英都物産⑭〈動揺〉

【1】〜【15】 ※〈悪夢〉の続き
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∞まゆか∞【終了】 @8mayuka8

〈動揺〉【1】 あの後、どうやって店を出たのか、よく覚えてない…。 気づくとマンションの前に立っていた。 エレベーターを降りて角を曲がると、扉の前にうずくまる人影が見えて立ち止まる。 その気配に気付いたように顔を上げた。 「おかえり。遅かったね。」

2014-03-15 02:25:32
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【2】 『なんで??』 「会いたかったから。」 立ち上がって、近付いてくる。 私は思わず後ずさりしてしまう。 「来たらあかんかった?」 なんでよりによって今日? このタイミングで?? 「LINEも返ってけーへんし、電話も出ぇへんし…。だから、車飛ばして来てもーた」

2014-03-15 02:25:46
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【3】 「とりあえず、入れてくれる?めっちゃ寒いねん」 鍵を取り出して開ける。 中に入ると、後ろから抱きしめられた。 その手を振り払うように靴を脱いで中に入る。 お茶を淹れながら、声を振り絞った。 『大倉さん。別れてください。』 「……何かあった?」 『ごめんなさい』

2014-03-15 02:26:08
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【4】 「何があった? さっきから一回も目ぇ合わせへんし。」 『ごめんなさい…』 「そんなんで納得すると思うか?!」 腕を掴んで引き寄せられる。 けど、合わせる顔なんてないよ… 俯く私を包み込むように抱きしめた大倉さんが、耳元で話す 「俺には言われへんようなことか?」

2014-03-15 02:26:49
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【5】 そんなに優しくしないで… 大倉さんの腕を振りほどいて、お風呂場へ逃げた。 今更のように、涙が溢れた。 「なぁ。頼むから。顔見せてくれって。」 半透明の扉越しに話す 『ごめん…ムリ…。お願いやから、帰って…』 「この状況で帰ったら、ほんまに終わってまうやろぉ。」

2014-03-15 02:27:26
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【6】 全部洗い流したくて、シャワーを浴びた。 しばらくすると大倉さんは洗面所を出て行った。 終わったな…。 そう思いながら体を洗い続けてると、また大倉さんが戻ってきた。 え?? カギ…、え?ちょっと、待って… カギを外から開ける音がして、慌ててノブを押さえる。

2014-03-15 02:27:51
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【7】力で かなうはずもなくて、すぐに扉が開いた。 『いやっ!』 慌てて背中を向ける。 大倉さんはずぶ濡れになるのも構わず中に入ってくると、私を抱きしめた。 『…濡れるよ。』 「そんなん、ええねん。」 『…私ね、』 「言わんでええ。言いたくないことやったら…」 『でも…』

2014-03-15 02:28:16
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【8】 「でも、ひとつだけ聞かせて。俺のこと、嫌いになった?」 首を強く横に振る。 「考えたらさぁ、お前から好きって言われた事なかったよなぁ…」 『…』 「始めから、別に俺のことなんて好きじゃなかったんちゃうかって…」 『そんなこと!』 思わず大倉さんの方を向いてしまう。

2014-03-15 02:28:56
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【9】 「何があったんかよりも、お前の気持ちがどこにあるかが問題やねん。」 『大倉さんが好き。大倉さんだけ。やけど…』 唇が重なる。 長くて、あったかくて、優しくて、ちょっとしょっぱい。 『ねぇ、大倉さん? シャワー浴びていい?寒くなってきたんやけど…』

2014-03-15 02:29:14
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【10】 「じゃあ、俺が洗ってあげる。」 『それは、イヤ。』 「えーーー。いいやん。ほら、俺も濡れてもーたから入りたいし。」 『入って来るからやん。はい、出て出て!』 大倉さんを押し出して扉を閉める。 溢れてくる涙を流しながらシャワーを浴びなおした。

2014-03-15 02:29:40
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【11】 洗い終わって湯船に浸かると、大倉さんが入ってきた。 「風邪引くかと思ったわw」 急いでシャワーを浴びてる。 「洗いっことか、したかったのになー。追い出すって冷たいよなぁー」 わざと明るく話す大倉さんの姿に、また泣きそうになる。 洗い終えて、湯船に入ろうとする。

2014-03-15 02:30:12
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【12】 『じゃ、私、先に…』 出ようとすると腕を掴まれた。 「行くなよ。」 大倉さんが泣きそうな顔をしてたから、動けなくなった。 後ろからぎゅってされると、さっきのことを思い出してしまって硬直した。 そんな私を溶かすように、耳元で大好きな声がする。 「絶対、離さへんから」

2014-03-15 02:30:49
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【13】 「イヤなことはさっき全部洗い流したやろ?」 『…』 「上書き、させて…?」 『え?』 振り返ると、優しくキスされた。 その手が、優しく胸を包み込む。 何度も何度も硬直したけど、その度に優しく溶かしてくれた。 「どーする?ここで、する?」 『やだ。ベッドがいい…』

2014-03-15 02:31:21
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【14】 大好きな人にされるって、こんなに幸せな気持ちになるってことを、思い出させてくれた。 『ありがとう。やっぱり大好き//』 「もう別れるとか言わへん?」 『んー… たぶん。』 「そこ、『絶対』って言うとこやろぉ!」 『だって、先のことなんてわからんもん。』

2014-03-15 02:31:37
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【15】 「だからお前は…」 『なに?』 「ほっとかれへんねん。」 大倉さんの腕に包まれる幸せを感じながら、言う。 『ねぇ。パンツ、早く洗濯せなあかんね?』 「あ…。」 『服が乾くまで、着るもん無いよ?(笑)』 私はびしょ濡れになった大倉さんの服を洗濯機に放り込んだ。

2014-03-15 02:32:02