崩壊寸前だった。 光の少女は笑みを浮かべて言う。 「悪魔の力で私の干渉に抵抗するのも限界のはずだよ。もうすぐ世界は再編される」

2014-05-05 03:36:32
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「私は悪魔よ。世界の終わるその時まで、悪魔は神に抗う……」 拳銃を構えて、ほむらはつぶやく。発射された弾丸は、光の少女に触れた瞬間蒸発した。 「じゃあ、終わりだね」 少女は軽やかに踊り出す。その体から発せられる光の奔流が、偽りの世界を破壊していく。

2014-05-05 03:41:21
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

光の少女にあらゆる兵器は通じない。悪魔の力でも抑えきれない。彼女は存在ではないのだから。全ての魔法少女を救うという概念。 そしてそれは鹿目まどかの願いに端を発する。ゆえに彼女はその魂を求める。それが円環の理の、あるべき姿。

2014-05-05 03:45:15
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

光の少女の力で、偽りの世界は破壊されていく。それは当然のことだった。もともと有り得ない世界。たわみはやがて元に戻る。誰の願いかなどお構いなしに。 「ふふふ、あははは!」 光の少女は笑う。正しい破壊を与えながら。 「あははははははは!!!」

2014-05-05 03:47:44
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

光の帯を従え、廻り続けながら世界を掻き混ぜる彼女の姿は、さながら白い花束だった。 「やめて!」 無意味な抵抗を試みながら、ほむらは悲痛な叫びを上げる。 「私の世界を壊さないで!!」

2014-05-05 03:50:24
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

光の奔流に吹き飛ばされるほむら。もはや少女に容赦はなかった。ほむらは遠のく意識の中で自問する。自分は間違っていたのか? (あの子の幸せを願った。それだけだったのに) 結局のところ、それは誰にも望まれていないことだったのか。彼女自身にさえも。

2014-05-05 03:55:36
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

誰かがつぶやくのが聞こえる。 「なんつーか、神様ってより破壊神だな、ありゃ」 「本当にあれは、鹿目さんの願いが生み出したものなの?」 ほむらは、自分が誰かに抱きかかえられていることに気がついた。その誰かが言う。 「もう止められないんだよ、自分では」

2014-05-05 03:59:51
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「想いってさ、時々、自分ではもうどうしようもないってくらい暴走して、わけわかんない所にまで行っちゃうんだよ。それが元々どんな想いだったとしても」 遠い目でそう言って、美樹さやかはふと、腕の中のほむらを見下ろした。 「気がついた? ほむら」

2014-05-05 04:02:35
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

ほむらは無言でさやかを押しのけて、ふらふらと歩きだす。破壊を続ける光の少女の元へと。 「暁美さん、無理しちゃだめよ」 心配そうに巴マミが言う。傍らの佐倉杏子はあきれ顔だ。 「そんなへとへとで何をしようってのさ。休んでなよ。あいつはあたしらがなんとかーー」 「あなた達に、」

2014-05-05 04:06:37
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「あなた達に何がわかるの。何ができるの。あの子を本当に救おうとしてるのは、私だけ。ずっとそうだった!」 叫んで、それだけで酸欠を起こして咳き込みながら、それでもほむらは声を張り上げる。 「だったら私の邪魔をしないで! あの子は私が、もう一度取り返す!」 「無理なのです」

2014-05-05 04:09:23
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

そっけなく言ったのは、百江なぎさだ。 「前と同じ手は通じないのです。円環の理はあなたをシステムの障害と認識しました。おそらく、改編の完了した後、暁美ほむらからのあらゆる干渉は拒絶されるのです。脆弱性は克服され、円環の理は再び廻り始めるのです」

2014-05-05 04:13:19
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

それは絶望だった。否、以前のほむらにとっては絶望だった。 「そんなこと、もう関係ない」 首を振って、告げる。 「不可能も完全も、誰にも、本当にはわからない。だったら私は試す。何度でも繰り返してみせる」 全てを振り払い、ふらつく足取りで、ほむらは進む。

2014-05-05 04:18:49
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「待ちなよ、転校生」 美樹さやかの呼びかけを、ほむらは無視した。一刻も早く、光の少女ーー円環の理を打ち倒し、まどかを解放してやらなければならない。 「あんたさ、私たちに何か言うことあるんじゃないの」 さやかは頭を掻きながら続けた。 「ていうかまあ、私が先に言うべきかな」

2014-05-05 04:21:11
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「ごめん」 その言葉にではない。 大きな瓦礫につまづきそうになって、ほむらは立ち止った。決してさやかの言葉にではなく。 「あんたが必死な理由、わかってやれなくて。ていうか、今でもたぶん、完全に理解できてるわけじゃないとおもうんだよね。でもさ」

2014-05-05 04:23:19
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「でもさ、ほむら。もう一度だけ、信じてみない?」 唇をかみしめたのは、傷の痛みで、 「ずっと、裏切られて……裏切ってきた私たちにそうするのは、つらいと思う。怖いと思うよ。でも」 視界が滲むのは、息の苦しさで。 「あんた、何度でも試すって、あきらめないって言ったよね。だったら」

2014-05-05 04:28:50
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「もう一度だけ、信じてよ。私たちのことを」 振り向いたのは、拒絶と罵倒を投げかけるためだ。今さらと怒鳴って、あなた達の力など要らないと吐き捨てるため。 だが、振り向いたほむらは、その視線を受け止めて、口を詰まらせた。四つの視線を。

2014-05-05 04:34:46
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「何はともあれ、後輩が困っているのを見過ごせないものね」 「ま、あたしの縄張りを荒してくれたケジメはつけさせなきゃな」 「いつからあんたの縄張りになったのよ」 「いくら完全でも、なぎさにご褒美のチーズをくれないような理は嫌なのです。断固拒否のかまえなのです」

2014-05-05 04:39:52
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「……まどかを、助けたいの」 涙で濡れて、震えた声は、しかし自分でも意外なほどに、はっきりと響いた。 「お願い、力を貸して」 「オーライ」 勝ち気に笑って。 「もちろん」 優雅にほほ笑んで。 「まかせな」 にやりと牙を見せて。 「なのです!」 無邪気に、笑う。

2014-05-05 04:48:41
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「ひどいなぁ」 光の少女は、その姿を数えて苦笑する。 「マミさんに杏子ちゃん、さやかちゃんに……なぎさちゃんまで? みんな私の敵なんだ」 「あんたが滅茶苦茶するからでしょ。いいから、こっち来てごめんなさいしな。一緒にあやまったげるから」 さやかの軽口に、光の少女は眉を寄せる。

2014-05-05 04:52:45
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「私が円環の理じゃなくなったら、皆を救えないんだよ」 「そうだね」 「ほむらちゃんの作ったこの世界だって、最初から矛盾をはらんでる。いずれ崩壊してた。守ろうとしても無意味なんだよ」 「ま、そうかも」 「だったら、なんで?」 首をかしげる少女に、さやかは問う。 「なんでだと思う?」

2014-05-05 04:56:22
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「それって、なぞなぞ?」 「ただの常識問題だよ。答えは、あんただって知ってる」 「ふぅん」 光の少女は肩をすくめる。 「じゃあ、ゆっくり考えてみるね。時間はこれから、いくらだってあるんだもの」

2014-05-05 05:00:05
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

「ティロ・フィナーレ!」 膨大な魔力の砲撃が光の少女を撃ち抜く。爆炎に包まれた少女めがけて、巨大な槍が大蛇のごとく鎌首をもたげ、特攻する。甲高い音を立てて、槍が砕けた。舞い散る破片と煙の中を、無傷の少女が進み出てくる。

2014-05-05 05:04:41
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

玉子色の液体が、光の少女を飲み込み、そして一瞬で『焼き上がる』。デコレートも何もない巨大スポンジケーキを、なぎさの口から飛び出た魔女の頭が一口で平らげる。だが次の瞬間魔女頭が光の糸となって解け、少女が宙を舞う。空中でそれを待ち構えていたのは、千の剣と一人の魔法少女だ。

2014-05-05 05:09:24
ラブゼム🥀ラバー @lovethemlover

さやかの繰り出す全方位からの剣戟を、光の少女はすべてかわし切った。が、魔力を帯びた剣がくっつき、絡まり、刃の檻となって少女を閉じ込める。 「マミさん!」 さやかの声を合図に、空を覆う百万丁のマスケット銃が一斉に火を吹く。 「ミレ・フィオーリ!!」

2014-05-05 05:15:03