ゼロ・トレラント・ミカサブレード 後編

前編はこちら http://togetter.com/li/662911
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-05-06 20:59:12
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2014-05-06 20:59:32
劉度 @arther456

(追記:前回の更新で離島棲鬼が離島棲"姫"と記述されていました。記述担当者は「あんなフリッフリの格好とクソみたいな強さで鬼なわけねえだろ!姫だろ!」と言っていたが、適切にケジメされミュンヘン芋掘り研修に送られました。ごあんしんください)

2014-05-06 21:00:40
劉度 @arther456

【ゼロ・トレラント・ミカサブレード】後編

2014-05-06 21:01:33
劉度 @arther456

(これまでのあらすじ) 深海棲艦の手練れ、離島棲鬼と戦艦棲姫。艦娘を待ち伏せた二人のうち、戦艦棲姫は真っ二つにされて絶命した。しかし離島棲鬼はパートナーの死と引き換えに、提督に迫るチャンスを掴んだのだ。

2014-05-06 21:02:19
劉度 @arther456

ぞっとするほど冷たい海の感触を全身で味わいながら、離島棲鬼は百年前の「戦争」を思い出していた。 1

2014-05-06 21:02:34
劉度 @arther456

敵前で彼女らは母体に裏切られた。トカゲが尻尾を切るように捨てられたのだ。生き残ったのは彼女と戦艦棲姫ただ二人。あのときもこうして、海に身を横たえ、じっと待ち続けていた。そしていま、彼女の横に戦艦棲姫はいない。 2

2014-05-06 21:06:52
劉度 @arther456

鬼の体をスコールがしとどに濡らす。おお。おお、戦艦棲姫。しかしこのスコールは天の計らいだ。深海棲艦に涙は許されぬのだから。離島棲鬼は目を閉じた。脳裏に浮かび上がるのは、戦艦棲姫の絶命の瞬間である。「サヨナラ!」姫はそれだけ言うのがやっとだった。遺言の時間すら与えられなかった。 3

2014-05-06 21:10:20
劉度 @arther456

許さぬ。そして、安らかに。……離島棲鬼は顔を上げた。彼女が生存したのは、戦艦棲姫にすら明かさなかった秘密のジツ。「マッタキ」によるものだ。艦娘はゲージが0になったように見えた離島棲鬼を死んだものと取り違え、去ったのだ。その判断の誤りを、死をもって後悔させてやろう。 4

2014-05-06 21:14:24
劉度 @arther456

離島棲鬼は、うつ伏せの姿勢から、匍匐前進を始めた。戦艦棲姫の破片が、敵の提督に付いているのが彼女にははっきりと感じ取れた。目指すは提督のアジト……鎮守府である。 5

2014-05-06 21:17:42
劉度 @arther456

離島棲鬼の匍匐前進は、いまや最高速をマークしていた。彼女の匍匐前進速度はおよそ60ノット、チーターに匹敵するとされる。生体反応をトレスすること二日。ついに彼女は提督の後ろ姿を、とらえた。 6

2014-05-06 21:21:31
劉度 @arther456

それから敵を追い詰めるのは早かった。艦娘ですらない、生身の人間など物の数にも入らない。だが提督を壁際に追い詰めた瞬間、その壁が外側から四角く切り裂かれ、提督は壁の向こうの闇の中に消えてしまったのだ! 7

2014-05-06 21:24:45
劉度 @arther456

「バカな!」だが、慌てるな。戦艦棲姫の破片が道を示してくれる!離島棲鬼は網膜に映し出された二次元レーダーを確認した。提督を示す赤い点はほとんど動いていない。と言う事は……。「上か」 8

2014-05-06 21:28:12
劉度 @arther456

離島棲鬼は窓枠を乗り越え、建物の側壁から上へよじ登った。指一本で僅かな凹みにぶら下がる荒行だが、彼女にとって、この程度の動作はウォームアップですらない。離島棲鬼は隣の建物の人影を見据えた。大柄な人影が、腕組みして仁王立ちになっていた。 9

2014-05-06 21:32:30
劉度 @arther456

復讐と功名心、そして焦りに曇らされていた離島棲鬼の意識も、ここへ来てついに認めざるを得なかった。――新手だ。時間をかけ過ぎた。 10

2014-05-06 21:40:14
劉度 @arther456

「ドーモ、離島棲鬼=サン。マサシです」雨粒の向こうからアイサツが届く。離島棲鬼は怒りに震える手を合わせ、アイサツを返した。「ドーモ、離島棲鬼です。ふざけているのか、戦艦武蔵」 11

2014-05-06 21:41:05
劉度 @arther456

離島棲鬼の声は、怒気と殺気で満ちていた。戦艦棲姫を葬り去った張本人の艦娘、武蔵!忘れもしないその相手が、しかしマサシというふざけた偽名を名乗るとは!「すまんな。剣を扱う時は、この名を名乗る決まりなのだよ」武蔵が手に取った日本刀を構える。 13

2014-05-06 21:44:52
劉度 @arther456

再戦である。武蔵がおそるべき手練れである事は身に染みてわかっている。だが、それは海上での話。今の奴は艤装を身につけていない。それ故に奴の持つ日本刀が気になっていた。艤装の代わりとして持つだけの力が、あの刀には備わっているのか? 14

2014-05-06 21:48:32
劉度 @arther456

「イヤーッ!」先手を撃ったのは武蔵である!切っ先が地面すれすれを奔り、離島棲鬼の顔を薙ぎ払わんと迫る!「イヤーッ!」だが離島棲鬼は這った状態から跳躍!武蔵の頭上で体を回転させ、回し蹴りを放つ!武蔵はこの足をくぐり抜け、落下する離島棲鬼に向けて刀を横に払う! 15

2014-05-06 21:52:13
劉度 @arther456

ガギィン!鈍い音が鎮守府の屋根の上に響き渡った。離島棲鬼が手のひらで刃を受け止めたのだ。武蔵の46cm砲にすら耐えうる彼女の体なら、この程度なんともない。「ヌゥーッ……!?」はずだった。何の変哲もない刀はしかし、離島棲鬼の手に深々と食い込んでいたのだ! 16

2014-05-06 21:55:39
劉度 @arther456

離島棲鬼は武蔵の刀を踏み台に跳躍、その勢いで手の刃を引き抜く。ぞぶり、と肉が削げる音と共に、赤い血が手から吹き出した。「貴様……」血を流すのは、この体に生まれ変わって初めてだった。「その刀は、何だァ!」 17

2014-05-06 21:58:53
劉度 @arther456

「――戦艦『三笠』を知っているか?」「ミカサ……?」聞いたことのない名前だった。百年前も、今も、そんな軍艦はいなかったはずだ。「いるんだよ。百と更に四十年前、私たちが生まれるずっと前に、皇国の興廃をかけて戦った船が」刀の切っ先から、雨粒が滴り落ちる。 18

2014-05-06 22:02:15
劉度 @arther456

「その吹き飛んだ砲塔の一部が、刀にして打ち直された。験を担いだ戦勝祈願の刀、三笠刀としてな」「それでも、ただの刀ではないか」「そうだ。当時はな。だが百四十年を経て、『三笠』が艦霊に昇ると共に、この三笠刀たちも霊力を備えたのだ。日ノ本を背負うに値する霊力をな」 19

2014-05-06 22:05:44
劉度 @arther456

武蔵が刀を正眼の構えにとった。魔力が注がれ、三笠刀が淡く輝く。「試製兵装第七八三号、艤装として鍛え直した三笠刀だ。その切れ味、身をもって味わうといい!」武蔵が踏み込む!大上段から刃が振り下ろされる!「イヤーッ!」離島棲鬼は回し蹴りでこれを受ける!足は手より硬い! 20

2014-05-06 22:09:41
劉度 @arther456

次いで重心を落とし、足払いをかける。だが武蔵は跳んでこれを回避、逆に離島棲鬼の頭に刃を突き刺そうとする。足払いの勢いを利用し、回転跳躍、突き刺しを避ける!この一連の動きで離島棲鬼は気づいた。この艦娘の剣捌きは道理に叶っていない。武蔵は、刀の扱いに慣れていないのか!? 21

2014-05-06 22:13:13